二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- (吹雪物語) 世界への挑戦!編 完結
- 日時: 2016/11/08 00:24
- 名前: しろお (ID: Gu5gxE0Z)
時々URLが光っていますが、アフロディのサイドストーリー以外はyoutubeです。なので音量注意です! 世界編からは、吹雪っぽい曲以外にもサイドストーリーのキャラごとのイメージ曲をつけて遊んだりしてますので、よかったら聞いてみてくだされ
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[イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー]
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- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.38 )
- 日時: 2011/10/23 17:02
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
「十一人目ならいます! 木暮君が!」
音無が声をあげた。音無の隣にボールを抱えた木暮がちょこんといる。意外なところで名前を呼ばれて木暮自身も驚いていたが、それ以上に驚いたのはやはり部員達だった。
「木暮君だってサッカー部の一員です!」
音無は執拗に木暮を推す。吹雪が老人と戦っている間に、何故か音無と木暮は仲良くなっていたようだ。何があったのかはわからないが。
「でも補欠だろっ? 大丈夫かよそんな奴いれて」
染岡が言うことももっともである。木暮は中学一年であり、補欠でありながら練習もまともにやったことのない、ドがつく素人同然だ。マネージャーの木野が出た方がまだマシだろう。彼女はマネージャーではあるが、小学生の時はサッカーをアメリカで一之瀬や土門とともにサッカーをよくしていた。当然、サッカーは上手い。
「ヘタにうろちょろされると、返って邪魔になるし……」と土門が付け足す。これもごもっともである。
「そんなことないです! 木暮君なら大丈夫です! だからお願いします! キャプテン、お願いします!」
何か根拠がありそうな言い草だが、本当に大丈夫なのだろうか。木暮自身は音無の後ろでびくびくと怯えている。本当にこの二人に何があったのだろうか。
流石にこればっかりは断るんだろうなと部員達は思っていた。塔子なんかは、落とし穴の恨みがまだあるらしく、木暮に向かってにらみを効かせている。とても総理大臣の娘とは思えないが、正真正銘現総理大臣である財前総理の一人娘である。
「わかったよ、音無」
どわっと部員達は驚く。何がわかったのだろうか。円堂の天然ボケ的思考に誰もついて行けていない。
「いいですよね監督!」
「好きにすればいいわ」
まあとにかくこれで、十一人揃った訳である。
「だ、大丈夫なのか、これ」一之瀬の問いに「さあ……」とだけ土門は答える。
「ねえ、風丸君」
「ん? 何だ吹雪」
「一之瀬君てさ、世界的に有名で将来有望の少年スーパースターなんでしょ? 確かに全国優勝しただけあってサッカーは上手いけど、世界的な天才って割にはそこまで試合中目立たない気がするんだけど……」
「ああ、そのことか。俺も聞いた話だからあんまり良く知らないんだけどさ……」
風丸の話によると、フィールドの魔術師一之瀬和哉は交通事故が原因で一度サッカーをやめていて、リハビリでケガから立ち直ったものの、未だに思うように体が動かないそうだ。
「よくある話さ。陸上のプロの選手だって、ケガから回復して前よりもいい動きができる人は少ないんだ。それに確かな話じゃないけど、トラックに轢かれたらしいよ。トラックに轢かれてあんな動きができるんだから、やっぱり一之瀬は凄い奴だよ全く」
「ふーん。風丸君、陸上好きなの?」
「ああ、前は陸上部だった。円堂に惹かれてな……」
「トラックで?」
「ちょっ、違う違う! 轢かれたんじゃなくて! ほらあれだよ、『こいつとなら何やっても楽しそうだ』って思ったんだよ。何ていうかな。難しいな……。」
「うーん。好きなの?」
「そうだな……。そんな感じかもな」
「風丸君て、男の子好きなんだ。変なの」
「ちょっ、ないないないないないないそれはないから!」
「おい吹雪に風丸! 何喋ってんだよ! 早くジャージ脱いで試合行くぞ」
「ごめんごめん染岡君。三分で脱ぐよ」
「三分って……ずいぶんゆっくりしてるな。吹雪は怖くないのか? あんな奴らと戦うってのに」
風丸はジャージを脱ぎながら言う。
「怖くなんかないよ。むしろ、楽しみだなあ」
「……強い奴は羨ましいよ。俺も、吹雪みたいになれたらな」
整列とかは無しで、古株さんが審判で試合が行われることになった。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.39 )
- 日時: 2011/10/23 21:20
- 名前: 真由 (ID: mnvJJNll)
ひどい脱線とか関係なく、もう、すごすぎです!!
わたし的には、脱線している話のほうが楽しいですよ。
本編は知ってるから、「あ〜こんな場面もあったなぁ〜」っていう振り返りみたいな感じで☆
やっぱりまだ考えたこともなし、聞いたこともなしのストーリーがドキドキします。
漫遊寺の監督と吹雪くんのところはヤバかったぁー。
敦也は意外にお兄さん想いのいい弟なんですよね、そこがぐっときます☆
がんばってください、楽しいのを待ってますね!! 趣味で全然OKだと思いますけど・・・。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.40 )
- 日時: 2011/12/02 01:17
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
真由さん、返信が遅れてすみませんでした。
そ、そうですか? でも実は、漫遊寺の監督のところも、実は原作があったりなかったりします。
そう言ってくれると、とても嬉しいです。
第六話 三分の攻防戦
「ねえ。あんた本当に大丈夫なの?」
SSサイズという中学一年生だとしてもかなり小さめの雷門中ユニフォームを着た木暮に、塔子が訊く。塔子は試合の時でも青の
ニット帽を被っている。
「どう思う?」
土門が鬼道に言った。おそらく、木暮のことを聞いているのだろう。ポロシャツにハーフパンツ、土門も紺と黄色をメインカラーにした雷門中のユニフォーム姿になっている。部員達はもう着替え終わり、試合を迎える体制を整えつつあった。
「俺は春奈の言うあいつを信じる」と鬼道は短く返す。「そんなこと言って、実力には疑問を持ってるんだろ?」と言ったのは風丸だ。
「まあ、な」
「実力が分からない奴が入るっていうのは、意外性があっておもしろいかもよ」
一之瀬は爽やかな笑顔を浮かべながら言う。こういう爽やかな笑顔で喋る先輩は、後輩に慕われる。実際、雷門中では一之瀬は後輩から絶大な支持がある。しかも、男子からも女子からもである。
しかし一之瀬の本命は幼馴染である木野マネージャーである。しかししかし、木野の本命は円堂である。そして円堂は天然ときた。
「あいつ、どのくらいサッカーできるんでやんすかね」
「うんうん。確か、慢遊寺の補欠っすよね。宇宙人相手の試合なのに、そんな奴に頼っていいんすかあ……?」
そういう栗松と壁山も、中学生の中で見ても上手い方ではないが。
そもそも、豪炎寺、鬼道、一之瀬と言った超強力な助っ人がいなければ、雷門中が全国優勝できたはずもないのである。最強の中学生を集めるために全国を回っているのに、何故この二人をキャラバンから外さないのか。この点について瞳子はこう考えている。
実力も才能もない選手が、何故全国優勝できたのか。今年の中学生のレベルは高く、無名だった雷門中が優勝したことは奇跡に近い。瞳子は単純な実力や才能よりも、そういった奇跡を起こす可能性にエイリアとの勝負を賭けていた。それで栗松や壁山のような選手が未だにキャラバンにいるのだ。
「木暮くーん! 楽しんでいこうよお!」
吹雪は笑顔で木暮に手を振る。「お前、そればっかりだな……」と染岡は呆れながら横目に吹雪を見ている。
「木暮ー! 楽しんでいこうぜっ!」
円堂も木暮に声をかけてやる。円堂の真っ直ぐな瞳を投げかけられて、木暮は逆にプレッシャーを感じているようだ。
「……雷門中。ジェミニストームを破った唯一のチーム。はっ。たったそれだけのことで我らイプシロンに勝てるとでも? 我らイプシロンもなめられたものだ」
デザームはそう呟く。呟くといっても声が大きく、デザームのキザ具合が伺える。
聞こえてはいるが、雷門の部員達は気にせずに各自で準備運動を始めている。
木暮はそんな部員達を見てさらに不安に煽られる。
「な、なんだよこいつら……!? 本気で宇宙人に勝つ気なのかよ、信じられねえ……! 俺、ここで何してんだ……」
小さな肩を小刻みに揺らしながら、歯をガチガチと鳴らして震える木暮。音無は静かにベンチで見守っている。
「そろそろキックオフと行こうか。聞けえい雷門中! 破壊されるべきは雷門中にあらず、我がエイリア学園に刃向かい続ける雷門イレブンに決まった!」
デザームは雷門に向って腕をびしっと伸ばしてぱっと手を開く。手からレーザビームが出るという訳ではなく、ただ演出を決めたかっただけのようだ。イプシロンの選手たちは赤を基調としたユニフォームを着ているが、デザームはキーパーらしく一人だけ黒を基調としたものを着ている。
「勝手に決めてるよ……」
一之瀬はぼそっと呟く。
「慢遊寺中は六分で片づけた。だが、お前たちはジェミニストームを倒した。その実力を称え、三分で決着とする。光栄に思うが良い」
逆に短くなっているが、どういう基準で決めているのだろうか。今度は三本の指を立ててびしっと決める。
「三分!?」と円堂。
「だからなんで勝手に決めちゃうかなー……」と面倒くさそうに土門。
「ほんっと腹立つ。あたしそういうの大嫌い!」と塔子。
「だったらぁ、僕たちも三分で片付けちゃおうよっ!」と笑顔の吹雪。
「おもしれえ!」といきり立つ染岡。
「三分か……。1500走ってたときの目標タイムだっけな。ははっ、今思えば、ちょっと無理があるよな。だって世界記録が……ぶつぶつ……。ははっ」と変態気味に呟く風丸。
「三分あればカップラーメンが食えるっす! 」
「言うと思ったでやんす……」
「三分。言ってくれるじゃないか」と鬼道。
「三分って! WHAO! ハイパーイケてるYOそれ! アメリカンジョークだよね!? HAHAHA!」とはしゃぐ一之瀬。
「無理だ……無理だ無理だ……殺される……殺される……」と木暮。
全員(木暮以外)自信満々のようだ。ジェミニストームに勝ったというのが自信に繋がっているのか、やけに気が強い。
対照的に、雷門のベンチサイドはどよめいている。
「三分だなんて……」
木野が言う。
「それだけ私達に対して本気なのよ」
と夏未が言った。流石に頭の回転が早い、育ちの良いお嬢様だ。
「ええ。でも慢遊寺中の六分間で、イプシロンがどんな戦い方をするのか掴めたわ」
瞳子の発言に目金やマネージャー、休んでいる慢遊寺の部員達も驚いた。
「優秀な戦略と人材で王座を守るスペインリーグの某クラブでコーチ補佐をやっていただけあって、戦略を見抜く力には長けているようですね……」
目金はネットで得た瞳子の知識をかっこつけて呟くが、周りの反響は薄い。
瞳子は続ける。
「ジェミニストームはスピードで押してくるチームだった。それに比べて、慢遊寺中との試合で見せたイプシロンの戦いは的確にFWを封じて相手の攻撃を殺いでいた……。慢遊寺が勝てなかったのは、満足なプレーをできなかったから……」
能力だけでなく戦術的にもレベルが高い、と瞳子は言いたいようだ。
どこからか実況担当の角馬もやってきた。
試合の準備は着々と進んでいく。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.41 )
- 日時: 2014/02/20 13:28
- 名前: しろお (ID: O0NjrVt8)
「それでは、雷門中対エイリア学園1stランクチームイプシロン、雷門イレブンの攻撃よりスタートです!」
角馬が言い終えると、古株が笛を吹く。
吹雪のキックオフで試合が始まる。吹雪と染岡のツートップ、MFに一之瀬、塔子、鬼道、DFは土門、壁山に、栗松と木暮。WBに風丸が入っている。
吹雪の蹴ったボールを染岡は風丸に長いパスを出す。風丸は自慢のスピードで一気にフィールドを駆ける。雷門陣営はDF陣もラインを高く保つが、木暮は一人ポツンと置いてかれている。
「戦闘、開始!」
デザームの合図で、上がって来ていた染岡と吹雪に早速マークがつく。
「やはり……」と瞳子が言う。
「ツートップを抑えることで、相手へのプレッシャーも狙っている……!」と夏未が続ける。マネージャーになるまでサッカーの知識などかけらも無かった彼女が、今ではマネージャー陣の頭脳役である。
当初弱小だった雷門サッカー部をつぶそうと目論み「帝国学園に練習試合で負ければ廃部」と円堂に難題を押し付けた理事長代理兼生徒会長の彼女だったが、円堂達の頑張る姿に心打たれてほいほいとマネージャーになったのである。帝国学園とは以前雷門に転校する前に鬼道が主将を張っていた超名門強豪校のことである。四十年連続でFF全国大会優勝というとんでもない記録を持つ学校だ。
練習試合を申し込んだのは帝国側であり、山梨県にある強豪校木戸川清修中から伝説のストライカー豪炎寺修也が雷門に転入したという情報を手に入れた帝国が、豪炎寺をスカウトしに雷門に練習試合を申し込んだのだった。帝国の期待に反して豪炎寺は雷門ではサッカーをやっていなかった。これには帝国も困ったが、円堂をなぶり殺しにすれば正義感の強い豪炎寺をあぶり出せると考えた天才少年鬼道有人の策略通り、円堂達が困っているのを見て助っ人として試合の途中から参上した。
豪炎寺が参戦する前に点差はひどいことになっていたが、結果的に豪炎寺がサッカーを続けることがわかった帝国側は満足し試合を放棄して去って行った。
と過去のエピソードを振り返っている間に、試合は少し進行していた。
雷門は順調にパスを繋げ、ついにボールがゴール前まで動いた。一之瀬はシュートを撃つが、DF二人によって蹴り返される。二人同時に蹴るツインキックとでもいうべきか、極限まで息の合った超次元的なテクニックだ。
このクリアボールはこぼれることなく、勢いを落とさずにそのままゴールを守る円堂へ飛んで行った。それもすごい速さで、ロケットのようだった。
壁山と塔子が、前に吹雪のシュートの弾道を逸らした時のようにボールに体当たりをくらわすが、やはり二人はボールに弾かれる
。
しかしボールを浮かすことに成功し、大きくこぼれたボールを、吹雪が空中で奪おうとジャンプする。しかし吹雪をマークしていたイプシロンの選手二人も飛び、空中での競り合いとなる。
制したのは吹雪だった。人格を敦也と交代し、「もらったぜ!」と言ってマークしていた二人の敵選手の肩を踏み台にして、さらに高く飛び、そのままダイレクトでシュートを試みる。
「エターナルブリザード、いっけぇぇ!」
「行ったァァァ! 遥か上空からの超レンジシュート!」
シュートはゴールめがけて突き進んでいく。キーパーのデザームが恐れることなく割って入った。
爆発音とともに爆風が起きて砂が舞い、ボールとデザームの姿は視認できなくなった。
「へっ!」
吹雪は勝ち誇った様子で鼻を鳴らす。
しかし砂煙が消えて現れたのは、ボールを片手で掴んで止めているデザームの姿だった。
「何!?」
吹雪は動揺する。手は抜いていなかった。原因があるとすれば、寝不足ということだけだ。
雷門陣営も同じく動揺を隠せなかった。まさかあのシュートを片手で止められるとは、夢にも思っていなかっただろう。逆に、イプシロンの選手たちは止めて当然だというような涼しい態度でいる。
「エターナルブリザードゴールならず! イプシロンのキャプテンにしてキーパーデザームによってがっちりと止められてしまったァ!」
「あ、ありえねえ……!」
俺のシュートが止められる訳がない。という絶対的な自信を持っていた吹雪とって、あまりにも衝撃的だった。
「敵ながらいいシュートを撃つ。気に入ったぞ」とデザームは言う。吹雪はふてくされて、「褒めてくれてありがとよ」と吐き捨てるように言った。
「お前たちはエイリア学園にとって大きな価値がある! 残り二分二十秒、存分に戦ってもらう。フン!」
デザームはボールを大きく投げた。一之瀬と染岡が追うが奪うことはできない。イプシロンは典型的なポジションサッカーだった。全ての動きが緻密な機械のように無駄のないものだった。
素早いカウンターでイプシロンは雷門陣営に切り込んでいく。
決定的な一対一の場面を作ってしまう。相手のFWのゼルがシュートを撃つ。
「ゴッドハ……!」
「間に合わん!」
片手に力を集中させるキャッチ技のゴッドハンドを使おうとした円堂を鬼道が声で制す。円堂は咄嗟に拳を握り、
「爆裂パンチ!」
というパンチング技で弾こうとするがシュートのパワーを殺しきれずに円堂をゴールに吹き飛ばしてボールはネットを揺らした。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.42 )
- 日時: 2014/02/20 13:33
- 名前: しろお (ID: 73BX/oE4)
体を張って守ろうとするが逆に相手の圧倒的なフィジカルの強さに押され、仲間達は傷ついていっていた。
吹雪ですらなかなかゴールを決められない。それ以前に、吹雪にボールを回すことは、雷門とイプシロンの実力差を考えると到底無理だった。
結局仲間達は傷ついた結果、倒れて行った。
プレーに参加せず、隅でうずくまっていた木暮ただ一人が、今やまともに動ける状態だった。
「間もなく三分。我らは次の一撃を持ってこのゲームを終了する。聞けえ人間ども! 我らは十日後にまた勝負をしてやる。だが、お前たちは勝負のその日まで、果たして生きてられるかな?」
デザームはそう言ってボールを蹴り、砂嵐を起こした。意味深な言葉を残し、デザームは消えていた。
夏未が手元の時計を確認すると、まさしく試合開始から三分が経過していた。
かくして試合は終わった。
試合後に、慢遊寺中サッカー部の監督が現れた。「今までどちらに?」という瞳子の質問に対し、曖昧に応える。
この老人は昨夜の憲法と名乗る男と同一人物である。持っている杖が治っているところを見ると、おそらく杖を修復していたのだろう。
老人は瞳子に、木暮をエイリア退治に参加させるよう頼んだ。老人は木暮の能力をなかなか買っているようだった。確かに、サッカーのお手前は素人でおまけに才能のかけらも感じさせなかったが、一人だけケガをせずに残れたのは運が良かっただけという考え方はできない。
人と触れ合わせることで、木暮のひねくれた性格をどうにかしてもらおうとも考えているのかもしれない。
彼が望むのなら、と瞳子は答えた。
染岡はむしろ木暮の能力などどうでもよさげなようだった。老人監督が木暮を推すのは、厄介者を預かってほしいからだと考える染岡は、このことを良く思っていなかった。
「ったくしょうがねえ奴だなあ。なあ、吹雪よお?」
染岡は近くにいる吹雪に声をかける。
しかし吹雪は答えずに暗い顔をしてうつむいている。「どうした?」と、吹雪の様子がおかしいのに気づいた染岡は尋ねる。
「……僕、何にもできなかった……」
吹雪は老人が来ていることに気づいていなかった。憲法と名乗る老人は編み笠を深く被っており、顔を隠していた。
そしてそれよりも、エターナルブリザードという熊ですら一撃で倒す威力を誇っていた自分の武器を、デザームに褒められたとはいえあっさりと止められたことに吹雪はひどく嫌な気持ちになっていた。
「んなこと言ったら、俺だって、」
「何にもできなかったんだ!」
吹雪は強く呟く。シュートを止められた悔しさと、焦燥が入り混じった声だった。染岡は吹雪が一人で解決しようとしていることに、なんだかいたたまれない気持ちになって黙ってしまう。吹雪は、染岡と喋っているのではなく、自分に向かって怒鳴っているようだった。
「こんなんじゃ駄目だ……、完璧にならなきゃ……!」
昨夜の出来事が、アツヤの感情を激しくさせているのだろう。士郎とは思えない剣幕だった。
吹雪の近くにいた風丸に、その言葉は聞こえていた。「こんなんじゃ駄目だ」という言葉が、風丸の中でも響く。
「やっぱり、あいつらと戦うには、もっとパワーが……」
風丸も、焦りのようなものにとらわれ始めていた。
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