二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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【完結】風林火山プリキュア!
日時: 2017/08/01 13:12
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539

初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!

追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。

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Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.286 )
日時: 2017/07/25 21:17
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第43話「千速の秘密がばれちゃった!?本当の家族って何?」6

「はぁ〜……歳は取りたくないものだねぇ」

 そう言いながら腰を下ろす和子さんに、私は苦笑する。
 まぁ、今日は和子さんも結構動いた方だしね。疲れてもしょうがない。

「お茶入れましょうか? 冷たいお茶と暑いお茶がありますが……」
「お茶も良いけど、千速ちゃん……」

 和子さんの言葉に、私は「はい?」と聞き返す。
 すると、和子さんは優しく微笑んだ。

「今は私の孫なんだから、敬語は止めておくれよ。それから、和子さんじゃなくて、おばあちゃんって、呼んでほしいね」
「……うん。おばあちゃん」

 私の返事に、和子さ……おばあちゃんは、優しく笑った。
 するとおばあちゃんは優しく笑って、箱を開けた。
 その様子を見つめながら、私は、ひとまず冷たいお茶を用意する。
 お茶によって冷たくなったコップを持っておばあちゃんの元に行くと、彼女は、一枚の肩たたき券を握り締めていた。

「……?」
「これ、期限も無さそうだし、一度やってもらえないかい?」

 その一言に、私は言葉を詰まらせた。
 あぁ、ホント……私はこの人の孫としてこの世界に来て良かった。

「分かった。じゃあ、やるね」

 私はおばあちゃんの後ろに立ち、両手で肩をトントンと叩いていく。
 どうやら私には肩たたきの才能があるらしく、おばあちゃんはとても気持ちよさそうな感じで私の肩たたきを受ける。
 トントン、トントン。小気味よいリズムが部屋に響き、気付いたら、私は鼻歌混じりに肩たたきをしていた。

「おや、聴いたことない歌だねぇ。千速ちゃんの故郷の歌かい?」

 すると、おばあちゃんにそう聴かれた。
 しまった、つい安心して、私のいた世界での歌を歌っていたのか。
 そう絶句していると、おばあちゃんはクスクスと笑った。

「面白い歌だから、もっと続けておくれよ」
「……了解」

 私はそう答えて、鼻歌を続ける。
 おばあちゃんはそれに気持ちよさそうにしながら、肩たたきを受ける。

「フフッ、千速ちゃんは歌が上手いねぇ……皐月ちゃんも、もっと近くで聴けば良いのに」
「皐月……?」

 おばあちゃんの言葉に、私は部屋の扉の方に視線を向けた。
 すると、恥ずかしそうにしながら、皐月が中に入って来る。

「えっと……」
「もっと近くにおいで。孫が二人に増えたみたいで、楽しいから」

 おばあちゃんの言葉に、皐月は顔を赤らめながら、私の近くまで来る。

「皐月もやる? 肩たたき」
「え、私は……」
「おぉ。それが良いよ。皐月ちゃんの肩たたきも気持ちが良さそうだ」
「そうだよ。やってみなよ」

 私はそう言いつつ、皐月に場所を譲る。
 皐月はそれに曖昧に笑って、おばあちゃんに肩たたきをする。
 慣れない手つきでやる肩たたきがなんだか不格好で、面白くて、私はクスクスと笑った。

「千速ちゃん。あの歌、もっと歌っておくれよ。……千速ちゃんが帰るまでに、覚えたいからね」

 おばあちゃんにそう言われて、私は頷いた。
 それから、私の歌に皐月も便乗して、最終的におばあちゃんも覚えて、三人で合唱のようなことをしていた。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.287 )
日時: 2017/07/25 22:21
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

間話3「ヒーロー」

 小学生になると、一気に行動範囲は広まる。
 学校が終わってからは、五時までなら外出し放題だ。

「よっ……はっ、ほっ」

 声を漏らしながら、朱莉は公園のジャングルジムを器用に登っていく。
 やがて、頂上に上った朱莉は、両足でしっかりと踏ん張りながら両手を離し、ジャングルジムの上で立つ。

「忍ヶ丘の平和を守る、正義の味方! ニンジャ仮面! シャキーン!」

 そう言ってポーズを決める朱莉を見て、途中まで登っていた蜜柑はクスクスと笑った。

「朱莉ちゃん、本当にニンジャ仮面が好きなんだねっ」
「だって、パパがやってるんだもん! 私のパパすっごいカッコいいんだよ!」

 目をキラキラさせながら言う朱莉に、蜜柑は笑う。
 それに、朱莉は満足気に笑って、顔を上げた。

「私ねー、大きくなったら、パパみたいなヒーローになりたいんだー。それで、悪い奴等をボッコボコにするの!」
「うんっ! 朱莉ちゃんなら、きっとなれるよ! カッコいいヒーローに!」

 目を輝かせながら言う蜜柑に、朱莉は頬を掻いた。
 そして、ハッとした顔をして、蜜柑の手を握った。

「そうだ! 一緒になろうよ! スーパーヒーローに!」
「えぇ!?」
「私と蜜柑なら、きっと、どんな敵でも倒せるよ!」

 拳を握り締めながら言う朱莉に、蜜柑は「無理だよ!」と言って首を横に振った。
 それに、朱莉は「えー」と不満そうな声を漏らす。
 彼女の反応に、蜜柑は俯いた。

「だって、私、運動もできないし、これと言った特技も無いし……朱莉ちゃんと違って、私なんかじゃ、ヒーローになんてなれないよ……」
「そんなことないって! 蜜柑ならきっと……」
「おい、そこどけよ」

 その時、ドスの効いた声が聴こえた。
 見ると、そこには男子数名が立っていた。
 その先頭にいるのは勇太だった。

「どけ、って、これは皆のものだよ!」
「はぁ? 何言ってんの? コイツみたいな鈍くさい奴にはもったいないだろ、こんなもの」

 勇太はそう言って蜜柑の腕を掴んで引きずり降ろそうとする。
 その様子を見た瞬間、朱莉の頭に血が上った。

「でりゃぁッ!」

 声をあげた朱莉は、ジャングルジムから飛び降り、勇太に跳び蹴りを喰らわせる。
 そして、ジャングルジムから落ちそうになっていた蜜柑を抱き止め、地面に着地……する予定が、尻餅をついて、ビターン! と音を立てる。

「いったぁ〜……蜜柑大丈夫? 怪我ない?」
「大丈夫だよ。朱莉ちゃんこそ大丈夫?」
「私は平気。さて、と……」

 朱莉は蜜柑を立たせてから勇太達に視線を向ける。
 そして……———

「私の大事な蜜柑を傷つけて……生きて帰れると思うなよ?」

 ———……明らかに女児がするものではない表情で、そう言った。
 その瞬間、勇太以外の男子全員が「ひ……!」と声を漏らし、後ずさる。

「おい、お前等、女なんかにビビッてんじゃ……!」
「勇太がリーダーなのかな?」

 朱莉は笑顔でそう言うと、勇太の胸ぐらを掴む。
 そして、思い切り顔面をぶん殴った。

「ッつ……」
「さっさと帰れ! もう蜜柑に構うなッ!」

 朱莉の言葉に、勇太は殴られた頬を押さえ、すぐに男子を連れて逃げ出した。
 まぁ、小学生男子の辞書に反省という文字など存在するわけもなく、結局これからも同じような争いが起こるのだが、それはまた別のお話。

「やれやれ……」
「えっと、ありがとう朱莉ちゃん。……やっぱり、強いんだね」

 オドオドしながらそう言った蜜柑の言葉に、朱莉はニッと笑った。
 その笑顔に、蜜柑も顔を綻ばせる。

「さっきの朱莉ちゃん、本当にすごかった! まるで、本物のヒーローみたいだったよ!」
「いやぁ、そう言われると照れるなぁ……」
「本当にすごかった……朱莉ちゃんは私のヒーローだよっ」

 明るい笑みで言う蜜柑に、朱莉は「んー……」と少し考えた後で、ポンッと手を打った。

「じゃあさ、私がヒーローになるからさ、蜜柑はヒロインになりなよ!」
「ひろいん……?」
「何ていうのかなぁ……ヒーローが守るべき存在っていうか……そんな感じ。私、蜜柑のヒーローになって、蜜柑をずっと守るよっ!」

 その言葉に、蜜柑は少しポカンとした表情をした後で、やがて、「うんっ!」と大きく頷いた。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.288 )
日時: 2017/07/26 09:08
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第44話「図書館デート!?朱莉と鬼人急接近!」1

<オグル視点>

「ふむ……」

 街を歩きながら、俺は呟く。
 最近、クリスマスとかいう行事が近いらしく、街はその飾りつけなんかをして賑わっていた。
 前日からこの騒ぎなのだ。当日は一体どうなるのやら……。

「まぁ、俺には関係ないが……」

 そう呟いて白い息を吐きながら、俺は歩く。
 しかし、寒いな……適当にどこかの建物で休むか……。
 なんて、考えていた時だった。

「む……あれは……」

 遠くに見えた見覚えのある顔に、俺は足を止めた。
 トートバッグを肩に掛け、走っていく姿。
 赤い綺麗な髪が冬の空気になびく。あれは……キュアフレイム……?

「何を急いでいるんだ……というか、アイツ、一人か……?」

 キュアモンテはどうした? もしくは、キュアウィングだとか、キュアフォレストだとか。
 アイツ等いつも基本二人で行動しているイメージなんだが……。
 いや、キュアフレイムは自由奔放だからな。なんだかんだ俺と関わったりする時は一人だったりもするし。
 しかし……———なぜかとても気になってしまい、気付いたら、俺はキュアフレイムが走って行った方向に歩いて向かった。


「ここは……?」

 そこは、図書館と書かれた建物だった。
 図書館……確か、人間の書物がたくさんある場所だったハズだ。
 アイツが書物を……? うーん……謎が謎を呼ぶ……。

「まぁ、入ってみれば分かるか」

 俺は独り言を呟いて、中に入った。
 中はとても静かで、誰一人言葉を発さず、まるで、外から拒絶された空間にいるような気分になる。
 ところで、キュアフレイムは……?
 そう思って視線を巡らせてみると、階段を上がって二階に向かう姿をちょうど見つけた。
 ん……? 人間の図書館のことはよく分からないが、絵本なら一階に置いてあるじゃないか。
 二階には自習室とこの地域の歴史書的なものしか無いが……あの馬鹿がそのどちらかに行く理由が分からない。
 ひとまず、俺は肩を竦め、その後を追いかけた。
 ……なんだろう、これ、法律的にすごくダメな気がしてきた。

「……って、自習室に用事か……」

 二階に上がり自習室の中を覗いてみると、その中にある机の一つで一生懸命勉強しているキュアフレイムの姿があった。
 しかし、やはりあの馬鹿にはイマイチ分かっていないのか、シャーペンをこめかみに当てて眉間に皺を寄せている。

「……フッ……」

 なんだかその顔が可笑しくて、俺は少し笑った。
 しかし、うん……勉強しているのか。
 それなら邪魔するわけにもいかないが……なぜか、俺の足はキュアフレイムの方に向かっていた。

「へぇ、勉強しているのか。珍しい」
「ひゃぁッ!?」

 適当に声を掛けてみると、キュアフレイムは可愛らしい声をあげながらビクッと肩を震わせた。
 ……ん? 可愛らしい? この女が? ……ないない。

「お、鬼人!? なんで、ここに……」
「……ちょっと、この街の歴史を軽く調べに来てて、帰るところでなんとなくここを見たら、お前がいたからな」

 よくもまぁこんな嘘が出るものだと、自分を褒めたくなる。
 俺の言葉に、キュアフレイムは「なんだそういうこと……」と言って、自分の手元に目を落とす。

「しかし、なんでまた勉強を? 期末テストはもう終わったんだろ?」

 なんとなくそう聞いてみると、キュアフレイムは「うッ……」と言って目を伏せる。
 それから恥ずかしそうに手をモジモジとした後で、「じ、実は……」と口を開く。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.289 )
日時: 2017/07/26 11:33
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第44話「図書館デート!?朱莉と鬼人急接近!」2

「へぇ〜……追試」
「期末テストで凡ミスしまくっちゃってさぁ……もぉ〜これだから数学は嫌いだぁ!」

 頭を抱えながらのたまうキュアフレイムに、俺は苦笑する。
 しかし、追試か……まぁ、今のコイツなら、油断さえしなければ合格点には行くんじゃないか?

「ちなみに追試の合格点は?」
「……70点……」
「あれ、確か今お前が取れる限界点って……」
「……50点……」
「……」

 前言撤回。今のコイツには無理だッ!
 俺はすぐにキュアフレイムの教科書を引ったくり、ページをめくっていく。

「おい、範囲はどこだ!」
「え、えっと、57ページから72ページ……」
「今から猛勉強だ。短期でお前に70点取らせようと思ったらかなり勉強しないとな」
「鬼人、また勉強教えてくれるの?」

 驚いた表情で言うキュアフレイムに、俺は頷く。
 今まで八ヶ月も戦ってきて、未だに勝てない相手が、数学如きに負けているということが許せない。
 こんな数字と文字使えば解ける問題、解けないでどうする!

「それじゃあまずはこの問題を解け」
「命令しないでよ! えーっとぉ……」

 文句を言いつつも、キュアフレイムはシャーペンを握り締め、教科書とにらみ合いをしながら問題を解き始める。
 しばらく公式に数字を当てはめて解くが……あ、間違えた。

「おい、そこ違うぞ」
「なッ……まだ問題全部解いてないじゃん!」

 間違いを指摘すると、なぜか怒られた。
 ……なぜだ?

「なんで怒るんだ? 俺が何かしたか?」
「何かしたか? じゃないよ! こういうのはねぇ、一度自分で解くことに意味があるの! アンタがやったことは、途中までのジグソーパズルを完成させたようなものなんだから!」
「じぐそーぱずる……?」

 聞き慣れない単語に、俺は首を傾げる。
 ていうか、何かしたか、の辺り微妙に声低くしてたけど、まさか俺の声真似か?
 そう不思議に思っていると、キュアフレイムはキョトンとした表情を浮かべた。

「まさか鬼人……ジグソーパズル知らないの?」
「あぁ……必要無いからな。実生活に」

 俺達が覚えている単語は、基本的に実生活の中で必要な単語のみだ。
 だから、俺達が知らない単語は基本的に実生活に不必要なものである。
 俺の言葉に、キュアフレイムは少し呆けた表情を浮かべた後で、クスッと笑った。

「あははっ、何それ! 鬼人変なの」
「変とか言うな」
「変だよ〜。花火も知らないし、意外と私より馬鹿なんだ?」
「数学もまともにできない奴が何を言う。良いから、ホラ、早く問題解け」
「はーい」

 不満そうに言うキュアフレイムは、そう言って問題の続きを解き始める。
 しばらく数式を書いていたところで、「そうだ!」と言って、俺に顔を向けてきた。

「あのさ、小テストで100点取ったら、鬼人の方が馬鹿ってことにしていい?」
「はぁ!? なんだよそれ」
「良いじゃん。その方がやる気出るからさぁ」

 悪戯っぽく笑いながら言うキュアフレイムに、俺はため息をつき、頷いた。

「分かった。その代わり、小テストで100点取れなかったら、お前が馬鹿なんだからな」
「うッ……絶対負けないもん」

 拳を握り締めながら言うキュアフレイムに、俺は苦笑した。
 すると、キュアフレイムは「えへへ」と笑って、小指を出してきた。
 ……?

「え、まさかと思うけど、鬼人、指切りげんまんも知らないの?」
「は? なんだそれは」
「えぇ! マジで知らないの!? 無いわぁ……」
「……」

 その言い方すごい腹立つぞ。
 俺がムッとしていると、キュアフレイムはヘラヘラと笑って、「小指出して」と言う。
 ひとまず小指を出して見せると、それに、彼女の細い小指が絡みつく。

「……?」
「ゆーびきーりげんまんうそついたらはりせんぼんのーますっゆーびきった」
「針千本飲ます!? 殺す気か!?」

 俺がそう言い返すと、キュアフレイムはしばらくキョトンとした後で、「プハッ」と笑いだした。

「あははッ。ただの例え話だよ〜」
「たとえ、ばなし……?」
「そっ。この約束に関して嘘ついたら許さないよっていう、それだけの話」

 そう言って、キュアフレイムはニカッと笑った。
 俺は、それに「そうか」と呟いた。
 嘘ついたら針千本……か……。
 それじゃあ、ずっと変装して、名前すら偽ってお前の傍にいる俺は、一体、何万本の針を飲まされるのかな。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.290 )
日時: 2017/07/26 14:56
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第44話「図書館デート!?朱莉と鬼人急接近!」3

<朱莉視点>

「ぐぅぅ……分からん……」

 頭を抱えそう呻いていると、近くの席である蜜柑は私の方に振り向いて笑った。

「朱莉ちゃん、何してるの? お勉強?」
「見て分からないの? 勉強だよ。追試で100点取らないといけないから勉強中だよ!」
「うん? 追試は70点で合格じゃなかった?」

 千速の言葉に、私は一度首を傾げた。
 そして、ハッとする。
 そうだ。私は鬼人の約束があるから当たり前のように言ったけど、皆は知らないんだ。
 うわぁ、しまったなぁ……。

「朱莉には、どっちにしろ、難易度は高いと思いますが」

 そして皐月の遠慮のない言葉の刃。
 私は自分の胸に刀が刺さる幻を見ながら、「あはは……」と笑っておく。

「まぁ、ちょっとね……しっかし、問題が難しすぎて分からないよぉ〜!」

 私がそう言いながら悶えていると、蜜柑が「朱莉ちゃんってば……ホラ、見せてみて」と言う。
 問題を見せると、蜜柑は首を傾げた。

「この問題……手作りなんだ?」
「え、あぁ、うん。鬼人が作ったの」
「「鬼人……?」」

 私の言葉に、皐月と蜜柑が同時に言葉を発する。
 うん? どうしたんだろう?
 不思議に思っていると、蜜柑が恐る恐る口を開いた。

「えっと、朱莉ちゃん、あのね、鬼人さんは……」
「朱莉〜。ちょっと良い?」

 その時、名前を呼ばれた。
 見ると、それは同じクラスの女の子だった。

「今行く! あーごめん。すぐ戻るから!」
「あ、うん……」

 なぜか少し落ち込む蜜柑。
 ひとまずちょっとだけ彼女の頭を撫でてから、私は教室を出た。
 呼んだのは、友達の優香だった。

「優香。何の用?」
「いやー、実は今日私日直でさ、次の授業国語じゃん? それで、辞書を運ぶように頼まれたんだけど……」
「重くて運べず私に頼んだ、と。全く、しょうがないなぁ」
「ごめんね〜」

 ヘラヘラと笑いながら謝る優香に私は苦笑する。
 そして図書館に行き、国語辞典が入ったカゴを二人で持って歩き出す。

「そういえば朱莉、彼氏できたんだって? おめでとう」
「はぁ!?」

 突然優香が発した言葉に、私は驚く。
 優香はそれにニヤニヤと笑いながら口を開いた。

「隠しても無駄だよ〜? まさか、小栗先生と付き合うなんてねぇ……もう先生じゃないから問題も無いし、年齢は少し上だけど、まぁ、愛があれば年齢なんて……」
「優香、一人で突っ走らないで!?」

 私がなんとか遮ると、優香は「え〜?」と言う。
 いやいや、え〜? じゃない。
 私と鬼人が、付き合ってる? なんだその話。わけわからん。

「私、別に鬼人と付き合ってなんて……」
「鬼人!?」
「そう呼べって言われてるの!」
「へぇ〜?」

 またもやニヤニヤし始める優香。
 ぐぬぬぬ……色々めんどくさい……。

「文化祭では二人で回ってたらしいし、この間も図書館で二人で勉強してたらしいじゃん?」
「文化祭の時も図書館の時も、どっちもたまたま出会っただけ! 付き合ってるわけないじゃん」

 私の言葉に、優香は「ふーん」とつまらなさそうに言う。
 つまらなくて結構!

「でもさ、そうやって何度も出会うことってあるのかな」
「どういうこと?」
「いや、少なくとも、片方にその気が無い限り、そう何度も出会うことって無いと思うよ?」
「そういうもの?」
「そういうもの。だから、案外脈アリかもよ〜?」
「ありえないって」

 そう返しつつも、私は顎に人差し指を当てながら少し考える。
 まぁ言われてみると、偶然にしては、出会いすぎてる気もするなぁ。
 優香は知らないみたいだけど、夏祭りでも出会ったわけだし。
 ……これは言わない方が良いな。絶対またからかわれる。
 それにしても、鬼人にその気があるかどうか、かぁ……うん。無い!

「いやぁ、でもホントにそれは無いからさ。ね?」
「えぇ〜……」
「ホラ、早く運んじゃおうよ! 授業始まっちゃうからさ」

 そう言いながら速足で歩くと、優香は「速いって〜」と言いながら笑い、私の元に駆け足で付いてきた。


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