現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「ねぇテレス、なんで相羽は逃げたわけ?」
「あのな、庄司。君、敬語使ったらどうだ? 君と僕でいくつ年はなれてると思ってる?」
「八つ」
「当たり前のように言わないでくれるかい?」

裏世界の総合制御センター。
今はCSAの拠点となっているそのビルの入り口で、二人の若者は階段に腰をおろし、話していた。
中学生ほどの小さな女子は庄司美野。その隣で呆れ口調になっているのがテレス・フォードバッドだ。

「で、今どこにいるの?」
「妹さんが鎌振り回して暴れてる。そこに向かってるに違いない」
「なーんか実感わかないなぁ」

つい先日まで仲良く話していた相羽…つまり彼女が藤原香奈ということに納得できない庄司がつぶやいた。
「僕だって面倒くさくてやる気がしない。だが上からの命令だ。仕方ないだろう」
テレスは重い腰を持ち上げて歩き出した。

「結構共通点多いね、あたしたち」
「侮辱にしか聞こえないがな」
庄司もテレス同様、極度の『面倒くさがり屋』なのである。
しかしその事実をきっぱりと断ったテレスに、庄司は膨れた。

「終わったらそれなりに報酬来るわけ?」
「僕が知るわけないだろう。
 大体僕は報酬なんて関係ない。面倒なのは面倒」
「つまんなー」
庄司は雷撃放射砲…『雷砲』をブンブンと回した。

「そういやあんた、候補試しの座幕僚長に取られたんだって?」
「…君は一体どこから…」
テレスが呆れるも返答を始めた。
「実際には早い者勝ちだったんだがな。
 幕僚長が独断で行こうとしたら蠅に出くわしたって話だ。
 んで、そいつをたたいてる間に男二人組が候補試し」
「デイソンたちか」
テレスの顔が明らかに歪んだ。
「君は礼儀作法というものを…」
そこまでいいてテレスは口を閉じた。
分かっている。この女に何を言っても通じないことなど。

「ま、さっさと終わらすに越したことはない。たかが天才二匹だ」
「探すの面倒」

テレスはにやりと笑った。
「僕を誰だと思っている?」