二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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(吹雪物語)  世界への挑戦!編 完結 
日時: 2016/11/08 00:24
名前: しろお (ID: Gu5gxE0Z)

時々URLが光っていますが、アフロディのサイドストーリー以外はyoutubeです。なので音量注意です! 世界編からは、吹雪っぽい曲以外にもサイドストーリーのキャラごとのイメージ曲をつけて遊んだりしてますので、よかったら聞いてみてくだされ

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[イナズマイレブン4 呪われたフィールド]
イナズマイレブンの高校生編。中学生編でスポットの当たらなかったサブキャラクターたちがメインです。主人公は豪炎寺の従兄弟。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22282

[イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー]
不動明王の高校卒業後のエピソード。卒業後海外クラブへ挑戦するための旅費、お金稼ぎの時期の話。こちらもサブキャラクターたちがメイン
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=29765

[吹雪兄弟の事件簿]
吹雪兄弟の子供のころの短編。吹雪好きはぜひ
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22087


[イナズマイレブン×REBORN! 神の復活]
こちらはアフロディのお話です。わりとREBORN好きな方向けですかね。イナズマイレブンGOの世界がメインかもです。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=21867


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Re: ブリザードイレブン (吹雪物語)   ( No.325 )
日時: 2013/01/23 21:01
名前: しろお (ID: RqtfTre3)

 その前に、友人から要望があったため、短い話をいくつか書きます。
 
 吹雪兄弟の日常や、思い出について考察したり、徒然なるままに書いてみたりしたいと思います。
 よろしくお願いします。






1




ある雪国に、仲睦まじい兄弟があった。
 9つになる兄の吹雪士郎は賢く、心優しい少年。8つになる弟の敦也は、いたずら好きのわんぱく小僧だ。ふたりともサッカーが好きで上手く、将来を有望視されている。
 白恋小学校の休み時間のこと。小学二年生になって間もないが、もともと生徒数の少ない田舎学校なので、クラスは去年と同じである。
 吹雪兄弟は、仲良しの女の子荒谷紺子(あらやこんこ)と、真都路珠香(まとろじゅか)とで遊んでいた。
「えへへ、がおーがおー!」敦也が手をひろげて、紺子に襲い掛かろうとする。
「きゃー」
「敦也、それは怪獣だよ……。仮面ライダーごっこなんだから、怪人をやらないと」そう言う士郎は、撮影の監督役をやっていた。
「あ、そっか。うぇっへっへ、仮面ライダーマトロ、こいつがどうなってもいいのか!」
「きゃー助けてマトロー」
 紺子は怪人に捕らえられている芝居をする。
 そこに、珠香がやってきて、
「手を放しなさい! 怪人アツヤンゴ」
「あ、アツヤンゴ? だだだだっせぇ……! ま、まあいいや。それ以上近づくと、この女の命はねえぜ、げへへ」
「むむむ、卑怯なやつ。こうなったら、くらえ! プリキュアサニーファイヤー!」
「ぐ、ぐわあああー……やられたー」
「ちょ、ちょっとまって珠香ちゃーーーん!」士郎が演技の途中に割って入る。「今なんて言った!? プリ……何!?」
 真都路は平然とした顔で、「プリキュアサニーファイヤーだけど」と答えた。
「いやいやいや! なにその『プリキュアサニーファイヤーだけど何?』みたいな顔!」
「手から炎をぶしゃーって」
「プリキュアかっ。仮面ライダーマトロはどこにいったの!? なんでいきなりプリキュアが戦い始めてんのーー!?」
「プリキュアがなんのために戦っているのか……私は全ての人の幸せを守るためだと思う!」
「プリキュアかっ。しかもそういうこと訊いたんじゃないっ!」
「えー、ぶっちゃけありえな〜い」
「ふたりはプリキュアかっ」
 真都路と士郎の息ぴったりのやりとりを見て、
「わーすごい、士郎くんツッコミの天才だね」と、紺子が誉めそやす。
「全然嬉しくない……」
 落ち込む士郎の肩にぽん、と真都路が手を置いてにこっと笑う。「泣いてたらハッピーが逃げちゃうよ、スマイルスマイル」
「……スマイルプリキュアかっ」
 この頃の吹雪士郎は、このようにわりとツッコミに追われる立場であった。
 天然とよばれることもしばしばの彼だったが、このころは、まわりに天然が多すぎたため、ツッコミに徹していた。
「兄ちゃんだって、いつのまにか漫才ごっこ始めてんじゃーん」
 意外にも的を射た敦也の言葉に、士郎は赤くなるのだった。 



 ※念のため弁解しますが、作者はプリキュア全然知らないので、プリキュアの名言が載ってるサイト様等で調べました。いまの小学生はこういうことを話しているのかなあと思ってこういう話にしました。

Re: ブリザードイレブン (吹雪物語)   ( No.326 )
日時: 2013/01/23 21:05
名前: しろお (ID: q5ZDuZZE)





 北海道にある網走(あばしり)湖には、願いを叶えるしまふくろうがいる、という伝説がある。
 という作り話を、吹雪兄弟の父、吹雪淳一郎(じゅんいちろう)は息子達によく聞かせていた。
「もしふくろうに会えて、願いが叶うとしたらどうする? 敦也はどうする?」
「そんなもんいるわけねーじゃん、アホくさ」と答え、つまらなそうに、尻を掻きながら、リビングのカーペットのうえに寝転がり、コロコロを読む次男の敦也。
「ば、ばか敦也。お父さん落ち込むだろ……」
 敦也の隣のソファーで寝ていた士郎が、フォローしながら慌てて体を起こす。
 案の定、淳一郎は椅子のうえに体を丸めて座り、ひざに顔をうずめて落ち込むのだった。
「もっとちいさいときは……ふたりとも『サッカー選手になる!』なんて言ってかわいかったのになあ、なあ母さん……」
 息子達の成長が嬉しいような寂しいような、そんな心だろう。
 彼の妻であり吹雪兄弟の母でもある、彼女の名は郁壬(いくみ)という。今は淳一郎の隣でお茶をすすっている。ほっと一息つくと、
「そうねえ。今もかわいいけどね。まあ今じゃふたりとも、お父さんよりサッカー上手いものね」
「そうだな……将来有望だ」
「でも、あっくんの態度はよくないわね。……ちょっとここらでばしっと、父親らしいとこ見せてやったらどうですか?」
「父親らしいとこか……」
「父ちゃん全然ダメだよ。仕事がださいもん」
「お、おいおい敦也。おまえ調子に乗るなって……父さんのつくってる牛乳は、日本全国で飲まれてるんだぞ」物知りの士郎が、いつものようにフォローに回る。
「そうよあっくん。それに、牛乳飲むと骨が強くなるのよ」
「……母ちゃん、俺のことあっくんって呼ぶのやめて。でも、骨が強くなるって」
「本当よ? 骨をつくるカルシウムっていう成分が、たくさん牛乳には含まれているの」
 ここぞとばかりに、淳一郎が立ち上がった。
「敦也。おまえがいいキックでいいシュートを打てるのは、いい牛乳を飲んでるおかげなんだぞ。足腰が強いのだって牛乳のおかげだ。……多分」 
「お、おおー……! なんかかっこいい!」
「かっこいいか? そうかそうか。お父さんかっこいいか……も、もう一回かっこいいって言って?」
「もういーわない」
 敦也の言い方が非常に愛らしく、淳一郎は親としての心のときめきを感じた。
「も、『もういーわない』だって……かあいいなあ、くうー! かわいいなあ、母さん!! あーもうかわいすぎる、ふたりは天使だなー……あ、でもこれって親バカかな!」
「お、落ち着きなさいよ。せっかく格好がついたのに、父親としての威厳が台無しです、落ち着いて。お茶どうぞ」
「あ、そっかそっか。じゃあいただきます……」
「2人の分もあるわよ。ホットココアだけど」
「俺はまだいーや。熱いだろうし」
「僕も冷めるの待つよ」
「……むかし、士郎と敦也が飲もうとしてるお茶を、ふーふーしてやったっけな……いやはや、2人を授かれたことは、本当に神様に感謝してるよ……」
「そうね。でもわたしにも感謝してよ」
「そ、……そんなのしてるに決まって……い、言わせるなよ恥ずかしいな」
 淳一郎は眼鏡をくいっと指であげて、隣の妻から目を逸らす。
「あ、それ。その、ちょっとでも顔が赤くなると目を逸らす癖、敦也にもうつっちゃったのよ」そう言って郁壬は静かに笑う。
「そ、そうか。まあ親子だからな……
 両親の会話に、何気なく聞き耳を立てていた敦也が、静かに笑いをこらえている。
「へへへ! なんか、あれだな、兄ちゃん、俺らにキョウダイが増えるかもな」
「へ? どういう意味?」
「……なんでそういうとこ鈍いの?」
「どこがさ」
「だからぁ、前に、士郎が『なんで僕たち生まれたの?』って訊いてたじゃん」
「あ……、きいたきいた。すごい気になったから」
「んで『らぶらぶ』ってのになると、子供が生まれるんだろ? キョウダイが増えるんだろ。いまがたぶん、それだ……」
「……おお……! 逆に訊きたいけど、なんでそういうとこ鋭いんだろうなー敦也は……」
「へへ、おれはあれだ、ドッカン型のニンゲンだからな!」
「直感型ね? なんか爆発したみたいになっちゃってるよ」
「で、兄ちゃんはうんこ型ね」
「いやいや思考型ね!?」
「くわがたはなんだっけ」
「虫ね?」
「ガタガタ……」
「乳歯がとれそうな状態のこと。僕と敦也みたいな状態」
「ぜにがた……」
「警部」
 このとき、親2人の暖かい視線には、吹雪兄弟は気づいていなかった。
 ココアが飲みやすい温度になったのを直感で敦也が悟り、兄弟仲良く飲み始める。
 なんとほほえましい光景か。
 だからこそ吹雪士郎は、こういう思い出を振り返るたびに、涙が落ちそうになる。

Re: ブリザードイレブン (吹雪物語)   ( No.327 )
日時: 2013/01/26 17:29
名前: しろお (ID: a9n6ve.Q)




 吹雪士郎は、かなりの毒舌家である。幼いにしろ語彙が豊富で、天然で無自覚ときたもんだから、始末が悪い。
 たとえば一年生のころ、作文の時間にて。
「はあ? これじゃあ、シュートが『入る』じゃなくて『人る』だよ。バカだな敦也は。どうしようもないバカだな。かわいそうなくらいバカだな。兄として同情するよ。ごめんな敦也、ぼくばっかり作文できて。ほんとにごめん」
「ぐ……そんなに言わなくたって、い、いいじゃん……うっ……」
 この敦也、涙をこらえるのが必死である。よく耐えているほうである。
 図工の時間にて。
「なにこれ? 題名間違えてるんじゃないの? こんな絵、誰がみても熊だって思わないよ。ティッシュを丸めた絵なんでしょ? 僕が題名書き換えといてあげる」
「そ……それ……がんばったねって、先生にほめ、ほめられ……うっ」
 敦也泣き出す。
 読書の時間にて。
「ぶっちゃけ三人組? 敦也、内容理解できてんの? おまえにはこっちの絵本が向いてるよ、これこれ、『ぞうさんとぼく』。これならバカの敦也でもわかるね、猿でもわかるって裏に書いてある。ほら読みなよ。ちゃんと立って、声だして読んでほら。読み書きできるようになるにはまず音読だよ」
「ぞ、ぞうさんとぼくは……か、かわにい、行って……うっうっ……」
 敦也号泣する。
 そして今の、勉強嫌いの敦也が完成する。
 またときとして、幼少の頃の思い出というものは、決して気持ちいいものばかりではない。
 ちびっこサッカーの試合で、敦也と士郎はいつものように活躍していた。ふたりともまだ1年生で、敦也八歳の誕生日だったが、その日に限って士郎の活躍が目立ち、試合後、勝ったのに敦也はふてくされていた。
「くそくそくそ、なんで兄ちゃんばっか……いつもなら俺が……」
 両親の元で、士郎は頭を撫でられて嬉しそうにしている。
「がんばったな士郎」
「敦也の誕生日だからね! お祝いさ」
 気に入らない。いいこぶりが気に入らない、と、思ったときには敦也は士郎の頬を叩いていた。
 士郎は、驚いている。そして手を出さないかわりに、口から遺憾の意をあらわす言葉を吐いた。
「なんだよ、小学生にもなって、ムキになるなよ。これだから敦也は———」
 さらにかっとなった敦也だったが、さすがに親がこれは止めた。それでも、敦也は母の手の中で暴れて士郎に突っ込もうとする。
 帰りの車の中は、とても暗かった。
 まったくもって誕生日パーティなどと悠長なことを言えた雰囲気ではなかった。
 静かな夕食のあと、士郎も敦也もお互い話さぬまま、草でも食うかのような無表情でケーキを食べた。
「士郎。敦也。一緒に風呂に入ろう。いやな汗は洗い流そう」   
 風呂で暖まると、いやな気分は少しは和らいだ。
 湯船の中で、士郎と敦也を見据えて父が2人を諭し、仲直りさせた。
 そのときの話はこうである。
 その昔、吹雪算得という剣豪がいたそうだ。神道一心流流祖、櫛淵宣根の弟子にあたる。背の丈6尺2寸、大体190cmほどの男であったらしい(昔のあいまいな記述と記録のため、おそらく実際は180cm前後と思われる)。
 彼は熟成していた武者の櫛淵宣根に敗れ、弟子入りを所望する。算得はそれから更に剣に磨きをかけ、後に津山候(岡山)に200石で召抱えられる。吹雪算得のことを、津山家臣の平山行蔵なる者が「天下吹雪算得の男振りは、三百石にては安し」と評している。三百石だと武士の中では中級レベルだと言える。四百石なら、決して富裕層とは言い難いが上級武士であり、『殿』と呼ばれる。そこから、算得がそうとうな手だれの武人であったことが容易く伺える。
 やがて幕末の頃、算得は息子をふたり授かった。
 ちなみに吹雪の本姓は、本間という記述がある。
 息子ふたりとも立派な武者になったが、ある日老いて貧弱になった算得が物の怪につかれ、突然叫び狂い、長男に剣で襲い掛かった。
 日々の鍛錬の成果により一太刀を防いだ長男は、父を説得して止めようとしたが言葉届かず、やむをえず峰打ちをくらわせた。
 物の怪が怯んだ隙に算得は、死力を振り絞り、かろうじて我を取り返し自らの中の物の怪にこう告げたという。
「いつの日か必ず、この吹雪算得が血をひく兄弟がその力を合わせ、貴様を滅してくれようぞ」
 そして彼は、剣の道にて培った精神の強靭さによる必死の抵抗で、自ら刃を飲み込むことで物の怪を退けるという悲惨な最後を遂げた。
 物の怪を激しく恨んだ兄弟は、父の仇を討つため必死に剣の修業をし、やがて達人の域にたどり着く。そして岡山から蝦夷の地まで行き、遺恨の物の怪に勝負を挑むが、物の怪を完全に倒すにはただの刀での攻撃は通用しない。
 敵の怪術で瀕死の重傷を負った弟は、自らの首を撥ねることで、その魂を兄の剣に宿す。自ら望んで兄の刀となった弟の清き魂により剣は燃え、物の怪は吹雪兄弟の一閃のもとに滅せられた。
 滅せられた物の怪は、兄弟の固い絆により今も甦ることなく封じられている。
 吹雪の血を引く兄弟の絆が壊れしときに物の怪は甦り、復讐のためまたも吹雪一族を混沌に陥れるだろう、と言われている。
「だから、喧嘩はしちゃだめだ。じゃないと、お父さんもお母さんも死んで、敦也と士郎、どちらかも死ぬことになる……そんなのは嫌だろう? だから、仲良くしような、ふたりとも」
 ふたりはこの話にひどく怯えてしまい、もはや喧嘩のことなど忘れていた。
 この話、あまりにもよくできているところを見ると、実話なのだろう。
 

Re: ブリザードイレブン (吹雪物語)   ( No.328 )
日時: 2013/01/23 21:12
名前: しろお (ID: j.8XTq8G)



 

 ある日、敦也と士郎は学校の宿題を持ち帰ってきた。自分の名前の由来を調べよ、というのが課題の内容だ。
 兄弟はまず、父親に尋ねることにした。
「由来か。由来かあ……。士郎は4月6日生まれだからだろ。よん、ろく、言い方を変えるとシロー」
「なるほどね」
「じゃあ俺は?」
「敦也は、まだ3月なのに珍しく暑かった日に生まれたから、敦也だ」
「ちょっとちょっと、冗談言っちゃだめでしょ。宿題なんだから」
 母親がそういうと、父は「あ、そうか」と言ってけらけら笑った。
「本当はもっと、ちゃんとした意味があるのよ。お母さんが話してあげる」
 わいわいと、兄弟が喜ぶ。
「うーんとね、紙が必要ね。あとペンも……。よし、じゃあ説明しますよー。お父さんとお母さんの名前が、淳一郎と郁壬なのはわかるわね」
 白紙に両親の名前が、漢字で書かれる。
「どこから話したらいいかしらね。そう、まず、私は京都生まれなの。郁壬の郁は都と同じ意味があって、そこからきてるわ。ちなみに壬は、子供を授かるという意味ね。ふたつ合わせて、豊かな子を授かるっていうありがたーい名前よ。げんにお母さんは、とってもいい子を授かったもの!」
 士郎と敦也は顔を見合わせて、お互い心の内で、
(俺のことだな)
 と思っていた。
「淳一郎さんと大学で出会って、それからしばらくして士郎をお腹にさずかったわけさ」
 士郎は熱心に聴いている。
「壬という字のここをとって」郁壬の士の部分に丸が書かれる。「お父さんの名前から郎の字をとってきて、組み合わせると、ほら!」
 見事に士郎という名ができた。
「お、おお……!」
「士は侍って意味があって、郎は男の子って意味ね。侍みたいなかっこいい男になってほしくてつけたの」
「俺は、俺はー?」
「敦也はねえ。おじいちゃんがつけたのよ。お父さんのお父さんね」
「じいちゃんが……」
 と言っても、兄弟が物心つくときには、他界している。
「お父さんの名前の、淳一郎の淳。これの右側のところをとって、敦也。意味がちょっとアレだから、私は反対だったんだけれど、どうしてもこの名前がよかったみたいよ」 
「ちょっとアレって、どんな意味なの?」
「えっとね……敦也は、『化け物なり』って意味。まあそれだけ器の大きい人物ということかしらねえ……でもあんまり品を感じないと、お母さんは思ったわ」
「化け物……!」
 敦也は目を輝かせている。
「この子はいつか天下をとる男だ、って言ってたな。天下って、戦国時代かよって話だよな」

Re: ブリザードイレブン (吹雪物語)   ( No.329 )
日時: 2013/02/09 12:07
名前: しろお (ID: j.8XTq8G)

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 節分の日。日本人は、その日に豆を歳の数だけ食べる風習がある。そうすると、よいことがあるとされているからだ。また日本文化に熱心な人は、恵方巻きという手巻き寿司を食べる。
 「豆まき」と呼ばれる慣習も有名である。欧米で悪魔とされる存在は、日本では鬼と呼ばれ、鬼を追い払うため特殊な呪文を唱えながらあたりに豆を投げ散らす。食べ物を粗末にしないことでも知られる日本人だが、スペインのトマト祭り(トマトをひたすら投げ合うお祭り)と同じく、その日だけは豆を粗末に使うことが許されている。
 ちなみに鬼払いの呪文というのはこうである。「鬼はそとー」と唱えたあと豆をひと撒き、「福はうちー」と唱えてひと撒き。災いをもたらす鬼はそとに行って貰って、幸福だけ来いという意味だ。
 基本的には買った豆を使って家族の中で行われることが多いが、地域によってはコミュニティー形成のため、神社の前で大人たちが群がる子供たちに袋詰めの豆を投げ散らす姿も見ることができる。競り合いの中手に入れた豆袋を子供達は持ち帰り、家で豆まきを行うのだ。
 大豆は畑の肉とよばれるほど健康に良いヘルシーな食材だ。節分は、世界の中でヘルシーな食文化を誇る日本人らしい伝統行事なのである。
 ———shiroo著の論文「日本の文化」の1部より抜粋。
 節分の日、北海道に住むここ吹雪一家でも豆まきが行われた。
 父が鬼のお面をつけている。固めの紙でできていて、目のところに穴が開いているので面をつけていても前を見ることはできるようになっている。
 父は、こうもりのように手を広げて、
「鬼だぞー。悪い子はくっちまうぞー」 
 と言う。
 敦也と士郎は豆をがむしゃらになげまくる。
「おにはそとー!」
「ふくはうちー!」
「いてっいていてっ」
「母ちゃん、豆って外国語でなんてーの?」
 手をとめて、敦也が母に尋ねた。隣の士郎は夢中で投げまくる。
「英語では、ビーンズかな」
「ふうん、ビーンズね。くらえ鬼め、ビーンズブリザード!」
 ブリザードのごとく凄まじい豆の連投。敦也は手を休めない。
「じゃあ僕も、ビーンズグランド!」
 士郎は鬼(役の父)の足を狙いだす。
「よしきめるぞ兄ちゃん!」
「ああ! ビーンズ——」
「レジェンド!」
「ぐわああああ……」
 鬼が倒れたため兄弟の勝ちである。やったやったと二人は、母のまわりをピョンピョン飛び跳ねまわった。
「楽しかったから、来年もやろうね、ふたりとも。来年も勝てるといいね」母は2人の頭を撫でる。
「もちろん! まあホントのホントは、俺だけで鬼には勝てるんだけどね」
 敦也は胸を張る。
 士郎はやれやれといった風に首をふった。「本当に強がりだなあ敦也は……」
 投げた豆は、食べれそうなものは洗ってたべる。
 兄弟2人はおやつとして飽きるまで食べ呆けた。それを見て父が、
「士郎も敦也も豆をたくさん食べて、お父さんみたいな『マメ』な人になるんだぞ」
 敦也は意味がわからないので、首をひねった。母が教えてやる。「マメという言葉には、真面目という意味もあるのよ」
 敦也は納得いったようで、満足げに腕を組んで、
「へえー親父ギャグってやつね」
「外よりも寒いね」
 士郎がうまいことを言って、家にどっと笑いがおきる。
「まあマメなんて言葉、粗暴な敦也には似合わないよ」
 士郎は幼少ながら言葉使いがたくみな賢い子で、ときどきこういう毒気のある言葉で敦也をからかう。
「そうだなーってどういう意味だよ士郎、粗暴って!」
「おしえなーい」
「豆一つやるから教えろよー」
「いらなーい」
 粗暴とは行儀の悪い自分勝手な性格や振る舞いのことを指す。わんぱく小僧の敦也にはお似合いの言葉だった。
 このように、2月3日は節分の日でありながら、日本人にとっての一家団らんの日でもあるのだ。


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