二次創作小説(映像)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- (吹雪物語) 世界への挑戦!編 完結
- 日時: 2016/11/08 00:24
- 名前: しろお (ID: Gu5gxE0Z)
時々URLが光っていますが、アフロディのサイドストーリー以外はyoutubeです。なので音量注意です! 世界編からは、吹雪っぽい曲以外にもサイドストーリーのキャラごとのイメージ曲をつけて遊んだりしてますので、よかったら聞いてみてくだされ
しろお別作品リンク
*過去ログに落ちたものもありますので検索条件などお気をつけください
またクリックして飛べる直接リンクを貼ったところ禁止されていたので、URL欄にコピーペーストしていただくか、キーワード検索をお使いください
[イナズマイレブン4 呪われたフィールド]
イナズマイレブンの高校生編。中学生編でスポットの当たらなかったサブキャラクターたちがメインです。主人公は豪炎寺の従兄弟。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22282
[イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー]
不動明王の高校卒業後のエピソード。卒業後海外クラブへ挑戦するための旅費、お金稼ぎの時期の話。こちらもサブキャラクターたちがメイン
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=29765
[吹雪兄弟の事件簿]
吹雪兄弟の子供のころの短編。吹雪好きはぜひ
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=22087
[イナズマイレブン×REBORN! 神の復活]
こちらはアフロディのお話です。わりとREBORN好きな方向けですかね。イナズマイレブンGOの世界がメインかもです。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=21867
!この小説を読むときは、この文の下にある数の大きい数字から順番に、ぽちっと押して読んでね!
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.3 )
- 日時: 2012/09/26 23:40
- 名前: しろお (ID: kEMak/IT)
いつもの様に、部活の練習が終わると、吹雪は北が峰の巨木に向かっていた。
白恋中から南西の方角にその雪原はある。季節は春ではあるが、北海道では五月でも雪が降る。それに関東の二月と変わらないほど寒い。
(もう春なのに……)
例年よりも寒さが長引いている。
吹雪は寒そうに一瞬体を強張らせて、マフラーを閉めなおした。右脇に挟んだボールが、にわかに暖かい。
歩いても歩いても同じ景色が続き、ずっと雪の上を歩くうちにスパイクは凍結してしまっていた。
(少し温まろうかな)
ため息を吐き、吹雪はリフティングを始めた。
何回か続けている内に、急に強い風が吹き、風に運ばれた雪が吹雪の目に入った。そのせいでコントロールは乱れ、吹雪はボールを見うしなってしまう。
目を開けてボールを探すと、ボールは遠くへ飛んで、勢いが無くなっても凍った地面を滑って移動していた。
「あ……。ま、待って!」
吹雪はボールを追いかける。
途中で誤って地面の氷に足を滑らせてしまった。そもそも氷の上をスパイクで走ろうとすることは無謀であった。
転んだ吹雪をあざ笑い、吹雪の頭の中で、声が響く。
(だせえなあ、兄貴。相変わらずどんくさいんだから無理すんなよ)
「あ、あははは。ちょっとスケートの靴忘れちゃってさ……」
(そういう問題じゃねえだろうが……。相変わらず兄貴はドジだなあ)
吹雪は誰と喋っているのでなく、自分と喋っていた。誰も近くにいないのにである。ただ、独り言ではない。
吹雪の中には、アツヤと言うもう一つの人格が存在しているのだ。いわゆる二重人格なのである。
特に吹雪の場合は特殊なケースで、幼い頃雪崩で命を無くした吹雪の弟のイメージそのものが、アツヤなのであった。
“もう一人の吹雪士郎”ではなく、弟の“アツヤ”として吹雪は人格を認識しているため、お互い話す事ができた。
一種の精神病と言われている二重人格だが、吹雪の場合は本当に一つの体に二人がいると思わせた。
ボールは道の地蔵の傍で止まった。
急に止まったので、地蔵様がボールを止めたかのようだった。吹雪はボールを拾い、地蔵に向かってぺこり頭を下げた。
頭を上げてみると、すぐ目の前に、北が峰北端と書かれた木の看板が立っていた。
「さ、寒い……あれ……?北が峰北端……?」
いつのまにか吹雪は雪原の端まで来ていた。
(なにやってんだよ兄貴。何でこんなところに来てるんだ)アツヤがそういうと同時に風が吹く。
「さ、寒い、い、い」
(熊殺しの吹雪が聴いてあきれるぜ……。ま、そういうのは俺が全部やってんだけどよ)
「……。春のサッカー大会、フットボールフロンティアの優勝校は東京の雷門中って言うんだって。そこの中学に、すごいストライカーがいるらしいよ」
鼻水をずずっと鼻に戻す。いつのまにか吹雪の頭に雪が積もっている。
(へえ、じゃあ早く予選なんぞは突破してそいつと戦ってみたいもんだな。お前がDFでそいつを止めて、俺がゴールを決める! ……おい兄貴、寒いんだったら早く移動しろよ)
「そ、そ、そうだね。頑張ろうね。さ、寒い」
(聞こえてんのか?)
「う、う、う、さ、寒い」
吹雪が凍えていると、道路に青いやや小さめのバスのような車が止まった。吹雪はそれに気づかずに体を震わせている。
青い車から、オレンジのバンダナをつけた少年が出てきた。
「どうしたんだ? こんなところで」
吹雪は返事せずにただ震える。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.4 )
- 日時: 2012/09/26 23:47
- 名前: しろお (ID: kEMak/IT)
「乗れよ!」
とバンダナ少年は親指を車内にくいっと向ける。
吹雪はガチガチと歯をならせながら、笑顔で「あ、あ、あり、がととと」とお礼を言った。
ボールを持って円堂の後をついていく。
バンダナ少年が車のドアを開けてやり、後から入った吹雪は運転手のおじさんと助手席の女性にペコリと頭を下げた。
青いバスもどきの中はやはりバスのようで、左右に席が別れて真ん中は通路になっていた。
後ろに七人席右に三人席、左に三人席、そして運転席助手席といったかんじだった。運転手の方はハンドルの握ったまま吹雪の方を見て挨拶として笑ったが、女性の方は無愛想にも目を閉じて髪を手でなびかせただけだった。後ろの方へ座れという合図にも吹雪には思えたが、吹雪はただバンダナ少年についていった。
「塔子の隣空いてるよな?」
バンダナ少年が、青いニット帽を被った女の子に話しかける。
「うん空いてるよ。座りなよ。はい毛布ね」
塔子が吹雪を力強く引っ張り席に座らせ、うす緑色のブランケットを吹雪にかけてやった。
吹雪は震える手で肩にかかったブランケットの端をつかみ、身を包んだ。足元に吹雪が置いていたサッカーボールを、塔子が膝に乗せてやった。
吹雪は何も言わずに身を震わせながらそのボールの黒いペンタゴンを見つめている。
「まだ寒い?」と塔子が吹雪に訪ねる。吹雪は鼻声で微笑みながら、「ら、ううん。もおだいじょおぶう」と言った。
吹雪は顔の整った美少年なため、逆側の席に座っている、ジャージを着た三人の少女らは吹雪を女だと思ったらしかった。その中の、一番奥の席に座っている木野が親しげに声をかける。
「雪原の真ん中で、何してたの?」
正確には雪原の北端にいたのだが、吹雪はすぐに彼らが本土から来た人だとわかって、特に間違いを指摘せずに、
「あそこは……、僕にとって、特別な場所なんだ」と言って、何かに思いを巡らすように視線を落とした。
そこで初めてミニバスの乗客達は吹雪が男だとわかった。一人称が僕だったからである。
全員が声に出さずに驚いたが、塔子はなんとなく気づいていた。勘がいいのだろう。
「北が峰って言ってね」と吹雪がつけたす。
それに運転手の古株が反応して、「北が峰? 聞いたことあるぞお」と古ぼけた声で聞き返しこう続けた。
「確か、雪崩が多いんだよなあ?」発言の最後にかならず古株は母音を伸ばした。
吹雪は、「うう……」と落ち込んだ声をこぼした。昔のことを少し思い出したからである。
その隣で塔子は、雪崩を見たいなあと何気なく考えていた。
「ところで坊主、どこまで行くんだあ?」
それに、吹雪は目を閉じて答える。
「蹴り上げられたボールみたいに……」と吹雪が言った時に、
(俺のシュートのように……)とアツヤが吹雪の中で言ったが吹雪は無視して、
「ひたすら真っ直ぐに……」と微笑んで天井を見上げる。
後ろのバンダナ少年がそれを聞いて、「いいなあその言い方!」と言った。
「蹴り上げられたボールにみたいに真っ直ぐに……か! なあ、サッカー、やるの?」
「うん、好きなんだ」
「俺もサッカー、大好きだよ!」
円堂が笑って言うと、吹雪はニコッと笑った。円堂も歯を出して笑顔になった。
急にその時、がくっとバスが揺れた。
どうやら雪溜まりにタイヤが取られたようであった。古株はベルトを外し、外に出ようとする。
「駄目だよ」
と、それを吹雪が制した。乗客全員が吹雪を見る。
「山オヤジが来るよ」
誰だそれと乗客全員が首をかしげた、次の瞬間、後ろの席の方で窓が叩かれる音と、誰かの叫び声がした。
続けざまにバスが激しく揺れる。今度は横に揺れた。この揺れに、雪溜まりは関係なさそうなのはその激しすぎる揺れ方が物語っていた。エンジンが壊れて爆発しそうでも、これよりかは激しくなかっただろう。
バスは何度も何度も揺らされて、乗客達はシートベルトがなければ天井をつきぬけて飛びそうなくらいに、上体がよろめいた。
ノートパソコンを使っていたマネージャーの一人、音無の手から、開いたままノートパソコンは離れ、床に落ちそうになった。が、吹雪が右手を伸ばしてそれをうまく手のひらに乗せる。
その時音無はパソコンよりも自分の身を案じて、隣のマネージャーにしがみついていたので、その一部始終は見ていなかった。そのため当然パソコンは落としたと思っている。
そして素早く吹雪はシートベルトを外し、ノートパソコンと毛布を自分の席に置いて、ボールを持って車を飛び出した。
揺れの原因は、山オヤジであった。この間吹雪にコテンパンにやられてストレスが溜まり、ミニバスを襲って発散しようと企んでいた。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.5 )
- 日時: 2011/07/21 14:00
- 名前: しろお (ID: Y.qKuvO8)
登場人物紹介
主人公 吹雪士郎 マフラーをいつもみにつけてる、肌が白いイケメン。穏やか。サッカーが上手で、スキーやスケートなどのウィンタースポーツも得意とする。二重人格の持ち主で、片方は弟だったアツヤの人格。
円堂
あの人
財前 塔子
サッカーが上手い女の子。明るい性格
運転手の古株
古株さん。
山オヤジ
でっかい熊
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.6 )
- 日時: 2013/01/16 17:35
- 名前: しろお (ID: j67lwSI1)
しかしその中から宿敵が現れたため、山オヤジはチャンスと見て、車体から手を放し、吹雪に突進した。
揺れが収まったのを横目で確認してから、吹雪は横にジャンプして山オヤジの右腕での攻撃を避けた。車体に爪の跡がつく。
山オヤジの背後に回り胸まで垂れているマフラーに手をあてると、ボールをミニバス目掛けて思い切りよく蹴った。ボールは車体に当たって、その衝撃でタイヤは雪溜まりから抜けた。跳ね返ったボールは山オヤジのみぞ落ちに入り、ボールは跳ね上がって吹雪のもとに戻り山オヤジはあまりの威力に前のめりになって倒れた。
「ほう。俺のシュートに耐えるなんて、なかなか頑丈な車じゃねえか。ここまでうまく行くとはラッキーだな士郎」
(そうだね)
急に吹雪の口調が変わった。心なしか雰囲気も違う。これは、前に山オヤジを倒した時のと同じであった。
表の人格が、アツヤになったようである。しかしすぐにまた穏やかな目をした吹雪に戻った。
そしてバスのドアを開けて入る。
「もう出発しても大丈夫ですよ」
何が起きたのかよく分からないが、平気な顔でもどって来た吹雪に、乗客達が驚きつつ、まさかね、といわんばかりの顔で頭をかしげる。
第一印象がやさしい感じの美少年が、誰が熊を倒したと思うだろうか。流石ににこれは全員不思議であった。むしろ信じられないようだが。
通り過ぎる席の者に顔をじろじろと見られた。特に気づかずに平然と通り吹雪は自分の席に座った。その時吹雪は初めて気づいたが、乗客は古株と長髪の女性以外は全員中学生くらいのようで、全員が同じ青と黄色のデザインのジャージを着ていた。マネージャー三人はオレンジピンク緑とそれぞれカラフルなジャージを着ていた。合宿か何かだろうと、吹雪はあまり重く考えなかった。まさか、この集団が雷門中だとは気づかなかった……のだ。
古株はアクセルを踏んで車を進ませた。この車はイナズマキャラバンと言う名で、雷門中の校長、雷門が特別な時のために所持していた車なのである。
そう今、本土は大変なことになっていたのだが、北海道の田舎の人間はそのことを知らなかった。
外にでるまえ、毛布の下に置いたノートパソコンを、笑顔で音無に手渡す。
「あ、ありがとうございます……」
少し怯えながら音無は頭を下げ、吹雪は「どういたしまして」と軽く微笑んだ。塔子がゴクリと唾を飲んで、吹雪が音無の方を向いている間におそるおそる吹雪の腕を掴む。
「どうしたの?」
と吹雪は笑ったまま塔子に訪ねる。
「あんた、格闘技かなんかやってるの?」
「まさか。僕はスポーツはよくやるけど、格闘技は自信ないなあ」
「……嘘じゃないようだね。筋肉はそんなに無いし」
塔子は吹雪の腕をパッと放し、腕を組んで、
「じゃああの熊は何で……」
「え? 何か言った?」
「あ、いや、なんでもないよ。ハハハ……」
雷門の部員達はその会話を聞いていない風に見せかけて、視線は窓の外へ向けていたがさりげなく耳を立てており、「塔子もっと聞けよ!」と心の中で思っていた。
それっきり吹雪の話題に触れる事無く、部員達は心にモヤモヤした予感を口から出せないでいた。
塔子の左隣にいて、雷門中サッカー部の司令塔を務めている鬼道有人が吹雪に予感のことを聞こうとしたが、吹雪は逃げるように立ちあがって———本人に逃げるつもりは全くないが、「ここでいいです。 乗せてくれて、どうもありがとうございました」と笑顔のまま古株の方を向いて声をあげた。いつのまにか北が峰は抜けていた。
吹雪がキャラバンから降りると円堂が後を追いかけた。部員達は予感を聞いてくれるのかと胸の中で期待した。
そう、彼が「ブリザードの吹雪」なのかどうかを。
「本当に、ここでいいのか?」
円堂が吹雪に訪ねる。
「うん。すぐ、そこだから」
三秒の間を置いて、
「んじゃ!」と円堂は笑って手の平を吹雪に見せた。
「ありがとね」
円堂はドアを閉め中に入っていった。同時に車は勢い良く発進した。吹雪はそれを見届ける。
「キャプテン、聞いたんスカ?」
最後尾の座席で、大きな腹と体格をした壁山が、シートベルトがきつそうに聞く。髪型がボンバーヘッドで、唇が大きな輪ゴムのような形をしている。
「ほえ? 聞くって? 何を?」
はあーとキャラバンのあちらこちらからため息が漏れた。「へ? へ?」と円堂はため息を見回す。
「しっかりしろよ、円堂! あいつがブリザードの吹雪なのかどうかをだよ! 別れたってことは違ったんだよな!?」
坊主頭で、目つきの悪い染岡が拳を握って立ち上がる。
「あ、そういや、名前聞きそびれたな」
「そういやじゃねえんだよ!」
「まあまあ落ち着けよ染岡。あいつが別名“熊殺し”なんて呼ばれてると思うか? 確かにそれらしい事件はあったけどさ」
MFの一之瀬が遠くから染岡をなだめる。顔立ちが整っており、睫毛が長い。髪の毛はやや長く、今時の好男子と言った感じの少年である。
「ふん。例えアイツがそうだとしても、俺はあんなひょろひょろやさ男が豪炎寺の代わりだとは認めねえからな!」
染岡は乱暴にドスンと音をたてて座った。
「悪い悪い……。でも違うと思うけどなあ」
円堂はすまなそうな笑顔をつくって後ろ頭を掻く。
髪の長い、美人な女性、助手席に座っていた吉良瞳子監督が「静かに」と一喝した。
「どうせこれから白恋中に行くんだから、真実はその内わかるわ」
時間はもう五時を回っていた。
「今日はもう寝なさい。古株さん、暖房お願いします」
「ほいきた」
「では各自、朝買っておいた弁当を食べたら寝るように」
木野が立ち上がる。ピンクのピンで前髪をとめて、首あたりまで髪を伸ばしている女の子である。
「監督。監督は、今の人を、吹雪さんだと思いますか?」
「……私は違うと思うわ。FWの素質を感じないもの。なにより、オーラがない」
瞳子の言っていることは間違ってはいない。吹雪ではあるが、吹雪ではないのである。熊を倒したのはアツヤであり、普段吹雪はDFをやっている。瞳子自身も、吹雪から変な予感は感じていたが、これ以上部員達を煽るような真似はしてはいけないと判断したようである。部員達は、瞳子監督が言うんだから違うだろうと思い、明るい表情で仕度を始めた。
一方吹雪は———。
「らあ!」
吹雪はボールを蹴った。ボールはまっすぐ飛んで、積もった雪を吹き飛ばして通路を作った。ボールは遠くの木に当たり、轟音が響く。
吹雪はできた道をゆっくり歩いた。吹雪が今住んでいる、祖母の家の方角であった。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.7 )
- 日時: 2012/09/26 23:55
- 名前: しろお (ID: kEMak/IT)
第二話 雪原のプリンス!
吹雪は朝、祖母の車に乗せてもらって白恋中に登校している。今日も、乗せてもらっていた。
「士郎や。サッカー、頑張るんだよ?」
「うん、任せてよ。完璧を目指してるからね」
アツヤの存在を、吹雪の祖母は知らない。いつも停めている下り坂の前の木の傍に、今日も停めた。ここからでも、白恋の校舎が見える。
吹雪はトランクからスノーボードを取り出して、足に装着し、下り坂を勢い良く滑り降りた。風を肌で切裂き、足のバランスだけでうまく滑降していく。このスピード感覚と足腰の強さ、そしてバランス感覚から、吹雪の足の速さは生まれていた。
吹雪は坂を下ってあっという間に白恋中につき、綺麗なカットで止まった。止まった勢いで舞った地面の雪が、玄関のガラス戸にかかる。スノーボードを玄関に立てかけて校舎に入ると、いつも使っている教室から大勢の声が聞こえた。
教室の入り口からひょこりと少し顔を出して、荒谷が元気よく吹雪の名を呼ぶ。背が小さく、目が大きい童顔の少女である。
「吹雪くん! 今日はどうやって来たの?」
「スノボーさ」
「お客さん来てるんだよ?」
「お客さん?」
吹雪にはそれが誰かはわからなかったが、すぐに玄関を後にし、教室へ向かう。
教室の中から「ええ!?」だか「おお!?」だかの驚愕したような声がして、吹雪が声の方を見ると、そこには昨日会った雷門の面々があった。
「あれ? 君達……」
「昨日の……! 吹雪士郎ってお前だったのか!?」
円堂が訪ねると、吹雪はクスッと笑った。
「お前が熊殺しか!?」
染岡がまだ信じられずに、確認する。吹雪は申し訳なさそうに後頭部を手で掻いて、
「ああ……。実物見て、がっかりさせちゃったかなあ。噂を聞いて来た人達はみんな、僕を大男だと思っちゃうみたいで……」
染岡は愕然とする。
(こんな奴が豪炎寺の代わり……?)
「これが本当の吹雪士郎なんだ。よろしく」
と、吹雪は手を前に出して、ニコリと微笑んで握手を要求した。
しかし、染岡は吹雪の白い手を何秒か見つめた後、フンと鼻を鳴らして、吹雪の差し出した手を無視し、教室を出て行った。何かを察したのか、木野が後を追いかける。
吹雪は手を握ったり開いたりして、
「あれ、なんか、怒らせちゃったかな……」
と呟いた。円堂が頭を下げて、
「ごめん。染岡は、本当は、いい奴なんだ」
と言った。あまりに真顔で言われたので、吹雪は少し気まずそうにして、「気にしないで」と返した。
「吹雪君。少し時間いいかしら」
瞳子が腕を組んで吹雪に訪ねる。失礼な態度にも取れるが、吹雪はそんなことは気にしない。
「ええ。……ええと、」
「吉良瞳子。雷門中サッカー部の監督よ」
正確には臨時であるが。ただ雷門中というワードに、吹雪は反応した。
「雷門……」
(ってことはまさか……! やった、勝負ができる!)
(よっしゃあ! こんなに早く豪炎寺と勝負できるなんて!)
瞳子は吹雪の実力をみるために、白恋と雷門の練習試合を白恋の監督に申し出た。
もちろん断る理由も無く、一行は白恋中グラウンドへ向かった。校舎よりも低い土地にあるグラウンドに行くためには、階段を降りる必要があった。
「キャア!」
吹雪の前を歩いていた音無が、階段の雪に足を滑らせて後ろに倒れ掛かったところを、吹雪が半ば抱くような姿勢で受け止めた。
「気をつけて。階段は滑りやすいから」
吹雪は優しく音無に微笑んだ。音無はおでこの上にかけている赤眼鏡を直し、ほのかに頬をあからめて、吹雪の顔を見てお礼を言った。
髪の毛は木野に比べると紺のような色を帯びており、顔立ちは端麗である。
どこからかゴゴゴゴと獣が唸るような音が聞こえてくる。吹雪が上を見ると、雪がなだれ落ちてきていた。
「雪崩!?」
円堂がその言葉を発し、吹雪の脳裏をあの時の記憶が横切る。
雪崩ではなく、ただ単に校舎の屋根から雪が落ちてきただけのようだった。
しかし吹雪は怯えてかがみこみ、震えながら頭を押えた。すかさず前にいた荒谷が吹雪の肩を叩いて、
「大丈夫だよ吹雪君。屋根の雪が落ちただけだから」と声をかけてやった。吹雪は雪が落ちてきたほうを見て、ほっと肩をおろした。
「なんだ……。屋根の……雪か……」と吹雪は悲しげな表情で呟いた。
マネージャーの一人雷門夏未が、がっかりした様に冷たく、
「これぐらいのことでこんなに驚くなんて、意外と小心者ね」と言い放った。中学生のくせに、髪の毛が赤っぽいブロンドである。
「ア……アッハハ……ハハハ」
過去の記憶から雪崩はトラウマになっているのだが、吹雪は明るく照れ笑いを装った。
「さ、さあ行こう!」
と吹雪は場を仕切り直し、一行を進ませた。
最後尾にいた瞳子は、訝しげな顔をしたまま立ち止まっていた。塔子も、弱弱しい吹雪を、不安な目で見て立ち止まっていた。
「本当にすごいストライカーなのかな……」と愚痴をこぼす。
音無は心配して吹雪の顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですか?」
「問題無いよ。僕、昔から雪崩は苦手でさ……。かっこ悪いところ、見せちゃったね……。えっと、名前教えてくれる?」
「音無春奈です。そんなこと、ないですよ。あの、ノートパソコンとかもちゃんとお礼言えてなくて、その……」
音無は何か恥ずかしいのか、視線を頻繁に左右に動かす。
兄の鬼道は二人が作り出す奇妙な空気に妙な焦りのような物を感じていた。鬼道は音無の実の兄だが、二人は孤児院で育てられ、別々の親に引き取られたため苗字が異なるのである。
鬼道のトレードマークは目に装着している青のゴーグルと、背中のマントである。
試合中いつも身につけており、本人はかっこいいと思っている。実力は世界屈指のものである。さらに、長いドレッドヘアーを後ろで一つに束ねており、全体的に異色の人物である。
グラウンドに着いたはいいが、雪がまた積もっている。
「じゃあさっき話した通り、私は吹雪君と少し話をしてくるから、それまでみんなで雪をどかしておいてもらえるかしら。お願いするわね」
瞳子は鎌倉に向かって歩き出す。そこで、ゆっくり話すつもりなのだろう。
「相変わらず人使い荒いなあ……」
DFの土門がため息を吐く。髪が短く背が高い。白髪も交じっている。体は細身で、顔も細い。肌の色だけが健康的でやや浅黒い。
「俺達はいつも雪合戦して雪をどかしてるだよ」
白恋サッカー部にしてぽっちゃり系要員、雪野は笑顔で言う。その後ろで、もうすでに合戦は始まっているようであった。
「ほう。雪合戦か。いいだろう。天才ゲームメーカーは雪合戦でも天才ということを見せてやる」
鬼道はノリ良く合戦に入っていく。その後に続いて、雷門部員達も混じった。
「おいおい。小学生じゃないんだから……」
と土門はまだやりきれないようである。
「たまにはいいんじゃないか? それっ」
一之瀬が土門の肩に雪の玉を投げた。
「ふん……そうだな! ようし、くらえ一之瀬!」
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121
この掲示板は過去ログ化されています。