二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- (吹雪物語) 世界への挑戦!編 完結
- 日時: 2016/11/08 00:24
- 名前: しろお (ID: Gu5gxE0Z)
時々URLが光っていますが、アフロディのサイドストーリー以外はyoutubeです。なので音量注意です! 世界編からは、吹雪っぽい曲以外にもサイドストーリーのキャラごとのイメージ曲をつけて遊んだりしてますので、よかったら聞いてみてくだされ
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[イナズマイレブン4 呪われたフィールド]
イナズマイレブンの高校生編。中学生編でスポットの当たらなかったサブキャラクターたちがメインです。主人公は豪炎寺の従兄弟。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22282
[イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー]
不動明王の高校卒業後のエピソード。卒業後海外クラブへ挑戦するための旅費、お金稼ぎの時期の話。こちらもサブキャラクターたちがメイン
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=29765
[吹雪兄弟の事件簿]
吹雪兄弟の子供のころの短編。吹雪好きはぜひ
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22087
[イナズマイレブン×REBORN! 神の復活]
こちらはアフロディのお話です。わりとREBORN好きな方向けですかね。イナズマイレブンGOの世界がメインかもです。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=21867
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- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.28 )
- 日時: 2011/10/07 18:27
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
その日の夜は、自由時間だった。
過ごし方は人それぞれであった。もちろん、頭にはイプシロンのことは残っている。しかし、雷門イレブンはジェミニストームに勝ち、いささかの自信がついてきていた。
何より、吹雪がいる。自分たちも、確実に強くなってきている。勝機が無いわけではない。それらのことも、イレブンの気持ちを多少なりとも楽にしていた。
春とはいえ、北海道である。夜は冷える。夜ごはんまでにもまだ時間があるが、ほとんどの部員がストーブを囲んでおしゃべりを楽しんでいる。雷門一行は、白恋中で夜を越すことになった。
「あー……ストーブあったかいっすー……」
壁山がスト—ブの前であったまっている。
「ちょっ。壁山! お前でかいから、幅取りすぎでやんす! 見るでやんす! 鬼道さんが、ストーブの前に集まれないでヤンス!ここは後輩として席を譲るべきでやんす!」
栗松は壁山にどくように言うが、壁山は渋っている。
「気にするな、栗松、壁山。俺のこのマントは、特殊な素材でできていて、ストーブよりも暖かいからな」
鬼道はそう言って二人に得意げに笑って見せた。
鬼道は、鬼道財閥という日本有数の財閥の一人息子だ。珍しい素材を、鬼道の父親かつ鬼道財閥の社長が、息子の誕生日にマントにしてプレゼントしたのだ。
本当にストーブより暖かいのかどうかは、着た人にしかわからない。
「ん? メールだ。誰からだ……?」
風丸がポケットから携帯電話を取り出す。
宮坂からであった。宮坂とは、以前風丸が陸上部に所属していた時に仲良くしていた陸上部の後輩で、髪が長く顔も端正なつくりの美人なのだが、性別は男であり、しかも風丸に対する感情が尊敬や友情だけでなく、恋慕の情もちらほら見受けられ、風丸の困りの種となっている人物だ。風丸と宮坂が並んでいる姿は、どこからどう見ても恋人であった。同級生などからよくからかわれることもあった。
あくまでただの先輩と後輩だ、男同士の。と自分にも他人にも宮坂にも言い聞かせて、雷門中がある東京を離れた後もこうして結局はたから見ると恋人のように連絡を取り合っていた。
おつかれさまです! すごいかっこよかったです! イプシロンだかなんだか知らないですけど、絶対風丸さんには勝てっこないですよ! 宇宙人なんてやっつけちゃってください! 早く帰ってきてくださいね、帰ってきたらデー……じゃなかった、一緒にまた遊びましょうね!
後は女の子のようなカラフルな絵文字で飾ってある。
はあ、と風丸はため息をつく。
「お、誰だそれ、風丸のコレか?」
「おっ! と、塔子、勝手に見るな!」
「いいだろー。暇なんだもん。にしても驚いたな、やっぱコレなんだろ?」
塔子はもう一度小指を立てて見せ、中年のおっさんのようにニヤニヤと笑う。
「ち、違う! こいつはただの後輩だよ!」
風丸は顔を赤くして言う。
「おい塔子、そいつの写真あるぜ」
土門が自分の携帯電話の画面を塔子に見せる。宮坂が雷門中のジャージ姿で、制服の風丸の隣を歩きながら恋人のように寄り添い、風丸が頬を赤らめて宮坂とは反対の方を向いている。
どこからどう見ても、男女二人組である。
「土門お前! 覚えとけよ……!」
「へえー、結構かわいいじゃん!」
「違うからな塔子! そういうのじゃなくて、そいつは女みたいな男でだな!」
「あー、わかるわかる。あたしもそうだから! 女なんだけど昔っからサッカーとかばっかが好きで、髪短くしてたときは男の子のつもりだったんだよ!」
「そうじゃなくてだな、ようするに、塔子は男っぽい女で、そいつは女っぽい男なんだよ!」
「え? 違いがよく分からないな。うーーん……具体的に、何が違うんだ?」
「そ、それはだな……」
アレがついてるかついてないかだ、と言いかけたところで風丸は止めた。一応相手は女の子だ、下品なことはいうまいと思ったのだろう。風丸は中学二年生だが、このころの男の子はこういうところは割としっかりとしている。
何かいい説明の仕方はないかと風丸が考えているうちに、塔子はすでに他の場所に移動していた。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.29 )
- 日時: 2011/11/05 15:35
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
「染岡、何聞いてるんだ?」
ヘッドフォンをしている染岡に、塔子が話しかける。
「ん? おお、俺か? べ、別にいいだろ、なんだって」
「なーんか怪しいな。隠すってことは、聞かれちゃまずいのか?」
「なんだよその目は……」
「わかった。あれだろ? ……アニソンってやつだろ? しかも深夜番組系の」
「ち、ちげえよ! あ、おいヘッドフォン取るな!」
「ん……? クラシック?」
「そ、そうだよ。なんか悪いかよ! 俺がクラシック聴いて……!」
「べ、別にそんなことないよ!? ごめんごめん、変な風に疑ったりして!」
「フン! どうせ、俺にはクラシックなんて似合わないって思ってんだろ?」
似合わない。美女と野獣。そういう言葉が、そこに居合わせた部員達全員の脳裏をよこぎった。塔子は慌てて「そんなことねえよ!」とフォローするが、染岡はすでにヘッドフォンを身につけており、聞くことはなかった。
「ちょっと財前さん! 今の言い方は、アニソンを侮辱していませんか!? だとしたらこの目金欠流があなたを月に変わっておしおきしちゃいますよ!」
「きもー……」
「な、なんですって!? わかりました! アニメの良さを、私がじっくりと君に教えてあげましょう! ……フッフッフ……塔子さんはオタクの素質がありそうですからねえ……さて、どこから教えましょうかネえ……。まずダンボール戦機をじっくり勉強してから、機動戦士ガンダ……いや、まずエヴァンゲ……。ああ! 塔子さんもしかして、魔法少女なんかに興味ありませんか。フッフッフ……。ラノベ貸しましょうか? 僕のおすすめはやっぱり……」
目金は気持ち悪く歪んだ笑みを浮かべ、指をぐにょぐにょと動かしてゆっくり塔子に近づいていく。
「や、やだあ! 気持ち悪いよお!」
目金がぶつぶつと気味の悪い呪文を唱えているのを見て塔子は顔をひきつらせ、すごい勢いで教室を走って出て行った。
「あ、待ちなさい! わかりやすくダンボール戦機から教えますからーー!!!」
目金は塔子を追いかけて、教室を飛び出す。が、彼はオタクを自称するだけあって運動神経が悪く、足は遅い。
風丸が、塔子の叫び声にはっとして顔をあげると、風丸にはその理由が分からなかったが、塔子が教室を走って出ていく後ろ姿をちょうど目撃したところだった。
何気なく時計を見ると、そんなに時間が進んでいるわけでもない。
ありがとう
と短く文字を携帯電話の画面に打ち込んだ後、笑顔の顔文字をつけて返信した。
「夕飯まで時間があるし、俺も、ちょっとそこらへん走ってくるよ」
風丸はそう言い、立ち上がって教室を出て行った。
「俺も行くぜ風丸!」
円堂が勢い良く続く。
「俺らはどうする? 一之瀬」
一之瀬とトランプでポーカーをしている土門が、何気なく一之瀬に尋ねる。
「じゃあ、この勝負が終わったら外に行ってみよう。……負ける気はないけどね」
「へっ。とか言って、手札悪いんじゃねえのか?」
「そう思うなら、止めてもいいよ? 勝つのは俺だから」
一之瀬は不敵な笑みを浮かべる。ゆさぶり合いに負けて、土門は「かなわねえなあ」と呟いた。
「監督」
一人読書に耽っている瞳子に、吹雪が声をかける。
「何かしら」
「あの、イナズマキャラバンに参加すること、親に言ってないから、一度帰ってもいいですか?」
「……ああ、そういえば私としたことが保護者に許可を取るのを忘れてたわ」
これは、嘘である。瞳子は事前の調査で、吹雪に親がいないことを知っている。そして、それが何故かも知っている。吹雪が祖母と二人暮らしをしていることも、彼女は知っている。
吹雪の弟である敦也が雪崩による事故に遭ってなくなった時、実は吹雪も一緒にいた。吹雪の両親もいた。幼い吹雪と敦也を乗せて車で移動中に、悲劇は起きた。
幸か不幸か、吹雪一人が生きている状態で発見された。
その後吹雪は祖母と共に暮らしていたのだ。
そんな事情を知っているからこそ、瞳子は知らないふりをして、あえて保護者と言った。
「確かに直接会ってお話をした方がいいのだけれど、結構遠いのでしょ?」
「そうですね。でもここらは坂が多いですし、坂をスノーボードで降りればそんなに時間はかかりませんよ」
「でもそろそろ暗くなるわ。ケガをされては困るし、一応古株さんに連絡しておくから、乗せていってもらいなさい。お金を引き落としてお土産を買うと言っていたから、多分商店街の方にいると思うわ」
すでに地理情報を掴んでいるところが、彼女の監督としての腕前を表している。
「わかりました。じゃあ、行ってきます」
「あ、吹雪さーん! どこか行くんですかー?」
音無が笑顔で吹雪に駆け寄る。話しを聞いていて、どこに行くのか知っている上で音無は吹雪に声をかけている。
「うん。ちょっとね。家に一旦戻ろうと思って」
「へえー! じゃ、私もついていっていいですか!?」
「いいけど、なんで音無さんが……?」
「決まってるじゃないですか! 選手の安全を守るのも、マネージャーの仕事です!」
「そうだね。心配してくれてありがとう。行こう、音無さん」
「はい!」
音無は満面の笑みで頷いた。
日も落ちてきた夕方、二人は商店街へ向かう。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.30 )
- 日時: 2011/11/04 17:08
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
「あら。士郎君。こっちの女の子は?」
お店の前を通ると、店員のおばさんが吹雪と音無に声をかけた。コロッケを売っているようだ。
「ああ、おばさんこんにちわ。彼女は音無さんって言って、僕の友達なんだ」
「こんにちわ!」
音無は元気良く挨拶する。
「へえー。士郎君は相変わらず、女の子にモテるねえ。ちっちゃい時は、やんちゃ坊主でいたずらっ子だったのにねえ。大きくなったもんだ」
おばさんはにこにこと笑う。
「おばさんも、相変わらずお綺麗ですね」
「ま! そうやって女の子をたぶらかしてると、いつか痛い目に遭うよ!」
吹雪はくすくすと笑う。
「じゃ、おばさん。僕たち、急いでるから」
「ああそうかい、悪かったね。またね。あ、これをあげるよ!」
そう言っておばさんは、コロッケを二つ、包みに入れて吹雪に手渡した。
「ありがとう! じゃあ、また!」
吹雪はコロッケを一つ音無に渡し、おばさんに向かって微笑んで歩き始めた。
コロッケを頬張りながら二人は歩く。
大食いの音無にとって、立ち食いははしたない行為ではない。
「おいしいですね、このコロッケ!」
「うん。、僕もこの味が大好きなんだ! よく、お母さんが買ってきてくれて……」
吹雪は、笑顔で家族と食卓を囲む思い出を頭に浮かべる。
大通りを通っていると、道の向こうから不良風な少年達が、横一列に並んで、肩で風を切って堂々と歩く姿が吹雪の目に入った。
数は四人。あきらかに通行の邪魔になっているが、少年達はかまわずに携帯をいじったりぺちゃくちゃとお喋りをしたりして、平然としていた。噛んでいたガムを道端に吐き捨てる者もあった。
吹雪はガムを吐き捨てたことを注意しようかとも思ったが、相手の少年達は吹雪より一回りほど体が大きく、イナズマキャラバンに参加したその日から面倒を起こすのは避けたいという気持ちもあって、それをためらった。
通り過ごそうと思って吹雪が道の端に移動したが音無はコロッケに夢中で不良少年達に気づかず、肩がぶつかってコロッケは地面に落ちてしまった。不運にもそこには泥水が溜まっており、拾うことはできない。
「気をつけろ!」
ぶつかった少年が言った。悪びれる風もなく、明らかに責任を全て音無になすりつけ、自分を正当化していた。
「す、すみません……」
音無は頭を下げて謝る。吹雪は水の中で変色していくコロッケを見つめた後、一瞬、不良少年達をにらみつける。
「ねえ。お兄さんたち」
「あ?」
不良少年達が声のした方を向くと、吹雪がいつものように笑って立っている。
「なんだてめえ? 文句でもあるってのか?」
こうやって先手をうつことで相手を先に脅しておく。不良の常套手段だ。
「音無さんはちゃんと謝ってるのに、なんでお兄さんたちは謝らないの?」
怖気を全く見せない笑顔のまま、吹雪は続ける。
「むしろ、横一列になって他の人の邪魔をしながら歩いてたお兄さんたちのほうが、僕は悪いと思うんだけど。お兄さんたちも謝ってよ」
「ああん!?」
不良少年達はゆっくりと吹雪に近づいていき、目つきの悪い一人が吹雪の目の前に立って吹雪のマフラーを下から乱暴に掴む。
「彼女の前だからって、正義の味方みてえに強がってんじゃねえよ」
顔がくっつくぎりぎりで不良少年が吹雪ににらみをきかす。マフラーが首に締まって、吹雪の顔が赤くなる。
「…………っ」
「吹雪さん!」
音無が声をあげる。吹雪は黙ったままでいる。
「おいこいつビビって声も出せねえみてえだぞ!」
不良の一人が言った。
「お母さん助けてーって叫んで土下座したら許してやろうぜ!」
「それイイ! やれやれ!」
「マジ馬鹿だろこいつ! 写メとってブログに載せよ!」
口々に少年達は勝手なことを言う。
吹雪は苦しそうにしながら、顔を真っ赤にさせている。それを見ても少年はマフラーを掴みあげたままでいる。
「ほら叫べよ! お母さん助けて—ってよお!」
「ムービー撮れムービー!」
「……せよ……」
「あ!? もっとでっけえ声で言えよ! 聞こえねえんだよ!」
吹雪のマフラーを掴んでいた少年ははっとする。先ほどまで顔を真っ赤にさせて黙ったままでいた吹雪が、鋭い目つきで不良少年の方を見ながら、歯を見せて笑っていたからだ。
敦也になっていた。
「放せよ糞野郎って言ったんだよ糞野郎」
言い終わる前に、吹雪の拳が少年の顔面にめりこんでいた。鼻の尖った部分がひしゃげ、同時に鼻血が勢いよく噴き出す。
「い、痛っ……」
殴られた少年は吹雪から手を離して鼻を押さえる。
自由になった吹雪は、容赦なく目の前で鼻を押さえている少年に飛び蹴りをかます。少年はとっさに腕で防御するが、衝撃で後ろに転倒した。
好機と見るやいなや、吹雪は瞬時に飛び上がり、倒れた少年の上に馬乗りになって右手と左手で交互に少年の顔面を殴る。殴る。殴る。マフラーに返り血が飛ぶ。気にせずに、吹雪はたんたんと殴り続ける。その顔は笑っている。
よく見ると、吹雪は手に石のようなものを握っている。瞳子に貸してもらっていた携帯電話だった。衝撃で、形が歪み始めている。
何が起きたのか理解できずにただ呆然と二人の姿を、他の三人の不良少年達は見つめている。
音無も、口を手で覆って、何もできずに目の前の光景を見ている。通行人までもが、唖然としていた。当然だろう。さきほどまで鹿のように大人しかった者が、急に狼になったようなものだ。
「あ、あいつ、見たことあるぞ!」
不良少年の一人が声をあげる。
「雰囲気が変わってて気づかなかったけど、そうだ、よく見りゃあいつ、吹雪士郎だ!」
「ほ、本当だ。急に雰囲気が変わって凶暴になるって加藤さんが言ってた通りだ!」
加藤さんとは、この不良少年達のグループのリーダー格のことだろうか。
「け、警察呼んだ方がいいんじゃねえか?」
「もう他の奴が呼んだだろ! ずらかるぞ!」
「石田のやつはどうすんだ!」
「ほっとけ!」
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.31 )
- 日時: 2011/11/04 17:09
- 名前: しろお (ID: eR9v1L6x)
「ん? なんじゃ、あの人だかりは」
古株が人ごみの中をかき分けて進むと、吹雪と音無がいた。その近くに、仰向けになっている少年がいる。
「な、なんだなんだどうしたんじゃこれは! 春奈さん、吹雪君!」
「あ、古株さん……」
「とにかく話は後でしよう! キャラバンに乗るんじゃ!」
「そうか、それであの子を殴った、ということか……」
「はい……すみませんでした、古株さん。僕、許せなくて……」
「いいんじゃよ。気にすることはない。しかし驚いたな。北海道みたいな中でも、そういう柄の悪い連中がいるんだな」
「音無さんも、ごめんね。見苦しかったよね、きっと」
「は、はい……ちょっとだけ怖かったです。でも、……」
「でも?」
「ちょっと、かっこよかったです」
「はは、そっか……」
ごめんね、と吹雪はもう一度謝った。
「あ、ここで降ろしてください。すぐ戻りますから。シャツとか、持ってきた方がいいですよね?」
「一応こっちにも予備がたくさんあるんじゃが、まあ、下着なんかは多い方がいい」
「わかりました」
吹雪はキャラバンを降り、家の中に入る。
「おばあちゃん、ただいま」
「おかえりなさい」
こたつに入ってお茶を飲んでいる。吹雪の髪よりも色の抜けた白髪のおばあちゃんだが、年を取って老いた今でも、吹雪に似た綺麗な雰囲気がある。
「あのさ、僕、しばらく合宿みたいなのがあるんだ。だから、ここには少しの間、帰れないよ」
「そうかい。頑張っておいで。健康には気をつけるんだよ。あ、あれ持って行きなさい、腹巻。お腹壊したら大変だからね」
「いいよ、おばあちゃん……。僕のことはいいから、おばあちゃん、元気にして待っててね?」
「そうかい。寂しいねえ……」
「すぐ戻るようにするよ。約束する」
「そうかいそうかい。行ってらっしゃい」
「うん……。準備ができたら、行くね」
「ふふ……。ばあちゃんね、なんだかこうなる予感がしてたんだよ。もう、下着と靴下、まとめておいたよ」
「本当? 流石だなあ」
吹雪は、雷門イレブンが使う緑のリュックに荷物を詰め込む。
「はい。少ないけど、お小遣い持ってお行き」
「ありがとう。行ってきます!」
「あ、待って! お守りだよ」
吹雪の祖母は、吹雪に小太刀を渡す。片腕程の長さだ。
「わっ。何これ。刀? まずいよこんなの持ってたら!」
「その刀はね、ご先祖様の、吹雪算得様っていう剣豪の持っていたありがたいものなんじゃ。リュックに忍ばせておきな」
「う、うん……大丈夫かな。斜めにすればぎりぎり……」
「頑張っておいで」
「あ、吹雪さん戻ってきた」
「よし、学校に戻ろう」
「お願いします」
「吹雪さん、なんでさっき、携帯電話握ってたんですか?」
「ああ。あれかい? 手に堅いものを持ってると、パンチの威力があがるんだ」
「へえー……。ってそういえば! 携帯壊れてませんでしたか!?」
「あ!?」
吹雪はポケットから回線が飛び出している携帯電話を取りだす。
「あーあ……。これ、もう使えませんよきっと」
「謝らないとね……。あ、そういえばまだあの人達に、謝ってもらってないよね」
「もういいんですよ。吹雪さんがああやってくれただけで、もういいんです」
音無は笑って見せる。
「そうだね。音無さんの笑顔も見れたしね」
「ふふ、有料ですよ?」
「あ、あらら……? 音無さんはなんだか、他の子みたいにうまくいかないなあ……」
そう言うと、吹雪と音無は二人一緒に笑った。
「青春じゃなあ」
————俺が壊した、ってことにしてやるか。
古株は心の中で呟いた。
結局その後、喧嘩沙汰の御咎めもなく責任は古株さんが持ったが、瞳子が携帯電話にこだわる性格ではないため新しい携帯電話を買うということでその事件は丸く収まった。
しかし、瞳子の携帯電話が新しく別の物になったことで、後に新たな事件を呼ぶことになる。
そこからが吹雪の悲劇の始まりだったといってもいい。
しかしそれはまた別のお話である。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.32 )
- 日時: 2013/02/23 18:35
- 名前: しろお (ID: 7OpRbXkI)
「え!? イプシロンから襲撃予告!?」
円堂が思わず大きな声をあげる。
「予告先は京都の漫遊寺中」
瞳子は落ち着いた声で言う。
つい先ほど、新しくなった瞳子の携帯電話に、雷門校長から連絡があった。丁度雷門イレブンがコンビニの前で休憩していた時だ。
中学サッカー協会の会長である雷門は、それだけに情報網があり、度々瞳子に情報を流している。雷門の電話番号は登録していたのだが、瞳子の携帯は一度壊れてデータが飛んでいたために電話があった時、瞳子は誰から来たのか最初は分からなかった。
雷門校長の話によると、漫遊寺中のサッカー部は大会には参加しないが実力は全国クラスの隠れた強豪校らしかった。
とにかくすぐに慢遊寺に向かうように、とのことだった。
瞳子はそれをおおまかに雷門イレブンに説明し、早速出発の準備をさせる。
第五話 イプシロン来襲!
京都の町並みをゆっくり堪能する暇もなく、一同は地図を頼りに慢遊寺に足を急がせる。
小さな山の中に、お寺が見える。一同は石段を登り、そこへ向かう。
一同は慢遊寺に着く。
お寺の隣に、校舎がある。入口の門をくぐると、そこの生徒が何人かいた。
太極拳だろうか。何人かの生徒が、集団になってゆっくりと体を動かしている。
そしてその横の道に、隕石を落としたような巨大な穴があった。穴の周りで太極拳をやる光景は、雷門イレブンにとって新鮮だった。おそらくこの穴は、イプシロンがやったものだろう。
「なんか、のんびりしてるよな……」
拍子抜けしたように、風丸が言う。それに合わせて、塔子も
「襲撃予告なんて全く気にしてない感じ……」
と言った。
とにかくサッカー部を探そう、と円堂が言う。
「サッカー部なら奥の道場みたいだよ。どうもありがとう」
円堂達の後ろ、石段の途中で、吹雪が見知らぬ女の子二人に挟まれている。道着のような制服を着ていることから、おそらくは慢遊寺の女子生徒だろう。
はーいと二人は笑顔で返事をする。吹雪に惚れてしまっているのだろうか、頬がほんのり赤い。
「また何かあったら、よろしくね?」
吹雪が甘い声で囁く。はーいともう一度同じような返事をし、手を振って女の子達は石段を降りて行った。
なんて女たらしだ……と円堂達は苦笑いを浮かべた。
靴を脱いで寺の廊下を進んでいくと、道場らしきものが見えた。蹴球道場と書いてある。
「間違いない! よし、行くぞ皆!」
長旅のせいか、やっと目指していたものが目に入って嬉しくなり、円堂が勢いよく先頭を切って廊下を走りだす。おうと部員たちも威勢よく返事をし、一位を競うかのように円堂を追いかける。
突如円堂の足が前に滑る。
「んあ?」
円堂が間の抜けた声を出し、続いて円堂の後ろを走っていた染岡が足を滑らせて円堂にぶつかる。さらにその後ろの塔子は足を滑らせたかと思えば体が軽いのか宙に浮いて染岡の後頭部に頭からつっこんでいった。
「うわっ!」
「いてっ!」
塔子と染岡がぶつかった瞬間、塔子の足が伸び、後ろの土門の顔に鋭い蹴りが入る。そのことで土門は失速し後ろの栗松、目金が派手に前のめりになり、逆ドミノ倒しのようになるが、最後に足を滑らせた壁山がなんとかふんばって全てを押しつぶすのは避けようとするが、風丸がそこにつっこんできていた。
「す、すまん!」
と言いながら風丸は容赦なく壁山の大きな背中にぶつかり、衝撃で壁山は倒れ部員達が下敷きになった。
どーんと大きな音がした。部員たちは廊下の上でノックダウンしている。
吹雪と一之瀬と鬼道は性格からいって走るようなタイプではないため被害を受けなかった。
「重い……重い重い重い重い!!」
壁山の下で目金がもがく。
円堂が足を滑らしたところだけに、ワックスが丹念にかけてある。
「うっしっし! ざまあみろ!」
庭の草のしげみの中から、小柄な少年が床掃除用のワックスを手に持って奇妙な笑い方をしている。
「あいつ!」
犯人を特定した塔子が、高床式の廊下から庭へ降りる。
どすん!
今度は落とし穴だった。それを見て、小柄な少年はさらに声を高めて笑う。
「木暮ーっ」と、誰かの声がした。「やばっ」と言って小柄な少年はどこかへ走り去っていく。ゴキブリのような身軽さだ。
しばらくすると声の主が来た。
坊主頭をバンダナで隠している、細身の少年だった。しかし中学生というよりは住職という雰囲気があり、顔つきも大人びている。
「うちの小暮が、とんだご迷惑を……!」
なんでも、慢遊寺中サッカー部の部長らしい。木暮というのは、さっきの少年のようだ。礼儀正しく慢遊寺中の部長は頭を下げる。
話に寄ると、木暮は人を信じない性格らしく、チームメイトと仲が悪いため、まず精神を鍛えようと寺の掃除をやらされていたのだが、自分がいじめられていると勘違いしてどんどん性格がひねくれていったらしい。
しかし木暮が人を信じないのも、理由があるようだ。木暮は昔親に捨てられたらしい。
そこを、ここの校長が拾って育てたのだそうだ。
話が終わると瞳子が用件を話した。
「ついてきてください」と部長が言う。一同は黙ってついていく。
蹴球道場についた。いわゆる部室として使っているらしいが、物が置いてある訳でもなく、部長の話に寄ると瞑想するときに使っているらしい。
そこには、慢遊寺サッカー部の部員が丁度瞑想をしている最中だった。円堂が声をかけてみても、かなり集中していて、反応を見せない。
「なんで正座したまま、眠ってるんでやんすかね?」
栗松が壁山に訪ねる。
「さあ……。あぐら掻いて居眠りこいてる人もいるっすね。鬼道さんに聞いてみるっす。鬼道さん、これ、特訓かなんかなんすか?」
「知らないのか? 座禅を組んでいるんだ。こうやって意識を集中させることで、メンタルトレーニングにもなるし、イメージトレーニングもできるんだ」
「物知りですね。流石は将来有望な鬼道さんです」
漫遊寺の部長が言う。鬼道の名声は、京都まで聞こえているようだった。
「どうやらまだ時間がかかりそうですので、皆さんも、精神統一なされてはいかがか」
やろうやろうと乗り気で部員たちは思い思いの姿勢で精神統一を始める。
開始一分とたたないうちに、壁山と栗松は寝息をたてている。塔子と円堂も眠りそうになりながらも必死に意識を集中させて眠気を払っている。
座禅を終え、一同は襲撃予告について話しあう。
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