二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- (吹雪物語) 世界への挑戦!編 完結
- 日時: 2016/11/08 00:24
- 名前: しろお (ID: Gu5gxE0Z)
時々URLが光っていますが、アフロディのサイドストーリー以外はyoutubeです。なので音量注意です! 世界編からは、吹雪っぽい曲以外にもサイドストーリーのキャラごとのイメージ曲をつけて遊んだりしてますので、よかったら聞いてみてくだされ
しろお別作品リンク
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[イナズマイレブン4 呪われたフィールド]
イナズマイレブンの高校生編。中学生編でスポットの当たらなかったサブキャラクターたちがメインです。主人公は豪炎寺の従兄弟。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22282
[イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー]
不動明王の高校卒業後のエピソード。卒業後海外クラブへ挑戦するための旅費、お金稼ぎの時期の話。こちらもサブキャラクターたちがメイン
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=29765
[吹雪兄弟の事件簿]
吹雪兄弟の子供のころの短編。吹雪好きはぜひ
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22087
[イナズマイレブン×REBORN! 神の復活]
こちらはアフロディのお話です。わりとREBORN好きな方向けですかね。イナズマイレブンGOの世界がメインかもです。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=21867
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- Re: ブリザードイレブン REBORN! 更新(?)中 ( No.67 )
- 日時: 2013/02/23 18:27
- 名前: しろお (ID: BIfEVcsr)
一緒に戦ったお前達が、影山に従うはずはない。従うはずがないんだ……!」
鬼道は移動中、そう心の中で何度もつぶやくが、不安は積もるばかりで除けなかった。
鬼道の携帯電話が鳴る。
『瞳に映るー 世界の全て—』
「おい、鬼道、携帯鳴ってるぞ」
鬼道は自分の携帯電話が鳴っていることに気づいてないようで、後ろから塔子が教えてやると、はっと鬼道はあわてて着信に出る。
「も、もしもし。鬼道だ」
「き、鬼道さんですか!? 咲山です! お久しぶりです! あの、宇宙人と戦ってて忙しいとは思うんですけど、こっちでちょっと事件が起きちゃいまして……」
咲山とは、帝国学園の生徒であり、サッカー部の部員の一人である。
「奇妙なこと?」
「じ、実は、佐久間と源田が、病院を抜け出して行方不明なんですよ!」
「なんだと!? いつからだ!? なんでそれをもっとはやくいわなかったんだ!」
答えが返ってくるまえに鬼道は、はっと自分で答えに気づく。
「まさか真・帝国に加入した帝国のメンバーとは……!」
「鬼道さん? もしもし? 実は、雷門の優勝後、つまり宇宙人が初めて襲来した時から、いなくなっていたみたいなんです……。エイリア学園との戦いが忙しい鬼道さんに言うべきか迷ったんです……すみません。佐久間と源田は鬼道さんと仲が良かったから、鬼道さんが二人を心配してプレーに影響が出ると……」
「んなアホな……!」
「なんでも、モヒカン男と一緒に佐久間と源田を見たっていう目撃情報があったんですが……。あ、場所は隣町の並盛町です」
「そうか……」
(モヒカン男って……。こいつしかいねえだろ)
鬼道は隣の不動をちらっと見る。
「わかった。俺にその二人は任せておけ。咲山、お前は何もしなくていい。心配もしなくていい。俺に任せておけ」
「鬼道さん……! はい、わかりました。鬼道さんが相変わらずお元気そうで、なによりです」
咲山は鬼道と同じ二年生だが、チームの司令塔でありリーダーだった鬼道は、かつて帝国にいたときに敬語で話されたりすることが多かった。土門も昔は鬼道のことをさんづけで呼んでいたが、二人とも雷門にきてからは普通の会話で喋りあっている。
「咲山も元気みたいだな。佐久間と源田が見つかり次第、こちらから連絡する。佐久間と源田がいない今、帝国はお前がリーダーだ。くれぐれも……。以前のような過ちは起こさないようにしてくれ」
「鬼道さん……。はい。わかりました。では」
「ああ。またな」
鬼道は通話を切り、ポケットに携帯電話をつっこみ、強く握りしめる。
(佐久間……! 源田……! 何を考えているんだ!? まさか本当に影山の手に落ちたのか!?)
「おい鬼道クン。今の電話誰?」
「ふん。お前には関係が無いだろう」
「冷たいねぇ……。あっ、そこの門から入ってくれよ」
不動の指示通り、港沿いの倉庫エリアにキャラバンが入る。
外の天気は悪く、霧に包まれている。不動によると、ここに真帝国学園があるという。
キャラバンからでは霧のせいでその姿が確認できないため、一同はキャラバンを降りた。
霧が濃い。それにしても、校舎が見当たらなかった。霧のせいではない。
「てめえ! やっぱ俺達を騙したのか!」
染岡が喧嘩腰でどなる。「短気なやつだな」と吐き捨てるように不動はいい、「真帝国学園なら、ほうら」と海を指差した。
海の中から巨大な青い潜水艦が現れた。
雷門一同は呆気にとられ、驚きを隠せずにいる。
潜水艦の板が外れ、中から階段が出てきて陸と繋がった。そして、そこから人が出てきた。
細い体に卑しい唇。高い背にサングラス。間違いなく、元帝国学園総帥(理事長兼サッカー部監督)、影山だった。
「影山ぁぁぁぁぁ!!!!!!」
鬼道は影山の名を叫んだ。これは彼の影山に対する深い怒りから突発的にでた叫びであり、いかにこの影山という人物が悪なのか、影山を知らない新規のメンバーも影山の人物像をとらえるまさに好機だった。
「影山零冶。あなたは、エイリア学園と何か繋がりがあるの?」
「吉良瞳子監督か……。ふっ。エイリア皇帝陛下の力をお借りしているのは事実だ、と言っておく。来るがいい、鬼道。昔の仲間に会わせてやる」
「待て、影山!」
影山が潜水艦の中に戻って行くと、階段を上って鬼道はそれを追った。円堂もすかさず追い階段をのぼる。塔子も行こうとするが、不動に阻まれた。
「お前野暮だな。感動の再会にぞろぞろついてってどうすんだよ? デリカシーがあるならここで待ってろ。フン……」
そう言いながら、不動も潜水艦の中に入って行った。恨めしそうに塔子はその背中を見ている。
「財前さん。鬼道くんのことは円堂くんに任せて、私達はここで待っていましょう。おそらく影山はエイリアと何らかのつながりを持ってる。試合の準備をしましょう」
「鬼道くん……。相当あの影山って人が嫌いなんだね」
吹雪はストレッチをしながら染岡に話しかける。
「ああ。俺も詳しくは知らねえんだけどよ。あの影山ってやつは、土門をスパイにして、俺達雷門中を内側からつぶそうとしたことがあるんだ。何かとせこい手を使う奴なんだよ、影山ってのは」
「土門くんがスパイ? そっか……。部員をそんなことに使うなんて……。信じられないよ。そういうの、ドラマだけの話だと思ってた」
「土門の奴、『任務を遂行できなければ退学させる』って脅されて、いやいやながらにやってたらしいぜ。ひでぇ話だよな。サッカー上手くなりたくて頑張って勉強して帝国学園に入ったら、『スパイやれ』だもんな。影山の働いてきた悪事を言やぁ、一言じゃ言い表せねえ。選手にドーピング使わせたりとかもしてたな、たしか」
「んん? なんだ染岡、俺のこと呼んだ?」
「あ、いや、土門がよ、スパイしてた時の話をしてたんだよ、吹雪と」
「ああ……。そんなこともあったな。でもあれがあったからこの雷門と出会えた訳だし、あんまり嫌な思い出ばっかって訳でもねえかな」
土門はまんざらでもないのか、はにかみながら後ろ頭を掻く。
「鬼道くん達遅いわね。いいわ、もう私達も潜水艦の中に入りましょう」
- Re: ブリザードイレブン REBORN! 更新(?)中 ( No.68 )
- 日時: 2011/11/28 16:49
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
一同が潜水艦の中に入りしばらく暗い道を歩いていると、中にはスタジアムが内蔵されていた。
芝のスタジアムであり、観客席も置いてある。こんな辺鄙な場所に来る観客がいるのだろうか。
「よく来たな雷門。それに吉良瞳子監督。さっそくだが、せっかくスタジアムがあるんだ。サッカーの試合でもしようじゃないか」
エコーがきいた影山の声が、どこからともなく流れる。おそらくマイクを通しているのだろう。
「もし君達が我々真帝国学園に勝つことができれば、エイリアの秘密を教えてやらないこともない。では健闘を祈る」
「鬼道。結局、影山にまた手を貸した帝国のやつって誰だったんだ?」
染岡が鬼道に訊く。鬼道は染岡の隣にいる吹雪を一瞥した後、
「佐久間と源田だ。あの、キングオブゴールキーパーと中学サッカー誌で報道され一躍有名になった源田だ。あのオレンジの髪のな。そして佐久間は、右目に眼帯をつけている、綺麗な顔で女のように髪の長い帝国の参謀を務めていた男だ」と言った。
「ああ……。あの二人か。なんでまた影山なんかに手を貸すんだ?」
「以前のように、影山に従えば……。俺が帝国へ帰ってくると思い込んでいるようだ。誰かが、変なことを吹き込んだに違いない。あの不動とか言う奴だろう。詐欺師の顔をしているしな」
向こうのベンチには、佐久間と源田と思わしき人物が、緑色のサッカーユニフォームを着た集団の中に同じ服装で紛れている。
瞳子が鬼道に指示を出す。
「鬼道くん。佐久間君と源田君は、君のチームメイトだったんでしょ?」
「……だった……ではありません。今でもチームメイトです」
「そう……。今日の試合あなたに任せるわ」
真帝国学園とはどたんばで試合になるため、フォーメーション情報や敵の戦術などは何もわからない。瞳子は、昔の佐久間や源田と一緒にプレーして彼らのプレースタイルを把握しているであろう鬼道に采配を任せた方が得策だと考えた。
決して瞳子が手を抜いている訳ではない。
「あ、ありがとうございます」
鬼道が瞳子にお辞儀をする。それを見ていた不動が、
「あの帝国の鬼道が人に頭下げてるよ! あーっはっひゃっひゃ!!」
鬼道を指差し腹を抱えて笑う。
鬼道はそれを無視して、作戦前のミーティングを行う。
「真帝国学園のデータはない……。俺が知っている限りの情報は、佐久間と源田に関することのみだ。まず、佐久間は基本的にFWだが、トップ下での能力も高い。ヘディングやポストプレーで攻めてくるタイプじゃない。俺からのスルーパスで裏に抜けるカウンターを得意としている。その特性を活かして、おそらく真帝国はカウンターで攻めてくるだろう。深く引いて守り、スペースを使って広く攻めていこう。プレーは必ずシュートで終わらせるように、積極的に仕掛けていくぞ。源田は優れたキーパーだ。何回も攻撃し、しつこく攻め抜き相手のDFが疲れたところで意表をついたプレーで点を取りに行くぞ。パスの起点はいつもの練習通り一之瀬と俺。プレスは弱めで、一人につき一人のディフィンスでいい。もしかわされてもすかさずフォローに入る。相手は俺達が最近戦っているような宇宙人ではなく、生身の人間だ。サッカーは生身の戦術が一番恐ろしい。そして、影山と言う男は宇宙人と同じくらい用心ならない人間だ。いや、人間の皮を被った悪魔だ。油断せずに行こう」
(注意:作者はサッカーにわかファンです。経験者ではありません)
部員達がピッチに立つ。そして、試合開始の笛が吹かれる。今日の主審は古株ではなく、真帝国学園側で雇ったちゃんとした審判のようだ。
「さあついに始まりましたぁ! 雷門中対真帝国学園の試合! 実況はおなじみこの角馬でお送りします! 今日は解説として、ケガで離脱中の目金さんがいらっしゃっております! 目金さん今日はよろしくお願いします!」
「はい。今日の雷門は厳しい試合となりそうですねー」
「と言うと?」
「このエースストライカーである目金欠流がいない雷門では、厳しい展開を強いられるということですよ」
「は、はあ。そうですか。今日の雷門は2トップです! 染岡と吹雪、なるほどなるほど」
「吹雪君がどこまでやれるのか見ものですよねー。彼は謎多きその人柄から人気も高いですし、今日の試合では期待してもいいんじゃないですか」
「はい、なるほどー! おっと。今日はずいぶん雷門陣営、攻撃に人数をかけているようですね。風丸のサイドからの攻撃が目立ちます」
「相手GKがあの源田くんですからねぇー。クロスをあげて、ヘディングで勝負に持ちかけようということでしょう」
サイドへ切り込んでいくが、クロスは相手DFにことごとくクリアされる。真帝国のDFには高さがあった。
クリアボールを真帝国の選手が拾い、ロングボールを出して、不動が雷門のオフサイドラインをうまく飛び出し、追いついた。
そのまま不動がゴールに一人で持ちこんでいくのかと思われたが、壁山が前に立ちはだかり、後ろから塔子が来ていたために不動はピッチの外へと追い込まれながら逃げる。
雷門ゴール前にはすでに雷門の守備選手と真帝国の攻撃選手の集団ができている。といっても今は真帝国のカウンター攻撃中であるため、守備人数も攻撃人数もそんなに多くはない。
不動はそこにボールを出すとキックフェイントで見せかけ、塔子と壁山の二人がパスコースへ入ろうとしたところを雷門エリア中央で待っていた佐久間に横パスを出した。
「佐久間、見せてやれよ! お前の力を!」
雷門のDFはライン一旦あげ、スルーパスを警戒してゴール前に真帝国の攻撃選手たちを置き去りにした。
しかし佐久間は動かず、ボールを片足で抑えている。
「おっと佐久間動かない! 何をしようと言うのでしょうか」
佐久間のいる場所からゴールまで30m程ある。
「ここでシュートでしょうかァ!? いやぁ、この位置からは難しいんじゃないでしょうか。ここで栗松が佐久間のディフィンスに行こうとしますが……あ、転びましたァ!」
「ここでこの目金の豆知識を披露しますかね! ミドルシュートとロングシュートの違いについてですが————」
佐久間の態勢を見た鬼道が、突如鬼のような形相になって叫んだ。
「やめろ佐久間ー!! それはーー……!!!」
佐久間は指笛を吹く。
「禁断の技だぁー!!!」
佐久間は前傾姿勢になって右足を後ろに大きく引く。引いた方の足の筋肉が強張っており、力が溜まっているのが見てとれる。
「皇帝ペンギン一号!」
佐久間はそう言い、足を振りぬいた。「やめろぉーー!」と鬼道がまだ叫んでいるが、もう遅い。
30mのロングシュートは、地面を腹で滑るペンギンのような低く抑えたシュートだった。そそしてそのスピードはまさに『皇帝』と呼ぶにふさわしかった。
「背番号十一番の佐久間がシュートいったぁ!」
角馬の声がスタジアムに響く。
第十一話に続く
- Re: ブリザードイレブン×REBORN!コラボ話 更新 ( No.72 )
- 日時: 2012/01/25 16:04
- 名前: しろお (ID: 5xRuHQIJ)
第十一話 帝国の逆襲! 後編
無理な姿勢から撃ったためかシュートのリコイル(多分『反動』の意味)が激しく、佐久間の筋肉はシュートを撃った瞬間硬直し佐久間はうっと小さい悲鳴を洩らし、その場に倒れた。
強烈なミドルシュートにキーパーの円堂が反応し、横飛びで指先がかすれるがボールの軌道がほんの少し変わったくらいでそのままボールはゴールのポストをかすめてネットを揺らした。
「真帝国学園先制! 佐久間のシュートが円堂を吹き飛ばしたァ!」
「素晴らしいミドルシュートですが、佐久間選手、ピッチに倒れてますねー。何があったのでしょう。あ、今一人で立ち上がりました。大丈夫なようです」
佐久間は息絶え絶えになりながらも、よろよろと自陣に戻って行く。
「うっほほぉ! 素晴らしい!」
不動が道化のようにけたたましい笑い声をあげる。
鬼道は知っていたのだ。皇帝ペンギン一号が禁断の技だと言ったのも実は、強烈なシュートを撃つ代償として自らの足の腱を犠牲にする技だからだ。
「佐久間……、何故!」
鬼道は満身創痍の佐久間に、諭すように訊く。佐久間は鬼道を方を見る。佐久間は大量に汗を掻いており、目は鬼道を見ているようで焦点が定まっていない。
「見たか鬼道! 俺の皇帝ペンギン一号……!」
「二度と撃つんじゃない! あれは禁断の技だ!」
「怖いのか? 俺如きに追い抜かれるのが!」
「違う! わからないのか!? このままでは、……お前のからだは……!」
「敗北に価値はない。勝利のために、俺は何度でも撃つ……!」
「…………佐久間」
佐久間は鬼道の横を通り過ぎていく。鬼道は、心の中で影山を呪う。
「鬼道、どういうことだ? あの技が、禁断の技って……」
円堂がゴールから走って来て、鬼道に訪ねる。
「……あの技は影山零冶が考案したシュート。強力なシュートを撃てるようになる代わりに、無理な姿勢から撃つため筋肉は激痛に悲鳴をあげ、中学生では使用不可能だったため封印したんだ。俺達、帝国学園でも、誰ひとりとして無事にあのシュートを撃てた奴はいない。相当な筋肉の柔軟性と伸び、しなやかさが無いとだめだ。アフリカ系特有のシュートだったんだ、もともとは。あのシュートは体の発達していない中学生では、一試合に二回が限界だ。三回目は…………」
鬼道はそこで黙った。話を聞いていた部員達も、その先は訊かずともなんとなくわかるような気がした。
指先で触れただけの円堂の指の痙攣が止まらない。シュートの威力の高さを物語っている。
「この試合の作戦が決まった。佐久間にボールを渡すな!」
鬼道は部員達に指令を出す。
「その作戦、大賛成だ。目の前でそんな最悪な光景は見たくない」
そう言ったのは一之瀬だ。事故による後遺症でサッカーができない時期があった一之瀬が言うと、説得力がある。「僕も。ディフィンスに入るよ」
吹雪は自陣に深く引いて、DFの位置に入った。
(ありがとう、一之瀬、吹雪。佐久間は頼んだぞ……!)
雷門中0−1真帝国学園
「先制された雷門! 反撃開始だァ! 鬼道のドリブルであがって行くゥ!」
鬼道はエイリアとの戦いの中で培ったスピードをドリブルに活かし、ドリブルでラインを押し上げる。
ゴーグルを通した鬼道の目に、相手DFと相手DFの隙間にわずかに空いたスペースが映った。と言っても本来隙間などほとんどないが、ボール一個通せるスペースがあれば空中でも地面でもどこにでも鬼道はパスが出せる。宇宙人との戦いの中で影が薄くなっているが、彼は世界的に有望視されている才能を持った選手なのだ。
華麗なフェイントで相手のディフィンスをかわし、次に鬼道は広い視野でピッチ全体を見回す。前線には、染岡と一之瀬がいる。
明らかに二人は飛びだしのタイミングを待っていた。あとは、鬼道のパスが出れば。という段階までことは進んでいた。
(威力は落ちるが三人で協力して撃つことで負担を減らし、使える技にしたのが二号!)
「思い出せ! これが本当の皇帝ペンギンだ!」
鬼道が指笛を吹き、ボールを前に出す。
おそらくこれはトリックプレーだろう。指笛を吹くことで、審判が笛を鳴らしてプレーを止めたと見せかけ、相手の動きを止めるという頭脳派の鬼道らしいプレーだ。
出したのは低く浮いたストレートボールだスピードがある。ミスキックかと思われたそのボールは相手DF二人がぎりぎり足を伸ばしても届かない隙間を縫うようにして通り、それを両側から挟むように一之瀬と染岡が同時に飛び出し、ミスキックかと思われたボールは最高のスルーパスという形になった。
「皇帝ペンギン二号!」
そう言いながら、一之瀬と染岡は斜め後ろからのパスを同時にボレーで蹴った。ほとんどボールの軌道を見ていない。そこにパスが来ることを信じて、ただ二人は足を振りぬいただけなのである。二人がかけ声として「皇帝ペンギン二号!」と言うのは単にボレーシュートのタイミングを合わせるためだ。
源田がシュートに反応し、獣のような素早い動きでボールをキャッチした。
「あ、あれは……!」
と鬼道が言った瞬間、源田は佐久間と同じように苦痛の表情を浮かべた後、ボールを抱えたまま地面に倒れた。
「鬼道、ひょっとして! 今の技も……!?」
染岡の問いに、「ああ、『ビースト・ファング』だ」と鬼道は短く答える。同様に、体への負担が大きいのだという。
「源田にあの技を出させるな!」
鬼道は怒鳴るように全体に言った。雷門の部員達はみな一様にうなずく。つまり、シュートを撃つな、ということなのだろうが、一体シュートを撃たずにどう勝とうというのか。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) 前篇 ( No.73 )
- 日時: 2011/12/06 01:30
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
雷門中0−1真帝国学園
「先制された雷門! 反撃開始だァ! 鬼道のドリブルであがって行くゥ!」
鬼道はエイリアとの戦いの中で培ったスピードをドリブルに活かし、ドリブルでラインを押し上げる。
ゴーグルを通した鬼道の目に、相手DFと相手DFの隙間にわずかに空いたスペースが映った。と言っても本来隙間などほとんどないが、ボール一個通せるスペースがあれば空中でも地面でもどこにでも鬼道はパスが出せる。宇宙人との戦いの中で影が薄くなっているが、彼は世界的に有望視されている才能を持った選手なのだ。
華麗なフェイントで相手のディフィンスをかわし、次に鬼道は広い視野でピッチ全体を見回す。前線には、染岡と一之瀬がいる。
明らかに二人は飛びだしのタイミングを待っていた。あとは、鬼道のパスが出れば。という段階までことは進んでいた。
(威力は落ちるが三人で協力して撃つことで負担を減らし、使える技にしたのが二号!)
「思い出せ! これが本当の皇帝ペンギンだ!」
鬼道が口笛を吹き、ボールを前に出す。出したのは低く浮いたストレートボールだ。スピードがある。ミスキックかと思われたそのボールは相手DF二人がぎりぎり足を伸ばしても届かない隙間を縫うようにして通り、それを両側から挟むように一之瀬と染岡が同時に飛び出し、ミスキックかと思われたボールは最高のスルーパスという形になった。
「皇帝ペンギン二号!」
そう言いながら、一之瀬と染岡は斜め後ろからのパスを同時にボレーで蹴った。ほとんどボールの軌道を見ていない。そこにパスが来ることを信じて、ただ二人は足を振りぬいただけなのである。二人がかけ声として「皇帝ペンギン二号!」と言うのは単にボレーシュートのタイミングを合わせるためだ。
源田がシュートに反応し、獣のような素早い動きでボールをキャッチした。
「あ、あれは……!」
と鬼道が言った瞬間、源田は佐久間と同じように苦痛の表情を浮かべた後、ボールを抱えたまま地面に倒れた。
「鬼道、ひょっとして! 今の技も……!?」
染岡の問いに、「ああ、『ビースト・ファング』だ」と鬼道は短く答える。同様に、体への負担が大きいのだという。
「源田にあの技を出させるな!」
鬼道は怒鳴るように全体に言った。雷門の部員達はみな一様にうなずく。つまり、シュートを撃つな、ということなのだろうが、一体シュートを撃たずにどう勝とうというのか。
不動が佐久間にロングパスを出す。佐久間のマークについていた吹雪が佐久間を抑え、一之瀬がカットする。
「渡す訳にはいかないよ!」
一之瀬は取ったボールを、すかさず前線の染岡にパスする。
染岡は攻めるためにドリブルを試みるが、すぐに源田のことを思い出してその場に止まり、パスの出しどころを探す。風丸が左横にいたので染岡はパスを出すが、雷門側が源田の身を案じてシュートを撃たないことを知っている真帝国のMFがパスを読んでおりあっさりと奪われる。
パスから、不動が前に持ち込んでシュートを放つ。佐久間に守備が固まっていたため容易にシュートを許してしまう。
円堂が弾いたボールを土門がクリアする。
ボールが外に出て、プレーは一旦止まる。
「目を覚ませ! 自分のからだを犠牲にした勝利に何の価値がある!? 佐久間、源田!」
鬼道の必死の説得むなしく、二人には鬼道の言葉など耳にも入っていないようだった。
「説得なんて無理無理。奴らは心から勝利を望んでいる。……勝ちたいと願ってるんだ」
不動が鬼道の前に、ボールを持って現れる。不動はそのボールをつま先でちょんと出し、小馬鹿にしたように鬼道にパスをだした。
「シュートしてみろよ」
この挑発に、普段冷静な鬼道もかっとなって不動を睨みつけ、そして不動に向かってボールを思い切り蹴った。
不動はそれをやんわりと胸トラップでいなす。
「不動軽くトラップゥ! 真帝国学園キャプテンの不動、テクニックもあるゥ!」
鬼道が不動に近づく。
完全な一対一の場面だ。二人は向かい合う。
不動は左に体重をかけ、鬼道がそれに反応して右足を出そうとしたところで鮮やかな上体フェイントで右にかわす。
頭に血が昇っていてもさすが鬼道と言ったところだろう、抜かれてもすぐに追いつき、チャージで相手の動きを止めてからまた不動の前に立ちはだかる。今度は、鬼道も集中していて簡単には勝負がつかず、不動は何度もフェイントを入れるが、お互いの左右の足の重心を気にしながら鬼道ゴーグルはボールだけを見ている。二人が今、二人だけの世界に入っていることは、誰にでも予想できた。
しかしそこで、前半終了を告げる主審の笛が吹かれる。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) 前篇 ( No.74 )
- 日時: 2011/12/07 19:34
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
「二人のためには、試合を中止した方がいいのかな……」
ハーフタイム。マネージャーの木野が呟く。「そうだな、そうすれば、禁断の技をつかわさせずに済む!」と、土門は賛成する。しかしそこで瞳子の指示が入る。
「試合中止は認めないわよ。後半は私の指示に従ってもらうわ。吹雪君はFWに戻って。みんな、勝つためのプレーをしなさい」
「それじゃあ、佐久間くんたちは……!」
木野の言葉に対して、「これは監督命令よ」と強い意志を表す瞳子。
「私の目的はエイリア学園を倒すこと。この試合にも、負ける訳にはいかない!」
その言葉を最後に、部員達は黙ってしまう。打開策を見いだせず、重苦しい雰囲気のままハーフタイムが終わるのかと思いきや、誰かが、
「俺に任せときな」と唐突に言った。
吹雪だった。その光のように放たれた吹雪の一言が部員たちの心境を変えた。いつアツヤと交代したのか、吹雪の髪は逆立って外にはね、目の色が若干うすくなってたれ目もなくなっている。
「見てな。源田って奴があの技を出す暇もねえくれえ、すげえシュートをぶちかましてやるよ……!」
自信満々な言葉に、他の部員達は吹雪に対して信頼と安心の気持ちを一層強めた。————吹雪なら、やってくれるかもしれない。そういう期待を持たせる心強さが、吹雪の雰囲気にはあった。
「俺も協力するぜ!」
「吹雪……染岡……!」
二人のFWがこんなにも頼もしく見えたことは、鬼道にとって初めてだった。
そして後半開始。
圧倒的なスピードを見せつけ、一人二人と吹雪は次々と相手のディフィンスを置き去りにしていく。やはり、普段の吹雪よりも、アツヤの人格のときの方がスピードがある。
「簡単には行かせねぇよ!」
不動がスライディングで止めに入り、ボールを挟んで吹雪の足と激突する。しかし吹雪の突進力は凄まじく、いつかの染岡のように逆に不動が吹き飛ばされる。
しかしボールはこぼれてしまった。
相手選手がそれを拾って攻守が入れ替わるのかと思いきや、染岡がジャンプし、胸でルーズボールの所有権を掌握した。
「よく拾ったじゃねえか!」と吹雪は横から褒める。「ふっ!」と染岡はかっこうよく笑った。
「攻め上がる染岡、吹雪!」
染岡の前にDF二人がディフィンスに入る。
「撃たせろ!」と不動が怒鳴った。DF二人は不敵な笑みを浮かべ、どうぞシュートを撃ってくださいと言わんばかりに染岡に道を譲る。
何を考えているんだ、と染岡は不動の方を見る。不動はいやらしい顔で笑っていた。これから染岡がどうするのか、モルモットを観察するかのような見下した態度で見物しようというのだろう。彼の性格がいかに腐っていることか。
染岡は不動の思惑通り、どうすればよいのか焦って動きを止めてしまっている。
「ど、どうすりゃ……。……っ!!」
悩む染岡の視界の右隅に偶然、白いマフラーが風になびいて移動しているのが映った。
吹雪が飛び出そうとしているのだ。吹雪の存在を気づかれないように、染岡は白くてちらちら動く物体の位置を把握しておいてから、自分の頭上高くボールを浮かし、一人でシュートの態勢に入った。染岡の必殺シュート、ワイバーンクラッシュだ。
シュートをまさか本当に撃つとは、誰が予想できただろう。不動を含む、そこにいる誰もが目を見張った。
「ボールは源田の……おっとコースが変わった! コースが変わったぁ!」
角馬の実況を聞いてから、部員達は状況を理解できた。ミドルシュートかと思われたボールは大きくカーブして、前線へ走りこんでいた吹雪へのセンタリングになった。ボールのスピードがありすぎるため吹雪が追いつけるかどうかが問題だが、追いつくか追いつかないかぎりぎりのところを狙った染岡自身は、なんの心配もしていなかった。
ロベルト・カルロスからのジダン。
染岡はそれをイメージした。
「なんと! シュートではない、染岡から吹雪へのパスだぁー!!」
「くっ……ビースト———!」
「遅えよ!」
源田はビーストファングを発動しようとするが、それよりも早く吹雪がボールに追いついた。シュートに追い付くという超常現象を吹雪は見せつけた。
「エターナルブリザード!」
吹雪はジャンプして、そのままエターナルブリザードを放つ。
源田は反応できず、シュートは雪嵐のように激しくうねってネットの突き破らんばかりの威力でゴールネットに突き刺さった。
「ゴオォォール!! 源田は反応できない! 雷門追いついたぁーーーー!!!!」
「今の技……! 使えますよ! 名付けて、『[ワイバーン]ブリザード』!」
目金も角馬もゴールに興奮し、はしゃぎまくって声の抑揚がつかなくなっている。
「染岡、ナイスアシストォ!! 吹雪の動きをよく見ていたぁ!」
角馬の言う通り、これは染岡の好プレーというべきだろう。
「俺の動き、よくわかったな……」
吹雪も感心する。染岡は照れるようすはなく、
「いつか負かしてやろうと思って、いつも見てたからな————だいっきらいなお前を」
変に意地を張って口には出さないが、二人はお互いのことを認め合っていた。
「あの二人、厄介だな」
不動が悪魔に近い笑みを浮かべた。口が裂けんばかりの頬のつりあがり様だ。
その不吉な魔の手が、染岡に伸びつつあった。吹雪と染岡がそれを知る由はない。
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