二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- (吹雪物語) 世界への挑戦!編 完結
- 日時: 2016/11/08 00:24
- 名前: しろお (ID: Gu5gxE0Z)
時々URLが光っていますが、アフロディのサイドストーリー以外はyoutubeです。なので音量注意です! 世界編からは、吹雪っぽい曲以外にもサイドストーリーのキャラごとのイメージ曲をつけて遊んだりしてますので、よかったら聞いてみてくだされ
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[イナズマイレブン4 呪われたフィールド]
イナズマイレブンの高校生編。中学生編でスポットの当たらなかったサブキャラクターたちがメインです。主人公は豪炎寺の従兄弟。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22282
[イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー]
不動明王の高校卒業後のエピソード。卒業後海外クラブへ挑戦するための旅費、お金稼ぎの時期の話。こちらもサブキャラクターたちがメイン
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=29765
[吹雪兄弟の事件簿]
吹雪兄弟の子供のころの短編。吹雪好きはぜひ
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22087
[イナズマイレブン×REBORN! 神の復活]
こちらはアフロディのお話です。わりとREBORN好きな方向けですかね。イナズマイレブンGOの世界がメインかもです。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=21867
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- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.13 )
- 日時: 2012/09/27 00:22
- 名前: しろお (ID: kEMak/IT)
第三話 エースストライカーは誰だ!
次の日。
吹雪は雷門中のウェアを着て、白恋のグラウンドへと降りた。瞳子が吹雪に話しかける。
「吹雪君。あなたにはFWをやってもらうわ」
「え? 僕が……FW……」
吹雪自身のポジションはDFである。敦也はFWをやっていたが、今のアツヤは単独プレーで基本どこからでも攻めるのでポジションは無いと言うのが正しい。
瞳子、そして雷門は吹雪のDF能力よりも、FWとしての力を必要としていた。
「不服かしら」
「……いや。問題ありません」
染岡はそれを聞いて鬼のように口を歪める。
(問題は大有りなんだよ!)
雷門イレブンと共に、吹雪は雷門ウェアを着て練習をする。
風丸がドリブルで攻めあがると、吹雪は風丸を止めに走る。
「風になろうよ」
吹雪は一瞬で風丸からボールを奪う。
「すごい。風丸君を、あんな簡単に……」
木野がそう言うのも当たり前である。風丸は以前陸上部に属しており、雷門イレブンの中でも最速を誇っていた。その風丸も反応できないスピードで吹雪はボールを奪ったのだ。
「やっぱり吹雪さんは強力なストライカーというだけでなく、DFでも力を発揮するんですね!」
音無は自慢げに言う。
染岡が苛立ち、
「風丸何やってんだ! 行くぞ!」
と乱暴に言い放つ。風丸は染岡にそう言われたからでなく簡単にボールを取られたのが悔しかったか、必死になって吹雪に追いつこうとする。しかしあと少しのところで追いつかない。無理だと悟ったのか、後ろからスライディングを仕掛けた。
吹雪はボールを浮かして大きくジャンプし、それをかわす。
そしてマフラーを握り、アツヤになる。アツヤは士郎よりも足が速かった。
「いよっしゃあ! うおおお!」
アツヤは唸りながら次々とDFを突破していく。誰もその速さについていけない。
鬼道と一之瀬が吹雪にパスを要求するが、吹雪は構わずドリブルを続ける。
「ちょっと待った!」
染岡が吹雪をどなり、吹雪は急ブレーキをかけたかのようにピタッと止まる。そして髪は垂れ、いつもの吹雪に戻る。染岡はツカツカ歩みよる。
「へ?」
「お前なあ! 一之瀬も鬼道もこっちに回せって声かけてんじゃねえか!」
「だって……。僕いつも、こうしてたし」
「白恋じゃそうでもウチじゃそんなの通用しねえんだよ! お前は雷門イレブンに入ったんだ、俺達のやり方にあわせろ!」
「そんな事急に言われても……。そういう……汗臭いの疲れるなあ」
吹雪が肩を落とす。染岡は何を勘違いしたのか、
「誰が臭いって!? 誰が!」
とどなる。一之瀬と土門が染岡をなだめながら押える。
「まあまあまあ」
「落ち着け染岡」
「とは言え、世界トップレベルのチームの中には、個人技をいかしたところもあります。吹雪君を中心としている白恋中は、まさしくそういうタイプなのでは?」
眼鏡を指で支えながら、雷門のウンチク担当、目金欠流が言う。
感心するように、隣の壁山と塔子は口をポカンと開けている。
「ウチはウチだ! 白恋じゃねえ!」
染岡は大きく怒鳴る。その声の大きさに圧倒されて、壁山と目金は殴られるんじゃないかとドキッとして身構えた。
「どんなにスピードがあろうと、こんな自分勝手な奴と一緒にやれるか! ……無理なんだよ……! こいつに豪炎寺の代わりなんて!」
「それはどうかな?」
染岡は動きを止めて、風丸の方を見る。風丸はうつむいて喋る。
「俺は吹雪に合わせてみるよ。俺にも、吹雪のあのスピードが必要なんだ。エイリア学園からボールを奪うには、あのスピードが無くちゃ駄目なんだ」
「だったら、風になればいいんだよ。おいで……、見せてあげるから」
吹雪が笑顔で声を出し、回れ右をして森に向かって歩き出した。何がなんだかよくわからずに雷門イレブンもついて行く。
森を抜けると、大きな窪みが東京タワーほどの大きなスコップで掘ったかのようにあった。ゲレンデである。
白恋の部員達が、大きな雪の玉を転がして、スタンバイをしている。吹雪はスノーボードとその防具一式を装着して、斜面の上に立つ。雷門のメンバーは何をするのかと興味津々で吹雪を眺める。
「まあ見ていてよ。雪が僕達を風にしてくれるんだ!」
そう言って吹雪は斜面を下り始めた。その勢いで向かいの斜面をすべりのぼり、頂点に達するとボードを地面から離して空中で頭から一回転し、バランスよく着地してまた加速しながら斜面をくだる。
「わあ、速ーい!」
「すごいっすー! かっこいいっすー!」
音無と壁山は絶賛し、他のメンバーも目線を釘付けにして見惚れている。染岡はろくに見ようともせずに、
「ただのスノボーじゃねえか」
と言ってふんと鼻で笑う。しかし誰の耳にも染岡の発言は入らない。
「吹雪君は小さい時からスキー、スノボーが得意だったんだ。走るよりも、雪を滑る方が風を感じるから好きだ、って言ってた」
「風か……」
荒谷の言葉聞いて、風丸は呟く。
「みんなー! よろしく!」
「おー!」
吹雪の合図で、準備していた雪玉を白恋の生徒達がゲレンデに落とす。
雪玉は吹雪よりも早く斜面を転がるが、吹雪は笑顔のまま華麗にボードを操ってぎりぎりのところで疾風のように雪玉をかわしていく。
土門は目をパチパチさせた。
「すげえなあ! あの雪玉のメチャクチャな動きを完璧に見切ってるぜ!」
「吹雪君が言うには、速くなればなるほど感覚が研ぎ澄まされて自分の周りのものがはっきり見えてくるんだって」
「確かに速いよ!」
「この特訓おもしろそう!」
一之瀬と塔子は張り切る。皆吹雪の動きに魅了されて自分達もやる気になっている。
「吹雪さんすごいでやんすねえ」
「ええ……」
やんすの語尾と、毬栗のような髪型、出っ歯、この少年の名は栗松鉄平。雷門のSBである。小柄だが、ガッツなら負けない、と彼は豪語する。
吹雪のかわした雪玉達が目金と栗松のいたところに向かってきているが、目金は吹雪しか見えていないようで雪に気づかず、気づいた栗松も慌てて逃げようとしたが結局雪玉に取り込まれて斜面を転がり坂にぶつかった。
「やんすーー!」
その衝撃で森の木に積もっていた雪が落ちだして、吹雪は雪崩と勘違いしてその場に震えながらうずくまる。
吹雪が急に止まったのに気づいた円堂は、上から声をかける。吹雪は震えながら作り笑いをした。
「大丈夫。ちょ、ちょっと、失敗……」
各自がスノーボードの準備をする。特に張り切っているのは鬼道で、妹に吹雪よりいいところを見せようとする。
「お兄ちゃん、やったことあるの?」
「まあ見ておけ」
と鬼道は音無に格好つけて笑う。昔鬼道が影山という人物に面倒を見てもらっていた時、似たような特訓をやらされていたようであった。
「いつから、この特訓を?」
鬼道が吹雪に訪ねる。吹雪は遠いところを見つめ、
「小さい頃から遊んでいるうちに、自然とね……」
と言った。北が峰の坂を、敦也と一緒にボードで下った時の記憶がフラッシュバックする。
敦也はそのビジョンの中で吹雪より先のところにいて、どんどん吹雪から離れていった。姿が見えなくなると、吹雪は現実に戻る。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.14 )
- 日時: 2012/09/27 00:41
- 名前: しろお (ID: kEMak/IT)
日が暮れると全員寮に戻り、ランチルームまで歩いた。
「いててて……風になるのって、大変なんだなあ」
円堂が肩を痛そうに押える。
「しっかりしなよ。あたしはだんだんコツがわかってきたよ!」
「うん。塔子さん、筋がいいよ!」
「問題はバランスの取り方だ」
「ああ。スピードに乗る感覚を掴めば、一気に世界が変わると思うぜ」
「そうそう。その感覚わかる!」
土門と鬼道と塔子はが語り合う後ろで、染岡は風丸に少し落ち込んでいる風丸に声をかける。
「どうだった? 風丸」
「まだまだ、体を思うように動かせない。…………———エイリア学園が来るまでに、……マスターしたいよ」
そう言って風丸は視線を過ぎていく床に落とす。染岡はなんとか風丸を励まそうと何か考えた。
が、すぐにやめた。染岡自身、特訓していないのに励ますのはなんだか悪い気がしたのだ。特訓しようかすまいか、悩みどころではあった。
染岡は本当は仲間思いのいい奴なのだが、考え方が保守的なのだろう、新参者には手厳しい。
ランチルームに入った。
一人分の机の上には少しの白飯、コーンスープ、そして人参の方が占める面積の多い皿におまけのようなミニハンバーグがちょこんとのっている。
瞳子が考案したスピードや体力面を考慮したカロリー配分とメニューだが、あまりの少なさに部員達は肩を落とす。吹雪は基本的に小食なので笑顔で食べ始める。
「隣いいですか? 私のスープ、あげます。私が作ったんですよ!」
音無が自慢げにそう言いながら吹雪の隣に座ってこっそり吹雪のお盆に自分のスープをあげた。
「ありがとう! でも僕はこれで足りるから、音無さんもマネージャーの仕事頑張っているし食べなよ」
「そう、そうですか……。よ、余計なお世話でしたね……」
「吹雪、黙ってもらっておけ」
鬼道が腕を組んで吹雪に命令を出す。吹雪も困って「え?」としか言えなかったが、音無がスープの皿を哀愁ただよう手で取り戻そうとすると吹雪を睨む目の鋭さが鬼道のゴーグルの奥で増したので吹雪は苦笑いで音無の手を遮った。
「や、やっぱりいただくよ。音無さんが作ったスープだから、きっとおいしいんだろうな。あは、あははは」
音無はそれを聞くと急に元気になって手を合わし、
「本当ですか!? 吹雪さんのために頑張ったんです私」
「そ、そうなんだ? あ、ありがとうね」
吹雪が音無の方を見ながらおいしいおいしいと言って笑顔でスープを飲む姿を見届けて、鬼道は自分も妹の作ったスープを飲み始めた。
(こりゃこれから苦労するな士郎……)
アツヤは吹雪の心の中でそう思うのであった。
次の日の朝、染岡は必死で頑張る風丸を見て少し改心したのか、みんなから遅れを取り戻そうとまだみんなが寝ている時間にゲレンデに降りた。
彼はいつも陰では努力をかかさない。新参者に厳しいが、自分にも厳しい、それが染岡竜吾という男だった。中学生のわりに考えが古びていた。
だが今回は、あんなに嫌っておきながら、吹雪の提案する特訓に参加するのは癪なだけであろう。
しかし染岡よりも先にいた者がいた。吹雪である。 吹雪はみんなが楽しく滑れるように、斜面を雪で固めたりしてゲレンデを整理してくれていた。染岡は内心吹雪のことをこれで見直したが、意地を張って声をかけずに防具をつけようとした。
吹雪は染岡に気づかずにせっせと手作業で雪を固めていく。染岡は準備をし終わると、吹雪が整頓したゲレンデをふらふらとゆっくりすべりおりた。経験も無いため昨日の吹雪のすべりを見様見真似で滑るが、平らなところで顔から派手にこけた。
彼は努力型の人間でもある。
吹雪はその音で染岡に気づき、近くに走り寄った。
「大丈夫かい?」
と吹雪は手を出す。
「ああ、悪い……って吹雪、お前かよ」
今初めて、吹雪がいたことに気づいたかのような口ぶりだった。
染岡が言い始めたときには吹雪が染岡の手をしっかりと握っていた。染岡は恥ずかしがってすぐに手を離そうと引っ張ったが、吹雪は笑顔のまま離さなかった。
「やっと握手できたね」
「ちっ。いいから離せよ」
吹雪は言われてパッと手を離す。
「俺がこれから練習するから、邪魔だからもう寮に帰れ」
と染岡は乱暴に命令する。
「でもまだ雪玉を……」
「いいから帰れってんだ!」
「しょうがないなあ。わかったよ」
と吹雪はしょぼしょぼと帰っていく。染岡は悪びれる様子も無くまた滑っては転んでを繰り返していた。七滑り八転びである。
吹雪は帰らずに、木の影からそれを眺めていた。吹雪は何度も転ぶ染岡を不憫に思い、何かアドバイスをと思ったが、誰かの気配を感じて木陰に隠れた。
バンダナの少年、そしてポニーテールの少年ふたりだ。
(風丸くんと……円堂くんか)
風丸と円堂も、朝早くから練習しに来たようである。
吹雪は安心して三人の様子を見ていた。しかしまた、過去の光景が蘇る。まだ小さい頃、小さな雪玉を投げ合っていた時の……。
『それっ』
『やったなー!』
寮に戻ると、朝ごはんのいい匂いがした。
吹雪はおはようと挨拶をして、食堂に入る。すでに何人か箸をすすめている。
昨日吹雪の座っていた席の隣には、音無がいる。
「おはようございます吹雪さん! 朝起こしに行ったのにいなかったですけど、どこか行ってたんですか?」
「ちょっと外にね。わ、なんだか朝は豪華だね」
「はい! これも監督の指示です! 北海道の鮭はおいしいですねー!」
音無はガツガツご飯と一緒に鮭を食べる。音無は鬼道よりも食欲旺盛である。兄と似て太らない性質なのをいいことに本当によく食べる。
吹雪は北海道を誉められて嬉しくなり、調子に乗って自分の分の鮭を音無に分けてあげた。
「お食べよ。昨日のお返しさ」
「いいんですか!? わあー、いただきます。おいしいー!」
「ふふ。おいしそうに食べるね」
そのやりとりを見て鬼道は満足して口だけ笑い、味噌汁を飲んだ。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.15 )
- 日時: 2011/08/16 11:25
- 名前: しろお (ID: RADHLI//)
雷門のスノボ特訓は続く。昨日より全員格段に動きがよくなっていた。染岡もなかなか順応してきている。ゲレンデの上で吹雪が皆の慣れの速さに驚いていると、染岡が下から滑ってやってきた。そして吹雪を見ながら怪しげに微笑む。
「吹雪、勝負しようぜ。俺の特訓の成果をお前相手に試そうと思ってな!」
そこにいた皆がなんだなんだと二人の方を見る。塔子がそれを見て、
「いや染岡、吹雪が考えた特訓なんだけど」
と言ったが、染岡の耳には入らない。
「つまり、どっちが雷門のエースストライカーか……決めよう、ってことかな」
「ふん。そう思ってくれていいぜ」
そして太陽が山に隠れる頃、フィールドには染岡と吹雪二人だけがいる。他の面子は外から勝負を見物しようとしていた。
「始め!」
円堂の掛け声と共に、吹雪と染岡が中央のボールに走り出す。ボールを持って先にゴールした方が勝ち、という勝負である。吹雪が持ち前のスピードでボールを先に持つ、が染岡も吹雪のスピードになんとか食らいついて吹雪とゴールの前に立つ。
「雷門のストライカーを、なめんなあ!」
染岡が果敢にボールを奪おうとする。吹雪はすばやくドリブルで抜こうとするが、染岡は特訓で吹雪のスピードにある程度追いつけるようになっていた。吹雪は驚いて一瞬動きが悪くなり、染岡はアイスグランドほどとは行かないが見事にボールを奪った。態勢を崩して吹雪は腰を地面にうつ。
「どうだ!」
「やるね……」
吹雪はマフラーを握る。すぐさま態勢を整えると、狼のような低い姿勢のジャンプですぐに染岡に並ぶ。
「やるじゃねえか! 正直舐めてたぜ。こうじゃなきゃ面白くねえ!」
染岡はアツヤの脅威の脚力に焦りすぐにシュートを撃ってしまい、コントロールの乱れたシュートはゴールポストに当たって跳ね返った。染岡はすぐにボールの落下地点へと走るが、アツヤの動きには染岡もついていけない。
「もらったあ!」
吹雪はシュートの態勢に入る。染岡は負けを確信しそうになったがあきらめずにボールに足を伸ばす。
「行かせねえぞ!」
「へっ」
吹雪は染岡が前に立ってもシュートを撃とうとした。エターナルブリザードで染岡ごとゴールに叩き込むつもりだったが、ゴールの前に茶色い小動物がいた。リスである。
(リスがいる! アツヤ撃っちゃ駄目だ! リスは巻き込まれたら死んじゃうよ!)
(わかってる! くそっ)
吹雪の体から急に力が抜けて、ボールと足が少し触れた時で止まった。そして、染岡が吹雪からボールを奪う。吹雪はその場に尻餅をついてしまったが、リスが無事に逃げているのを見て安心する。
染岡がそのままゴールをした。
「見たか! 吹雪!」
染岡は何も知らずに得意げに親指を立てる。それを尻餅をついたまま見た吹雪はあららと言った感じである。勝った染岡の周りに、雷門のメンバーが誉めに集まる。
「これで、豪炎寺の分もやれる!」
とガッツポーズを作って感激する染岡を見て吹雪は目を閉じてふふと嬉しそうに笑う。
「今日は僕の負けだね……」
(ふん。まぐれだよ、まぐれ!)
吹雪はリスが木の上からこっちを申し訳なさそうに見ているのに気づくと、またほっと安心した。
染岡の勝利を雷門イレブンがまるで奇跡のように褒め称えるのも束の間、急にあたりは暗くなる。空には、黒い円盤が太陽の前にあった。
「とうとう来たか……!」
円盤は校庭に着陸し、中からエイリア学園のキャプテンレーゼとジェミニストームの面々が出てきた。
吹雪にただ一人、赤縁の眼鏡を頭にかけた紺に近い黒髪の少女が心配して吹雪の元へ行った。
「大丈夫ですか吹雪さん……」と吹雪の背中に手を当てる。
「アハハ……。負けちゃったよ」
吹雪は音無の肩を借りて立ち上がる。
「最後、吹雪さんらしく無かったですよ。何か、あったんですか?」
「ありがと。でも、なんにもないよ。染岡君がうまくなっていたのさ」
吹雪は笑顔を作り、リスの件は言わなかった。アツヤは吹雪の中で言い訳したそうにしていたが、こういう時何も言い訳しないのが吹雪の良さである。
いつのまにか校庭に巨大な円盤があることに吹雪と音無が気づく。
「あれは……エイリア学園!?」
「……あれが。本当に宇宙人みたいな格好をしてるんだね」
「呑気に言ってる場合じゃありませんよ! 私この時のため吹雪さんに特性のスポーツドリンク作ったから、持ってきますね!」
そう言って音無は校舎の方へ向かう。吹雪も走って、円盤の近くに行った。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.16 )
- 日時: 2012/09/27 00:48
- 名前: しろお (ID: kEMak/IT)
第四話 決戦! エイリアと吹雪
国中の放送局、報道陣が白恋グラウンドの周りに集まる。北海道の住民も応援、野次馬に駆けつけていた。
荒谷が悲しそうな目で吹雪に問いかける。
「白恋中、こわされちゃうの?」
「大丈夫。白恋中は、僕が守る」
吹雪は心強い笑顔を荒谷に送ってみせる。
「吹雪。頑張ろうぜ!」
そういう円堂の目には気合があふれている。
雷門はエイリアと戦うのはこれが三度目で、一回目は雷門中を壊され、リベンジした二回目も負けて近所の中学傘美野も破壊されている。今度こそは負けられない。といった気迫が雷門の選手達から感じられる。
「エターナルブリザードで、奴らをバシバシぶっとばして欲しいでやんす!」
エターナルブリザードの利用価値を栗松は勘違いしているようである。ボールは元来、人をぶっとばすものではない。
「うん! 宇宙人なんかに負けないよ」
「吹雪君。あなたCBに入って。DFに専念するのよ。絶対に前線へ上がらないで。エターナルブリザードは、封印してもらいます」
瞳子の指示を聞いて、円堂達は驚きの色を隠せずにその場にずっこける。
染岡もその指示には疑問を抱いたようである。吹雪はただ「はい」と言って頷いた。
「何故です!? 吹雪のスピードを活かした攻撃、それが奴らへの対抗策でしょう!」
「意見は聞いてないわ」
一之瀬の抗議を聞かずに、瞳子はベンチに戻る。
何か意図があるのだろうと吹雪は自分に納得させ、フィールドへ向かった。円陣を組んで、全員で気合を入れる。
「さあ両チーム共気合は十分! 天は人類に味方するのか、それとも見放すのか、運命の一戦間も無くキックオフ!」
どこからともなく、角間が現れる。雷門の試合の実況担当はよくこの角間が行っているが、どこから出没するのかは不明である。ただ雷門の試合が近くなると、どこからともなく颯爽と登場し、実況をし始める。
吹雪はマフラーを閉めなおし、試合開始の笛を待つ。音無はベンチで雷門の勝利を祈っている。
白恋の部員達が、次々と吹雪を応援した。吹雪はそれに励まされ、円堂に気合十分だと伝えた。
「さあ、風になろう!」
吹雪の声がさわやかに響いた。笑顔が、寒さをも忘れさせる。
「よし皆! ファイトだ!」
キャプテンの円堂が最後に締める。部員達もオーッと言ってそれぞれのポジションに向かう。
そして笛は吹かれ、鬼道がすぐ染岡にパスをする。
レーゼは余裕でただ立っていたが、染岡は加速してレーゼを抜く。しかしすぐに二人がかりのディフィンスで止められる。
「おおっ染岡がレーゼをかわしたあ! ジェミニストームは二人掛りでボールを奪う。序盤から激しいボールの奪い合いだあ!」
パスカットにパスカット、とりつとられつを繰り返すエイリアと雷門の両者。
二回目の時より、格段に動きが良くなっている。雷門の選手達はそう感じていた。
風丸は鬼道とのアイコンタクトで、相手のパスを見事にカットするプレーをみせた。
「おおっと風丸がカットお! これは読んでいたのか!?」
よし、と風丸が嬉しそうに笑う。
「風に、なれたね」
吹雪はそれを見て言った。そして順調に雷門はパスを回して攻め上がり、風丸のパスを受けて染岡が空いたスペースをドリブルで駆け抜ける。
「ドラゴンクラッシュ!」
染岡は強烈なシュートを放った。しかしキーパーの大きな手の平に、吸い込まれるように止められてしまう。
カウンターを食らい、レーゼが一気に相手DF陣まで攻める。
雷門陣営はレーゼのドリブルの前に圧倒されてしまう。最終ラインに、吹雪が立っている。
レーゼはこのひょろくて弱そうな少年を、余裕でかわせると思っただろう。だが、そうはならなかった。
「———アイスグランド」
吹雪は疾風華麗な動きでボールをレーゼから奪う。
「吹雪が阻止したあ! なんという速さだあ!」
相変わらず角馬の実況は好調である。音無は大きくガッツポーズを作る。白恋の応援も熱を上げて雷門の士気も上がるが、染岡は自分より吹雪が目立っているのに苛立つ。
激しい攻防は続くが、相手の攻撃の芽を吹雪がアイスグランドでことごとく潰していった。
「すごいぞ吹雪のハイスピードディフィンス! ジェミニに一本もシュートを撃たせない! さあこの状態を打破するのはどっちだあ!?」
ジェミニは相手陣営に持ち込むのは不可能と考え、ロングシュートの陣形を作る。
吹雪は三人がかりでマークされ、ボールを阻みに行けない。
空いたスペース。レーゼがそこで、地面を削りそうなまでに強力なロングシュートを放ち、円堂の横をすりぬけネットを揺らした。
雷門は相手に先制ゴールを許してしまった。しかも、ここで前半が終わる。
前半終了間際の失点は後半に響く。雷門はここからどう動くのか。
吹雪は負けていても、喜びと期待を抑えることができずつい頬をゆるくしてしまう。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.17 )
- 日時: 2011/08/17 17:59
- 名前: しろお (ID: RADHLI//)
選手達はそれぞれのベンチに集まる。雷門イレブンに水分補給をさせながら、作戦を瞳子が作る。
「吹雪君。シュートは解禁よ。後半はFWにあがって」
「ほえ?」
「点を取りに行くわ」
「でも、ディフィンスはどうするんでやんす?」
栗松が瞳子に訪ねる。鬼道が代弁して、
「心配するな。皆、相手のスピードについてきている」
と言った。
「わかったのね?」
瞳子は意味ありげに鬼道に言う。
理解できない音無が、鬼道に訊く。
「どういうことお兄ちゃん?」
「ええ。俺達はスピードを上げる特訓をしたが、実際に奴らのスピードに慣れるのには特訓と同じで時間がかかる。だから前半は、守備の人数を増やした」
「なるほど! 失点のリスクを減らして……!」
「奴らのスピードを把握するためか……」
風丸と土門は納得の行く様に自分で付け足す。
「最初から行ってくれればいいのに……」
音無が瞳子を見て呟く。瞳子は聞こえているのかいないのか、ただ目を閉じている。
「答えを知りたければ、汗をかけばいいんだ!」
円堂が音無を含む全員に自信満々で言い聞かせた。瞳子もそれを聞いて微笑む。円堂は吹雪に体を向ける。
「吹雪。どんどんゴールを狙っていけ!」
「うん。やってみるよ」
染岡は吹雪とのツートップに緊張しながら、自分を落ち着かせるために「ふん」と鼻息を荒げた。
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