二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/08/01 13:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539
初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!
追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。
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- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照1000越え】 ( No.110 )
- 日時: 2017/05/22 17:08
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第16話「今日は誰の誕生日?祝え二人のBirthday!」4
翌日。私は途中で芽衣と合流し、朱莉の家に向かった。
どうやらすでに蜜柑が来ていたようで、朱莉にエプロンを着せている真っ最中だった。
「あ、千速、芽衣! ようこそ!」
「こんにちは、朱莉さん、蜜柑さん。おじゃまします」
「おじゃまします。……貴方、自分でエプロン着られないの?」
私が呆れつつ言うと、朱莉は「いやぁ……あはは」と笑う。
その間に後ろの紐を結び終えたのか、蜜柑が「よしっ」と言って顔を上げた。
「あ、千速ちゃん芽衣ちゃん。こんにちは!」
「気付いてなかったのね……それじゃあ、私達もエプロン着ましょうか」
「え……えぷろん……?」
「はい?」
キョトンとする芽衣に、私は聴き返す。
もしかして彼女……。
「エプロン……知らないの?」
頷く芽衣。
……嘘でしょ……?
「はぁ……予備のエプロン持って来ていて良かったわ。和子さんのだから、割と渋い感じのだけど」
「本当ですか? ごめんなさい」
シュンとした表情をして俯く芽衣に、私は「そういうの良いから」と言いつつ、頭をポンポンとしてやる。
それから、鞄から青緑っぽい感じの色のエプロンを取り出し、渡してやる。
かなり和風というか、古い感じのデザインだけど、元々顔が皐月似の芽衣にはよく似合っている気がした。
元々、私がいた村では、和服だったからね。
そういえば、私ってなんでこうしてこの世界の文化に馴染んでいるんだろう?
まぁ、良いか。
「えぇっと……これで良いんですか?」
「うーん。少し紐の結び目が緩いかな?」
私の言葉に、芽衣は紐を結び直した。
それにОKを出すと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「これを着ていると、千速さんに包まれているみたいで安心しますね」
「何の話よ……」
私が苦笑していると、朱莉がパンッと手を叩いた。
「それじゃあ、早速作ろう! 美味しい誕生日ケーキを!」
「誕生日……そういえば、芽衣の誕生日はいつなの?」
なんとなく興味を持った私は、芽衣にそう聞いてみた。
すると、芽衣は少し苦笑して、「さぁ……いつでしょう?」と首を傾げた。
……はぁ?
「いつでしょう、って……覚えてないの?」
「はい。祝ってもらった覚えもありませんし……」
芽衣の言葉に、朱莉が「なんですとぉ!?」と声をあげた。
「そ、そんなに驚くことなんですか?」
「そりゃそうだよぉ! 誕生日って、一大イベントだよ!?」
「じゃあ、折角だから芽衣さんも一緒に祝ったらどうかな? ついで……みたいになっちゃうけど」
蜜柑の言葉に、芽衣は目を丸くして、しばらく呆ける。
芽衣の返事を聞くより前に、朱莉が「それ良い!」と同意した。
「折角ここにいるんだもん! 一緒に祝っちゃおうよ!」
「えぇっと……芽衣はそれで良い?」
私が恐る恐る聞いてみると、芽衣は嬉しそうに笑って、頷いた。
「はいっ。嬉しいです」
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照1000越え】 ( No.111 )
- 日時: 2017/05/22 20:40
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第16話「今日は誰の誕生日?祝え二人のBirthday!」5
<芽衣視点>
「ねぇ、イチゴが無いんだけど」
困惑した表情で言う遠山蜜柑に、火場朱莉は「嘘!」と言って、彼女の背中に寄りかかるような体勢で冷蔵庫の中を覗き込んだ。
そして、「本当だ!」と叫ぶ。
「どうしたの?」
「昨日買ったイチゴが無いの」
「そもそも本当に買ったの? 買い忘れたとかじゃ……」
「買ったよ! 試食してたから、その時食べて買ったもん! ね、蜜柑!」
「う、うん。朱莉ちゃんの手が塞がっていたから、私が入れたし……間違いないよ」
「えっ、両手塞がっていたのに試食したって……あぁ……」
呆れた表情を浮かべる風間千速に不思議に思いつつ、私は「何があったんですか?」と自分でもわかるくらい白々しい態度で聞いた。
すると、火場朱莉が泣きだしそうな顔をこちらに向けた。
「ごめんね芽衣〜。ケーキに乗せるイチゴが無くなって……」
「イチゴって……昨日の?」
そんな声に、私は振り返った。
見ると、そこには確か、火場朱莉の弟である、火場紅助が立っていた。
赤みがかった茶髪をボリボリと掻く彼に、火場朱莉は「紅助!」と身を乗り出した。
「イチゴ、どこにあるか知らない!?」
「そんなの……母さんが食ってたぞ。まぁ美味しそうとか言いながら」
「なんだと……!」
落胆して俯く火場朱莉を遠山蜜柑が宥める。
なんだかよく分からないけど……火場朱莉に関しては、弟や風間千速をオンネーンにされた時より落ち込んでいるように感じる。
「えっと……よく分かりませんけど、私が買ってきましょうか?」
私が聞くと、火場朱莉が「えっ!?」と顔を上げた。
「ケーキって、あまり作ったことがないし、私に手伝えることは無いかと。だから、お金さえくれれば買いに行きますよ?」
「そんな……でも……」
「大丈夫です。私を信じてください」
自分でも、よくこんな白々しい嘘がつけるな、と思う。
信じろって……そもそも、私が信じていないのに、ね。
「本当? この街慣れてないでしょう? 私も付いて行こうか?」
「いえ、一人で大丈夫ですから」
私が断ると、風間千速はむーとした表情を浮かべる。
……なんだ。その何か言いたげな表情は。
「それじゃあ、はい。お金。盗んだりしないでよ?」
「フフッ、しませんよ。それじゃあ、いってきます」
私はそう言いつつ、家を出た。
全く、信用しすぎじゃないだろうか。
私は胸に垂らしたネックレスに触れる。
「……こんなこと、している場合じゃない」
そう呟いた瞬間、ネックレスが輝き、元の姿……冥姫としての姿になる。
私は腕に影を纏わせて、近くにいた人間にぶつける。
「邪悪なる魂よ! 我に仕えよ! いでよ、オンネーン!」
<千速視点>
「あぁ、朱莉ちゃん違う。ここをこうして……」
「えぇっと……こう?」
「そうそう」
朱莉と蜜柑が二人で何かを作っているのを見ていた時、外で何か大きなものが動くのが見えた。
私は窓を開けて、身を乗り出した。
「……オンネーン!?」
「え、嘘!」
朱莉はそう言って持っていたチョコペンから手を離した。
蜜柑はそれに、すぐに私の隣まで来て、同じように窓から身を乗り出した。
「本当だ……! ホラ、行くよ朱莉ちゃん!」
「で、でもまだ途中だけど……」
「帰ってからでもできるでしょ? 早く」
蜜柑の言葉に、朱莉は頬を膨らませた。
靴を履きながら、私は「そういえば」と口を開いた。
「あの方向って、この家から一番近いスーパーの方向じゃない?」
「えっ……」
「確か、芽衣さんと一緒に行ったスーパーもあそこだよね? この街にあまり慣れていない芽衣さんは、もしかしたらあの方向に……」
蜜柑の言葉に、朱莉は顔色がサッと変わった。
すぐにスニーカーを履いた朱莉は「早く行こ!」と言って、蜜柑の手を引く。
モタモタと靴を履いていた蜜柑は「ちょっ……」と慌てた声をあげて、慌てて靴を履き、二人は走り出す。
私もすぐに追いつき、やがて、オンネーンの元に辿り着く。
「あら? 意外と速かったですわね。プリキュア」
余裕そうな笑みで言う冥姫に、朱莉が「うるさい!」と叫び、すぐにアウラシュリフトロレを取り出した。
「行くよ!」
「えぇ!」
「う、うん!」
「「「プリキュア! フォースチェンジ!」」」
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照1000越え】 ( No.112 )
- 日時: 2017/05/23 18:59
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第16話「今日は誰の誕生日?祝え二人のBirthday!」6
「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」
「疾きこと、風の如し! キュアウィング!」
「動かざること、山の如し! キュアモンテ!」
「「「風林火山プリキュア!」」」
名乗りのセリフを言った時、オンネーンが攻撃してくる。
私達はそれを躱し、すぐに腕を構えた。
「「「動くこと、雷霆の如し! サンダーブレス!」」」
「フレイム!」
「ウィング!」
「モンテ!」
サンダーブレスを装着した直後、オンネーンが腕を振るう。
咄嗟に躱そうとした時、足に植物の蔦のようなものが絡みついた。
この蔦は……冥姫!?
「冥姫ええええええええええええッ!」
私は叫び、気合で蔦を引きちぎり、視線を巡らせた。
すると、遠くでこちらを見ている冥姫を見つけた。
「疾き風よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! ウィングアクセル!」
自分に技をかけた私は、一気に冥姫の元まで駆ける。
何度か攻撃されるが、加速しているからか、余裕を持って回避することができる。
やがて、冥姫の元まで駆け寄った私は、膝蹴りを入れた。
しかし、避けられる。
「な、何なんですの!? わざわざここまで来て……」
「アンタ、皐月や芽衣に顔似ていて気に食わないの。だから、倒す」
「な……!? 貴方、それでも正義の味方なんですの!?」
「正義って……私は自分の村を取り戻したいだけなんだけど……」
そう言いながら、私は拳を突き出す。
かなり速度が上がっているであろう私の攻撃を受け止めて、冥姫は言う。
「それなら……私達の仲間になる……っていうのは、どう?」
「……は?」
呆ける私の腕に指を這わせるようにして顔を近づけ、冥姫は微笑む。
「私達の仲間になって、風の書さえ差し出してくれれば、村は戻してあげる。その代わり、一緒に世界を支配しましょう?」
「それは……」
「貴方の両親もいるわよね? 協力してくれれば、貴方の村の人たちだけは助けてあげる。……あの二人は、どうなるか分からないけれど」
そう言って冷たい笑みを浮かべる冥姫に、私は彼女の手首を掴み、地面に叩き付けた。
「残念だけど……お断りだわ。それより、もっと単純で簡単な方法があるもの」
「へぇ……? それは?」
「貴方を倒すこと」
私の言葉に、冥姫は面白がるような笑みを浮かべた。
その時、握り締めている感触に違和感を抱いた。
「えっ……」
「うん?」
不思議がる冥姫を置いて、私は彼女の袖を捲ろうとした。
しかし、すぐに弾かれて、彼女は距離を取る。
「オンネーン! やってしまいなさい!」
「ウィング!」
叫ぶ朱莉達に私は頷き、すぐに駆け寄る。
そして、円を囲う。
「「「動くこと、雷霆の如し! サンダーブレス!」」」
「フレイム!」
「ウィング!」
「モンテ!」
「侵掠の火よ!」
「疾き風よ!」
「不動の山よ!」
「「「今、三つの力よ! 我らに集い、怨念を打ち払え!」」」
「「「プリキュア! ドライサンダーッ!」」」
雷撃によってオンネーンが浄化され、冥姫が去って行くのを眺めながら、私は自分の手を見つめていた。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照1000越え】 ( No.113 )
- 日時: 2017/05/23 21:54
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第16話「今日は誰の誕生日?祝え二人のBirthday!」7
<芽衣視点>
「はぁ……」
私はため息をつき、手に持ったレジ袋の中身を見た。
オンネーンでプリキュアを倒せば買わなくても済むんじゃないかと打算が働いたけれど、結局ダメ。
火場朱莉の家の玄関の前に着いた私は、落胆を隠しながらインターフォンを鳴らした。
すると、すぐに風間千速が血相を変えた表情で飛び出してきた。
「わっ!?」
「芽衣、大丈夫!? 怪我とかしてない!?」
そう言って私の体を調べ始める風間千速。
むしろ先ほど自分から倒すとか言いながら殴りかかって来たくせに……。
しかし、私はそんな感情を抑え込んで、「大丈夫ですよ」と言っておいた。
「すいません。中々イチゴを見つけられなくて、少し時間がかかってしまいました。でもこの通り無事に買えて……」
私が途中まで説明していると、風間千速は無言で私を抱きしめてきた。
イチゴが入ったレジ袋を落としそうになったが、それを掴んだままにして、私は彼女の背中をポンポンと叩く。
「苦しいです……千速さん……苦しいです……」
「えっ? あ、ごめん!」
慌てて離れる風間千速。
私はそれにフゥ、と一息ついた。
「おっ! 芽衣かえってきたんだ!」
その時、家の奥から火場朱莉と遠山蜜柑も出てくる。
私はそれに「はい」と返事して、イチゴのパックが入った袋を掲げて見せた。
「中々見つからなかったので、少し時間がかかりましたが」
「いやいや、私達は大丈夫。でも千速が、ずっと芽衣のことを心配していたけど」
「そ、そりゃあ……芽衣は大切な友達だし……皐月に顔が似ているから……なんとなく……」
「心配して……くれたんですか……?」
私が聞くと、風間千速は「うん?」とこちらに顔を向けてくる。
「当たり前でしょう? あ、それより早くケーキ作ってしまいましょう。ちょうどさっきスポンジを焼き終わったから」
「あ、ハイ」
それから家に上がってエプロンを着直し、キッチンに行くと、皿の上に白いクリームをまんべんなく塗られたスポンジケーキがおいてあった。
ぼんやりしていると、気付けば、遠山蜜柑がイチゴを洗って、こちらに持ってくるのが見えた。
「それじゃあ、一緒に飾ろう? ……あっ、芽衣さんは手洗って」
「え、えぇ……分かりました」
「よぉし! 飾るぞ〜!」
それからイチゴを飾り、クリームを塗り、やがて……ワンホールの綺麗なケーキが出来上がった。
「わぁ……それじゃあ早速いただきましょう!」
「フッフッフ……まだ早いのだよ芽衣君」
得意げに言う火場朱莉。
それに首を傾げていると、遠山蜜柑が何か銀色のトレイを持ってくるのが見えた。
テーブルに置いたそれを見た瞬間、私は息を呑んだ。
そこには、歪なチョコレート板に、不格好な文字で『さつき&めい おたんじょうびおめでとう!』と書いてあるのだ。
ポカンとしてしまった私に、朱莉は「えへへ」とはにかんだ。
「誕生日ケーキと言ったら、これが欠かせないからね。蜜柑と一緒に作ったんだ。……ほとんど蜜柑に任せちゃったから、私は役に立ってないけど」
「ううん。朱莉ちゃんが発案したからやっただけで、私だけだったら作っていなかったと思うよ」
「そうかなぁ……」
何やら二人で盛り上がっているのを完全に無視して、風間千速はチョコレートの板を飾った。
それから包丁を入れようとしていると、火場朱莉が「ちょぉっとまったぁ!」と止めた。
「何? まだ何かあるの?」
「こういうのはロウソクをさして、火を吹き消すんだよ。折角買ったのに……」
そう言うと、火場朱莉はカラフルで細いロウソクを取り出し、ケーキにさしていく。
それから火をつけて照明を消すと、辺りが真っ暗になった。
ぼんやりと光るケーキを見ながら、火場朱莉は興奮した様子で身を乗り出した。
「ホラ、芽衣! お願い事をしながら火を消して!」
「えっ?」
「フーッって! 火を消すの!」
急かす火場朱莉に、私は少し考えた後で、風林火山の書を全て集めて世界を支配できますように、とか考えながら、火を吹き消した。
すると照明が点き、火場朱莉が「わー!」と拍手した。
「それじゃあ切り分けよ! 包丁は……あった!」
「あ、ちょっと朱莉ちゃん。危ないよ!」
危なっかしい手つきでケーキを切ろうとする火場朱莉を慌てて止め、最終的に二人でケーキを切り分けていく。
四等分したケーキの一切れを器用に皿の上に乗せ、その横にチョコレートの看板を乗せた風間千速が、「はい」と言って私に差し出してくる。
「お誕生日おめでとう」
「……ありがとうございます」
ケーキを受け取り、私は一口頬張った。
その瞬間、口に甘い味が広がった。
「すごく美味しいです!」
「あははっ。多分このケーキだけでもすごく美味しいんだろうけど〜……」
火場朱莉はそう言いながら自分も一口ケーキを頬張り、ニッと笑った。
「皆で食べるから、美味しいんだよね!」
「……頬にクリーム付けながらじゃなければ、良いこと言っている感じになるのに……」
「な!?」
「もう、朱莉ちゃんってば……」
遠山蜜柑はそうぼやきつつ、火場朱莉の頬についたクリームを指で拭ってその指を舐めていた。
なんとなく風間千速に目を向けると、彼女は何やら神妙な顔で俯いていた。
「……千速さん? どうしましたか?」
「えっ? あぁいや! なんでもない」
慌てた様子でそう否定した風間千速は、そのまま自分のケーキを頬張った。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照1000越え】 ( No.114 )
- 日時: 2017/05/23 22:30
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
間話「初めまして」
三色、計六本の糸を手繰り寄せ、絡めて、一本の紐にしていく。
これは、彼女……皐月の住む村に伝わる、お守りだ。
これを腕や足に巻き付けて、これが切れた時願いが叶う。
そんなお守り。
彼女は、この村の村長の孫だ。
だからか、周りは過保護に彼女を守ろうとし、外に出ることを禁じた。
小さい頃から外は危険がいっぱいだと伝えられていた皐月は、その言葉を信じ、今でも、縁側から見える外を眺めながら、お守りを編んでいた。
そんな時だった。
「あ、ここで良いや!」
少女の声が聴こえ、皐月は顔を上げた。
見ると、空色の短い髪をした少女が、草履を片手に家に上がり、外から見えない位置に隠れて悪戯な笑みを浮かべる。
不思議に思っていると、庭の方に自分よりかなり年上の少年が駆け込んできた。
「ハァッ……クソッ、足の速い奴め……む。すいません。これくらいの背の、空色の髪の女の子見ませんでしたか?」
少年の言葉に、皐月は少女の方に視線を向けた。
すると、少女はフルフルと首を横に振って、口に人差し指を当てた。
「えっと……ごめんなさい。見ていません」
「うわ、どうしよう……これで行方不明になったとかだったら……」
顔を真っ青にしてそう呟いた少年は、そのままどこかに走って行った。
やがて、「ぶはぁっ」と息を吐いた少女は、安心したように姿勢を崩す。
「えぇっと……」
「ん? あれ、初めて見る子だぁ。わぁ、私と同い年の女の子、初めて見た〜!」
無邪気な笑顔を浮かべながら言う千速を、皐月は好奇心溢れる目でジッと見つめていた。
元々、皐月にとって、家族以外の人間を見ることは珍しい。
しかも、危険だと言われている外からやってきたのだ。
現在、自分の隣でスヤスヤと眠るライデンなんかよりも、百倍珍しい。
「えぇっと……貴方のお名前は?」
「ん? あ、私は千速! 貴方は?」
「私は皐月。よろしくお願いします」
「うん。よろしく〜!」
千速はそう挨拶すると、「よっと」と言って立ち上がり、皐月に手を差し出した。
「こんなところにいてもつまらないよ! 一緒に外で遊ぼ!」
「え、でも、外には危険がたくさんあるって、お父様達が……」
「そんなことないよ〜! 楽しいから、さ!」
強引に皐月の手を取り、千速は立たせる。
そしてそのままエスコートするかのように、二人は外に飛び出した。
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