二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- (吹雪物語) 世界への挑戦!編 完結
- 日時: 2016/11/08 00:24
- 名前: しろお (ID: Gu5gxE0Z)
時々URLが光っていますが、アフロディのサイドストーリー以外はyoutubeです。なので音量注意です! 世界編からは、吹雪っぽい曲以外にもサイドストーリーのキャラごとのイメージ曲をつけて遊んだりしてますので、よかったら聞いてみてくだされ
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[イナズマイレブン4 呪われたフィールド]
イナズマイレブンの高校生編。中学生編でスポットの当たらなかったサブキャラクターたちがメインです。主人公は豪炎寺の従兄弟。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22282
[イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー]
不動明王の高校卒業後のエピソード。卒業後海外クラブへ挑戦するための旅費、お金稼ぎの時期の話。こちらもサブキャラクターたちがメイン
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[吹雪兄弟の事件簿]
吹雪兄弟の子供のころの短編。吹雪好きはぜひ
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[イナズマイレブン×REBORN! 神の復活]
こちらはアフロディのお話です。わりとREBORN好きな方向けですかね。イナズマイレブンGOの世界がメインかもです。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=21867
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- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.33 )
- 日時: 2011/11/04 17:23
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
「なるほど。お話は良くわかりました」
副部長の影田が言う。おでこの中央ににきびができているが、顔立ちは整っている。
「じゃあ、俺たちと一緒に戦ってくれるんだな!?」
円堂は声を弾ませる。しかしその答えは期待に反した。
「いいえ。私たちは、戦うつもりはありません」
「戦うつもりがない?」
風丸は念を押して聞く。
「はい。私たちがサッカーをしているのは、あくまで心と体を鍛えるため。争うためではないのです。彼らには、私たちに戦う意思のないことを話して、おひきとりいただきます」
淡々と言う副部長に対し、染岡がいきり立つ。
「お、おい! お前ら話聞いてたのかよ! そんな話が通じる相手じゃねえって言ってんだろ!」
「それはあなたの心に邪念があるからです」
「じゃ、邪念!?」
「心を無にして語りかければ、伝わらぬことはありません」
「な、なんだよこいつら……」
流石の染岡が彼らにはたじたじである。
「では、これで失礼させていただきます。修行の時間ですので」
慢遊寺の部員達は胸の前で右の拳を左の掌に押し付け、一礼して去っていった。
しばらく唖然としていた部員達だったが、円堂がはっと我に返る。
「お、おい! ちょっと待てよ!」
円堂の声むなしく、慢遊寺の部員達はすたすたと道場から出て行く。
「こ、こういうの、馬の耳に念仏っていうんだっけ? あはは」
吹雪は場を和ませようとして言ったのだが、逆に辺りは静まり返った。
「軽い捻挫よ。でもしばらくサッカーは無理ね」
キャラバンの中で、マネージャーの木野が、目金のすねにコールドスプレーをかけながら言う。その姿を、申し訳なさそうに体を精一杯縮ませて、椅子の陰から壁山が見守っている。
どうやらさきほどのワックス集団転倒事件のとき、壁山の下敷きになった目金が足を負傷させたようだ。
慢遊寺の部員達に話が通じないので、一度雷門一同は出なおすことにした。慢遊寺の敷地内の空き地での寝泊まりの許可がとれたことがせめてもの救いだった。
「見てみてー! こんなに身が残ったの初めて!」
夏未がジャガイモとピーラ—を手にして言う。キャラバンのトランクには内蔵キッチンセットがあり、しかも材料があればフランス料理のフルコースだって作れるほどしっかりと設備が整っている。雷門校長がこのキャラバンを特注したわけだが、なんとも便利なものである。お嬢様である夏未は料理の経験がとぼしく、「こんなに身が残った」と言っても、
最初に拳ほどあったジャガイモが、今では団子一粒くらいの大きさになっている。ピーラ—をどう使えばこうなるのか、疑問である。設備はあるが、夏未の料理の勉強も兼ねてカレーなどの簡単な料理ばかり作っている。
しかしそれでも料理の腕は伸びているようであり、
「おお、いいね!」と古株さんはお世辞ではなく心から言った。
(食べやすそうだ、とは口が裂けても言えん)
同時にそうも心から思っていた。
そんなキャラバンの横で、円堂、風丸、一之瀬、塔子、染岡、鬼道が談義をしている。
「で、どうする?」
風丸が口を開く。「どうするっていっても、慢遊寺があれじゃあな」と染岡が落胆した声で言う。
「全然分かってないんだもんなー!」
塔子も落ち込んでいる。
「考えても仕方ないさ! 俺たちは俺たちで、今できることをするだけだ!」
円堂だけは相変わらず明るい調子で言う。
「できること?」
一之瀬の質問に、風丸が答える。
「特訓、だな?」
「ああ! 相手はエイリア学園の1stランクチーム! こっちももっと特訓して、強くなんないとな!」
円堂の言葉に、おう、と風丸達も合わせて意気込む。
「そうと決れば、早速練習場所を探そう!」
一之瀬の提案に、一同は大賛成する。
「練習場所ならあるよ」
談義していた部員達は、吹雪の声がした方を見る。石段のときとはまた違う女の子二人に挟まれていた。
「この向こうに川があって、その河川敷でならサッカーできるって。ね。また何かあったらよろしくねっ」
吹雪が二人に笑顔を振りまく。悩殺された二人は夢見心地ではーいとまどろんだ声で返事をする。
またもや部員たちの苦笑いを買うこととなった。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.34 )
- 日時: 2011/12/02 00:20
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
夕方、部員達は河川敷で練習を始めた。
鬼道が、長旅の疲れを考慮し、早めに練習を切り上げた。吹雪情報に寄ると、近くに日帰り温泉があるらしい。
気前のいいおじさんが仕切っており、エイリアと戦っているという事情を話したら、料金を半額にしてくれた。
疲れているときに長風呂は良くないと、またもや鬼道が早めに切り上げた。風丸なんかは髪が長いため頭を洗うのに女子並みに時間がかかり、湯に浸かることができなかった。
「ぷはあーうめえ!」
土門が唇を白くさせながら牛乳を片手に、思わず息を洩らす。
キャラバンに向かう途中で、舞子さんとおしゃべりをしていた吹雪は、いつのまにか円堂達を見失っていた。
「あ、あれ!? 置いていかれちゃったのかな」
とりあえずさっきの山を目指すことに決め、吹雪は足を進める。
しばらくして山についたが、石段が見当たらない。だんだん暗くなって日も山の陰に沈み始めており、寺の姿も確認できない。
「まずいなあ……」
とにかく同じ山なんだから歩いていればつくだろう、と思って吹雪は比較的木や竹の少ない斜面を登り始める。
しかしなかなかつかない。道が平たんになってきた。
それにしても、静かである。鳥のさえずりも聞こえない。風で葉が揺れる音も、しない。吹雪の周りだけ音の無い静寂に包まれている。
かと思うと、鳥が一斉にざわめき出して山から飛び出て行った。
吹雪は寒気に襲われた。
北海道の寒さではない、内からの寒さ、恐怖、恐れの感情、吹雪の中の何かが怯えていた。
「くっ……! な、なに、これ……」
どこからか陽気に歌を謡っている。とても古めかしい歌だ。吹雪の聞いたことのないリズム、歌というよりはまるでお経のようだった。
「て、天狗……?」
吹雪はそんな気がした。京都の山には天狗が住むといわれている。
(天狗かどうか、俺が確かめてやる!)
(馬鹿! やめろアツヤ!)
アツヤは落ちていた石を謡の聞こえる方へ放った。
鋭い金属温が響く。
そして、ぴたっと謡いが止まった。
「なっ。何が起きたんだ!?」
「そこにいるのは、誰じゃ」
低く、かつ透き通った声がする。まさか本当に、と思うほどの迫力に溢れた声だった。
(駄目だアツヤ、挑発したら!)
「くっ、ぼ、僕は……、今は雷門中にいる、吹雪士郎と言います。あなたは、誰ですか……?」
「なに。雷門中とな」
急に声の調子が変わり、しわがれたおじいさんの声になる。
「道に迷うたか。わしゃ、慢遊寺中サッカー部の監督やってるもんじゃ。どれ、案内してやろう」
ふっと吹雪の体から寒気が抜け、辺りもまた静まり返った。
(兄貴、こいつ、ただもんじゃないぜ)
アツヤの声がした。吹雪は返事をせずただ目の前の老人を見つめる。
老人は気にせずにしげみをかきわけて進んでいく。吹雪も黙ってそれについていく。
「また明日ここへ来るといい。今度は得物を持ってこい」
「え?」
いつのまにか老人の姿は消えていた。
目の前はすでに慢遊寺だった。門をくぐって空き地へ向かうと、部員達が吹雪を探しているようだった。
「あ、吹雪いたぞ!」
土門が声をあげる。
「吹雪さんどこ言ってたんすか! 腹ペコで死にそうでやんす!」
「どうせ、女の子といちゃいちゃしてたに決ってるっす!」
「ごめんね皆。ちょっと、道に迷ったんだ」
部員達はこころよく迎えた。カレーの香ばしい匂いが、吹雪の鼻をつつく。
不思議な体験のことは、誰にも言わなかった。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.35 )
- 日時: 2011/11/24 16:48
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
「なんか、吹雪さんってちょっと変わってるでやんすよね。たまに一人でぶつぶつなんか言ってるし」
「そうッスか? 確かにかっこいいっすけどね」
「そういうんじゃなくてでやんす! 俺、見ちゃったんでやんすよ! 昨日、温泉で吹雪さんが、自分のマフラーを洗っていたんでやんスが……」
「別に普通じゃないすか? 白いマフラーだから、砂埃がついたら洗うのは大変っす」
「話を聞くでやんす! おいら、そのとき見たんでやんスよ。吹雪さんのマフラーに、血がついてるのを……!」
「血!? ひいええ! 本当っすか!?」
「事件の香りがぷんぷんいたしますねえ……!」
「あ、目金さん。いたんでやんすか。気づかなかったでやんす」
「失礼な! とにかく、吹雪さんは謎が多い人物ですからね。調査の価値はあると思いますよ……!」
「おっ、かっこいいっすね! 刑事みたいっす!」
「なんか話がややこしくなってきたでやんすね……」
三人は用を足し終えると、洗面器で手を洗い、便所を出た。
キャラバンがある空き地からは便所は離れており、暗い夜の寺の脇を通らなければならない。
夜の寺には沈黙がある。音はほとんどなく、風に揺れる葉の音がたまにあるくらいだ。
音の代わりに、夜の寺がかもしだす妖気ただよう夜の霧は起きている人の感覚を刺激する。
「ん!? 今しげみの中に、誰か入っていきましたよ!」
「おれも見えたっす! 人魂みたいだったっすよお……!」
壁山が栗松の後ろに隠れて、体をぶるぶると震わせながら言う。大柄の割に臆病なのとアフロ頭が、彼の特徴だ。
「違うでやんす! 人魂じゃなくて、マフラーでやんすよ! 月の光でマフラーが青白く見えたんでやんす!」
「ということは今のは吹雪君では!? いや、絶対吹雪君です!」
「目金さんって、イケメン嫌いでやんすよね。どう見ても吹雪さんの弱みをにぎろうとしてるようにしか見えないでやんす」
「うるさいうるさいうるさいーい! とにかく追いかけますよ! 同じ宇宙人と戦う仲間として、もっとお互いのことを知るべきですからね!」
そう言って目金は、ケガをしているとは思えないほど機敏な早さで林へ消えていった。
壁山と栗松はしばらく顔を見合わせてどうしようか考えていたが、二人も吹雪のことに興味がないわけではなかったので、考えたあとすぐに野次馬根性で影と目金を追った。
あのおじいさん。ただ者じゃない。
あの声。あの声を聞いただけで、僕の体から汗が噴き出した。
それにしても、あの神秘的な圧迫感と似た感覚。あれを僕は一度どこかで体験している気がする。
心臓が締め付けられて、誰かに操られているような奇妙な感覚。確かあれは僕がまだ小さいときだ。そう。神秘的なんだ。
でも……思い出せない。
草の中をかき分けながら道なき道を進む吹雪の脳裏に、動物のシルエットが横切る。
狼? ……お、思い出せそうだけど、ぼんやりしていて、……だめだ、わからない。何か、とても大事な思い出だったはずなのに、なんでだ……?
そんなことを考えながら、吹雪は道を進んでいく。
好奇心だけで、吹雪は動いていた。
後ろから尾行されていることなど、全く彼は知らない。
(兄貴、ちゃんとリュックサック持ってきたのか)
「ああ……。まさかこんな風に、おばあちゃんのお守りを使うなんて、思わなかったけどね……」
(使うって……。やれやれ、兄貴はお人好しすぎるんだよ。変な人にはついていくなって、教わっただろ? 母ちゃんによ)
「でも、ついていかなかったらずっと道に迷ってたかもしれない。それに……、敦也も、なんだかわくわくするだろ?」
(へへっ、まあな)
吹雪のはるか後方で、目金達がこそこそと木に隠れながら声を殺して喋る。
「ぼそぼそ……(なんか、吹雪さん、独り言言ってるみたいっす)」
「ごしょごしょ……(お守りがどうとか聞こえたでやんす……)」
「こしょこしょ……(やはり気になりますね。引き続き動向を探りましょう)」
三人は尾行を続ける。
そんなことに、やはりまだ吹雪は気づいていない。
「あの金属音。それに得物って言ったら刀だし、なんとなく何が起こるのか予想できるよね」
(来いって言われたから来ちまったが、何が何だかわからないうちに来ちゃったな)
「うん……。剣の修行しても、しょうがないよね……。それにチャンバラなんて、敦也と昔ほうきでやった以来だよ」
(懐かしいな。俺の方が、センス良かったよな)
「あはは、そうだっけ? チャンバラは僕の方が強かったよね?」
(センスは俺の方が良かった!)
「はいはい。あのさ、あのおじいさんから感じた感覚、昔、どこかで同じ感覚がしたのを覚えてない?」
(…………)
「あれ? 敦也?」
「来たか」
あの老人の声が聞こえると、吹雪は足を止めた。よく通る老人の声は緊張のようなものであたりを制している。
木が少なく開けている場所だったが、老人の姿は見えない。
「鳥達がおびえていたのは、何故だかわかるかね。坊主や」
老人とは思えない、低く、鋭い声が林に響く。
栗松達も異変を察知して、やはり木陰から吹雪の様子を見ていた。
「な、なんすかこの。殺気みたいのは……」
「急に寒くなってきましたね……。なんか変な声も聞こえましたし、ポルターガイストじゃないですよね……」
「すごく嫌な予感がするでやんす……」
吹雪はリュックから小太刀を取りだす。
「言われた通り、持ってきました」
「好奇心でここに来たんだろう? 若いな。なら話は早い。おい、隠れてる奴。お前だ。出てこい」
栗松、並びに壁山、目金に、心臓が止まるくらいの衝撃が、戦慄が、突き抜けた。吹雪が刀のようなものを持っていることについて談義しようとした丁度その時だった。
「ど、どど、何が起きてるんすか!?」
「あわ……あわあわ……でやんす……」
「気づかれたんですよ! 元来た道を戻りましょう! 早く!」
「足がすくんで動かないっすー!」
「早くするでやんす壁山! あっ、目金さん!」
「に、逃げるんじゃないですよ? 怖くなんか、も、も、も、もちろんないですし! あ、あ、あ、せ、戦術的撤退です!」
「逃げないでくださいっす目金さんー!」
目金は脱兎の勢いでその場から逃げた。やはり、ケガをしているとは思えない。
「……よくわかったな。俺が二重人格だって」
声を発したのは吹雪だった。
「目を見ればわかる。単刀直入に言う。どんな理由があろうと、一つの体には一つの魂しか留まれない。いつか、必ずどちらかの魂は追い出される。その坊主のためを考えるなら、早く消えるんだな」
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.36 )
- 日時: 2011/11/25 18:10
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
「……勝手言うんじゃねえ。何も知らねえくせによ。俺たちは二人で一人だ。いつだってそうだった。兄貴は、俺がいないとだめなんだ! 完璧になるには、俺が必要なんだよ!」
「完璧? そんなものは存在せん。そして、お前も存在してはならない。完璧がどうとかではないのじゃ。わかるな?」
「知るか! だったら俺が完璧になればいい話だ! どこだ、出てきやがれ! 俺が怖いのか!」
「笑わせるでない。お前など、ほれ、鳥達も寝ているではないか。何が完璧か。くさいのお」
この一言で、完全に吹雪の頭に血が上った。
「野郎……」
「いいだろう。お前が完璧だということを証明して見せろ。……真剣でな」
さっと吹雪の前に老人が現れる。眼光は月よりも不気味に輝き、道着からは異様な空気が漂う。吹雪はやはり空気の圧力に押しつぶされそうになる。
「し、真剣だと? 俺を人殺しにするつもりか!? あんたは杖じゃないか。いや、まず訳がわからねえ! なんであんたと戦うんだ!? 剣!? あんた何なんだよ!? 意味がわからねえ!」
動揺する吹雪を、老人はふぉっふぉと白ひげを揺らして嘲笑う。
「ほ。簡単に説明してやる。この杖でそちを叩けば、お前は消えてなくなる。わしは人助けとしてやってやるんだ。魂は、元通り一つに戻る。しかしそちはそれをなんとしても避けたい。……どういうことかわかるな?」
「ちっ……。だから知らねえ奴にはついてくなって……、くそ!」
————逃げられるか? いや、こいつの目はヤバい。どこへ逃げても逃げ切れる気がしない。目のついた空気が俺の周りを囲んで、三百六十度から見られてるような感じだ。どうする? っていうか、なんなんだよこいつ本当……。やらなきゃ、消えちまう。兄貴は一人じゃ無理だ。確かに迫力はあるが、でも、どうせ相手はよれよれのじいさんだ。ちょっとだけ、ちょっとだけケガさせて、隙を見て逃げるしかないか……!
吹雪は鞘から刀を抜き、鞘だけリュックの中に入れる。
じっと見つめたまま、吹雪は刀の先を老人に向けた。当然素人だが、伝説のストライカーと言われるほどだ、吹雪の運動神経は並みのものではない。
じわりじわりと吹雪は老人との間合いを詰めていく。老人は構えることなく、杖をついて吹雪の動きを観察している。
小太刀の間合いに入った。と言ってもかなり距離はあるが、吹雪の跳躍力をもっすれば容易に刃は届く。吹雪は刀の持ち方を変え、刃ではない刀の反対側で老人に一太刀与えようと試みたようだ。
それを見て老人は微笑んだ。
「甘いな。殺すつもりでこい」
老人の嘲笑いに吹雪は激しい怒りを覚えた。
「……わりいな爺さん。俺にはまだ、やらなきゃいけないことがあるんだ。消える訳にも、人を殺しちまう訳にもいかねえ。痛いだろうが、我慢してくれ……」
吹雪は上段に構える。
「い、行くぞ」
「こいと言っておる」
吹雪は足踏みで威嚇するが、真剣を向けられても老人は陶物を見るかのようにただじっとしている。
老人がただ者ではないのはわかっている。あの杖に本当にそんな能力があるすれば、アツヤに残された選択肢は一つしかない。
意を決し、自慢の脚力で吹雪は地面を蹴る。そして降下と共に刀を振り下ろす。
手ごたえはなかった。吹雪の剣が斬ったのは空だった。
「わしはここじゃ」
吹雪ははっとして後ろを振り返る。老人が悪魔のように歪んだ笑みを浮かべ、その恐ろしき表情に恐怖する間もなく老人は杖で吹雪を狙う。
神がかった反応で吹雪は杖の攻撃を避けるが、いつのまにか吹雪は汗を大量に掻いていた。
息が乱れている。
「な、なんで……だ? 確実に俺の攻撃は当たってたはずだ……」
「お前は幻を見ていたのさ、恐怖のあまりな。当たらないのは当然だ」
「幻だと? そんな……! じゃあ、これならどうだ!」
吹雪はまたもや剣を振る。しかし、今度も当たらない。
「遅いのう。今のは避けたんじゃよ」
「ありえねえ! なんであんたみたいな老人が、そんな動きができるんだよ! あんた、エイリアの仲間なんじゃねえだろうな!?」
「エイリア? はて。なんのことか」
「な、なんなんだよこれ……」
「確かに、年齢的に見ても能力的に見てもお前の方が動きはいい。が、わしにあってお前には無いものがある。それが勝負においていかに重要なものか。それはお前の得意とする蹴球にも通じる。何かわかるか?」
「知るか!」
吹雪の言葉を聞いて、老人はふっと微笑む。
「気よ」
風が吹き抜ける。
「……くそが! まだだ……まだ早いんだ! まだ、兄貴は完璧の意味を分かってねえ。 頼む、見逃してくれ!」
懇願する吹雪を見て、老人は少し考える。
「お前の兄に対する思いが真のものなら、剣で見せてみろ。同じようなことを二度言わすな」
吹雪の剣の柄を握る力が強くなる。
(まだ消える訳には行かねえ!)
老人の影が動くのが見えた。老人よりも影は先に動いており、吹雪に近づいてきている。吹雪は畏怖し、心臓の動きが苦しくなる。
「しっかりしろ、俺。なんのためにお前はいるんだ……!」
その意味とともに、影の形がはっきりと浮かんで見えた。
——————サッカーの一対一の場面。あれも真剣勝負だ。相手の強烈なプレッシャーに打ち勝つことで勝敗は決まる。
気持ちで負けてて、勝てるわけねえ!
吹雪は風に乗って跳躍した。先ほどのよりも鋭い一太刀が振り下ろされる。
その速さに老人も反応できず、杖で防御したが刃によって真っ二つに裂けた。
「む……!」
吹雪はすぐに構える。無我夢中であるようだった。
「参った。負けたわ」
吹雪はその言葉で我に返る。気がつけば老人は跡形もなく消えていた。
「そちの兄弟への思い。しかと見届けた。また会おうではないか」
「待ってくれ! あんたあの時の狼だろ! 名前を……名前を教えてくれないか!」
「狼? 違う。わしは……」
「憲法さ」
・ ・ ・
ひどい脱線ですね。創作にもほどがある。作者の趣味だよ完全。
ちゃんと本編やりますんで。開いて見て下さった方、調子こいてすんませんでした。
俺は井の中の蛙でした……。
反省してます。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.37 )
- 日時: 2011/10/23 17:02
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
「う……。あ、敦也? あれ、何があったの?」
いつの間にかうっすらと辺りは明るくなってきている。
(いや……ちょっとな)
「あのおじいさんは?」
(あ、ああ。あのじいさんは、どっか行っちまった。サッカーのこととか、色々教えてくれたぜ」
アツヤはこの時口から適当なことを言ったが、実はあの老人は慢遊寺中サッカー部の顧問である。アツヤがこのことを知っていたのはありえないので、たまたま当たったにすぎない。
「へえ……。って、もう太陽が昇って来てない? もう朝なんだ……。そろそろ、戻らなきゃね。って何で刀が鞘から抜いてあるの?」
(そ、それは……! おっ、何だこの黒い霧)
「えっ。本当だ。これ、確かイプシロンが来た時とおんなじだよ。キャラバンに戻ってみよう!」
しばらく進むと、栗松と壁山が木にもたれて寝ていた。寝息を立てて気持ちよさそうにしている。
「壁山君、栗松君、起きて! イプシロンだ!」
「むにゃむにゃ……。目金さん逃げないで……むにゃ……でやんす」
「う、うーん……おばけ……怖い……っす……」
(何でこいつらこんなところに……。俺のことついてきてたのか)
吹雪は二人の鼻をつまんで無理やり起こす。
「はっ。あれ、吹雪さん。ここはどこでやんすか?」
二人は寝ている間、記憶を失っていたようだった。しかし途中で逃げた目金はどうだろうか。
「慢遊寺中の近くの雑木林だよ。イプシロンが来てる、早く行こう」
吹雪の予想した通り、寺の隣にある塔の上にイプシロンの選手たちがいた。
イプシロンは塔から地上へ降り立つ。
慢遊寺の副部長が、戦う意志が無いことを伝えるが、イプシロンはそれを聞いて黙ってはいなかった。
イプシロンの一人が黒いボールを校舎に向かって蹴り、ボールは建物を突き抜けて校舎をなぎ倒した。由緒ある古い建築物なため、もろく壊れやすかった。
おそらくイプシロンのリーダー格であろうデザームは副部長に向かってほくそ笑んだ。副部長もこれには耐えかねたのか、結局試合が行われることとなった。
瞳子の情報通り、慢遊寺中はかなりハイレベルな動きをしていた。もしかしたらイプシロンに勝てるんじゃ、と思う者も雷門イレブンの中にさえいた。
が、それは叶わなかった。
イプシロンの蹴ったボールに触れただけで出血、もろに食らえば派手に吹き飛んで意識昏倒。試合どころではなかった。デザームが試合前に、六分で試合が終わると言っていた通り、試合は六分で終わった。部員が全員倒れたからだ。しかもその時点で、イプシロンは無失点かつ十五点の得点を獲得していた。
あたりには絶望的な空気しか流れていなかった。
「こいつら……本当に六分で決めやがった」
あのいつもは強気な染岡が顔を強張らせている。コワモテな顔なのはいつものことなのだが、さらに強張っていた。
「ジェミニストームとは比べものにならないくらい強いでやんす……」
栗松が弱気に呟く。確かに強かった。
「やれ」とデザームが小さく言った。エイリア恒例の学校破壊だろう。
「待て!」と円堂が遮った。
「まだ試合は終わっちゃいない! 俺達が相手だ!」
「お前達が?」
デザームは雷門イレブンを睨む。
円堂の後ろの部員達は「絶対やめといた方がいいって円堂」と心の中では全員が思っていて、デザームから見てもやる気がありそうなものは円堂だけだった。瞳子でさえ乗り気ではない。
吹雪は眠たそうにしていて、どうでもいいといった感じだ。
「いいだろう」とデザームは言った。
「で、でもキャプテン、目金先輩が……」
壁山が目金のことを思い出して言った。目金がいなければ雷門イレブンは十人しかいないため、試合ができない。我ながらいいアイディアだと壁山は思ったことだろう。さすがの熱血キャプテン円堂守でも、あの狂気的エイリアン達に十人で戦おうなんて無謀なことは、と思ったことだろう。
「十人でやるまでだ!」
円堂はきっぱりと言い放った。部員達はええっと驚く。円堂らしいと言えば円堂らしいが、あまりにも無茶である。
「じゅ、十人で!?」と栗松が言うのに対し、「このままあいつらの好きにはさせられないだろ!」と円堂は言う。
「それはそうでやんすが……」
栗松はずるずると引き下がる。
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