二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/08/01 13:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539
初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!
追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。
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- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.5 )
- 日時: 2017/04/22 21:41
- 名前: 愛 (ID: uLF5snsy)
第2話「不動の山!キュアモンテ登場!」1
「侵掠すること、火の如し!キュアフレイム!」
謎のセリフと決めポーズの後で、私は、「ハッ!」と我に返る。
何?今の……。私は自分の着ている服を見つめ、首を傾げた。
「変身……した……?」
声がした方を見ると、キュアウィングが驚いた様子で私を見ていた。
とにかく、やるしかない!
私は拳を握り締め、化け物に向かって突進した。
しかし、その時、腕が私に向かって振り下ろされた。
「わわっ」
私は驚き、慌ててその場でジャンプしてかわす。
それだけなら良かったのだけれど……どうやら身体能力は十倍以上に跳ね上がっているようで、気付けば、足元に学校が、かなり小さく見える状態だった。
「とっ、飛びすぎぃ〜!」
私が叫ぶのと同時に、体が重力に従って落下していく。
身体能力は強化されているけど、体も強化されてるのだろうか……?
もし、体はそのままで、このまま落下したりしたら……。
「やばぁ……」
呟きながら、私は、下にいるオンネーンとやらに視線を向ける。
例えば、この勢いを維持したまま、かかと落としなんて食らわせたら……かなりの攻撃力になるんじゃない?
よし!思い立ったが命日と言うし!……ん?なんか違う?ま、良いや!
私は体を縦に回転させ、勢いをつけて、その高速回転の中で敵の頭をロックオンする。
そのまま、一気に体を回転させ、敵の頭にかかと落としをめり込ませる。
かかとが僅かにオンネーンの頭にめり込み、その箇所がへこむ。
それを遠目に見ながら私は距離を取り、ちょうどキュアウィングを捕まえる手が緩んでいたので、彼女をしっかりお姫様だっこで保護して、バックする。
「な、なんで、アンタが……は?え?」
未だに状況が飲み込めていない様子のキュアウィング氏。
まぁ当然だよねぇ。なんとなく戦ってる私ですらほとんど理解できてないし。
「ひとまず、先にオンネーンを倒そう!」
「……そんなの分かってるわよ」
ウィングは、そう言うと私を押しのけ、オンネーンの前に立つ。
そして、手を構えた。
「疾き風よ!我に集い、力と成れ!」
その言葉と同時に、彼女の手に風のようなものが纏われる。
ウィングは腕を後ろに構え、突き出した。
すると、竜巻のようなものがオンネーンにぶつかる。
やがて、化け物の体を竜巻が包み込み、浄化していった。
「ちっ……風だけでなく、火までも……」
男は、そう言うと同時に、瞬間移動か何かで消えていった。
私は腰から力が抜け、その場にへたり込んだ。
「朱莉ちゃーん。どこ〜?」
その時、蜜柑が私を呼ぶ声がした。
あわわわ……どうしよう。こんな状況見られたら……。
オンネーンによる被害はなぜかきれいさっぱり消えてるし、ひとまず、私の服装さえどうにかすれば良いんだけど……。
いつの間にか風間さんは元の姿に戻ってるし、どうしよう!?
「……巻物にある赤いボタンを押せば、元に戻る」
その時、ボソッと小さな声で、風間さんは言った。
試しにそれを実行してみると、忍者みたいな装束は消えて、体操服に戻っていた。
「ありがとう!風間さ……」
お礼を言おうと顔を向けた時には、すでに、彼女はいなかった。
……まぁ、いっか。
私はタオルで巻物を包み、蜜柑の元に駆けた。
- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.6 )
- 日時: 2017/04/22 21:42
- 名前: 愛 (ID: uLF5snsy)
第2話「不動の山!キュアモンテ登場!」2
翌日。私はいつものように起きて、朝ご飯を食べる。
顔を洗って制服に着替えて、家を出る。
「朱莉ちゃん。おはよう」
すると、家の前では、すでに蜜柑が待っていた。
「蜜柑ちゃんが迎えに来てくれて助かるわぁ。朱莉ったら、蜜柑ちゃんを待たせないために、頑張って早起きしてるんだから」
その時、ちょうどゴミ出しをするために一緒に出てきたお母さんが、そう言って笑う。
事実だけど、やっぱりそういうのを暴露されると恥ずかしい。
「ちょ、ちょっとお母さん。そういう話はやめてよ……」
「フフッ。じゃあ行こうか。朱莉ちゃん」
蜜柑は、そう言って手を差し出した。
私はその手を握って、歩き出す。
「それにしても、昨日の体育は散々だったよねぇ」
歩きながら、蜜柑はそう言った。
そこで、昨日の戦いや諸々が頭に浮かんだ。
「あぁ……うん。そうだね」
「……?風間さんだけならまだしも、朱莉ちゃんまでいなくなっちゃうんだもん。ビックリしちゃったよ」
「あはは……心配かけて申し訳ない」
「ううん。人の為に一生懸命になるの、朱莉ちゃんらしいもんね。でも、それで怪我したら元も子もないんだよ?」
「うぅぅ……」
「あくまで、自分の身を一番に守らなくちゃ。良い?」
「はぁい……」
そんな説教を聴きながら、私たちは学校に着いた。
玄関で靴を履き替えていた時、風間さんが玄関に入ってくるのが見えた。
そうだ。私は、昨日彼女と一緒に戦い、そして勝ったんだ!
つまり、私たちはもう、友達!
「えへへ……風間さん!おは……」
「うるさい」
挨拶する私の言葉を遮ってそう言った彼女は、上靴を出して履き替える。
そのまま学校指定のスニーカーをしまい、スタスタと歩いて行って……はぁぁぁ!?
「ちょ、ちょっと!」
「朱莉ちゃん……だから、結果を急ぎすぎなんだって」
そう言って蜜柑は肩を落とす。
私は彼女の肩を掴んで揺すった。
「違うの蜜柑!私の話を聞いて!」
「んー……分かったから体揺らすのやめて」
蜜柑の言葉に、私は彼女の肩から手を離した。
うむ。よく考えたら、あれって隠す必要ないよね?
よし。
「実は私ね、昨日風間さんとプリんぶっ!?」
プリキュアになったことを話そうとした瞬間、後ろから口を塞がれた。
そのまま、誰かの手によって、私の体は引きずられる。
少し遠くでは、蜜柑が驚いた様子で私を見ている。
助けて蜜柑〜!
魂の叫びは彼女に届くことなく、気付いたら、私は屋上に連行されていた。
「ぶはっ!何すん……風間さん!」
私を拉致した相手を見ると、それは、なんと風間さんだった。
彼女は、疲れた様子でため息をつき、私を見た。
「貴方……自分が何しようとしたのか分かっているの?」
「え?蜜柑に風間さんとプリキュアしてることを説明しようとしたんだけど?」
「それがダメだって言ってるの!」
風間さんは、そう言って額に手を当てた。
しばらくして、顔を上げる。
「とりあえず、プリキュアについては内緒。これは絶対よ」
「なんで?」
「なんでって……それは、プリキュアだってことを誰かが知ったら、その分あなたの大切な、それこそ蜜柑さんが襲われたりすることもあるのよ?」
風間さんの言葉に、私の頭の中に蜜柑の笑顔が浮かんだ。
彼女が……襲われ……。
「……分かった。誰にも言わない」
私の言葉に、風間さんは、ホッと安心した様子で息をつく。
蜜柑を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
私はコクコクと頷き、続けた。
「じゃあ、ついでに巻物について教えてよ。風の書とか火の書とか言ってた気がするけど」
私の言葉に、風間さんは「ふぅ……」と息をついた。
そして、柵に寄りかかる。
「……風林火山、っていうのは、聞いたことあるかしら?」
「んー。その言葉だけかな」
「そう……。風林火山っていうのはね、甲斐の戦国大名・武田信玄の旗指物(軍旗)に記されたとされている「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」(疾(はや)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し)の通称のこと……と、この世界では解釈されているようね」
「突然の説明口調……まさか、ウィキペディ……」
「それでね」
「……」
「私は……この世界とは違う、別世界に住んでいたの。最も、基本的な常識とかはこの世界と類似しているし、こんな鉄の塊は無かったから、文明がこの世界よりも劣っている程度ね」
突然別世界と言われても、あまりピンと来ない。
それからの説明で、風間さんがいたのは、この世界で言うところの、江戸時代くらいの街並みだったということは分かった。
「それで、私の世界には、昔から伝わる伝説の、四つの巻物があったの。私や貴方がもっている、風林火山の書のことね」
「……ふーん」
「本当に理解しているの?まぁ、良いわ。それで、その巻物には、それぞれ戦いの秘訣が記されていたの。全ての巻物の内容を理解した時、この世界を支配し得るほどの力を手に入れられるくらいには」
「え、すごい……」
「そう。すごいの。でも、そもそも巻物を開くことすらできなかったから、そんなこと関係ないんだけどね」
「はぁ……」
「……だからこそ、この巻物は、狙われた。幽鬼軍っていう、人の怨念から生まれた輩が、風林火山の書を使って、世界を支配しようとしたの。それで、巻物を守っていた私達の村は襲われて、大人たちが時間稼ぎをしている間に、私と、相棒で巻物を持って逃げたの。でも……」
そこまで言って、風間さんは唇を噛みしめた。
私は何も言う事ができず、ただ、拳を握り締めた。
「一人でこの世界に来た私の手元には、風の書しか、残されていなかった。だから、私は風林火山の書を、全て、回収することに決めたの!それで、私がいた村を……そして……フウマルを……」
そう言って、風間さんは拳を握り締めた。
彼女に協力できることはない。ただ、プリキュアとして、一緒に戦うくらいしか……。
そう思って空を見上げた時、私は、「あっ」と声を漏らした。
空には、巻物のようなものが、まるで鳥のようにバッサバッサと飛んでいる。
「風間さん!あれ!」
「ん……?えぇ!?」
風間さんもそれに気づいた様子で、驚いた声をあげた。
巻物は、そのまま下降していって、やがて、二階にある私たちのクラスの窓の近くまで飛んでいくと、突然、黄色い光と共に消えてしまった。
「ど、どうしよう!」
「とにかく、私たちの教室に行ってみましょう!」
「うん!」
私と風間さんは屋上を出て、階段を駆け下り、教室に向かっていった。
- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.7 )
- 日時: 2017/04/22 21:43
- 名前: 愛 (ID: uLF5snsy)
第2話「不動の山!キュアモンテ登場!」3
<蜜柑視点>
「ふぅ……」
私は息をつき、窓の外を眺めた。
いつからだろう。私は、朱莉ちゃんとの間に、大きな溝を感じていた。
昔から、私と朱莉ちゃんはいつも一緒で、家も近所で、小さい頃からいつも隣には彼女がいた。
けど、いつからだろう。
明るい彼女は、他に友達もできて、少しずつ私と差が出来ていくのを感じていた。
変わりたい。でも、変われない。
それが、もどかしくて。だから私は、見て見ぬふりをしていた。
でも……。
ガララッ!
音を立てて開け放たれた扉に、私はビクッと肩を震わせ、視線を向けた。
そこには、空色の綺麗な髪をした少女が立っていた。
「風間さん……?」
「貴方は……蜜柑、とか言ったかしら?あの赤髪少女と一緒にいた」
赤髪少女……って、朱莉ちゃんのことだよね……。
「う、うん……そうだけど」
「そう」
「か、風間さん足速すぎるよぉぉ……」
その時、ヘロヘロになった朱莉ちゃんも教室に入ってくる。
彼女は、私の顔を見るとパァァと笑顔になった。
「蜜柑!空飛ぶ巻物みたいなもの見なかった!?」
「空飛ぶ……巻物……?」
私が首を傾げた時、風間さんの膝蹴りが朱莉ちゃんのみぞおちに入った。
えっ、ドゴッって言ったよ?朱莉ちゃん蹲ってるし……。
困惑する私に、風間さんは、コホンと咳を一つ。
「説明は省くんだけど、さっき、珍しい鳥を見たの。それで、この教室の近くで見失ったから、蜜柑さんなら知ってるかなって思ったの」
「あはは……残念だけど、見てないんだ。ごめんね」
私が謝ると、やっと体を起こした朱莉ちゃんが「えぇー」と不満そうに声を漏らした。
その後で、風間さんに「どうしよう〜」と言うと、風間さんは何やらボソボソと朱莉ちゃんに話していた。
……いつの間に、あの二人、あんなに距離近くなったんだろ。
まるで友達のように親しく話す二人に、私は、少しだけ胸が苦しくなった。
−−−
放課後になった。
朱莉ちゃんと一緒に帰ろうと思ったけれど、風間さんと大切な話があるからって先に帰った。
「なんか……やだな。隠し事されてるみたいで」
そう呟いてみるけれど、結局、私にどうこうできる問題じゃなくて。
私はため息をつき、空を見上げた。
「私も……もっと動いて、成長していかないとダメ……なのかな」
そう呟いた時、視界の端に、バッサバッサと羽ばたく巻物が……は?
私の視線の先で、巻物が空を飛んでいる。
なんで巻物が空を?そう疑問に思ったところで、昼間の、朱莉ちゃんの言葉を思い出した。
『蜜柑!空飛ぶ巻物みたいなもの見なかった!?』
「もしかして……あれが?」
そう疑問に思ったところで、巻物が、急に動きを止めた。
やがて、それはゆっくりと落下し、私の手元にぽとっと落ちた。
……ナニコレ。
「朱莉ちゃんが探してたのって……これ、だよね?」
そう思いながら開いてみようと手を掛けてみるが、なんと、開かないではないか。
どんなに力を込めても全く開かない巻物に、私は尚更首を傾げる。
「とりあえず、朱莉ちゃんを見つけられれば良いんだけど……家に行ってみようかな?」
そう呟いて、鞄に巻物を入れて、歩き出す。
「山の書見つけたあああああああああああああッ!」
その時、頭上から声が降って来た。
顔を上げると、空から赤い着物を来た男が落下してくるのが見えた。
「きゃっ!?」
咄嗟に後ろに跳び、ギリギリでかわす。
彼はズシィンッ!と音を立てて着地し、私を見る。
「お前、山の書、持ってるな?」
「し、知りません……」
そう言いながら、私は少しずつ後退する。
この人、なんだか、嫌な感じがする。多分、巻物を渡したら、ダメなやつだ。
「すんすん……いいや、知っているハズだね。巻物の臭いがプンプンしやがるぜ」
そう言って陰鬱な笑みを浮かべる男に、私は鞄を抱きかかえて、走る。
どうすればいい!?一体、どうすれば!そう思いながら、私は走った。
- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.8 )
- 日時: 2017/04/22 21:44
- 名前: 愛 (ID: uLF5snsy)
第2話「不動の山!キュアモンテ登場!」4
<朱莉視点>
「……蜜柑に何か起こってる気がする」
風間さんと一緒に歩いていた私は、そう呟いて立ち止まった。
妙な胸騒ぎがする。
昔から、蜜柑に関してだけは、勘が鋭くなる部分がある。
幼稚園の時にこの胸騒ぎを感じて外に出ると、蜜柑が外で転んで怪我をして泣いていた。
小学校の時にこの胸騒ぎを感じて蜜柑を探したら、廊下で男子にイジメられていた。
中学一年生の時にこの胸騒ぎを感じて蜜柑のクラスに行ったら、弁当を落として落ち込んでいた。
少し鈍くさくて、マイペースな蜜柑。
でも、生まれてから、ずっと一緒に育ってきた大事な友達。
蜜柑に何かがあると、なんとなく分かるようになっていた。
「何かって……どういうこと?」
「分からない。でも、きっと何かあったんだ!」
私は、そう言うのと同時に、踵を返し、走り出す。
しばらくして、横を、空色の何かが通りすぎる。
「貴方の無鉄砲さには……つくづく呆れるわ。でも、付き合ってあげる」
そう言って、手を差し出してくる風間さん。
彼女の言葉に、私は「うんっ」と頷いて、その手をしっかりと握った。
そのまま一気に風間さんは速度を上げるので、私も必死にそれに追いつく。
やがて……電柱の下にへたり込む蜜柑と、赤い着物を着た男が詰め寄っているのが分かった。
「へんたぁぁぁぁぁいッ!」
私はそう叫ぶのと同時にジャンプして、男の頭にハイキックを与え、着地をした。
まともに受け身なんて取っていなかった男は地面に倒れ込み、蹴られた箇所を押さえながら私を睨む。
「蜜柑! 大丈夫!?」
「あ、朱莉ちゃん!? なんでっ……」
「その男……まさか、幽鬼軍のっ!」
風間さんの言葉に、赤い着物を着た男は立ち上がる。
私はそれにすぐさま反応し、男のみぞおちに膝蹴りを入れた。
「グハッ! ちょっと待て! せめて説明を!」
「あーもううるさい! 幽鬼軍だかなんだか知らないけど、蜜柑に手を出すことだけは許さないんだから!」
「……貴方、愛されてるわね」
「あはは……」
風間さんの言葉に、蜜柑は苦笑を浮かべる。
そういえば、蜜柑は結局、なんで幽鬼軍とやらに襲われているのだろう?
「蜜柑。なんであの男に追われてるの?」
「えっ? えっと……そうだ。こんな巻物が空飛んでて、落ちてきたんだけど……」
そう言って取り出したのは、見覚えのある巻物だった。
私が確認するより先に風間さんが蜜柑の元に駆け寄って、確認する。
「やっぱり……これは、山の書ね」
「やまのしょ……? とりあえず、朱莉ちゃんが昼間言ってたものかなーって思って、持ってきちゃった」
そう言ってはにかむ蜜柑。
まぁ、ひとまず怪我とかはしていなさそうで何よりだ。
ホッと息をついた時、背後から物音がした。
振り返ると、そこには、黒い幽霊のようなものを電柱に吸わせている男の姿があった。
「あっ! ちょっと! まだここに蜜柑がいるんだからね!」
「うるせぇ! 邪悪なる魂よ! 我に仕えよ! いでよ、オンネーンッ!」
その言葉と共に、電柱が化け物になる。
巨大なオンネーンに、背後にいる蜜柑が小さく悲鳴をあげたのが分かった。
「……貴方、そこの、蜜柑さんを連れて今すぐ逃げなさい」
「っ……また一人で戦うつもり?」
「……どうせ、避難させた後で、すぐに来るんでしょ?」
「当たり前じゃん!」
「……単純ね」
そう言って小さく笑みを浮かべる風間さんに、私も微笑み、蜜柑の腕を掴んだ。
「ホラ、蜜柑。行くよ!」
「……ごめん。朱莉ちゃん」
その言葉に、私は首を傾げた。
俯いたままの蜜柑は、震える声で言葉を紡ぐ。
「……腰が抜けて……立てないや」
「そんな……ッ!」
「ごめん……私を置いて、早く逃げて……ッ!」
そう言って顔を上げる蜜柑の顔は、すごく必死で。
でも、このまま逃げたら、きっと蜜柑は……。
「……風間さん。ごめん」
「えっ?」
「私、幼馴染を置いて逃げることなんて、できないよッ!」
叫びながら、私は変身道具である巻物を取り出した。
私の行動の意味に気付いた風間さんが、目を見開く。
「ちょっと待って!」
「待てない! プリキュア! フォースオーラチェンジ!」
叫ぶのと同時に、体に文字のようなものが絡みついて、衣装に変わる。
「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」
- Re: 【オリキュア】風林火山プリキュア! ( No.9 )
- 日時: 2017/04/22 21:45
- 名前: 愛 (ID: uLF5snsy)
第2話「不動の山!キュアモンテ登場!」5
<蜜柑視点>
「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」
変身した朱莉ちゃんに、私はしばらく呆然とする。
綺麗な赤い髪は長く伸びて、今まで一つにまとめていただけだったのが、可愛らしいポニーテールになっている。
忍者みたいな装束を着ていて……いつからコスプレ趣味にでも目覚めたんだろう?
「えっ……えっと、たとえ朱莉ちゃんがそういう趣味に目覚めたんだとしても、私は止めな」
「違うよ! 本当に変身したの!」
そう言って私の肩を掴んで揺する朱莉ちゃん。
今朝も同じように揺すられた記憶があるけど、それより力が強い気がする。
「うぅぅ……分かったから落ち着いてぇ……」
「えっ? あ、ごめん」
そう言って手を離す朱莉ちゃん。
頭の中がぐわんぐわんして、少し気持ち悪い。
私は一度頭を押さえて、怒りの表情を浮かべている風間さんに目を向けた。
「それで……風間さんは、朱莉ちゃんとはどういう関係?」
「……プリキュア。フォースオーラチェンジ」
そう言うのと同時に、彼女の体を光が包む。
やがて現れたのは、朱莉ちゃんの装束を青っぽくしたような服を着た少女だった。
「疾きこと、風の如し! キュアウィング!」
そう言ってポーズを決める風間さん。
へぇ……風間さんって、真面目そうだと思ってたけど、こういうコスプレとかするのか……。
あ、もしかして、コスプレ趣味を持つ者同士朱莉ちゃんと仲良くなったのかな?
「えっと、風間さんにもそういう趣味が……」
「そういう趣味って?」
「……ううん。なんでもない」
「そう。とりあえず、この子は私が守っておくから、貴方は思う存分戦ってきなさい」
「私が!? ウィングの方が戦い慣れしてるじゃん!」
そう言うのと同時に、朱莉ちゃんの後ろで、電柱からできた化け物が何かを振りかぶっているのが見えた。
「危ないッ!」
なんとか叫ぶと、朱莉ちゃんは振り返る。
すでにそこには電柱でできた腕が振り下ろされようとしていた。
行こうにも、化け物への恐怖から未だに腰が抜けたままで、立つことすらままならない。
「はぁッ!」
そんな掛け声と共に、朱莉ちゃんは化け物の腕を、受け止めた。
……もしかして、本当に変身したってこと?
困惑する私をよそに、朱莉ちゃんはその腕を掴んで、化け物を振り回し、地面に叩き付ける。
そのまま上空に飛び上がって、蹴りを入れる。
「やっぱり……朱莉ちゃんはすごいなぁ……」
そんな呟きが口から零れた。
すると、私の隣に立っていた風間さんが、「えっ?」と聞き返す。
「そういえば、貴方とフレイムの関係……まだ聞いてないわね」
「え? あ、そっか……。私と朱莉ちゃんは、幼馴染で、小さい頃からずっと一緒だったんだ……」
その時、なんとなく、小学校の頃のことを思い出した。
−−−
「お前、いっつも鈍いし、邪魔なんだよ」
廊下の隅で、男子の一人がそう言ってくる。
それに、私はただ縮こまるばかり。
なぜなら、反論する術が無かったから。
足は遅いし、普段の行動も、人よりワンテンポ遅れちゃって。
こういうことを言われても仕方ないと思った。でも……。
「コラ〜! 男子! 蜜柑に何してるの!?」
「やっべ! おい、行くぞ!」
そう言って、男子はみんな走って行く。
すぐに朱莉ちゃんに捕まって叱られてたけど。
「蜜柑! 大丈夫?」
駆け寄りながらそう聞いてくる朱莉ちゃんに、私は頷く。
「うん……大丈夫だよ」
「そっか……良かった」
そう言って明るい笑顔を浮かべる朱莉ちゃんは、私にとって、一番のヒーローだった。
−−−
「……昔から、朱莉ちゃんに助けてもらってばかりで……私自身は、何もできなかった」
私の言葉に、風間さんは「ふぅん……」と言う。
その時、「きゃぁッ!」という悲鳴が聴こえ、私は慌てて顔を向けた。
そこには、地面に倒れる朱莉ちゃんの姿があった。
「朱莉ちゃん!?」
「だ、大丈夫……蜜柑は、私が守るから」
そう言って、力なく笑う朱莉ちゃん。
……違う。
何もできなかったんじゃない。何もしなかったんだ。
変わろうともせず、ただ、朱莉ちゃんの背中に隠れて、安全地帯にいただけ。
あれから、成長してないじゃない!
「……風間さん。私にも、変身、できるかな」
私が聞くと、風間さんがキョトンとした表情で私を見た。
「……できる」
「どうやって?」
「願うの。何がしたいか。何を守りたいか。想いの力を、巻物は形にするだけ」
その言葉に、私は手に持ったままの巻物を、握り締めた。
そして、口にする。
「私は……朱莉ちゃんを守りたい。守られてばかりは、もう嫌だッ!」
私がそう言った瞬間、巻物が光りだす。
次の瞬間、服が消えて裸になり、光がモザイクのようにそれを隠す。
巻物が広がり、文字が舞う。
私の体にその文字達は吸い込まれ、それらは衣装になる。
黄色を基調とした、忍者のような装束。
不思議と、私は次言うべき言葉、そしてするべき動きが、なんとなく分かっていた。
「動かざること、山の如し! キュアモンテ!」
私一人で戦うことはできなくても、朱莉ちゃんのためなら、変われる!
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