二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/08/01 13:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539
初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!
追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。
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- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.331 )
- 日時: 2017/08/01 11:21
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第50話「全てを守るヒーローに!笑顔よ、力と成れ!」5
<皐月視点>
朱莉達との別れから、一ヶ月が経過した。
村の復興は順調で、今のところ目立った問題は起こっていない。
強いて言うなら、村長の家が全壊していたのが一番問題か。
あの時は軽い気持ちで壊そうと思ったが、改めて壊れた自分の家を見ると、中々心に来るものがあった。
とはいえ、最早どうしようもない問題なので、ひとまず適当に余っていた家の一つに住んでいる。
立て直しの話もあったが、別に大きな家でなくても生活はできるし、ひとまず先にその他の復興を優先しようという話になった。
「皐月。山で美味しそうな木の実がなっている場所を見つけたんだが、一緒に行こうか」
部屋で本を読んでいると、父がそう言って来た。
私はそれに読みかけの本を閉じ、「はい」と頷いて立ち上がった。
それから、木の実を入れるためのカゴを背負い、二人で山に向かって歩き出す。
すると、妖精の姿のライデンが私の元まで飛んできて、私の頭の上に乗った。
「寺子屋での勉強は順調か?」
「はい。向こうの世界にも寺子屋に似た施設はありましたので、そちらでも勉強はしていましたし」
「そうか。四年間もいなかったから、少し心配になってなぁ」
「お父様達は昔から心配しすぎです。私だって、一人でやっていけますよ」
私が頬を膨らませながらそう抗議して見せると、父は「ははっ、ごめんごめん」と笑う。
しばらく歩いていると、畑を耕す作業をしている千速を見つけた。
「あ、皐月〜!」
こちらに気付いた千速が笑顔で手を振って来るので、私も振り返す。
すると、その様子を見ていた父が、フッと笑った。
「木の実、千速ちゃんと一緒に取りに行くかい?」
「えっ?」
「親と行くより、友達と行った方が楽しいだろう。……千速ちゃん! ちょっとおいで」
父に呼ばれ、千速は不思議そうな顔でこちらにやって来る。
土塗れでキョトンとしている千速に、父は自分が背負っていたカゴを渡した。
「今から、皐月と一緒に木の実を取りに行ってほしいんだ。山の中に木の実がなっている場所を見つけてね」
「へぇ、木の実……場所は?」
「あの山は千速ちゃんの庭みたいなものだろう? まぁ、遊びながらで良いから」
「あ、でも、畑仕事がまだ残っていて……」
千速の言葉に、父は「私がやっておくから」と言って、畑の方に歩いて行く。
その様子に千速は苦笑し、私を見た。
「ごめんなさいね。お父様のワガママに付き合ってもらって」
「良いよ良いよ。私だって、皐月と遊べるのは楽しいし。……フウマル!」
千速が名前を呼ぶと、畑仕事を手伝っていたフウマルが顔を上げる。
「ちょっと皐月と山行ってくる!」
「おい、畑は……」
「皐月のお父さんが代わりにやってくれるらしいから! あと、これ皐月のお父さんに頼まれた仕事しに行くだけで、遊びに行くんじゃないからね!」
「遅くなるなよ〜」
「分かってる!」
千速の言葉に、フウマルはフッと笑った。
そして、彼女は私を見て、「いこっか」と言って手を出す。
私はそれに「はい」と頷き、彼女の手を握った。
手をつないだまま、私達は山に向かって歩き出した。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.332 )
- 日時: 2017/08/01 12:23
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第50話「全てを守るヒーローに!笑顔よ、力と成れ!」6
「行ってきまーす!」
家を飛び出すと、家の前で待っていた蜜柑が「いこっか。朱莉ちゃん」と言って笑う。
私はそれに「うん」と頷き、いつものように手を繋いで歩き出す。
千速達がいなくなってから、一ヶ月が経過した。
彼女達の記憶は、恐らくアウラシュリフトロレか何かの力で消去されたようで、私と蜜柑以外の全ての人が千速達のことを忘れていた。
これはしょうがないと思う。でも、やはりそれはすごく悲しくて。
千速達がいなくなってすぐの学校で、平然とあの二人の机が撤去されているのを見た時は胸が締め付けられた。
「なんていうか……夢だったみたい、だよね。ここまで何も無かったようにされると」
「……私もそう思う。私と朱莉ちゃんだけが、長い夢を見ていたんじゃないかって」
蜜柑の言葉に、私は「だよね……」と呟いた。
その時だった。奇妙な歌が聴こえてきたのは。
「……?」
ちょうど、千速達とよく合流していた交差点。
そこから歩いてくる老婆の姿には、見覚えがあった。
「和子……さん……?」
「おや、おはよう」
ゆっくり歩いてくる和子さんに、私達は「おはようございます」と挨拶をする。
「不思議な歌ですね。古風というか……」
蜜柑の言葉に、和子さんはフフッと笑った。
「私もどこで聴いたのかは覚えていないんだよ。でも、良い歌だろう?」
「えぇ。そう思います」
私がそう返すと、和子さんは笑い、またその歌の続きを歌いながら、歩いて行く。
その後ろ姿を見つめながら、蜜柑がハッとした表情をした。
「あれ……確か、千速ちゃんがよく鼻歌で歌っていた曲……」
「そう、いえば……」
「前に聞いたら、千速ちゃんの村の歌だって……」
蜜柑の言葉に、私はなんだか嬉しくて、笑みを浮かべた。
「夢じゃ無いんだよね……きっと!」
「うんっ!」
私の言葉に、蜜柑は大きく頷いた。
それから学校に着くと、ちょうど勇太が校門に入っていくのが見えた。
「勇太〜おはよー」
私が声を掛けると、勇太はビクッと肩を震わせこちらを見た。
「あ、朱莉、おはよう。……み、蜜柑も……おはよう」
「うん。おはよう」
蜜柑がそう笑顔で返すと、勇太は顔を真っ赤にして目を逸らした。
その時、彼の後ろから秀樹が歩いてくるのが見えた。
「遠山さんおはよう。ちょうどよかった。生徒会のことで、少し話があるんだ」
「あ、うん。……じゃあ朱莉ちゃん。行ってくるねっ」
蜜柑の言葉に、私は「頑張れよ〜」と軽く言って手を振った。
それから蜜柑は秀樹と並んで、楽しく話しながら歩いて行く。
勇太はそれを見て、落胆したような表情をする。
まだチャンスはあるさ。
それから、することが無かった私は、屋上に上がってみた。
一月の空気はすごく冷たく凍てついていて、屋上に上がると、その空気が肌を刺すような感じがした。
柵に凭れ掛かった私は、なんとなく遠くを見つめた。
あれから、一ヶ月も経ったけど……未だに、たまに、オグルのことが脳裏に掠るんだ。
たくさん色々なことをしてもらったのに、私は何一つ恩返しをすることが出来なかった。
風に揺れる前髪を見つめながら、私はため息をついた。
『何センチメンタルになっているんだ』
その時、そんな声が風に乗って聴こえ、私はハッと顔を上げた。
後ろを振り返ってみると、何も無い……。
でも、確かに聴こえたんだ。オグルの……鬼人の声が、確かに聴こえたんだよ。
「オグル……?」
そう名前を呼んでみても、返事はない。
少し屋上を見渡してみて、とあるものが落ちていることに気付く。
「これは……?」
慌てて駆け寄って拾ってみると、それは、銀縁の眼鏡だった。
どことなく、オグルが掛けていた眼鏡に似ている。
忘れ物か? そう思いつつ掛けてみると、それは、伊達眼鏡のようで、特に変わらない景色が広がっているだけだった。
「……伊達眼鏡なんかい」
前に、同じようなツッコミを、心の中でオグルにしたことがあったな、と思い出す。
その時、屋上の扉が開いた。
「なんだ、朱莉ちゃん。こんなところにいたんだ」
「蜜柑……」
眼鏡を掛けたままそう返事をすると、蜜柑は少しキョトンとした後で、クスッと笑った。
「朱莉ちゃん、何その眼鏡」
「んー。落とし物みたい」
「へぇ……でも眼鏡なんて落とすかなぁ」
「うーん……一応伊達眼鏡みたいだけど」
「伊達眼鏡なら、あっても無くても変わらないし、朱莉ちゃん貰っちゃえば?」
悪戯っぽく笑いながら言う蜜柑の言葉に、私は「はぁ?」と聞き返した。
「だって、落ちてたんでしょ? 眼鏡って落とすものじゃないと思うし、多分持ち主も、もう必要ないんだよきっと」
「でも、私が貰う必要は……」
「朱莉ちゃんそれ掛けてると、頭良く見えるもん」
「え、マジ?」
頭良く見えるのかぁ……それなら掛けていようかな。
乗り気になった私の様子に、蜜柑がクスクスと笑った。
「あ、そろそろ教室戻らないと、朝のHR始まっちゃうよ! 早く行こ?」
蜜柑はそう言って私の手を握り、明るく笑う。
私はそれに「うんっ!」と大きく頷き、蜜柑の手を握り返した。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.333 )
- 日時: 2017/08/01 13:11
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
※ここでは作者が屑発言するだけなので、この作品のイメージを壊したくない人はブラウザバックを推奨いたします。
あとがき
ついに完結しました!風林火山プリキュア!ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
話数的にすごく長く書いてた気がしますが実際この更新始めたの二月の終わりくらいなので、五カ月ちょっとしか経ってないんですよね。
しかも本格的にバンバン書いてたの四月の終わりくらいなので、実質……三ヶ月ちょっと?w
私の更新速度どうなってんだよ!( ゜д゜)、ペッ
このオリキュアのおかげで私の執筆速度が化け物になりました。30分で2000文字くらい書けるようになりました。
あと風林火山プリキュアでの思い出とすると、第38話辺りを執筆中に鼻血だしたり、第48話でオルコVS皐月辺りのシーンを書いてる最中にWordの不具合により700文字くらいのデータが消えたことですかね。
どちらもかなり辛かったです。鼻血のおかげで家の絨毯に血痕ができ、データ消えた影響で30分くらいふて寝したりしました。
まぁどうでもいいですね。次行ってみましょう!
そもそもこれって最初は「風林火山のプリキュアって良くね?」っていうノリで書いちゃったんですよね。
それが後付け設定を盛り込んでいる内に地味に大作になっちゃって……。
最初はまともに考えてたの巻物が変身道具とキュアフレイムくらいしか無かったです。
正直このあとがきでははっちゃけようって決めてるので、ここで風林火山プリキュアで存在そのものが後付け設定と言っても過言ではないキャラクターベスト3を言っていきたいと思います。
まず第3位は蜜柑ちゃんの姉、柚希さんです。
元々蜜柑ちゃんの名前は黄色系の名前何があるかな。果物の名前って良いな。じゃあ檸檬(れもん)とか?いや、こち亀にいるし。じゃあ蜜柑で良いや。そんなノリから付けました。
ちなみに蜜柑ちゃんは今では風林火山プリキュアの中で一番の推しです。
ただ、蜜柑って名前変だなってずっと思ってたんですよ。そこでちゃんとした名前の由来を考えないとと思い、その説明として出すために柚希さんを出しました。
第2位は朱莉ちゃんの父親である緋呂樹さんです。
まぁ、彼は一話しか出ていませんしね。
正直、朱莉ちゃんのお父さんが全然出ていないなぁと書きながらずっと思っていたんですよね。
流石にここまで出ないのはおかしいし、だったらいっそ家にあまりいない俳優とかにしちゃえばいいやと。
あと、ついでに朱莉ちゃんが忍者とかヒーローに憧れている理由とか、それを忘れていた理由とかもついでに彼に押し付けました。
ちなみにニンジャ仮面は完全にノリです。正直すごくダサいですね。
そして堂々たる第1位は、皐月ちゃんのかれs……お世話妖精のライデン君です!わー。
当初、風林火山プリキュアの妖精はフウマル君一人の予定でした。
……なんか冒頭で敵に捕まってるじゃないですか、彼。
プリキュアと言えば妖精!なのに名前しか出てこないってどういうことだよ!
第3話まで云々悩み、私は思いつきました。
じゃあ妖精増やそう!
それからライデン君には色々細かく考えるのが面倒な設定を押し付けさせていただきました。
まぁ流石にそれだけでは可哀想なので元々相手がいなかった皐月ちゃんのNLでの相手にさせていただきました。
まぁ私はNLよりGLの方が好きなんですけどね!!!
まだまだはっちゃけますよ!!!
実はこの風林火山プリキュアでは、裏で作者がチキンレースを行っていました。
プリキュアでの百合(GL)の限界はどこなのだろうか、と。
しかし流石に明らかにし過ぎるとアレなので、NLも大きくやることで隠していました。
個人的にNLはオグル×朱莉とオルコ×皐月が好きです。
でもやっぱり女の子同士の恋愛が好きなんですよ!!!
正直この小説内では朱莉×蜜柑と千速×皐月で固定しているつもりですが、結構色々な組み合わせで遊んだ感じがあります。
NL含めて個人的には朱莉×蜜柑が一番好きです。
この二人のお互いへの感情が少しずつ変わっていくのが好きでした。
(友達としての)好き→一番の親友→世界で一番大好きって変わっていったんですよね。
第12話、第29話、第46、47話は個人的にかなり百合がはっちゃけていたと思います。
でも千速×皐月もかなり好きです!
千速ちゃんが、皐月ちゃんが来ることで一気に感情を面に出してくれるようになる様子がとても可愛いなって思っています。
あとやっぱり友達紹介回はかなり色々やりましたね。第37話でしたっけ。
あの回の中で絶対あの二人ベッドインしてるって思ってます(屑)。
ただ、私はかなり百合をやっているつもりですが、プリキュアアラモードの第25話が私のコソコソやってる百合を嘲笑うかの如く百合をやってくれたんですよね。
あの回は私にもっと百合をやっても良いんだよという勇気をくれました。
次回からはもっと百合を増やしていきたいと思っています。
……あっ、すでに次回作は考えてあります!←
ただ、この風林火山プリキュアをpixivにまとめる作業もありますし、そろそろ夏休みの宿題とかも片づけたいですし、戯曲講座というもので作っている脚本のプロットも書かないといけません。
ひとまずpixivにまとめるのとプロットを完成させることが終わったら、書き始めたいと思っています。
まぁこんな後付け設定&百合に塗れた糞野郎が書く小説ですが、是非、次回も読んでいただけたらなと思っています。
ではまた別の作品で会いましょう!さようなら!
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.334 )
- 日時: 2017/09/01 03:41
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
皆さんお久しぶりです。愛です。
昨日、カキコでの小説大会の結果が発表されたわけですが。
……金賞……でしたねぇ!!!(歓喜)
正直びっくりしましたよ。
まさか金賞を取らせて頂けるとは!
結果が発表されたであろう時間。私は多分Twitterしてました。
まさか!まさか、金賞が貰えるなんて!
こんな体育祭中にハチマキで両手縛られながら恋ダンスを踊り始める変態の小説が金賞を貰えるなんて!
ホントに嬉しいです。嬉しすぎてリアルでテンションがおかしいです。
実は地味にタイミングが凄かったんですよね。
私実は近日中に番外編的なものを投稿する予定でして。
金賞を取っていたことを知ったのも、番外編の執筆がひと段落してなんとなく結果発表を確認したら……って感じだったので。
というわけで、金賞記念といっては何ですが、ぜひその番外編も読んで頂けるとありがたいです。
皆さんこれからもよろしくお願いします。
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.335 )
- 日時: 2017/09/01 23:44
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
番外編1「風の恩返し」
「「ばれんたいんでー?」」
いつだったか。一年の内にあるイベント的なものを聞いていた時に、そんな聞き慣れない言葉が出て、私と皐月は同時に聞いた。
私達の言葉に、朱莉は頷く。
「うんっ! 年に一回。女の子が好きな男の子にチョコレートをあげるんだよ!」
「でも、最近は女の子同士でもチョコをあげたりだとか、男の子が女の子にあげたり、女の子が男の子にあげる分でも、好きな人だけじゃなくて、仲が良い人とかお世話になってる人に感謝を述べる意味であげたり……結構色々と曖昧なんだよね」
朱莉の言葉に、蜜柑がそう説明を付け足した。
彼女の言葉に、私は「ふぅん……」と返した。
「あれ、なんか微妙な反応」
「いや……複雑なんだなぁって」
「やはりこの世界の文化は複雑です」
こめかみの辺りを押さえながら言う皐月の言葉に、蜜柑は苦笑した。
「まぁとにかくさ、二月十四日は男の子にチョコレートをあげる日なんだよ!」
−−−
「っ……」
瞼を開くと、古い木の屋根が目に映る。
朱莉達と分かれてから、たまに、こうして『覚めてほしくない夢』を見ることが多い。
具体的に言えば……彼女達との思い出を、夢として見るんだ。
「……」
私は額に手を当てて、息をついた。
それにしても……バレンタインデーか……。
「そういえば、今日は……」
そう呟きながら、私は壁に掛かっているカレンダーを確認する。
今日は……二月十四日。
確か、朱莉達の世界で言うところのバレンタインデーというイベントがある日。
「千速。目が覚めたのか?」
その時、そんな声が聴こえ、私は顔を上げた。
見ると、部屋のドアを開けてこちらに微笑むフウマルの姿があった。
「フウマル!」
「朝食なら出来てるぞ。冷めない内に食べなさい」
「はーい」
私はそう言いながら布団から出て、部屋を出る。
扉をくぐった瞬間、フウマルは妖精の姿になり、私の肩に乗る。
それから食事をとる部屋に行くと、ちゃぶ台の上に盛り付けられた朝食と、それを私と向かい側になる位置で食べる父の姿があった。
「お父さん。おはよう」
「あぁ……おはよう」
そう言って味噌汁を飲む父。
まぁ、私達に会話なんて基本無い。
不愛想な父に苦笑しつつ、私は席につき、朝食を食べ始める。
そこで、今朝の夢を思い出し、なんとなく私は口を開いた。
「そういえば、お父さん」
「ん、何だ」
「もし私に好きな人とか彼氏とかが出来たらどうする?」
「「なにッ……!?」」
私の言葉に、父だけでなく肩に乗ったままのフウマルまでもが反応する。
二人の反応に、私は朝食を頬張ったまま首を傾げた。
「ち、ちち千速。まさか、かか彼氏が出来たのか?」
「いや、もしもの話だけど……」
「もしも、だよな。そうだよな。はっはっは」
震えた声でそう言いながら、父は味噌汁を啜る。
……かなり口から零れてますが。
そう思っていると、フウマルが私の肩の辺りの服を強く握りしめた。
「千速……彼氏を作るのは勝手だが、まず先に拙者に一度顔を見せるんだぞ? 千速は可愛いから、体目当ての薄汚い輩なんかが近づく可能性もあるし、デートを邪魔するつもりはないが、やはりそういうことはきっちりと……」
「だから違うって!」
私がついそう怒鳴ると、フウマルはシュンとした表情をした。
例えばの話なのに、何をこの二人は必死になっているのだろうか。
しかし、改めて考えてみると、私には好きな人なんて特にいないなぁ……。
基本妖精に任せきりにしているこの村では、あまり親に感謝するという風習もないし……強いて言うならフウマル?
でも、フウマルもどちらかと言うと家族だし……いや、でもいつもお世話になっているのはフウマルだ。
「フウマルってさ、甘い物好き?」
「へ? 嫌いではないが……」
「ふーん。そっかぁ……」
そう呟きながら、私は朝食を完食する。
フウマルは甘い物は嫌いではない、と。
しかし、今更だが、この村にはチョコレートという食物も無い。
朱莉達の村に比べれば、やはり文化は遅れすぎている。不便、とは思わないが。
チョコレートは無理でも、別にお菓子とかなら何でもいい気がする。
作り方は和子さんに習ったことがあるし、材料さえ手に入れられれば、クッキーくらいならこの村でも作れそう。
「……よし。フウマル。ちょっと出かけてくるね」
「ちょっ、千速!?」
呼び止めるフウマルを無視して、私は草履を履く。
なぜかしつこく付いて来ようとするフウマルを制止して、私は外に飛び出した。
向かうのは、前に皐月と一緒に果実を取りに行った場所。
あそこになっている果実さえ使えれば……きっと……!
「よっ、はっ、ほっ」
木から木へ飛び移りながら、手頃な果実をもいでは腰に提げた小さな麻袋の中に入れて行く。
ブドウのような見た目をした果実。
すごく甘くて、でもほんのり酸っぱくて、すごく美味しいんだ。
ちなみに名称は知らない。まぁ、毒が無いことだけは分かっているし、別に良いかとは思っている。
そんな風に考えながら、私は太い木の枝の上で直立し、息をつく。
「ふぅ……そろそろ良いかな」
パンパンになった袋を見つめながら、私は呟く。
これ以上採りすぎてこの山の生態系を壊したくないし。
そう思って木を下りるために足を少し動かした時、ズルッと足が滑った。
「しまッ……!?」
気付いた時には、私の体は宙に投げ出されていた。
遠退く空。近づく地面。全てがスローモーションに見える。
これから体に受けるであろう衝撃を想像して、私は咄嗟に目を瞑った。
「千速ッ!」
その時、聴き慣れた声がした。
直後、温かい感触に身を包まれ、私は目を見開く。
体に僅かに衝撃を感じるが、特に怪我はない。
「千速……怪我はないか……?」
「フウマルッ!?」
すぐに体を起こし、私は地面に倒れるフウマルを見た。
フウマルは、チラッと私の方を見て、優しく微笑んだ。
「良かった……怪我は、無いんだな……」
「当たり前じゃん……だって、フウマルが守ってくれたから……」
私の言葉に、フウマルは消え入りそうな笑みで「良かった」と言う。
それどころじゃない。私はすぐにフウマルの肩を掴み、彼の体を観察する。
「それより、フウマルは!? フウマルの方こそ、怪我したりとか!」
「拙者は大丈夫だよ。だって……千速が無事だから」
そう言って私の頭に手を置き、優しく撫でる。
私はそれに「何それ……わけわかんない……」と漏らした。
「ははっ……確かに、よく分からないな」
フウマルはそう言って笑い、私の腰に提げられた袋を見つめた。
不幸中の幸いか、袋には特に損傷も無く、安心した。
「それ、どうしたんだ? わざわざ拙者から逃げるようにして採っていたが……まさか、彼氏に……?」
「はぁ? 何それ、違うよ。……朱莉達の世界ではね、今日は、大切な異性にチョコレートを渡す日なんだって。でも、こっちにはチョコレートは無いから……せめて、甘い物をあげたくて。この果実でお菓子でも作ってフウマルに渡そうと思ってたんだけど……」
私の言葉に、フウマルは驚いたように目を丸くした。
それから優しく笑って、袋に手を入れる。
やがて、小さな果実を一粒摘まんで取り出し、それを口に含む。
「ちょ、フウマル!」
「わざわざお菓子にしなくても充分美味しいよ。千速の気持ちが詰まっているからね」
その言葉に、私は自分の顔が熱くなるのを感じた。
しかし、すぐに「何それ!」と返す。
「それじゃあバレンタインデーの意味ないじゃん! 大体、本当はフウマルを驚かせたかったのに……台無しだよ」
「そ、そうなのか……悪い」
「まぁ、助けてもらったから良いけど……ていうか、なんでいるの? 付いて来るなって言ったよね?」
「千速が一人で出かけたらロクなことにならないのと、今朝の話から、彼氏でも出来たのかと思ってな。拙者が認める男じゃないと、千速と付き合うことは認めないぞ」
そう言いながら腕を組むフウマルに、私はため息を漏らす。
これじゃあしばらく私に春は来そうに無いな……。
「それより、土で汚れただろ。先に家帰って体洗うぞ。お菓子作りはその後だ」
「はーい」
立ち上がりながら言うフウマルに、私は生返事をする。
すると、フウマルはムッとするが、すぐに優しく笑って、私に手を差し出した。
私はそれをしっかりと握り、二人で帰路についた。
ちなみに、クッキーを作った時に砂糖と塩を間違えたが、変な汗を流しながらフウマルが完食してくれたのは、また別の話。
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