二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/08/01 13:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539
初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!
追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。
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- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.276 )
- 日時: 2017/07/24 17:15
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第42話「お姉ちゃんが結婚!?蜜柑畑の絆!」3
それから私は、家にいる時間は基本写真立て作りに没頭した。
百均で買った紙粘土に絵の具を混ぜ、枠にくっ付けていく。
ベースは薄い黄緑色。ひとまずそれに赤い文字で『Best wishes for your marriage.』と書いていく。
日本語訳すると、『結婚おめでとう』という意味だ。
朱莉ちゃんに勉強を教えるって理由だけでひたすらしていた勉強。
それしか私の取り柄なんて無かったから。
ずっと勉強ばかりだったから、恐らく中学生ではいらない知識までも手に入れていたけれど。
でも、おかげでこうして、別のことに役立っている。
それが、とても嬉しかった。
「ふぅ……」
『Best wishes fo』までくっ付けた私は、額の汗を拭った。
かなり集中していたのか、すでに、大分夜が更けている。そろそろ寝なくちゃ……。
でも、まだお風呂入ってないし、それを済ませてからにしないと……。
そう思った私は、部屋を出ようと扉を開けた。
すると、足元に何か皿が置いてあるのを見つけた。
「うん? これは……」
皿の上には、オレンジっぽい見た目のケーキと一緒に、メモ用紙のようなものが付いていた。
私は一度皿を持ち上げ、メモ用紙を見る。
『可愛い妹に愛を込めて。姉より。
P.S.今回使ってる蜜柑は早生みかんだヨ♪』
……どういうテンションで書いたんだろう……。
横には、あまり似てない私とお姉ちゃんの似顔絵が載ってるし。
どうやら、お姉ちゃん達はこの町で結婚式をするらしく、それまでの間この家で寝泊まりをしている。
私にバレない内はホテルに泊まったりも考えていたらしいけど、もうバレちゃったから、この家に泊まるんだって。
その方が、お金も節約できるし。
全く……。
「お姉ちゃんってば……」
そう漏らし、私は苦笑する。
相変わらずお姉ちゃんの優しさは、遠回りだ。
ミカン畑だってそう。海の件だってそう。
私を喜ばせることに、何かと理由を付けたがるし、直接の優しさを与えようとしない。
でも、そんなお姉ちゃんが、大好きなんだ。
私は目からちょっと流れた涙を指で拭って、その皿を片手に一階に下りる。
嬉しいけど、流石にこの時間に食べたら太っちゃうもん。
冷蔵庫にケーキをしまった私は息をついて、頬を軽く叩いた。
「それじゃあ、もうひと頑張り、かな」
でも不思議と、心は軽かった。
大好きなお姉ちゃんに今までの感謝を伝えるために、頑張らないと。
それにしても早生みかんか……ホント、色々なミカンを育てるな……。
そこまで考えて、私の足は一度止まる。
「閃いた!」
そう声に出し、私は小走りで自分の部屋に戻る。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.277 )
- 日時: 2017/07/25 15:36
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第42話「お姉ちゃんが結婚!?蜜柑畑の絆!」4
ついに結婚式の日が来た。
写真立てを入れた箱を持った私は、緊張しながら式場に向かう。
「……って、なんで蜜柑が緊張してるのさ」
「だ、だってぇ……」
一緒に来てくれてる朱莉ちゃんの言葉に、私は情けなく声を漏らしながら、持っていた写真立ての箱で顔を隠した。
ちなみに、お姉ちゃんが気を利かせて、朱莉ちゃん達も招待してくれたのだ。
全く……本当に素直じゃない。
と、そんなことを考えていた時、皐月ちゃんが微笑みながら口を開いた。
「喜んでもらえると良いですね」
「うん……そうだね」
「まぁ、あの柚希さんなら、蜜柑の作ったものならなんでも喜びそうだけどね」
千速ちゃんの言葉に、朱莉ちゃんは「そんな言い方しなくても……」と苦笑する。
やがて、式場に着いた時だった。
「えっと……遠山蜜柑さん、ですか?」
招待状を見たスタッフの一人がそう聞いてくる。
私がそれに「はい、そうですけど?」と答えると、なぜかスタッフさんは「こちらです」と言って案内する。
ついて行こうとした時、肩を掴まれた。見ると、それは千速ちゃんだった。
「蜜柑……何やったの?」
「な……何も変なことしてないよ!」
「あの……」
困った様子で言うスタッフさんに、私は「あ、ごめんなさい!」と言って、慌ててついて行く。
それから式場の裏の方に連れて行かれたところは、花嫁の更衣室のような場所だった。
「……?」
「花嫁の方が呼んでおられましたので……どうぞ」
そう言って扉を開けられたので、私は中に入る。
すると、真っ先に、タキシードを着た花婿こと、達彦さんが目に映った。
「ぁ、えっと……」
「柚希。蜜柑ちゃんが来たよ」
その言葉に、白いウェディングドレスを着たお姉ちゃんが振り返る。
綺麗に着飾った彼女の顔を見た瞬間、私は、一瞬息を止めた。
「蜜柑……」
「お姉ちゃん……」
綺麗に化粧した顔。花婿さんを連れてお母さん達に挨拶しに来たときみたいな、見慣れない姿。
私は、ゆっくりお姉ちゃんに近づいた。
すると、お姉ちゃんは優しく微笑み、私の頭を撫でた。
「この姿見せるの、一番は達彦って決めてたけど、二番目は蜜柑が良いなって思って。……どう?」
「えっと……すごく、綺麗……お姉ちゃんじゃないみたい」
「何それ」
クスクスと笑いながら言うお姉ちゃんを見ていると、目の奥が熱くなる。
なんか、もう、色々な感情がグチャグチャになって、気付いたら、私の目から涙がボロボロと溢れていた。
「ちょ、蜜柑どうしたの!?」
「お姉ちゃん……結婚、おめでとう……すごく嬉しい……」
私が涙を流しながらそう口にすると、お姉ちゃんは優しく微笑んで、私の頭を撫でた。
ここでお姉ちゃんに縋りついて泣いても良いけど、私にはまだやるべきことがある。
お姉ちゃんの手を振り払った私は、達彦さんの前に立ち、頭を下げる。
「本日は、ご結婚、おめでとうございまず……エグッ……お姉ちゃんは、素直じゃないし、本当はその人の事が大好きでも、イジワルしちゃったりするような人でずげど……ヒグッ……すっごく、優しくて、良い人なので……幸せに、しであげでぐだざい……」
「……あぁ」
大きく頷いた達彦さんに、私は鼻水を啜り、写真立てが入った箱を渡す。
「これ、結婚祝いで、作りました……是非使ってください」
「これは……写真立てかい?」
「え、蜜柑、それ私に作ってくれてたんじゃないの!?」
お姉ちゃんがそう言うけど、すでにかなり限界なんだ。
手で涙を拭おうとしていると、達彦さんがハンカチをくれたので、ひとまずそれで涙を拭く。
感極まった私に苦笑しつつ、達彦さんは写真立てを出して、微笑んだ。
「多分、蜜柑ちゃん今こんな状態だから余裕が無いだけで、これは柚希に作ったものみたいだよ」
「え、どれどれ?」
「ホラ」
達彦さんはそう言って写真立てを見せる。
どんなデザインなのかは、見なくても分かっている。だって私が作ったから。
黄緑色の紙粘土に、赤い文字で書いたお祝いメッセージ。
そして、余白部分には、粘土で作ったミカンと柚子を付けた。
「柚子……柚希だから?」
そう聞いてくるお姉ちゃんに、私はコクコクと頷いた。
すると、お姉ちゃんは嬉しそうに微笑んで、私に手を伸ばしてくる。
その時だった。
「ふむ……では、それをオンネーンにすれば良いのだな」
背後から聴こえた声に、私は顔を上げる。
見ると、そこにはオウガが立っていた。
「オウガ……!」
「え、蜜柑。知り合い?」
「それじゃあその想い、使わせてもらう!」
そう言って、オウガは怨気? とやらを腕に纏わせ、飛ばしてくる。
「危ない!」
咄嗟に私はお姉ちゃんの手から写真立てをひったくり、怨気から守るように離れる。
しかし、どうやら怨気には追尾機能があるらしい。
軌道を変えた怨気は、私の持つ写真立てに纏う。
「えいッ!」
咄嗟に私は近くの窓から写真立てを投げ捨てる。
すると、空中で写真立てはオンネーンになり、着地した。
「蜜柑……何あれ……」
「……お姉ちゃんと達彦さんはここにいて! 私は他の人を避難させないとだから……」
適当に口実を並べて部屋から出て行こうとした時、腕を掴まれた。
振り向くとそこには、血相を変えたお姉ちゃんがいた。
「お姉ちゃ……!」
「避難なんてスタッフの人に任せれば良い! 蜜柑に何かあったら、どうするの……!」
お姉ちゃんはそう言って私の体を引き寄せ、抱きしめる。
すぐに、達彦さんが私とお姉ちゃんを庇うように間に立つ。
「……どうした? そんな弱者の後ろに隠れて……変身しないのか?」
「変身……?」
オウガの言葉に、達彦さんが不思議そうに呟く。
ダメ……このままじゃ、オウガに、二人がやられちゃう……。
背に腹は代えられない……!
「お姉ちゃん……ちょっと、離してもらえないかな」
「み、蜜柑……?」
「大丈夫。私を信じて?」
私の言葉に、お姉ちゃんはそう言って私の体を離す。
私はそれに微笑んで立ち上がり、オウガに向かって歩き出す。
「み、蜜柑ちゃん……?」
不思議そうに呟いた達彦さんの声が、後ろから聴こえる。
達彦さんとオウガの間に立った私は、アウラシュリフトロレを構え、声を出す。
「プリキュア……フォースオーラチェンジ」
二人の幸せは……私が守る!
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.278 )
- 日時: 2017/07/25 15:39
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第42話「お姉ちゃんが結婚!?蜜柑畑の絆!」5
「動かざること、山の如し! キュアモンテ!」
変身を終えた私は、ゆっくりと振り返る。
そこでは、呆然と私を見ているお姉ちゃんと達彦さんの姿があった。
「え、蜜柑ちゃん……あれ……?」
「その姿……え、まさか、前にミカン畑を守ってくれた女の子って……!」
「うん……私」
「じゃあ、ミカン畑してる理由も……」
「……知ってる……」
私の返答に、お姉ちゃんは顔を赤くした。
彼女の反応に私はどう答えれば分からず、すぐに、オウガに顔を向けた。
「達彦さんはお姉ちゃんを守ってて。ここは、私が戦うから!」
「ほう……俺とまともにやりあうつもりか?」
「まさか」
私はそう言い、すぐにオウガとの距離を詰める。
そして、オウガの腕を掴み、腰に力を込める。
「蜜柑!」
「グゥッ……!?」
「はぁぁぁぁぁッ!」
私は叫び、腰を捻る。
そして、オウガの体を思い切り、窓に向かって投げつけた。
バリィンッ! という音と共に窓ガラスは弾け飛び、オウガの体が吹き飛ぶ。
「オウガ……って、蜜柑もしかしてそこにいるの!?」
「ごめん! 色々あって!」
私は割れた窓ガラスから飛び出し、外にいた朱莉ちゃん達の元に駆ける。
すでに三人も変身済みで、オンネーンと戦っている最中だったようだ。
四人揃った私達を見て、オウガは忌々しそうに舌打ちをする。
「クッ……いけ! オンネーン!」
「ガァァァァッ!」
叫ぶオンネーンに、私達は拳を構える。
すると、オンネーンの体から、柚子とミカンを模したような何かが浮かび上がる。
まさか……写真立ての……!?
「やれ」
オウガの言葉に、オンネーンはそれらを飛ばしてくる。
ダメだ。ショックが大きくて、レジェンドクロックを発動する余裕が……!
その柚子とミカンは地面に着弾し、爆発する。
爆風に煽られ、私達の体は吹き飛んだ。
「カハッ……!」
地面を転がり、私達は息を吐く。
なんて威力……一撃目はなんとか耐えられたけど、第二撃なんてされたら、耐えきれる自信が……。
「オンネーン。もう一度だ」
オウガの命令に、私は血の気が引くような感覚を覚えた。
顔を上げると、すでに、オンネーンの攻撃が始まろうとしていた。
「レジェンドクロック!」
咄嗟にそう叫びながら前に出て、レジェンドクロックを構える。
しかし、無情にも、すでに目前までオンネーンの攻撃が届こうとしている。
これじゃあ、どんなに早口で唱えても、間に合わな……!
「危ない!」
その時、そんな声と共に、私の体は突き飛ばされる。
一瞬見えた白い布に、私は、寒気が背筋を走るのを感じつつ、その声の主を見た。
「お姉ちゃ……!?」
「柚希!」
達彦さんの声が聴こえるのと同時に、目の前が爆発する。
私は地面を転がり、すぐに立ち上がり、お姉ちゃんに顔を向けた。
見るとそこでは、純白のドレスを土と焦げ跡で汚したお姉ちゃんが倒れていた。
「お姉ちゃん……なんで!」
「……可愛い妹が危ない時に守るのが……姉の仕事だからさ」
そう言ってお姉ちゃんは目を開き、私の顔を見た。
彼女の目に、頬で涙を濡らした、泣き虫な私の顔が映る。
そんな私を見て、お姉ちゃんは笑った。
「あはは……今日、泣きっぱなしじゃん……」
「お姉ちゃん……」
「……大好きだよ、蜜柑」
掠れた声でそう言って、お姉ちゃんは、私の涙をそっと指で拭った。
そして優しく微笑み、瞼を閉じた。
「……オンネェェェンッ!」
吠えた。多分、生まれて初めて、吠えた。
喉が痛み、咳き込みそうになる。
しかし、それを堪え、私は立ち上がり、レジェンドクロックを構えた。
「お姉ちゃんの大事な日を……人生に一度の、大切なこの日を台無しにしたお前を、私は許さないッ! レジェンドクロックッ!」
そう叫んだ瞬間、レジェンドクロックが現れる。
深く考える余裕なんて無い。
レジェンドクロックに手をかざすと、光が飛んできて、手首に絡まる。
サンダーブレス……ではない。もう少し、派手な腕輪。
「あれは……サンダーブレス・改!?」
皐月ちゃんの言葉に、私は首を傾げた。
改……? 皐月ちゃんが考えたのかな……まぁ、そんなことどうでもいい。
私はすぐにオンネーンに向き直り、レジェンドクロックを構えた。
「不動の豪山よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! モンテグラヴィタ!」
そう叫んだ瞬間、手に、何か力が込められるのが分かった。
私はその手をゆっくりと、地面に向かって振り下ろした。
すると、オンネーンにかかる重力が増え、奴は地面に突っ伏す。
「な……なんだ、これは……!」
「これで決める……」
私はそう呟きながら、サンダーブレス・改を付けた手を上空に掲げる。
すると、上空に、オンネーンが暴れて出来た瓦礫や、土などが集まり、巨大な岩石と化す。
「潰れちゃえ」
そう呟いて、私は掲げた手を下ろした。
すると、岩石がオンネーンを潰し、オンネーンは消えていった。
「ん……蜜柑……?」
瞼を開いたお姉ちゃんは、私を見てそう言う。
やがて、体を起こしたお姉ちゃんは、すぐに私の肩を掴んだ。
「大丈夫!? 怪我してない!?」
「大丈夫だよ……だって、お姉ちゃんが守ってくれたんだもん。お姉ちゃんこそ……」
そこまで言った時、気付いたら、私はお姉ちゃんに抱きしめられていた。
「よかった……怪我も無さそうで、本当に良かった……」
「……お姉ちゃん……」
私はそう呟いて、お姉ちゃんの体を抱きしめ返した。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.279 )
- 日時: 2017/07/24 21:06
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第42話「お姉ちゃんが結婚!?蜜柑畑の絆!」6
それから式は始まり、滞りなく進んだ。
一回見たとはいえ、やはり入場するのを見ては泣き、ケーキ入刀を見ては泣きで、終始朱莉ちゃんに慰められっぱなしだった。
それから式は進み、やがて、ブーケトスになる。
「蜜柑大丈夫? もう泣いたりしない?」
「ん……大丈夫だよ。流石に……」
「蜜柑〜」
ブーケトス用のブーケを持って現れたお姉ちゃんが、私の方を見て手を振って来る。
あ、ヤバい。また涙腺が……。
目元を押さえた私を見て、千速ちゃんが「またか……」と呟いた。
「それでは、ブーケトスを始めます」
そのスタッフの言葉に、お姉ちゃんはこちらに背を向ける。
あぁ、本当にお姉ちゃん結婚したんだ……。
私は目元を押さえ、息をつく。
その時、何を感じたのか、三人が私からゆっくりと離れた。
「……?」
不思議に思っていた時、頭に何か軽いものが当たった。
咄嗟にそれを受け止めると、それは、お姉ちゃんが投げたブーケだった。
私がキャッチしたのを確認した瞬間、周りから拍手が巻き起こる。
「え、え……?」
困惑しながら顔を上げると、お姉ちゃんがこちらを見て、ニッと笑っていた。
まさか、狙って……?
「やったね蜜柑!」
朱莉ちゃんの言葉に、私はブーケを握り締めて、「うんっ」と頷いた。
ブーケトスが終わると、お姉ちゃんと達彦さんがこちらに向かって歩いてきた。
気を利かせてくれた皐月ちゃんと千速ちゃんは、朱莉ちゃんを連れて離れる。
まぁ、今回は素直について行ってる辺り、朱莉ちゃんもかな。
「お姉ちゃんっ」
「フフッ。ブーケ、よく似合ってるよ」
お姉ちゃんはそう言って笑い、私の頭を少し力強く撫でた。
髪がぐしゃぐしゃになっちゃうからやめてほしい……。
「ありがとう、お姉ちゃん。……結婚おめでとう」
「もう何度も聞いたなぁ、それ……って、もう、泣かないの」
また泣きそうになっていた私の涙を指で拭って、お姉ちゃんは笑う。
だって、お姉ちゃんが結婚するのが嬉しいんだもん……。
そう思っていた時、達彦さんが誰かに声を掛けているのが見えた。
やがて戻って来た達彦さんが連れてきたのは、カメラを持った男の人だった。
「えっと……?」
「おっ、達彦ナイス。それじゃあ、三人で撮ってもらおうか」
「えっ!?」
顔を上げると、お姉ちゃんはニッと微笑み、私の肩を掴んでカメラマンさんの方に向かせる。
「お、お姉ちゃん!?」
「折角蜜柑が作ってくれた写真立てには、三人で撮った写真を入れたいって思ってさ。ホラ、蜜柑笑って」
そう言って後ろから私の頬を抓むお姉ちゃん。
私はその手を振り払って、「自分で笑えるから!」と言ってみせる。
すると、お姉ちゃんは「本当かぁ〜?」とニヤニヤしながら言った。
大丈夫。笑えるよ。ずっと泣きっぱなしだったけど、最後くらい……。
私を少し前に出して、後ろにお姉ちゃんと達彦さんが並ぶ。
私の背が低いから、ちょうどいい高さなのかもしれない。
「それじゃあ、ハイ、チーズ」
カメラマンさんの言葉に、私は、目いっぱい笑って見せた。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.280 )
- 日時: 2017/07/24 22:40
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
間話2「迷子」
それから、朱莉は蜜柑と仲良くするために見かける度に話しかけた。話しかけまくった。
しかし、引っ込み思案な蜜柑には少し、朱莉の強引な性格に苦手意識を持ってしまい、避けてしまうのだ。
年齢が年齢なので、社交辞令なども知らない。
このまま二人の仲が進展しないかに思われていたある日、事件は起きた。
それは、いつものように家で朱莉が、ローカルヒーローをしている父が登場する特撮番組を見ていた時だった。
インターホンが鳴り、朱莉の母親が出る。
ちょうどCMになったために、朱莉もテレビから一度離れて、玄関の方を見た。
相手は、蜜柑の母親の梓だった。
「実は、蜜柑が迷子になって……」
その時に聴こえた言葉。
それが、朱莉と蜜柑の仲を一気に深める魔法の言葉だった。
元々、蜜柑はアグレッシブな性格ではない。
むしろ、自分から外を歩くことすらないくらいだ。
しかし、外に慣れることが大切なため、ある日家の庭で洗濯する時に近くで遊ばせていたら、気付いたらいなくなっていたという。
これは蜜柑本人ですら覚えていないことであるが、この時、蜜柑は綺麗な羽の蝶々を追いかけ、外に飛び出し、無意識にそれを追いかけている内に迷子になってしまったのだ。
小さい女の子は、皆、綺麗なものや可愛いものに目が無い。
だから、彼女が迷子になったのは、一種の不可抗力というやつだろう。
とはいえ、朱莉はそんなこと知らない。
ただ、蜜柑が迷子になった。ただそれだけの理由が、彼女を突き動かした。
すぐに、朱莉は蜜柑の捜索をしたいと母に訴えた。
伊紅絵は、最初はあまり乗り気ではなかったが、朱莉の真剣な表情に負けて、許可を出した。
元々、蜜柑とは真逆でアグレッシブすぎる朱莉は、三歳児にして外を駆けまわることは日常茶飯事だったから。
外に飛び出した朱莉は、蜜柑が行きたがる場所など分からない。
だって、まともに会話したこともないから。
しかし、何度転んでも起き上がり、細い路地の隙間なども擦り傷だらけになりながら探した。
そして、空が茜色に染まり、そろそろ子供を一人で出すには危ない時間になって……見つけた。
休憩がてら寄った公園。
その遊具の中から、すすり泣く声が聴こえたのだ。
「ハァ……ハァ……」
疲れて走ったからか、息が荒い。
朱莉は顔に付いた土を拭いながら、泣き声が聴こえる遊具の中を覗き込んだ。
そこには……一人で泣く、蜜柑の姿があった。
「みつけた!」
咄嗟に、そんな声を発した。
その声を聴いた瞬間、蜜柑は朱莉の顔を凝視する。
そして、大きなその目に、涙を浮かべた。
「おかあさんたち、しんぱいして……」
「うわぁぁぁん!」
朱莉の言葉を待たずに、蜜柑は朱莉に抱きついた。
それに、朱莉は驚き、その場に尻餅をつく。
ゆっくり体を離すと、鼻水と涙を流しながら号泣する蜜柑がいた。
「みかん……?」
「エグッ……もう、おうちかえれないとおもった……ヒグッ……こわかったよぉぉぉ」
そう言って、また、朱莉に縋りついて泣く蜜柑。
朱莉は、そんな彼女の体を優しく抱きしめた。
「もうだいじょうぶ。なにもこわくないよ。おうちかえれるよ」
「えぅ……ほんとう?」
「ほんとうだよ」
朱莉はそう言って微笑み、小指を出した。
「これからはわたしがまもってあげるっ。だって、もうわたしたちともだちだもん!」
「……! うんっ!」
蜜柑は笑顔で頷き、朱莉の小指に自分の小指を絡めた。
それから指切りげんまんをした二人は笑い合う。
「それじゃあ、いっしょかえろ? つぎはまいごにならないようにね」
「あかりちゃんがいればまいごになんてならないもん」
頬を膨らませながら言う蜜柑に、朱莉ちゃんは笑って、二人は手を繋いだ。
そして、童謡を口ずさみながら、二人は帰路についた。
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