現実逃避超空間

作者/ 風そら



62 Side Story 2  Character decay of Endo Naoto



「なぁなぁ、あの娘可愛くないか?」
「なっ…!?」
直人が絶句するのも無理はない。
決死の覚悟で脱出を試みた偉大なる博士がルティア捜索の為二人きりになった途端そんな話題を出されては。
「あ、あの子ってどの子ですかっ…」
どさくさに紛れ漢字を変換し、直人はぎこちない敬語で答える。
「どっちも」
な―――――――――――――――っ
このおっさんはっ!!!
「俺はそうはっ、エ゙ヘンッ、思いませんけど」
やばい、咳が出てきた。
「どっちかっていうとあのおとなしい方が好きだけどねー」
咲子か。
まぁ確かに悪くはないが、っておい!


くそっ
らしくないぞ遠藤直人。
ここは冷静に…取り乱しては敵の思うつぼだ。

直人はまるで戦場にいるかのような状況判断をすると、ケホンと咳払いして、
「残念ですが自分はそのような質疑に対しては応答できかねっ…まっ…」
自分の言葉に自分で吹いた。
白水はケラケラと笑い、さらに
「昨日夜は一緒だったの?」
「博士っ!!!!!!!!!」

直人はまさか自分がこんな苦境に立たされるとは思っていなかった。
これはまずい。撤退だ。
ここは素直に負けを認めて話題を切り替えるしかない。
今後一切この話題を持ち出さないことを条件にするのだ。

「恐れ入ります。自分がどうしたかは博士の想像にお任せ――」
そこまで言って直人は気づいた。
気づいてしまった。

向こうがわの木の枝に佇む悠斗が白い目でこちらを見つめ、
わずか数十メートル離れた道の先には美佳が鎌を持って黒いマントがひらりと揺れ、
さらに隣のビルの屋上から咲子の赤い片目がキラリと輝いている。

思考回路が状況判断をするのにそう時間はかからなかった。

直人は耳を真っ赤にして怒鳴った。
「ち、違っ!こいつが意味不なこと言うからっ!!
 おい、悠斗!誤解だ!」

三人はゆっくりと直人に背を向けると、そのまま捜索に戻っていった。


「違――――――――うっ!
 断じて違う!!!!!
 クソが―――――――っ!!!!!!!」


直人の叫び声は朽ち果てた東京に響き渡った。

その後、直人班のルティア捜索が全く意味をなさなかったのは言うまでもない。









The END