二次創作小説(映像)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- (吹雪物語) 世界への挑戦!編 完結
- 日時: 2016/11/08 00:24
- 名前: しろお (ID: Gu5gxE0Z)
時々URLが光っていますが、アフロディのサイドストーリー以外はyoutubeです。なので音量注意です! 世界編からは、吹雪っぽい曲以外にもサイドストーリーのキャラごとのイメージ曲をつけて遊んだりしてますので、よかったら聞いてみてくだされ
しろお別作品リンク
*過去ログに落ちたものもありますので検索条件などお気をつけください
またクリックして飛べる直接リンクを貼ったところ禁止されていたので、URL欄にコピーペーストしていただくか、キーワード検索をお使いください
[イナズマイレブン4 呪われたフィールド]
イナズマイレブンの高校生編。中学生編でスポットの当たらなかったサブキャラクターたちがメインです。主人公は豪炎寺の従兄弟。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22282
[イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー]
不動明王の高校卒業後のエピソード。卒業後海外クラブへ挑戦するための旅費、お金稼ぎの時期の話。こちらもサブキャラクターたちがメイン
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=29765
[吹雪兄弟の事件簿]
吹雪兄弟の子供のころの短編。吹雪好きはぜひ
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22087
[イナズマイレブン×REBORN! 神の復活]
こちらはアフロディのお話です。わりとREBORN好きな方向けですかね。イナズマイレブンGOの世界がメインかもです。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=21867
!この小説を読むときは、この文の下にある数の大きい数字から順番に、ぽちっと押して読んでね!
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121
- Re: (吹雪物語) 世界への挑戦!編 ( No.480 )
- 日時: 2013/09/04 23:27
- 名前: しろお (ID: 96w2IAQO)
観客席のリカは顔から手を放し言う。「さすがたちむー! ウチが見込んだだけのことはある!」
隣の塔子はリカのいい加減さに呆れて声もでない。
日本の選手達は気合がみなぎっていた。珍しく、豪炎寺が相手の足をかけてファウルをとられた。ブーイングが起きる。
飛鷹がボールを持ち、ドリブルであがっていく。
「飛鷹、ヒロトがノーマークだ! ……飛鷹?」
鬼道の声が聞こえていないのか、飛鷹は自陣の低い位置から爆走する。活躍せねば、という気持ちが先行してしまっている。周りを見失っていた。
「なんだよアイツ、隙だらけじゃねえか」
韓国FWの南雲は、涼野と共に飛鷹を追った。飛鷹は囲まれるが、持ちこたえる。
奪われるのは目に見えていたがすでにチャンスウとアフロディの計らいで、韓国の選手達は揃って相手陣営にちかづき、いまかいまかとショートカウンターをしかけるのを待っている。
涼野と南雲はワンツーパスとドリブルを混ぜ込み、土方、そして壁山を抜き去る。
“残すは立向居ひとり————!! ふ!?”
前線から吹雪が全速力で、南雲と涼野を追いかけてきていた。
彼の目はすでにボールを捉えている。
“吹雪だァァ!? ありえないところに吹雪があらわれたぞォ!?”
しかし吹雪といえど、2人を相手にするのは至難の業に思えた。
『力を出し惜しんで勝てるほど、こんどの相手は甘くないぞ』
思い出すのは久遠の言葉だ。奥の手を出すなら、今しかない。
アイスグランドを越えるハイスピードディフィンスを。
「僕達の世界への道は————誰にも邪魔させない!!」
吹雪はふたりを追い越した。ボールを持つ南雲をチェックしながら走り、涼野の動きを予想してコースをカットする。
ふたりのオフィンスを相手にしているのに危機感は皆無に近い。楽しいとさえ感じ、吹雪は自分の体の異常なまでの軽さを覚えていた。
今なら何でもできる気さえした。
(相手の動きが……止まって見える。誰も僕を止められない!)
まさしく一瞬の出来事だった。いきなり涼野にマークについたかと思うと、だっと跳躍し、華麗に南雲の足からボールをえぐりとった。一瞬何が起きたかわからず、涼野も南雲も凍りついた。
「スノーエンジェル……」
ボールを奪うと、浮き足立つ韓国のディフィンスを一閃、切り裂いていき、サイドを独走する。誰も触ることは愚か、追いつくこともままならない。
「さすがだね」
アフロディを除けば、である。彼はまさしく全ての能力においうて天賦の才をもつ者であり、吹雪のスピードをもってしても完全には振り切れない。
アフロディは少しの間だったが、エイリア騒動で吹雪と同じチームに所属していたことがあり、今日の試合も最初から吹雪の動向に常に目をやっていた。
吹雪の横を走りながら、アフロディの目は、吹雪のプレーを期待する輝きを見せる。アフロディのプレスは吹雪に、「さあ、はやく何か見せてくれ」と催促しているようだった。
吹雪は中央に、ある人物が来るのを待っていた。豪炎寺ではない。
スペースにボールをだした。土方があがってきていた。
「おっしゃ吹雪、見せてやろうぜ!」
「ああ!」
吹雪はさらに加速した。アフロディは神速というものを、今その目で見ることができた。一瞬で吹雪は韓国のディフィンスラインに並び、そして土方がミドルシュートの構えをとったと同時に裏に飛び出した。
豪快なミドルシュートに追いついた吹雪は空中でダイレクトシュート、ボールを地面にねじ込むように叩き付けた。雷をまとった獣のようなそのシュートには、壮麗さがあった。
完璧にラインを割りネットに突き刺さる。その瞬間、スタジアムはその妙技に惜しみない盛り上がりを沸かせた。
“ゴオオオオオォォォーーーる!! イナズマジャパン先制ぇぇぇぇ!! 土方と吹雪の見事な連携が決まったァァァァ!!!”
吹雪と土方は肩をくんで、声援に向けて拳をつきあげた。そして歓喜の雄たけびをあげる。
選手達も集まってきた。選手全員で得点を喜ぶが、久遠の顔は晴れない。
「なるほど」
チャンスウは自陣のゴールエリアに転がるボールを、静かに微笑みながら見つめている。
「アフロディくんの言ったとおりでした……もっとも危険なのは豪炎寺修也ではない、あの9番……」
得点盤に、イナズマジャパン1−0ファイアードラゴンと表示されている。
- Re: (吹雪物語) 世界への挑戦!編 ( No.481 )
- 日時: 2013/09/04 23:27
- 名前: しろお (ID: 96w2IAQO)
「お前はキャプテンでありながら、何も見えていないようだな」
ベンチの円堂は、その久遠の言葉を考え続けていた。が、考えてもわからない。
正GKとして活躍してきた彼だったが、何故か久遠はこの決勝戦では使わないつもりらしかった。
“さあ1点リードのイナズマジャパン。世界に行くのはどちらかァ!?”
韓国がボールを中央に置き、日本もリスタートに備えてポジションをとる。
「吹雪ー! もう一発キメてやろうぜえ!」
土方が後方から声をかける。「ああ!」と吹雪も威勢良く返す。
しかしアフロディとチャンスウは、ビハインドのこの状況で不敵な笑みを浮かべている。
「やるんだね、あの戦術を」
アフロディは美しい瞳で吹雪を見据えている。が、どこか冷たさを秘めている。
「攻守に長けた吹雪は豪炎寺よりも危険な存在。最初の龍の餌食は———」
彼です、とチャンスウは言い、ボールを触った。
アフロディが後ろに流し、試合が再開される。
第十二話 波乱
ドリブルする南雲に緑川がスライディングしたが、ルーレットで鮮やかにかわされ、そのままパスが繋がっていく。
「ずいぶん上達したようだな、レーゼ」
「なんだと!?」
あからさまな挑発に、胸倉を掴みたくなる気持ちを抑えて、緑川はディフィンスに戻る。
チャンスウにボールが渡ったとき、吹雪が追ってきていた。
「スノーエンジェル……」
チャンスウのフェイントも物ともせず、鮮やかにボールを奪う。
“吹雪の活躍が止まらないィィィィ!!? もう3人くらい、吹雪がいるのではないかというくらい、ほとんどのプレーに顔を出しているぞォ!?”
ドリブルでかけあがるが、ここで違和感に気づいた。
やけに吹雪にかかっている人数が多い。
「吹雪、こっちだ!」
綱海がボールを要求したので、パスをだす。
韓国の選手達は水を得た魚のように俊敏な動きになり、綱海と吹雪に荒いタックルを浴びせた。
「ふふ……龍の雄たけびを聴くがいい。パーフェクトゾーンプレス!!」
チャンスウの指示でふたりを囲う韓国の選手達の様子はまるで、龍が獲物を締め付けていたぶっているようだった。
チャンスウは人数をかけたプレスで綱海からボールを奪うと、たくみなパス回しでキープしだす。
吹雪と綱海は籠に閉じ込められた鳥のように慌てふためき、ボールを追いかけるが、いたずらに体力を消耗するばかりである。バルセロナのポゼッションを連想するような鮮やかなパスの応酬だった。
状況に耐えかね、吹雪はチャンスウにスライディングをしかけた。が、チャンススウはボールを浮かして吹雪をかわしたかと思うと、その後ろに居た綱海が吹雪と激突した。
「ぐわああ!!」
綱海が悲鳴をあげながら倒れた際、綱海の膝は吹雪の脛を打っていた。
うずくまったまま起き上がらない2人を見て、チャンスウはボールを外に出す。
選手と審判が集まってくる。
- Re: (吹雪物語) 世界への挑戦!編 ( No.482 )
- 日時: 2013/09/04 23:28
- 名前: しろお (ID: 96w2IAQO)
「悲劇です」
チャンスウは言った。「しかしこれは彼らが招いたこと。我々のタフなプレッシャーの中で苛立っていたのでしょう、それでボールを奪われてパス回しをされたとなれば、頭に血が上るのも当然。躍起になってボール追いかけ味方と激突、といったところですか」
「てめえ……! あれだけファウルすれすれのタックルを浴びせておきながら、よくそんなナメた口がきけるな!」
土方が罵声を浴びせ、審判が睨んだが、鬼道がとっさ謝らせたため事なきを得た。
パーフェクトゾーンプレスの極意は精神のかく乱にあるようだった。
事実、吹雪を失ったことだけでなく、イナズマジャパンのムードは一気に暗くなった。
担架で運ばれた二人はベンチの前で休む。
試合は一時中断した。
「虎丸、木暮、交代だ」
吹雪は必死の抗議をしたが、久遠は「そんな足では使え物にならん」ときっぱり言い張った。
「くそっ……」
悪態をついても、吹雪の足は真っ赤に腫れ上がり、出ていても足手まといになるのは見えていた。
韓国ボールで試合が再開される。緑川が奪い、ドリブルで相手を抜き、いったん土方にボールをさげる。
外から試合を眺めると、とても悲しい気持ちが甦ってきた。
エイリア騒動の頃のものである。
気温の変化や宇宙人との戦いというストレスにより、解離の症状が悪化し、情緒不安定に陥り試合に出ることが困難になった。それまで吹雪は獅子奮迅の活躍でチームを救ってきていたが、突然、お荷物になったのだ。
「僕……みんなの役に立てたかな」
隣に座る音無に、吹雪は訊いた。
「はい、もちろんですよ! だからこそ吹雪さんが今いないのは、きっと痛手だと思います」
「……ただのラフプレーにかっとなってしまって……僕は、まだまだ未熟者だ……」
二度目のパーフェクトゾーンプレスの餌食になったのは、土方と飛鷹だった。
「近くで見るとおっかねー……」
木暮は腰がひけている。入ったばかりの虎丸も、吹雪のようには動けない。
強引に足をかられて土方はボールを失うとともに、地面に倒れる。ボールをとりにいった飛鷹は顔面にボールが当たり倒れたが、パーフェクトゾーンプレスからは一時的にしろ逃れた。
こぼれたルーズボールを拾ったのは涼野。一気に韓国が中央を攻めあがる。
風丸がプレスをかけ、涼野はチャンスウにスルーパスをだした。チャンスウはワンタッチで、壁山を簡単に抜く。
(くる!)
立向居はシュートだと判断し構えた。鬼道も、スライディングに行ったが、ほとんどチャンスウからは見えないはずの後ろ斜めの角度から走ってきていた南雲にパスがで、あとは軽く南雲が触るだけでゴールに入った。
“決まったァァァァァ!!!! ジャパンはキーパーもDFも、チャンスウの魔法のようなパスに逆をつかれ一歩も動けなかったぞォォ!! ファイアードラゴン、完璧な戦術ですぐさま同点だァァァ”
これで1−1と、日本は追いつかれた。
日本は自陣に全員集まっていたため、「どんまい!」とか、「まだまだ!」とか声をかけあう。
「まずはパーフェクトゾーンプレスを破らないとな……」
豪炎寺があごに手をあてて、突破口を考える。「大丈夫ですよ!」と虎丸が言った。「俺たちには連携必殺技があるじゃないですか!」
「でも。あんな激しいプレッシャーの中で連携なんて……」
風丸の言うことは最だった。
鬼道も同じく頭の中で糸口を手繰り寄せていたが、今の虎丸の発言にはなにかひっかかりを覚えた。
「虎丸。今なんて言った」
「へ? え、ええと、俺と豪炎寺さんには、連携必殺技があるっていいました……」
「連携……?」
鬼道は考えろ、と自分に言い聞かす。同点においつかれたこの状況で久遠がなにも言って来ないのは、答えがフィールドにあるときだ。久遠は何と言っていた?
『韓国戦にむけて、連携の練習をする必要はない』
久遠はそう言っていた。そして、泥の中練習するようにとも言っていた。
「そうか……! みんな、泥の練習を思い出せ。ここを泥のフィールドだと思ってやれ!」
どういうことか最初かわからなかったが、キックオフから、イナズマジャパンはパスで繋ぐ場面が増えた。
「泥のフィールドって、こういうことですよね……?」
虎丸はロングパスを地面に落とさないようトラップし、ワンタッチで風丸に繋ぐ。風丸はダイレクトで鬼道に渡した。
“イナズマジャパン中盤での華麗なパス回しィィ!! ダイレクトかワンタッチで全て繋いでいるぞォ!? これは韓国も動けないかァ!?”
- Re: (吹雪物語) 世界への挑戦!編 ( No.483 )
- 日時: 2013/09/04 23:28
- 名前: しろお (ID: 96w2IAQO)
「豪炎寺、虎丸、あがれ!」
鬼道はふたりが前線に行くのを見てから、緑川にパスを要求し、虎丸へのスルーパスをだした。
(いきますよ豪炎寺さん!)
虎丸はシュートの構えをとる。「タイガードライブ!」
走る豪炎寺は、ボールが来たときふいに、観客席が目に入った。一瞬だったが、スーツ姿の父に似た男が目に入った気がした。
「くっ」
反応が遅れ、無理な態勢で打ったため豪炎寺のシュートはポストを叩いて外に出た。
「タイミング、ずれちゃいましたね。これで次からはマークも厳しくなるかも……」
豪炎寺は汗をぬぐい、もう一度観客席に目をやった。そこに父の姿はない。
「どうしたました?」不審に思った虎丸は口に出してみる。
「……ああ。いや、悪い。次は決めるぞ」
「はい……」
いまだ同点だが、流れは韓国にある。
ゴールキックはアフロディがとり、チャンスウに渡す。すぐさまセンタリングが出た。涼野が走りこんでいる。
鬼道と土方ふたりで涼野に競り合った。が、涼野は飛ぶと見せかけて勝負に出ず、土方と鬼道は土方がうえになる形で倒れた。ボールは立向居が拾うも、ふたりは足を痛めたようだった。
土方と交代で栗松が入る。
韓国MFペクヨンが風丸をツータッチでかわすが、壁山が前に立ちふさがった。ボールを奪った壁山は栗松に長いパスをだす。
「やってやるでやんす!」
しかし韓国の選手は個々の能力も高く、栗松のフェイントは一発で見破られ止められた。
涼野に出たスルーパスを間一髪で戻ったヒロトが奪うが、それも束の間、ボールをカットした方向にいた南雲が鮮やかに奪い返す。
南雲はペナルティエリア内でフリーのアフロディの足元に、浮きパスをだした。
立向居は飛び出している。
「進化しているのは、君たちだけじゃない」
不敵な笑みのままアフロディは一歩進み、パスを直接左足のアウトサイドで高く浮かし立向居をかわすと、ゴールの右側にシュートを放った。
“ごおおおおおーーーーーっる!! アフロディ選手の素晴らしいアウトサイドループで、見事にゴールゥゥゥ!!” 才能光る美しいゴールに、スタジアムは割れんばかりの大歓声に包まれる。その喝采の中で、アフロディはチャンスウと南雲にハイタッチをかわす。
日本のリスタートと同時に、前半終了のホイッスルが鳴った。
- Re: (吹雪物語) 世界への挑戦!編 ( No.484 )
- 日時: 2014/02/25 18:01
- 名前: しろお (ID: pfT58CKF)
韓国の選手達は余裕があるようだったが、すでに日本の選手達は苦しくなっている。
「後半はさらにメンバーを替えていく。緑川、鬼道を下げる」
緑川は猛反発した。
「まだやれますよ、俺!」
「連日の無理がたたっている。足にきているぞ」
その指摘を受けると思い当たる節があるようで、緑川はそれ以上は何も言わなかった。
「鬼道もだ。プレスのとき足を痛めたな。しばらく下がって休んでいろ」
「……気づいていましたか」
「緑川の代わりに、不動を入れる」
突然のチャンスに不動も驚いた。
「へえ……やっとですか」
嬉しすぎるのか、少し眉がひくついている。が、この采配に鬼道が抗議した。
「ちょ、ちょっと待ってください監督! 不動はまだチームに溶け込んでません!」
「敵は不動を知らない」
久遠は鬼道を一瞥したあと、ピッチに目を戻した。「不動はジョーカーだ」
切り札という意味だろう。たしかに不動はこの大会、一度も出場していないから敵はデータが無い。アフロディも不動とは面識がないはずだ。
「そういことなんだよ鬼道クン、怪我人はすっこんでな」
立場が逆転したとたん、不動は傍若無人な態度に戻る。
さらに驚かせたのは、このまま10人でやるということだった。ベンチにはもう円堂しか残っていないが、今日の久遠は円堂を使う気はさらさらないようだった。
鬼道を途中から出すつもりなのか、あるいは本当にこのままやるのか———真意はわからない。
「ちょっとアンタ! なに無茶してんのよ! 私あんたの半径1km以上離れられないんだけど! 本選はどうなるのよ!」メリシンが怒鳴る。
(ごめんごめん。怪我治せない?)
「すぐは無理だよ。私の力じゃ、頑張っても二週間はかかる」
「吹雪さん、大丈夫ですか? 医務室で診てもらったほうが……」
音無は、吹雪の脛をアイシングしながら心配して言う。
「いいんだ。この試合は、最後まで見ていたんだ……」
音無に肩を貸してもらって、吹雪は豪炎寺のところまで行った。
「豪炎寺くん。相手の6番、ゴール前でもシャツを引っ張ってきたから、わざと倒れてPK狙えるよ」
「そうか。吹雪……お前はすごいな」
「え? ど、どうしたのさ。いきなり」
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121
この掲示板は過去ログ化されています。