二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- (吹雪物語) 世界への挑戦!編 完結
- 日時: 2016/11/08 00:24
- 名前: しろお (ID: Gu5gxE0Z)
時々URLが光っていますが、アフロディのサイドストーリー以外はyoutubeです。なので音量注意です! 世界編からは、吹雪っぽい曲以外にもサイドストーリーのキャラごとのイメージ曲をつけて遊んだりしてますので、よかったら聞いてみてくだされ
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[イナズマイレブン4 呪われたフィールド]
イナズマイレブンの高校生編。中学生編でスポットの当たらなかったサブキャラクターたちがメインです。主人公は豪炎寺の従兄弟。
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[イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー]
不動明王の高校卒業後のエピソード。卒業後海外クラブへ挑戦するための旅費、お金稼ぎの時期の話。こちらもサブキャラクターたちがメイン
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吹雪兄弟の子供のころの短編。吹雪好きはぜひ
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[イナズマイレブン×REBORN! 神の復活]
こちらはアフロディのお話です。わりとREBORN好きな方向けですかね。イナズマイレブンGOの世界がメインかもです。
ttp://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=past&no=21867
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- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.8 )
- 日時: 2012/09/27 00:01
- 名前: しろお (ID: kEMak/IT)
日本に今、エイリア学園と名乗るエイリアンがやってきていて、全国の中学校がサッカーで挑まれて、勝負に負けたら学校を人間の力を遥かに超えたキック力でボールを校舎にぶつけて学校を破壊して回っていること、春のFF大会を優勝した雷門でもエイリア学園のサッカーに全く歯が立たなかったこと、そして勝つために全国からサッカーの強力な助っ人を集めて回っていること、そしてエースストライカーの豪炎寺が何故か勝手に自主的にキャラバンを抜けてしまったことを瞳子は話した。
しかもエイリアの要望で、中学生しか戦うことは出来ない。警察も追っているのだが、情報の尻尾も毛も掴めていない。
(なんだよ。豪炎寺とかいう奴はいないのか……。ちっ)
アツヤは吹雪の中で舌打ちする。
豪炎寺修也。彼は生きる伝説で言われた中学生で、将来有望の天才ストライカーと言われていた。北海道に住む吹雪にまでその名声が届いていたのだから相当なものだろう。
それだけに、アツヤは残念がって、吹雪のなかでしょぼくれていた。
何故その豪炎寺が、世界を守るための戦いに身を投じていないのか、それはわからないが。
「最近は北地方が狙われているの」と瞳子は続ける。
「でも……ウチは大丈夫さ、狙われる訳がないよ。やっとサッカー部として活動できてる、弱小チームだから……」
言いながら、吹雪は鉢の網に餅を置く。
その態度からいかにもエイリア学園に関心がなく、平和主義もしくは平和ボケしているのが見て取れた。いかんせん、穏やかな士郎は平和主義者である。
その後も瞳子と円堂は説得を続け、餅がふくらむ頃には吹雪は頷いた。
その二個を瞳子と音無に一つずつ差し出したが、瞳子は「いいわ」と言って拒んだ。
音無と円堂に餅をあげ、吹雪は自分のは焼かずに円堂と音無が美味しそうに食べるのをにこにことしながら眺めていた。
「おお、うめえな餅」
「本当。雪国で食べるとなんだかおいしい気がしますね! それにふぶ……あ!うぐ、ん! ゴホッゴホッ!」
音無は何を焦ったのか急に餅を飲み込もうとして喉に詰まらせたようであった。
吹雪は急いでお茶を湯飲みによそって、ふうふうと息をかけて冷まそうとし、音無の近くに座って湯飲みを口に持っていってやった。音無は湯飲みを持つ時に吹雪の白くて冷たい右手に触れて何か思ったのか、危うく湯のみを落としかけたが、吹雪が手を添えていたので落ちずに済んだ。
指と指が絡みあっていて何だかいやらしいが、吹雪はあまり気にならないようで熱心に空いた左手で音無の背中をさすっていた。音無は、茶が、どうやら熱すぎたようで、顔を真っ赤にしていた。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.9 )
- 日時: 2012/09/27 00:11
- 名前: しろお (ID: kEMak/IT)
グラウンドは地面を裸にしていた。
もともと硬い地面だったようで、さっきまで雪が積もっていたというのを全く感じさせなかった。全くぬかるむことはなく、白恋の部員達の日々の努力の賜物だろう。
「みんな、相手は日本一のチームだ、どこまで出来るかわからないけど……、頑張ろう!」
「おー!!」
白恋の部員達が雷門との試合にかなり張り切っている一方、雷門の部員としては早く吹雪の実力がみたい一心で、正直試合はどうでもよかった。染岡が吹雪を遠くのベンチから睨んでいる。
(誰も、豪炎寺の代わりなんかにはなれないんだ……!)
染岡は拳を握り締めながら、スタスタと歩いてフィールドに入っていった。
音無が、チームに作戦を話している吹雪をうっとりした目で見つめながら、夏未に話しかける。
夏未は、ブロンドの長髪の少女だ。私立雷門中の校長の娘でもある。従って姓は雷門、性格はたかびしゃなお嬢様だが、それだけに頭はかなり良い。
「吹雪さんって、全然スゴイストライカーって感じ、しませんよね?」
「え……」
「ほら、豪炎寺さんって、いるだけでなんか点を取ってくれそうな雰囲気、あったじゃないですか」
「そうね。豪炎寺君に比べたら彼には凄みを感じないわね」
各メンバーが位置につくと、試合開始の笛が鳴った。
「さあ始まりました白恋と雷門の試合! 実況は雷門中学校二年C組角馬桂太でお送りします!」
角刈りの眼鏡少年がマイクを持って現れた。キャラバンには乗っていなかったが、どこから現れたのだろうか。
吹雪が白恋のDFの位置につくと、染岡はわめきだした。
「あいつはFWじゃねえのか! どういうことだ!」
「さあ鬼道のキックオフで試合開始!」
実況で染岡の声はかき消される。
「ふざけてんじゃねえ!」
染岡がドリブルで駆け上がる。染岡を止めようと、MFの烈斗と荒谷が前を塞ぐが、強引に染岡が肩を出した走りで突破する。
「どけえ!」
「染岡強気なドリブルであがっていくう!」
「そういう強引なプレー、嫌いじゃないよ」
吹雪はニコリと笑って待ち構える。
「うおおお!」
吼えながら突進してくる染岡に、吹雪もまた向かっていった。
「アイスグランド!」
吹雪はそう呟いて染岡を目の前にすると空中に舞い上がり、さながらフィギアスケートのように美しく回転した。
着地すると氷上を滑るかのように滑らかに、そして正確に動き、染岡はその予測できないディフィンスに成す術なく、まさに足がすべったかのようにドリブルキープが悪くなり、吹雪にあっさり取られてしまった。
「すごい!」
円堂が嬉しそうに拳を握る。
吹雪は北見にパスをだした。北見はMFで、長身で無口な少年である。
「おおっと吹雪、華麗に染岡からボールを奪ったぞ! さあ吹雪奪ったボールをMFの北見にパス! あっとしかし風丸がこれをよんでいた! 北見のトラップのわずかなミスを逃さずボールを奪う! まさに風のようだあ!」
(吹雪以外の奴は、吹雪ほどじゃないみたいだな……)
風丸はそう感じながらボールを高く上げる。
風丸一郎太。雷門のSBで、特徴として俊足とポニーテールがあげられる。
「そして風丸、染岡にロングパス!」
白恋のDF陣が、吹雪を中心に染岡を囲む。
吹雪はシュートコースを防ぐためにゴールの前にたつ。
「止めてみやがれ! ドラゴン、クラッシュ!」
染岡が竜のように強烈なシュートを放った。しかし吹雪はひるまず、それを簡単に片足一本伸ばして防いだ。シュートの威力は完全に無くなり、吹雪はボールを染岡に見せつけるように足で踏みつけた。
「何!?」
染岡はかなりのショックを受ける。ドラゴンと言われるほどの威力を持つシュートが、簡単に止められた。仮にも彼は、日本一の中学生チームのFWである。
瞳子が吹雪のプレーに感心して、ほくそ笑む。
染岡はすぐに気持ちを切り替えて、ボールを持った吹雪に突進、スライディングを仕掛けた。
吹雪はマフラーを強く掴む。
「出番だよ……」
(やっとか! 俺に任せておけ!)
染岡の足はボールを捉えたが、あまりに吹雪が強い力で押さえつけていたためにボールも吹雪もビクともせずに逆に染岡はボールの弾力で吹き飛んだ。
人格がアツヤと交代する。
吹雪の髪は逆立ち、あのおっとりとした穏やかな垂れ目は大きく見開かれる。
「この程度、かよお! 甘っっっちょろい奴らだ!」
吹雪の異変に雷門イレブンも気づく。白恋の生徒は吹雪の事情を知っているため、さほど驚く様子もない。
荒谷が嬉しそうな声で吹雪に声をかける。
「吹雪君!」
「任せとけ! いつもみてえにバンッバン点を取ってやっからよ! 見てな!」
吹雪はボールを持って雷門陣営に切り込む。そのドリブルの速さに守りに行ったMFの一之瀬はあっと言う間もなく吹雪に抜かれた。
しかし一之瀬和哉、彼にはフィールドの魔術師の異名を持ち、その名にふさわしい切り返しで吹雪に追いつき横に並ぶ。
「お手並み拝見と行こうか!」
一之瀬は吹雪に肘をぶつけたタックル、つまりショルダーチャージをする。
「一之瀬のショルダーチャージ! 激しく行ったあ!」
「うらぁ!」
吹雪は逆にショルダーチャージで競り勝ち、一之瀬の態勢を崩した。
「なんて突進力だ!」
一之瀬はそれでスピードを失い、吹雪においていかれた。雪国で培われた足腰の強度は半端ではない。
「続いて鬼道と風丸が二人同時に左右からスライディングタックルだあ! しかし吹雪、鬼道と風丸のスライディングをものともせずに力でねじ伏せる! そして二人をかわし、そのまま突き進む!」
DFの土門が正面から吹雪にスライディングをした。最早雷門イレブンは全員が本気を出している。吹雪は一度止まり、両足でボールを挟んでそのまま高くジャンプし見事にそれも突破する。
「止まらない止まらない! 吹雪、あっと言う間にゴール前だあ!」
吹雪はペナルティエリアに入り、円堂と一対一となった。そのスピードに誰もついていけず、他のDFはゴールから離れたところにいる。
ある程度距離を詰めると、吹雪はまた止まり、ボールを足の甲で浮かした。さらにジャンプしてもう一度高くボールを蹴り上げる。着地すると姿勢を低くし、腰を落として膝を曲げ今度は落下してくるボールに向かって、体を大きくねじりながらジャンプした。ここまでで一秒である。ほとんど目に留まらない速さでこの動きをしている。
「吹き荒れろ……」
ねじりながらボールと共に落下し、ボールと上半身が平行になった時ねじっていた足を思い切り振り下げた。腰の回転でさらに圧し出すようにパワーが加わる。
「エターナルブリザード!」
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.10 )
- 日時: 2011/07/26 11:12
- 名前: しろお (ID: C6pp1bGb)
凄まじい爆発音と共に、ボールは全く回転せずにまさに氷塊のように雷門キーパーの円堂には見えた。さらにそのボールは高速移動しながら不規則に変化した。野球で言えば、ナックルである。魔球、まさにこれがそうと言ってもいいだろう。この技は吹雪敦也が生前時に開発したもので、その凄まじい威力と氷のような鋭さからアツヤはそれをエターナルブリザードと呼んでいた。熊を一撃で気絶させたのもこの技であった。
円堂はボールを止めようと手を伸ばし、なんとか少しは触れたが、触れるだけではこのシュートの威力は削げず、ボールはゴールネットに突き刺さった。同時に雷門のメンバーも、心に痛手を負ったかのように凍りく。
「ゴオール! 吹雪のスーパーシュートが雷門のゴールに入ったー! なんと先制したのは白恋中だー!」
吹雪はゴールを背にし、中学サッカー最強の雷門中から点を取ったのを喜ぶ素振りを見せない。
「いいかよく聞け……」
吹雪に畏れの視線が集まる。
「俺がエースストライカー。吹雪、士郎だ!」
手柄を士郎のものにするところから、アツヤの実はクールな性格が見て取れる。円堂が挑戦的に笑いながら、
「吹雪、お前のシュートどうしても止めたくなった!」
「……できるもんならやってみな!」
吹雪は自陣へとゆっくり歩いて戻る。染岡は吹雪を睨み、眉をひそめた。
「どんなにシュートがすごくても、豪炎寺の代わりはいねえんだ……!」
と怒りをあらわにして言う。
音無が雷門ベンチから大きな声で吹雪を呼ぶ。
「吹雪さーん! ヒモ、ほどけてますよー!」
「おお、ありがとな春奈」
「は、はひ。は、春奈……」
音無は顔をりんごのように赤くして一人で身悶えした。それを見ていた鬼道はウェアにつけた青いマントでゴーグルからでる汗を拭く。
「そこまで! 試合終了よ!」
瞳子が急に中断の指示を出す。カメラを通して吹雪のプレーに見とれていた音無が我に返り、瞳子に反論する。
「え、ここで終わりですか?」
「データは十分に取れたわ」
しかし、それでも染岡は不服らしく、ボールをゴールから取った。
「このまま終わらせてたまるか!」
染岡はボールを吹雪に向かって蹴った。吹雪は後ろを向いていたがすぐに反応して、ボールを上に蹴り上げて防ぐ。染岡は吹雪に向かって突進する。喧嘩腰である。
「お前に負ける訳には、行かないんだ!」
「やる気か! おもしれえ!」
吹雪も走り出す。そして落ちてきたボールをお互い蹴ってキックの勝負になった。
ボールは足と足の間で潰れそうになる。体格は染岡の方が大きく、同じ高さで蹴ると吹雪には不利だが、相手のキック力に押されて吹き飛んだのは染岡だった。
「その程度か……。話にならねえ」
吹雪は倒れた染岡を見下ろす。染岡は悔しそうに涙目になりながら吹雪をにらみ続ける。自分の憧れだった豪炎寺というプレイヤーの座を、他の誰かに奪われるのが悔しくてしょうがないようだ。それほどまでに豪炎寺のことを染岡は同じFWとして尊敬していた。
「こんなもんじゃ満足できねえ……。もっと俺を楽しませろオ! エターナルブリザード……!」
吹雪はシュートの態勢に入り、エターナルブリザードをかなり長い距離から放った。
塔子と壁山がボールを止めようとボールに体でぶつかるが、エターナルブリザードはゴールに向かい続ける。
「お前らに止められるような、エターナルブリザードじゃねえ!」
吹雪の声に反応するかのように、ボールは加速していく。
円堂はシュートを止めようと、全身の力と気を右手に集中させる。そしてボールに照準を合わせて右手の平を突き出す。
「魔神・ザ・ハンド!」
ボールが右手にぶつかる、かと思うと急にボールは回転を始め、大きく上に逸れてゴールの頭を越えて行った。
「ちっ。あの二人のせいで軌道が少し変わったか……!」
吹雪は苛立ちを感じながら呟く。
「はいそこまで!」
瞳子の声と共に、吹雪はいつもの吹雪に戻る。
「ふう……。ん?」
「すごいぜ吹雪! あんなビリビリ来るシュート、俺感動した!」
「僕もだよ。僕のシュートに触れることができたのは、君が初めてさ」
と吹雪と円堂は笑顔で語り合う。
「吹雪、俺お前と一緒にサッカーやりたい!」
「僕もさ。君となら、君達となら、思いっきりサッカーをやれそうな気がするよ!」
「吹雪君、正式に、イナズマキャラバンへの参加を要請するわ。一緒に戦ってくれるわよね?」
「うん。いいですよ」
吹雪は笑顔で答える。
「みんな、雷門の新しいエースストライカーの誕生よ!」
「よろしくね」
雷門イレブンは吹雪の笑顔を頼もしく感じただろう。ただ、染岡はやはり豪炎寺への思いが捨てられないようである。
雷門のメンバーが親しく吹雪と話し出すと、染岡は悔しさを噛み締めて拳を握って走り出し、階段を登っていった。はっとして円堂がその後を追いかける。
吹雪も何か責任を感じたのか、集まる人達を押し退けて染岡を追った。
雷門イレブンも追いかけようとするが、瞳子がそれを制す。
「貴方達は合同練習をしなさい! 音無さん、今染岡君と吹雪君を接触させるのはまずいわ。追いかけて吹雪君も連れてきてくれる?」
「わかりました!」
音無は吹雪が染岡に乱暴されるんじゃないかと心配になり、彼女の全速力で階段を駆け上った。
上の方から染岡と円堂の声が聞こえる。
「わかった。豪炎寺のためにあいつとサッカーをやってやる。だが、あいつを認めた訳じゃないからな」
「うんそうか」
解決したのか、円堂と染岡が階段を降りて来た。吹雪は気不味そうな顔で染岡と円堂の顔を見つめながら、マフラーを握っている。
音無が、息を切らしながら、吹雪のいる段に追いついた。
「お、どうしたんだ吹雪に春奈」
円堂がそう言うと、吹雪より先に音無が、
「瞳子監督に、合同練習をするから三人を呼ぶようにと言われてきたんです」
とごまかした。
「そうか! よおーっし、練習だ、練習! ほら行くぞ染岡!」
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.11 )
- 日時: 2012/09/27 00:16
- 名前: しろお (ID: kEMak/IT)
練習が終わると、全員白恋の校舎に戻った。遠くに住んでいる生徒や職員のために、寮がある。
温泉に食べ物、寝床も揃う。
その日は吹雪も泊まった。昼飯にみんなで餅料理を食べていた。ノートパソコンをいじっていた音無が悲鳴に近い変に高い声で、
「た、大変です!」
と言った。餅を頬張っていた部員達が全員音無の方を向く。
「これ見てください!」
音無は画面を皆の方へ向ける。
画面の中で、建物の壊れた後のような瓦礫の上に立つエイリア学園のサッカーチーム、ジェミニストームキャプテンのレーゼが淡々と喋る。
「白恋中の者達よ。お前達は、わがエイリア学園に選ばれた。サッカーに応じよ。断ることはできない。負ければ破壊が待っている。助かる道は、勝利のみ!」
それで映像は途切れる。あまりに勝手すぎるが、彼らの力を知っている雷門のメンバーはただ戦慄を覚えた。
「この白恋中に……」
吹雪は面倒くさそうに呟いた。
「ていうか、なんなのあの人達。頭おかしいんじゃないの? それになんで警察沙汰にならないの?」
それには瞳子が答えた。
「財前総理が誘拐されたのは知っているわね? 彼はその時、エイリア学園の手の者から、もし警察を動かしたら、日本を破壊すると脅されたそうよ」
「パパ……」
塔子がなにげなく呟いたが、実は彼女、その財前総理の娘である。
「ふうーん。でもさあ、戦うんだったら、プロのサッカー選手がやればいいことなんじゃないの? プロでも、勝てないの?」
「難しいところね。プロでも、互角か負けるか、ね。残念なことに、エイリア学園からの命令で、中学生しか戦えないようなの。でも、中学生は伸び盛りだから、努力次第では勝てないこともないわ」
ふうんと言った後、吹雪は円堂に話しかける。
「本当に宇宙人なの? そうじゃなかったら、ただのすっごくイタイ人達だよね?」
陽気に話す吹雪に対し、円堂は表情を曇らせる。
「でも、実力は本当に凄かった。俺達は、歯が立たなかったんだ」
明るい円堂が暗い表情になるのを見て、吹雪はいささか不安になる。
「……雷門でも全然勝てないんだ……。じゃあ本当に宇宙人なのかもね」
(雷門よりもつえぇエイリアか、おい士郎! 楽しめるといいな!)
「う、うん……」
アツヤの声がしても、不安は吹雪から抜けなかった。
- Re: ブリザードイレブン (吹雪物語) ( No.12 )
- 日時: 2011/08/15 17:17
- 名前: しろお (ID: RADHLI//)
「吹雪君、ここ、教えてよ」
甘い声を出しながら、白恋のサッカー部に所属している真都路珠香(まとろじゅか)が、椅子に座っている吹雪の膝の上に置いた。真都路は小さい頃からの吹雪の幼馴染であり、敦也の事も良く知っている。そして、アツヤのことも。
真都路のチャームポイントは、薄く赤く染っているほっぺたと、防寒のためにいつも被っている白のロシア帽である。
「うん。ここはね、東経40度だから……ここをこうして……」
「あ、なるほど! すごいなあ吹雪君!」
真都路も、吹雪のファンの一人である。北海道には、吹雪のファンクラブがあるらしい。
「ほう。吹雪、お前なかなか勉強の方もできるようだな」
茶髪のドレッドを後ろで束ねて、青いマントとゴーグルをかけている異色の少年鬼道有人が吹雪の横から声をかける。
「君は?」
「鬼道有人だ。その問題を解くには、なかなかセンスが必要だぞ」
「そうかなあ。数学と理科には、めっぽう弱いんだけどね……ははっ」
「数学か。俺の得意とする分野だ」
鬼道はほくそ笑む。
「本当!? 珠香ちゃん、鬼道君に、数学を教えてもらおうよ。僕も参考にしたいし」
「そうね! 数学も、良く分からないから、お願いするね!」
「良かったら理科も教えてほしいんだけど、お願いできるかな」
「天才だからな」
と鬼道はニヤリとして答えた。
日本有数の大財閥の、鬼道財閥の子息である鬼道には、常にエリートの道を行っていなければいけない責任と義務がある。
鬼道は自分で自分を天才というだけあって、頭はかなり出来がいいようだ。サッカーの方では、パスとドリブルと、的確な指示などのゲームメイク能力に長けている。
正真正銘の天才ゲームメーカーである。
彼は元々雷門中の生徒ではないが、帝国学園というサッカーの超強豪校から転校したきたのだ。
彼の力が、雷門の全国制覇に一役も二役も買ったことはいうまでもない。
鬼道のもとで勉強に励んでいる吹雪の近くへ、前髪で片目が隠れている少年が歩み寄っていった。少年は、長い髪を後ろで縛っている。
彼の名は風丸一郎太。元々陸上部だったが、後にサッカー部へと転部した。陸上で活躍していたこともあり、雷門中では最速の足を誇っている。
「なあ、吹雪」
風丸が吹雪に声をかける。吹雪はペンを止め、風丸の顔を見る。
「え、っと、君は?」
「質問したいことがあるんだが、いいか?」
「え? うん。構わないよ」
「俺達に会ったあのとき、熊がバスを襲ってきたよな? ……あの熊、お前が倒したのか?」
「そうだよ」
けろっと吹雪は答える。
「すごいな……。 ああ、自己紹介がまだだったな。俺は、風丸一郎太だ。よろしくな、吹雪」
「うん、よろしくね!」
その時、教室の中でグゥーという低く鈍い腹のなる音がした。
体の大きな、太っちょの壁山が顔を赤らめている。
「へ、へへ。ごめんなさいっす。俺っす。腹減ったッス」
「なんだ壁山かー! よし、なんか食いに行くか! いいですよね、監督!?」
円堂が瞳子に訪ねる。瞳子もお腹が空いていたのか、「好きにしていいわ」と答えた。
「やったでやんす! カニでやんす! 北海道といえば、カニでやんす!」
壁山の横で、栗松が嬉しそうに跳ねる。壁山と並ぶとかなり小さく見える栗松だが、実際はそう小さくはない。前歯が出ており、歯並びが悪く、何の意味があるのか鼻の上に絆創膏を貼っている。
「いいな……! カニか。ここら辺のことはよく分からないから、吹雪、俺達を案内してくれないか?」
風丸は笑顔で吹雪に訪ねる。吹雪は笑顔で返して、
「もちろん。案内させてもらうね。白恋の皆も、食べに行こう!」
おーっと白恋の部員達から歓声があがる。
「ワシも食べに行こうかな。カニなんて、久しく食ってないからな」
古株はお腹をさすってふぇっふぇと下品に笑う。
「いよおーっし! 古株さんのおごりだ!」
円堂が満面の笑みで言った。部員達もつられて笑顔になる。
「えっちょっ、マジでか……。まあ、ぎりぎり足りるかな……」
「私も、古株さんのお世話になろうかしら」
瞳子が呟く。さあ、行こうと吹雪が先頭を切って教室を飛び出す。
「えっちょっ、瞳子監督まで食べたら、ワシの分のお金が……。って、もう誰もおらんのかい」
結局古株さんのおごりになり、部員達は満足して解散することになったが、おごった古株さんはその日の夜キャラバンの上で泣いていたところを円堂が目撃したという。
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