二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/08/01 13:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539
初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!
追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。
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- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.35 )
- 日時: 2017/05/01 22:41
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第5話「ミステリアス美少女!?芽衣現る!」5
「侵掠するは、火の如し! キュアフレイム!」
「疾きこと、風の如し! キュアウィング!」
「動かざること、山の如し! キュアモンテ!」
「「「風林火山プリキュア!」」」
毎度の如く自動的にセリフとポーズをさせられる。
すでに三回もやっていると、少しだけ飽きてきたりする。
最も、フレイムは相変わらず目を輝かせ、モンテは相変わらず赤面してるけど。
その時、オンネーンが腕を振り下ろしてくる。
「はぁッ!」
私は両腕をクロスしてそれを受け止める。
ビリビリッとした震動が体の芯に伝わる。
「「ダブルプリキュアキーック!」」
そこに二人が同時に蹴りを入れる。
ってちょっと待て。
「二人。その技名は何?」
「いやー。やっぱこういう変身とかしたら一回ラ○ダーキック的なのをしたくなるじゃない?」
「モンテと一緒にやったのは?」
「なんとなく?」
「モンテ。やりたくなかったら断っても良いのよ?」
「いや、これくらいは大丈夫だよ」
そう言ってニコッと微笑むモンテ。
私はそれに呆れつつ、オンネーンに目を向けた。
二人の攻撃が大分効いたのか、苦しんでる素振りを見せている。
「それじゃあ、浄化するわよ」
「はーい」
フレイムがそう言って腕を構えた時、植物の蔦のようなものが伸びてきて、彼女の腕に絡みついた。
「な……!?」
「ふむ……少し貴方達のことを侮っていたようですわね。私も本気を出させていただきますわ」
そう言ってニヤリと微笑む冥姫。
私はそれにため息をついて、フレイムの腕に絡みつく蔦を一度腕力で引き千切り、そのまま冥姫を引っ張って私の元までズルズルと引きずる。
「なっ……ちょっと!?」
「大体アンタねぇ、皐月や芽衣に顔そっくりすぎるのよ。おまけに二人と同じようなお嬢様言葉使うし、世の中には似た人間は三人いるって言うけど、似すぎでしょ。大体冥って、芽衣とほとんど同じじゃない」
頑張って踏ん張ってるようだけど、残念ながら私の方が力は上らしい。
息がかかるくらいの距離まで引きずった私は、間近で彼女の顔を確認。
そして、ため息をついた。
「ハァ……やっぱり似過ぎ。何? 皐月に似てる別人をたくさん用意して、嫌がらせのつもり? 私は本物の皐月にしか興味ないわよ」
「ね、ねぇ、蜜柑。千速なんかやさぐれてない?」
「うーん……芽衣ちゃんが皐月さん? に似てる上に、冥姫まで似てて、皐月さんを失った悲しみを思い出しちゃったんじゃないかなぁ。私も朱莉ちゃんがいなくなって、朱莉ちゃんソックリの別人ばかり出てきたら嫌になっちゃうし」
「あーそうだね。私も同じ境遇になったらあんな感じになるかも」
二人がなぜか暢気に話している。
オンネーンは、先ほどのキックのダメージからは立ち直ったようだが、現在冥姫がこんな状態であるため、困ったようにオロオロとしている。
私が作り出した状況だけど……何だろう。これ。
「う、うるさい! 早く離しなさいよ!」
そう言ってもがき始める冥姫。
仕方がないので私は蔦を離し、距離を取った。
それと同時にオンネーンが暴れだし、私に迫ってくる。
「モンテ! 盾を!」
「えっ? あっ……不動の山よ! 我に集い、力と成れ!」
一瞬呆けたモンテだが、すぐに状況を理解し、山の盾を作った。
すると、巨大な山がオンネーンの突進を防いだ。
私はそれに山の横から回り込むと、腕を構えた。
「疾き風よ! 我に集い、力と成れ!」
叫び、私は風の力をぶつけた。
浄化されていくオンネーンを横目に、私は冥姫とやらに目を向けた。
忌々しそうに私を見つめる冥姫。……ちょっとだけ希望を抱いたけど、彼女も皐月じゃないな。皐月は、あんな表情しない。
「さて……後は貴方だけが残ったみたいだけど」
「……」
「どうする? 貴方の力で私たち三人に勝てるとは思わないけど」
私の言葉に、冥姫は私、フレイム、モンテと順番に見ていくと、舌打ちをして、空中に穴をあけた。
彼女がそこに入った瞬間、その穴は消えていった。
「えぇっと……なんか、ごめんね? 私が芽衣を誘っちゃったせいで、あんなにやさぐれたんでしょう?」
「やさぐれてなんかないわ。ただ、ちょっと不快だっただけ。それに……芽衣のことは嫌いじゃないし」
私の言葉に、朱莉は「良かったぁ〜」と安心した様子で声を漏らした。
そこで、私はとある疑問を抱いた。
「ねぇ、ライデン。捕まってる人の中に……皐月はいた?」
「えっ? いなかったライ」
「そっかそっか……」
ライデンの言葉に頷いていると、蜜柑が不思議そうな表情で私を見ていた。
「どうしたの千速ちゃん。珍しく上機嫌」
「そう? ただちょっと……皐月が生きてる可能性ができただけ」
「えっ! なんでなんで!?」
身を乗り出して聞いてくる朱莉に、私は口に人差し指を当てて、「内緒」とだけ言っておいた。
例えば、十歳の皐月が、この世界に通じる井戸から落ちていたとしたら、この世界で生きているのかもしれない。
それだけで、私にとっては一つの希望だった。
「えーケチ〜」
「そうだよ。教えてほしいなぁ」
「フフッ。内緒ったら内緒!」
私が笑いながら言うと、朱莉が「この〜!」と言って、私に掴みかかって来た。
それだけでなんだか楽しくて、私はまた笑った。
−−−
<冥姫視点>
「冥姫。なんだか、不機嫌だな」
城に戻って早々、オウガがそう言ってきた。
私は、それに「別に」と言って、奥へと歩いて行く。
腰を下ろすのと同時に、今日、やけに私に突っかかって来た少女の顔を思い出した。
『これ下さい』
なぜ、彼女と私は同じものを頼んだのだろう?
そもそも、私はなぜきびだんごとやらを頼んだのだろう?
グルグルと思考が渦巻いて、消えていく。
私は首を軽く振ってその思考を振り払い、ため息をついた。
「プリキュア……次こそは倒す……」
- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.36 )
- 日時: 2017/05/02 16:09
- 名前: 愛 (ID: CzRhDmzb)
第6話「ドキドキ!初恋!?後輩の恋の応援だ!」1
<朱莉視点>
校庭を囲うように存在する道路を、私と蜜柑と千速は歩いていく。
冥姫との戦い以降は特に何事もなく一週間近くが経過した。
校庭から聴こえる男子の声に、千速はキョトンとした表情をしていた。
「ねぇ、さっきから、男の子達が毬を蹴ったり小さな毬を必死に追いかけたりしてるけど、あれはなんなの?」
「あ、あれはサッカーと野球だよ……サッカーは何度かやってるよね? 体育で」
「ずっと蹴鞠だと思ってやっていたわ」
真顔で言う千速に、蜜柑は苦笑を浮かべた。
一週間も経つと、部活も本格的に始まる。
一年生も入部したらしく、所々に初々しい雰囲気のある顔があった。
ちなみに、この学校は全員強制入部という制度は特にないので、私と蜜柑は入部していない。
私は、基本スポーツはなんでも好きだから、部活には本格的には入らずに、たまに助っ人として参加したりする程度。
蜜柑は、特にやりたいこともないし、それよりも勉強したいからって。
すごいよね。勉強したいって。
「それで、サッカーと野球とやらを、なんで彼らはあんなに一生懸命やっているの?」
「あれは部活動って言って、好きなことをさらに本格的に上手くするためにやっているんだよ。大会とかもあって……」
蜜柑の説明を聞きながらサッカー部の方を見ていたとき、見覚えのある顔を見つけた。
しかも……目が合った。
彼は明らかに怪訝そうな顔で私を見ている。
「あれ? 朱莉ちゃん。どうしたの?」
「……紅助がサッカー部にいた……」
「えっ? 家で話したりしなかったの?」
「しないよ! 私、家でわざわざアイツと話したりしないし!」
話す言葉も基本右から左だし!
そんな風に話していると、どうやら朝練習が終わったらしく、すぐに紅助がこちらに走ってきた。
って、なんでこっちに来る!?
「なんでこんな所にいるんだよ! 姉貴! ……と蜜柑さん!?」
「ここが私たちの通学路なんだからいるのは当然でしょ。千速がここの部活動について聞いてきたから説明しただけ」
「えっ、千速さんもしかしてサッカー部に興味あるんですか? だったらマネージャーに……」
下心満載だなぁおい!
私が心の中でツッコミを入れている間に、千速は特に表情を変えることなく「別に。興味ないわ」と言った。
どうでもいいけど千速ってテンションの上げ下げ激しくない?
芽衣に会った帰りなんてすごかったよね。
「そうっすか……」
「おい火場ぁ! 何やってる!」
「あ、すいません! ……じゃあ俺、もう行くから」
「はいはい。二度と関わるなよー」
私が適当にあしらってやると、紅助はベーッと舌を出して走って去っていく。
転べ転べ、と思っていたら、予想通り転んでサッカー部員達に笑われていた。
ざまーみろ。
「……あれ? 朱莉ちゃん。見て」
蜜柑の言葉に、私は彼女が指さす方向を見た。
そこには、木に隠れるようにして、紅助の方を見ている少女の姿があった。
- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.37 )
- 日時: 2017/05/02 22:34
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第6話「ドキドキ!初恋!?後輩の恋の応援だ!」2
「……えっと、何してるのかな?」
私が代表して声を掛けると、少女はビクッと震えて、私たちに顔を上げた。
そして、顔を真っ赤にして逃げ出そうとするので、腕を掴んだ。
「えっと……」
「ご、ごめんなさい! もう二度としませんから、離してくださいッ!」
何の話か分からないので、ひとまず彼女を連行して人気のない校舎裏へ。
恐らく一年生だろうか。私たち三人で囲むと流石に威圧感がすごくなるので、ひとまず代表して蜜柑が相手をすることになった。
私と千速は少し離れた場所で見る。
「それで……貴方は?」
「い、一年一組……大宮 真梨香……です」
「真梨香ちゃん、か。それで、あそこで何してたのかな?」
蜜柑の問いに、真梨香ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤らめて、モジモジし始める。
んー……大体想像はつくけどね。
「千速はどう思う?」
「紅助君を見ていたんじゃないの?」
「な……!」
「やっぱ誰だってそう思うよねー」
私たちの会話が聴こえたのか、真梨香ちゃんはますます顔を赤くする。
甘ずっぺー……。
「えっと、それで、どうなのかな?」
「……小学四年生の時に、私、転校生で、中々慣れられなくて困っていた時に助けてくれたのが、火場君だったんです……」
へぇー……紅助、中々やるじゃん?
「でも、まさか彼女がいたなんて……しかも年上……」
「「「……は?」」」
自分達でも驚くほどにハモった。
私たちの反応に、真梨香ちゃんは「え? えっ?」と挙動不審な反応をする。
いや、驚くほどのことでもあるまい。
「えっと、ちなみに誰が紅助君の彼女だと思うのかな?」
「それは……遠目に見ただけだと分かりませんけど……個人的には、そこの赤い髪の先輩かなって」
「はぁぁぁ!?」
驚愕のあまり顎が外れかけた。
私が紅助の彼女ぉ!? 考えただけでも吐き気がする!
「えっ、違うんですか!?」
「違うよ! 私は、紅助の姉だよ?」
「じゃ、じゃあそこの……」
「千速と蜜柑は、一方的に紅助に惚れられてはいるけど、恋人ではないよ」
「ちょ、ちょっと朱莉ちゃん! 千速ちゃんはともかく、私を惚れてるなんて嘘言ったら、紅助君に失礼だよ……」
そう言って申し訳なさそうに目を伏せる蜜柑。
いやいや、むしろ千速よりも根深いぞ? アイツの恋心。
「そうなんですか……でも、先輩皆美人だし、私なんて……」
「朱莉ちゃんや千速ちゃんはともかく、私が美人なんて、お世辞なんて今は無理して言わなくても良いんだよ?」
「い、いえ、お世辞なんかじゃ……」
「……眼科行く?」
そういえば、蜜柑って自分のこと過小評価してるからなぁ……。
なんだか面倒なスイッチが入ったようなので、私は一度彼女を引き下がらせて前に出る。
「ごめん。あの子ちょっと自己評価が低いからさ。それで、紅助のことが好きなんだよね?」
「は、はい……」
「おーけい、任せて! この火場朱莉が、手助けしてあげるわ!」
私の言葉に、背後から大きなため息が二つ聴こえた。
- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.38 )
- 日時: 2017/05/03 22:51
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第6話「ドキドキ!初恋!?後輩の恋の応援だ!」3
昼休憩になると、私はすぐに一年生の教室がある廊下に向かった。
無論、蜜柑と千速を連れて。
「ねぇ、朱莉ちゃん。私たちを連れて行って意味あるの?」
「大ありだよ! 紅助にはまず蜜柑と千速を諦めてもらわないと」
「だから、千速ちゃんはともかく、私は連れて行っても意味ないって……」
そう言って蜜柑はため息をつく。
いやいや、むしろ蜜柑の方が重要なんだよ!
それに、蜜柑ってかなり美形なんだよね。顔。
とはいえ、小学生の頃はよく男子に苛められてたから、すっかり自信無くしちゃったんだけど。
その男子も、恐らく好きな子を苛めたくなるやつだと思うけどね。
「えっと確か……真梨香ちゃんと同じ一組だよね」
私の独り言に、なぜか千速が苦い顔をした。
「どうでもいいかもしれないけど、朱莉、家で紅助君と話したりしないの?」
「しないよー。紅助は家で無愛想だし」
基本ムスッとしてる感じあるからねーアイツ。
そんなことを話しながら教室の前に着いた私は、ノックをする。
「紅助〜。ちょっと来い」
「な、あ、姉貴!?」
ガタッと音を立てて立ちあがる紅助。
一緒に昼飯を食べていたであろう男子生徒達は、なぜか紅助を「ひゅーひゅー♪」とか言ってはやし立てる。
紅助はそれに煩わしそうにしつつ、こちらに駆け寄ってくる。
「で、何の用だよ。弁当忘れたなら、自分でなんとかしろよ」
「違うわよ。蜜柑と千速が、アンタに話があるんだって」
「えっ!」
明らかに目の色が変わる。分かりやすい奴……。
それから私たちは屋上に上がる。
「えっと、まず、紅助が蜜柑と千速のことが好きな件に関してだけど……」
私が話し出した瞬間、紅助が「はぁ!?」と抗議する。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「事実でしょ? 二人と話す時に顔いっつも真っ赤だし」
「そ、それは……」
私の言葉に、紅助は顔を耳まで真っ赤にする。
女々しいな、おい。
「えっと……もしそれが本当だとしたら、紅助君は私なんかには勿体なさすぎるよ。紅助君カッコいいし、優しいし……だから、ごめん。紅助君がもし本気で好きなんだとしたら、私なんかには申し訳なくて……」
蜜柑の言葉に、紅助は「えっ」とキョドる。
「私も、ごめんなさい。えっと、色々あって、今は恋愛とかしている場合じゃないの」
「じゃ、じゃあ、それらが全部終わってから……」
「その間の貴方の時間を無駄にするのは嫌なの。それに、私、他に好きな人いるし……」
途中からすごい目が泳ぎまくっていた。
あー。これは、嘘ついてるな千速。
「そ、そんな……」
「そういうわけだから、また別の恋を探そうよ! 同じクラスの女の子とかに目を向けてみるのも……」
そう言いながら彼の肩に手を置いた時だった。
パァンッ、という音を立てて、私の手は弾かれた。
「えっ……」
「姉貴は恋したことないからそんなこと、平然と言えるんだよ! どうせ、この二人に何か吹き込んだんだろ!?」
「な、何なのよ急に!」
「うるせぇよ! 俺の恋愛くらい、俺にさせろ!」
紅助はそう言うと飛び出して行ってしまった。
初めて面と向かって怒鳴られたので、私は、しばらくその場で呆然としてしまった。
「あ、朱莉ちゃん……大丈夫?」
「あー……うん。ダイジョウブダヨ」
「重症ね……」
呆れた声で言う千速に、私はようやく冷静になった。
すると、恐る恐ると言った様子で、真梨香ちゃんが出てきた。
- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.39 )
- 日時: 2017/05/04 21:23
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第6話「ドキドキ!初恋!?後輩の恋の応援だ!」4
「真梨香ちゃん!」
私が名前を呼ぶと、真梨香ちゃんは少しだけビクッとしつつ、近づいてきた。
「えっと……あれから考えたんですけど、私、やっぱり、こういう形で振り向いてもらうのは、何か違うな、って……思ったんです」
「え、どうして?」
「……これで告白して、了承してもらっても、私の力じゃない……やっぱり私、自分の力で振り向いてほしいって」
「……少し遅かったわね」
千速の言葉に、真梨香ちゃんの顔がサッと青ざめるのが分かった。
だから、私は慌てて「違う違う!」と訂正する。
「紅助には蜜柑と千速を諦めるように言っただけだから!」
「ほ、本当ですか……?」
「うん。だから、まだ全然平気だって」
「良かった……」
真梨香ちゃんがそう呟いた時、柵の上に人影が見えた。
私たちは咄嗟に真梨香ちゃんを庇うようにして立ちはだかる。
それは、青いコートを着た男だった。
「また貴方が……!?」
「今日こそ、風の書、火の書、山の書を取り返してもらうぞ」
そう言うと、男は腕に黒い影を纏わせる。
そして、屋上にあった太陽光パネルに腕を当てた。
「邪悪なる魂よ! 我に仕えよ! いでよ、オンネーン!」
「あ、しつもーん!」
オンネーンが出来上がるまでの時間で、私は手を挙げた。
それに、コートの男は煩わしそうに「なんだ」と聞いた。
「その邪悪なる〜のやつさ、他の人達は言ってないんだけど、貴方だけが言うんですか?」
「えっ……」
「そういえば、前の赤い着物の男は言って無かったわね」
「黄色い人と、冥姫さんは突然現れたから分からないけどね」
「……」
私たちの会話を無視して、男は無言でオンネーンを作り続ける。
無視すんなよ!
「あ、あの、火場先輩達は、あの人とお知り合いなんですか?」
そこで、真梨香ちゃんが泣きそうな顔で聞いてきた。
そうだ。今は私たちだけじゃなくて、真梨香ちゃんもいるんだっけ。
ていうか……。
「どうしよう千速! 真梨香ちゃんいるから……」
「あ、そうか……」
千速がそう呟いた時、太陽光パネルがオンネーンと化し、雄叫びをあげた。
とにかく逃げなくちゃ。そう思った私は、すぐに真梨香ちゃんの手を引いて、校舎の中に駆け込んだ。
「ちょ、ちょっと朱莉!?」
千速が呼び止めるが、私は気にせずに階段を駆け下りる。
その時、紅助が上がってくるのが分かった。
「あ、姉貴!? さっき、すごい音がしたけど……」
「ちょうど良かった! 紅助、真梨香ちゃんをお願い!」
「はぁ!?」
声を裏返させて驚く紅助に真梨香ちゃんを押し付けて、私は階段を上がろうとする。
その時、腕を掴まれた。
「おい、待てよ。まさか、一人で行くわけ?」
「えっと……蜜柑と千速を置いてきちゃったの。ちゃんと逃げれたか確かめるだけだから」
「だったらこの階段で待ってれば良いだろ? わざわざ姉貴が行く必要は……」
「あ、あの二人は大事な友達だから、もしこれで行って、二人が怪我したらって思うと……」
自分でもよくこんな言い訳が思いつくな、と心の中で苦笑しつつ、私は走ろうとする。
しかし、紅助は腕を離さない。
「は、離してよ!」
「馬鹿ッ! 姉貴にとって二人が大事な友達なら、姉貴は俺にとって大事な家族だぞ! 行かせられるわけないだろ!」
その言葉に、私は少し驚いた。
へぇ……言うじゃん……でも……。
「ごめん。それでも、行かなくちゃ」
「あ、ちょっと!」
紅助の腕を強引に振りほどき、私は階段を一段飛ばしで駆け上がりながら、アウラシュリフトロレを取り出した。
「プリキュア! フォースオーラチェンジ!」
変身するのと同時に、私は外に飛び出した。
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