二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/08/01 13:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539
初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!
追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。
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- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.351 )
- 日時: 2017/09/19 23:21
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
風林火山外伝「雷と陰の話」11
あれから大人達の判断で、影津を閉じ込めた時計は封印することになった。
まぁ、それが妥当だろう。私達も、それを了承した。
でも、封印する場所は私の意見を貫かせてもらった。
それは……影津との、秘密の場所だ。
彼女がいなくなった今、すでに、秘密にする意味もない。
そこに祠を建てて、中に時計をしまった。
縄を複雑に編んで、簡単には解けないようにした。でも、原理さえ分かれば、簡単に解ける仕組み。
この縄を解く時。それは……影津を完全に浄化する力を得た時。
火燐達がまた浄化技を掛けることが出来れば良かったのだが、彼女達の力も雷の力の暴発により、失われた。
ただ、不幸中の幸い、彼女達のアウラシュリフトロレはただの巻物に変わっただけで済んだ。
あくまで憶測の話だが、このアウラシュリフトロレは私達の気持ちによって生まれたものだから、私達のように、何かを守りたいという気持ちに呼応して、きっとこの巻物はまた力を取り戻してくれる。
もう私達にそれほどの気力は無いから、いずれ、私達の同等の強さの気持ちを持った少女達が現れることを期待するしかない。
問題は……私のアウラシュリフトロレ、雷の書だ。
影津を封印する時に暴発させたせいで、恐らくアウラシュリフトロレごと破裂してしまったらしく、跡形もなく消えていた。
ライコウがなんとか雷の力の残骸を集めてくれたが、器も無いし、適当に捨てておくように言った。
……今の私に、守りたいものはない。
今更、何かを守るための力など……必要無い。
だって影津は……もういないから。
影津の相棒だったカゲロウは、悲しみに暮れていた。
そりゃそうだ。我が子のように大事にしていた影津の末路が、あんな……異形の化け物なのだから。
でも、きっとカゲロウは大丈夫だ。
だって……もうすぐ、同じ悲しみを持った仲間が増えるから。
夜も更け、皆が寝静まった時間、私は屋敷を抜け出し、祠がある二人の秘密の場所に向かった。
林の中は足元もままならず、何度も木の根に足を引っかけて転んだ。
でも、なんとか、祠の元へと辿り着く。
「……会いに来たよ、影津」
私がそう声を掛けても、反応は無い。
分かっていた。でも、諦めたくなかったんだ。
「……月が、綺麗だね」
そう呟きながら、私は夜空を見上げる。
満天の星空。そして……綺麗な満月。
私は祠を撫で、微笑んで見せた。
「ねぇ、影津……私、影津がいない人生なんて、嫌だよ……」
気付いたら、私の頬を涙が伝っていた。
もう、嫌だよ……こんなの……。
影津と一緒に大人になりたかった。影津と一緒に笑い合いたかった。
でももう……彼女はいないのだ。
「だからね、私決めたよ。影津」
語り掛けながら、私は……懐に隠していた包丁を取り出す。
コッソリ持ってきたのだ。
私はそれを首筋に当て、祠に向かって笑って見せる。
「私……死ぬ。そしたら、影津に会える気がするんだ……」
だからね、安心して、影津。
影津をあの世で、一人ぼっちになんてしないよ。
私が……付いていてあげるからね。
だって影津は……私が守るんだから。
私は首に、包丁を突き刺した。
息が苦しくなり、私は地面に倒れ込む。
ちょうど頸動脈の辺りを切ったようで、地面に倒れた衝撃で包丁が抜けた途端、血が溢れだした。
地面に広がる血だまりを見つめながら、私は瞼を閉じる。
瞼の裏に、影津との思い出が蘇る。
笑う影津。泣く影津。怒る影津。
影津。影津。影津!
そこで、私はとんでもないことに気付いてしまった。
なんて私は馬鹿なのだ。なんでもっと早く気づけなかったのだ。
影津は……死んでいないじゃないか。
影津はずっと、あの怨気になっているんじゃないか!
死の瀬戸際に立たされて、冷静になって気付かされた。
このまま私が死んだら、影津が本当に一人ぼっちになってしまう!
確かに、これで怨気を浄化することができれば、影津は死という形で終われる。
死ぬのはその後にするべきだった。死ぬにはまだ、早過ぎた。
「ぁぇ……づぅ……」
なんとか影津の祠に手を伸ばしながら、私は声を振り絞る。
まだ生きている。まだ動ける!
止血しなくちゃ。影津を一人にしたらいけないのに!
私は、最後の最後まで……最後の最後まで、影津を、一人にすることしかできないのか!
影津の孤独に気付けず、彼女を無意識の内に傷つけることしか、できないんだ。
「ぁ……」
意識がだんだん遠退いて行く。
私の体は動かなくなり、呼吸も少しずつ苦しくなっていく。
寒い……まるで冬みたいに、寒い……。
図々しいかもしれない。でも、もしも私の願いが一つだけ叶うなら、最後に……——影津に抱きしめられたい。
しかし、私の願いが叶うことはなく、意識は闇に落ちた。
最後に見えたのは……黒髪の幼馴染の、可愛い笑顔でした。
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.352 )
- 日時: 2017/09/20 18:39
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
風林火山外伝「雷と陰の話」12
<影津視点>
暗い……何も、音がしない……。
目の前に広がる暗い空間を眺めながら、私は心の中でため息をつく。
実際につきたくても、今更この体では、何も出来ない。
目前に広がるのは、真っ暗闇。
正直、自分が瞼を閉じているのか、開けているのかもわからない。
しかし、実際のところ、私には瞼も眼球も無いので、今私がいる祠が暗いだけなのだろう。
これから私は……どうなるのだろう。
それこそ、このまま永久にこの暗闇に閉じ込められるのであれば、この闇に発狂することも可能だろう。
いっそのこと、発狂してそのまま自我を失うことさえできれば、どれだけマシか。
しかし、それは出来ない。なぜなら、私の体は全ての人間に僅かに宿る怨念を通してその人の目に映る世界を見ることが出来る。
また、その怨念を取り出して人間に見えない形で外に飛ばすことで、自由に飛び回ることもできるのだ。
いざ闇に狂おうと思っても、どうやら精神的にそういう面には無意識にセーブが掛かるらしく、発狂しそうになる直前で外の世界の方に意識を向けてしまうのだ。
おかげで、狂うこともなく、ただ茫然と外の世界を見つめて暗闇に身を潜める時間が長くなった。
そんな日々を繰り返していたある日の夜、いつものようの夜闇を観察していた時、林の中から飛び出してくる人影が見えた。
月夜に照らされる『彼女』の顔を見た瞬間、私は歓喜に打ち震えた。
———雷香ちゃんだ!
かなり久しぶりに見た雷香ちゃんの顔。
やはり辺りが暗いからか、彼女の顔色を完全に伺うことは出来ない。
でも雷香ちゃんだ。
ずっと私を守ってくれた優しい雷香ちゃんだ。
最後は雷香ちゃんに浄化されてしまったけれど、それはしょうがないことだと思う。
あの時私は怨念の感情エネルギーに支配され、全ての村人を打ち滅ぼすことしか考えられなくなっていた。
唯一、雷香ちゃんだけは守ろうと意識はしたが、それが限界だった。
でも、後悔はしていない。だって、雷香ちゃんのことは傷つけずに済んだし、今でも村の人達を殺したいという気持ちは変わらない。
もし今こうして封印されていなければ、今頃私はまた村人たちを殺しに行っていただろう。
それだけの力が、今の私にはある。
「……会いに来たよ、影津」
その時、雷香ちゃんがそう声を掛けてくれた。
雷香ちゃんが、私の為に……?
その事実に、私はとても嬉しくなる。
もし今の私に顔があったなら、今頃にやけていたかもしれない。
「……月が、綺麗だね」
彼女の言葉に、私は夜空を見上げる。
……そうかな。
毎日見ているから、別に何とも思わない。
あんな満月なんかより、雷香ちゃんの方が百倍綺麗だと思う。
そう思っていた時、雷香ちゃんが私の封印されている祠を優しく撫でた。
……あぁ。あぁぁぁ。
まるで、雷香ちゃんに撫でられているかのような感覚に、私は言葉を失う。
「ねぇ、影津……私、影津がいない人生なんて、嫌だよ……」
震えた声で紡がれた言葉に、私は雷香ちゃんの顔を見つめる。
雷香ちゃん……泣いてる……?
私の……ために……?
そう思っていた時、雷香ちゃんが懐から何かを取り出した。
「だからね、私決めたよ。影津」
満月の光を反射しながら輝くそれは……包丁。
嫌な予感がした。
今の私は、体には実体がない上に、石の祠に封印されているから攻撃のしようがない。
じゃあ、あの包丁で、この場で刺せる相手は……一人しかいない。
「私……死ぬ。そしたら、影津に会える気がするんだ……」
雷香ちゃんは、笑顔で自分の首筋に包丁を当てて、そう言って笑う。
———やめてッ!
———そんな馬鹿なことはしないでッ!
口が無い私の叫びが彼女に届くことはなく、雷香ちゃんは自分の首に包丁を突き刺した。
噴き出す鮮血。溢れ出る生命。
赤黒い染みが地面に広がっていく。
これは……何?
目の前で倒れ伏すのは……誰?
———ぁ……。
———ぁぁ……。
目の前が、真っ赤に染まっていく。
———死んだ。
———雷香ちゃんが死んだ。
———誰が殺した。
———私だ。
———雷香ちゃんは、私がこんな姿になったせいで死んだ。
———じゃあ私をこんな姿にしたのは何だ。
———戦争だ。
———戦争は誰が起こした。
———人間だ。
———じゃあ、雷香ちゃんを殺したのは、私と人間だ。
———殺す。
———全ての人間を殺す。
———こんな世界滅ぼしてやる。
———だから、安心してね。雷香ちゃん。
———雷香ちゃんの仇は、私が取るから。
そう思って祠を出ようとした瞬間、鋭い痛みが体中に走る。
いいや、違う。これは、雷香ちゃんの雷の力だ。
———なんで?
———なんで私の邪魔をするの?
———私は雷香ちゃんのために人間を殺そうとしているのに。
とはいえ、この雷の力も永遠に続くわけでは無いようで、微量だが少しずつ弱まっているようだ。
このまま年月を待てば、いずれは祠から出られそう。
———そうしたら、次こそ雷香ちゃんの仇を取ろう。
———この世界を支配して、全ての人を殺す。
———だから、安心してね。雷香ちゃん。
———雷香ちゃんの分まで、この世界を恨むから。
———雷香ちゃんの分まで、この世界を憎むから。
———雷香ちゃんの分まで……この世界を滅ぼすから。
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.353 )
- 日時: 2017/09/20 18:54
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
あとがき
風林火山プリキュア外伝、いかがだったでしょうか。
いやぁ、初めてこんな鬱展開書いた気がします。
元々は「雷×陰の百合良くね!?」的なノリだったんです。
なぜこうなった()
まぁ、本編ですでに影津ちゃんの運命は決まっていたようなものですからね。
バッドエンド不可避だったとは思います。
しかしここまで鬱展開になるなんて思わなかった。
あと、本編の方はやはり『プリキュア』という枠に当てはめられた世界なので、私にも手加減というものはありました。
例えば、出血描写をしないようにするとか、死ぬ・殺すなどの野蛮な言葉は使わないだとか、プリキュアの設定を忠実に再現するように気をつけていました。
しかし外伝になった瞬間弾けましたよね。
なんでかは分かりませんが、「これは外伝だからプリキュア関係ない! 自由に書いてやるぜ!」ってなりました。
でも今思うと、最近こうしてオリキュアとかハッピーエンドの作品ばかり書いていたので忘れていましたが、私の本領はシリアスなんですよね。一応。
元々文章の参考にしている小説が救いようのないバッドエンドですし。
だからって……これは無いよ……。
風林火山プリキュアをpixivにまとめる時はタグに「子供向け」のタグを使っているのですが、流石に今回は外したいと思います。いや、これを子供に読ませたらいけない……。
代わりに「ヤンデレ」と「百合」のタグを付けたいと思います。
あと弾けたと言えば、百合もかなり弾けました。
なんでですかね(^ω^)
私の中でのイメージは、「雷香ちゃんは影津ちゃんがいなくなるまで恋心に気付いていないけど、いなくなった途端気付くレズ」「影津ちゃんは生粋のレズ」って設定考えて遊んでました。
いや、まぁ……流石に今回の外伝はガチレズすぎますよね。反省はしません。
あと、この外伝で、私は風林火山プリキュアから手を引きたいと考えています。
完結作品にずっと構っているのもなんだかアレですし。
確かにこの作品は初のオリキュア小説。そして初の金賞受賞作ということで思い入れはあります。それこそ、我が子のように。
しかし、いつまでも過去に構ってはいられません。
朱莉ちゃん達のように、私も先に進みたいと思います。
では皆さん。またどこかで会いましょう。
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.354 )
- 日時: 2017/11/04 20:33
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.pixiv.net/series.php?id=828454
最近pixivに上げている方の風林火山プリキュアを優遇してるなぁと感じたのでこちらでも宣伝させて頂きます。
一応主な優遇内容としては
・風林火山プリキュア第一話の大幅改編
・全体的な誤字脱字などの改善
・pixiv限定の話あり(どこぞの馬鹿作者が『風林火山プリキュアから手引きます』とか言ったせいでこっちに上げづらかったため)
ちなみにpixiv限定の話とは、主にNLとGLの番外編的なものです。
現在上げているものだと、
・幽鬼軍がもし生きていたらというIF小説
・朱莉×蜜柑&千速×皐月のハロウィン百合小説(R−15)
です。読むかどうかは自己責任です(特に後者)
では!
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.355 )
- 日時: 2017/11/17 23:19
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
Ten years after 1
<朱莉視点>
「はい、完璧」
その言葉に、私はゆっくりと瞼を開いた。
目の前にある鏡に映り込むのは、見知らぬ女の子だった。
いや、この顔は見覚えがある。
最近人気の若手女優だ。
しかし残念なことに……私は本人ではない。
「ありがとうございます。相変わらずすごいメイク技術だなぁ……」
そう呟きながら、私は自分の顔を触る。
すると、私のメイクを施した女性、大川真美さんが微笑んだ。
「いえいえ。にしても、朱莉ちゃんは顔が整ってるし肌綺麗だから、メイクのし甲斐があるわ〜」
「いやぁ、照れますなぁ……」
「ううん、ホントに綺麗。これで演技力があれば、人気アクション女優間違いなしなのに」
真美さんの言葉に、私が苦笑いを浮かべる。
これから映画の撮影で、私は今顔を借りている女優のスタントマンをすることになるのだ。
アクション俳優をしている父に憧れて、その道に進んだ。
勉強は本当に大変だった。
しかし、中学二年生の頃に、臨時教師として学校に来た小栗先生のおかげで、私は勉強が好きになったのだ。
あれから何度か会ったりしていたが、いつからか、全く会わなくなった。
それから入れ替わりになるように出会ったとある人に勉強を教えてもらい、難易度の高い高校に入学。
高校卒業後は俳優などの専門学校に進み、無事、アクション俳優としての道を進む……ハズだった。
しかし、単純馬鹿と揶揄されるだけあって、私の演技力は底辺を這うレベルだった。
けど、運動は好きだったしアクションなんかは出来るので、スタントマンとして活躍している。
まぁ、私くらいの年頃でここまでアクションができる女の子っていうのは中々いないので、割と色々な事務所から引っ張りだこにされたりしてる。
「演技力は良いんです〜。お父さんに教えてもらうから」
「緋呂樹さんは有名な俳優ですもんね〜。そのお父さんの直伝となると……実は黄金の卵だったりして?」
「ふっふっふ……鳩が鷹を産む様をしかと見るが良い!」
「それを言うなら、鳶が鷹を産む、ね」
「……」
「この様子だと、逆のパターンになりそうだけど」
黒髪ボブのウィッグの位置を確認しながら言われた言葉に、私は頬を膨らませた。
それから、ふと手持ち無沙汰になったので、私は手近に置いてあった脚本を手に取り読んでみた。
今日やるのは、とある映画の撮影だ。
内容としては、主人公の女の子とその幼馴染の女の子との友情物語。
恋や勉強だとか、色々な困難などを二人で乗り越えながら、友情を深め合っていく話。
設定では、主人公とその幼馴染は三歳からの関係なんだって。
良いねぇ、そういうの。私もそんな風に仲の良い幼馴染が欲しいよ。
そんな風に考えていると撮影の時間になったので、私達は外に出た。
「わぁ! 私そっくり!」
外に出て来た私を見て、人気女優の鮎川有紗は目を丸くした。
真美さんの技術は一流だ。
おかげで、私の顔は傍から見ても彼女とほとんど同じに見えているハズだ。
尤も、よく見れば目の色が違ったりするんだけどね。
「良いねぇ。じゃあ早速行ってみようか」
監督の言葉に私は頷き、本日の撮影場所に入る。
場所は廃墟となった工場。そこを根城としている不良に掴まった友達を助けるために、大多数の不良を相手に大乱闘を巻き起こすのだ。
まぁ、大乱闘と言っても、どんな風に戦うのかとかは大体決まってるんだけどね。
一応リハーサルも何度も繰り返して練習したし、抜かりはない。
私は近くに落ちていた鉄パイプを拾い、不良役の人達に向ける。
「よーい……アクションッ!」
その言葉に私は深呼吸をして、叫ぶ。
「返してもらえないなら……私にも考えがあるからッ!」
そう叫び、私は鉄パイプを構えた。
すると、不良役の人達が一斉に襲い掛かって来る。
私はリハーサル通りに動き、振るわれる武器や拳を避けながら、一人ずつを倒す、フリをする。
これが中々難しいところ。
全力でやり過ぎるわけにもいかないし、かといって全力でやらないと臨場感が無い。
だから、精一杯やりつつもギリギリで力をセーブする。
大変だけど……やりがいがある。
「ッ……!?」
しかしその時、鉄パイプが超全力で振るわれた。
私は咄嗟に身を翻し、自分の持っていた鉄パイプで受け止める。
ガキィンッ! と金属音が響き渡り、手が痺れる。
こんな動き予定にないッ!
「……キュアフレイム……」
その時、声が降って来た。
顔を上げるとそこには……忌々しそうな目で私を見つめる男の顔があった。
「……ヤット……見ツケタ……」
「……!?」
明らかに異常な声に、私はついその鉄パイプを振り払い、後ずさった。
監督に怒られるとか、そんなこと関係ない。
ていうか……キュアフレイム……? 何の話だ……?
不思議に思いつつ顔を上げた時、私はさらに気味の悪いものを見てしまった。
先ほどまでごく普通に撮影をしていたハズの俳優さんや女優さん、スタッフさん、監督さん。
皆が皆、常軌を逸した目で、私を見ていたのだ。
「何、これ……何この状況……」
腰が抜けそうになる。
しかし、ここでへたり込んだりしたら、すぐに捕まるのが目に見えている。
だから私は、震える膝をなんとか立て直し、踵を返して工場の奥に駆け出した。
とにかく、どこか隠れる場所!
私は咄嗟に、目に見れる木箱やら機材やらを飛び越え、入り組んだ場所に入っていく。
闇雲に逃げていたからか、いずれは誰も追いかけて来なくなった。
しばらくしたら来るかもしれないが、多少の時間差はあるはず。
ようやく強張っていた体から力が抜け、私はその場にへたり込んだ。
何だったんだ……あれは……。
突然の出来事の連続すぎて、頭の処理が追い付かない。
私はウィッグやらカラコンやらを外し、さらに衣装のボタンなども少し緩め、緊張を解していく。
とにかく、助けを呼ばないと……。
そう思って私はポケットに手を突っ込み、スマホを取り出した。
誰を呼べば良い……?
警察? こんな話、信じてくれるハズがない。
じゃあ、誰……?
迷ったのは一瞬だった。
私はすぐに震える指で、電話帳に登録されたとある名前を押し、スマホを耳に押し当てた。
やけに長く響くコール音。
自分の鼓動が耳につく中、私は、震える声で呟いた。
「助けてよ……おぐる……」
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