現実逃避超空間

作者/ 風そら



40



「なぁなぁ、いくら俺たちに出来る事っつってもこれはさすがにないだろ……」
俺は双眼鏡を片手に愚痴った。

「仕方ないでしょ、主要なカメラとマイクぐらい押さえておけばこっちの行動も幅が広がるし」
美佳が電柱の上でカメラを取り外しながら言った。

「おい、それカメラ番号20F9Bで一つずれてるぞ」
直人が美佳の開いたパソコンの画面を見ながら言った。


「え?おかしいな…ずっとこの通りで来てたはずなんだけど……」
「微妙に位置がずれてるな、もう少し北東側だ」
「あれじゃね?」

俺は双眼鏡ごしに美佳の乗っている電柱のもう一つ向こう側にあるカメラらしきものを指差した。

「あぁ、それっぽいな。美佳、もう一個奥にあるやつだ。そう、それだ」

美佳は直人に言われた通りの電柱にヒョイと飛び移る。

さっき知ったことだが、美佳は視力があまり良くないらしい。


「でもよー、そんなめんどくせぇ事しなくても銃で撃てば良くない?」
「バーカ、いつ来るか分からねぇ敵に『殺してくれ』って言ってるようなもんだぞ」
「でもねぇ……」

三班だけとはいえ、東京付近を巡回している班はあった。

今まで敵を含め、誰も見かけていないのはどうも不自然だ。


それに銃声も上がってない。


「ちょっと悠斗!!何ボーっとしてんの!?次のカメラ!」
「あ、や、わりぃ」

気のせいか?と思い、双眼鏡を構えて向こうの地平線を見た時だった。



「人……か?」
「「!!」」