二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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【完結】風林火山プリキュア!
日時: 2017/08/01 13:12
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539

初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!

追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。

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Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.341 )
日時: 2017/09/07 23:11
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

風林火山外伝「雷と陰の話」1

 これは、遠い昔……まだ、伝説の書が六種であった頃の話。
 その昔、人々は争いを行っていた。
 誰が、なぜ、争いを始めたのか。
 最初は、ちょっとした食物問題だったはずだ。
 しかし、それらが徐々に広がり、悪化し……戦争へと発展していた。

 そんな争いを行う人々に、心を痛める少女達がいた。
 その少女達の気持ちに呼応して生まれた六つの巻物。アウラシュリフトロレ。
 六人の個性を中心に、それぞれバラバラの属性を宿したアウラシュリフトロレを武器に、少女達は、プリキュアとして戦っていた。

「それじゃあ今日も、行きますか」

 丘の上に立ちながら、赤い髪の少女……火燐かりんはそう呟いてアウラシュリフトロレを構える。
 それに、彼女の右側に、青、緑の髪の少女達が。
 左側に、黄、オレンジ、黒の髪の少女達が。
 それぞれ、手にアウラシュリフトロレを持って立ち並ぶ。
 火燐は首を動かしてそれを確認し、口を開いた。

「それじゃあ、行くよ! 皆!」
「「「「「「プリキュア! オールオーラチェンジ!」」」」」」
「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」
「疾きこと、風の如し! キュアウィング!」
「動かざること、山の如し! キュアモンテ!」
「徐かなること、林の如し! キュアフォレスト!」
「動くこと、雷霆の如し! キュアサンダー!」
「知り難きこと、陰の如し! キュアシャドウ!」
「「「「「「レジェンドプリキュア!」」」」」」

 アウラシュリフトロレの力による全自動で行われる名乗りと決めポーズを終えた少女達は、すぐに戦争をしている人々の中に飛び込む。
 この戦争を対話で解決できないことは、すでに理解している。
 だから……力づくで、少しでも被害を少なくするだけだ。

「侵掠の火よ! 我に集い、力と成れ!」
「疾き風よ! 我に集い、力と成れ!」

 火と風が舞い、戦争をしている人々の動きを止めて行く。
 多少の怪我など気にしている場合ではない。
 少しでも、被害を少なくするのだ。

「……危ないッ!」

 その時、火燐……もとい、キュアフレイムがそう声をあげた。
 それに、キュアウィングは立ち止まり、顔を上げる。
 すると、そこには戦争の中での流れ弾……否、流れ矢か、ウィングに向かって飛んでくる矢が見えていた。

「しまッ……!」
「不動の山よ! 我に集い、力と成れ!」

 すると、ウィングと矢の間に山が出来、それに矢が刺さる。
 ウィングが視線を彷徨わせると、そこには、地面に手をついているキュアモンテがいた。

「ありがとうッ!」
「どういたしまして!」

 そう言って笑うモンテにウィングも釣られて笑った時、モンテの後ろに見える光景に目を見開いた。
 ウィングの表情に、モンテは後ろを振り向いた。
 するとそこには、戦いの邪魔をされたからか、怒り狂った男が刀を構えモンテに切りかかろうとしていた。
 しかし、突然刀が空中で止まり、前進しようとしていた男の体は後ろに引っ張られる。

「……大の男が、こんな年端の行かぬ少女に本気で切りかかって……情けない」

 そんな声と共に、刀を掴んだ緑色の少女、キュアフォレストの姿が現れる。
 男は目を見開くが、それより先にフォレストは刀ごと男の体を引っ張り、顔面を殴り飛ばす。
 それだけで男は地面に倒れ込み、顔を押さえる。

「動く雷霆よ! 今、プリキュアに力を貸し給え!」

 すると、そんな声が聴こえ、プリキュア全員の手首に雷が絡みつく。
 橙色の光と共に、全員の手首に、オレンジと黄色の腕輪が装着される。
 見ると、そこには手を掲げるキュアサンダーの姿があった。

「サポートは任せて! 皆はバンバン行っちゃえ!」

 サンダーの言葉に、全員は頷く。
 しかし、一人だけ、オドオドとした素振りを見せる少女がいた。
 キュアシャドウだ。

「皆戦ってるんだ……私だって!」

 そう呟き、シャドウは手を構える。

「知り難き陰よ! 我に集い、力と成れ!」

 そう叫んだ瞬間、周りの人々から赤や黒のオーラが出てくるのが分かった。
 これは……彼等の感情を具現化したもの。
 シャドウはそれに唇を噛みしめ、手を翳す。
 ———この怒りの感情とかを取り除くことができれば……!
 そう思っていた時、シャドウの背後に刀を構えた男が現れた。

「……!?」
影津かげつッ!」

 そう叫び、シャドウと男の間に立つサンダー。
 そして、手を構えた。

「動く雷霆よ! 我に集い、力と成れ!」

 そう叫んだ瞬間、男に雷が落ちる。
 黒焦げになり倒れる男を見つめながら、サンダーは頭を掻いた。

「あちゃー……やりすぎたか」
「えっと……雷香らいかちゃん……」

 不安そうに言うシャドウに、サンダーは振り向き、ニカッと笑った。

「気にしない気にしない。ホラ、行こう?」

 そう言って左手を差し出すサンダー。
 それに、シャドウはしばらく戸惑うが、少ししてからサンダーの薬指を優しく握った。

Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.342 )
日時: 2017/09/08 20:43
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

風林火山外伝「雷と陰の話」2

<雷香視点>

「づがれだぁ〜」

 そう言って屋敷の床に仰向けになって寝転ぶ火燐に、風音かざねは呆れたように息をついた。

「最早毎日の日課みたいなものなんだし、慣れなさいよ」
「……正直、慣れたいものでもないけどね」

 そう言って髪飾りを外し、団子にしていた髪を下ろす山那やまな
 すると、すぐに林檎りんごが山那の後ろに回り、櫛で彼女の髪を解き始める。

「でも、慣れるしかないわ。あの人たちはいつまで経っても戦争を止めないし……原因の食料問題を解決しても、効果無かった」
「アイツ等は目的と手段が入れ替わってんだよ。もう食料問題はどうでもいいの。勝つことしか見えてない」

 火燐の言葉に、風音は何度目かになるため息をついた。
 六人で協力して畑を耕し、アウラシュリフトロレの力で井戸を異世界に通じる出入り口にして食料を調達し、食料問題をなんとか解決させても、すでに大人達はそんなもの見向きもしなかった。
 どちらかが勝つ。その勝負の行方しか、すでに奴等は見ていなかったのだ。

「まぁでもさ、最悪私一人でも戦うし、きっと大人達もいずれ諦めてくれるよ! それまで頑張ろう!?」

 暗い雰囲気をなんとか打ち消すために、私は無理矢理笑顔を作ってそう言ってみる。
 私の言葉に、その場にいた全員が呆れたように笑った。
 すると、扉を開けて、六人のお世話妖精達が飲み物やお菓子を持って入って来た。

「お茶淹れて来たエン」
「おぉ〜。ありがとうエンエン」

 赤い妖精からお茶を受け取りながら、火燐は言う。
 それぞれ自分の妖精から差し入れを受け取りながら、皆挨拶を述べて行く。
 私も相棒のライコウからお茶と、大好物のきびだんごを受け取り、早速咀嚼していく。
 その時、影津の相棒であるカゲロウが、お菓子を片手にキョロキョロと辺りを見渡していた。
 彼の様子に、私は頬張っていたきびだんごを飲み込みお茶で流し込み、口を開いた。

「何してんの? カゲロウ」
「影津がいないカゲ……」
「えっ?」

 言われてみれば、影津だけまだ返っていない。
 元々引っ込み思案で、影の薄い影津だ。
 全員が疲れ果てている今、誰も彼女の存在に気付かないのは仕方ないかもしれない。

「うわ、全然気づかなかった……私ちょっと探してくるよ」
「雷香は疲れてるからダメ! 代わりにボクが探すよ!」

 そう言ってグッと拳をつくるライコウの言葉に、私は笑って見せる。

「ライコウはここで他の妖精とかのお手伝いしてて」
「でも……!」
「大丈夫。……私が影津を探したいだけだから」

 私の言葉に、ライコウは渋々口を噤む。
 それに私は「良い子良い子」と言いつつ頭を撫でてやると、ライコウはムスッとする。
 しかし、それ以上何も言わないので、私はそれに笑いつつ、部屋を出た。

 まぁ、影津がどこにいるのかなんて、分かっているんだけど。
 私達、レジェンドプリキュアの拠点となっている、村では割と大きめの屋敷から
出て林に入る。
 しばらく走っていると、まるで明らかに作ったかのような、広場のような場所に出る。
 木々の隙間から零れた光が差し込み、その広場だけを照らす。
 そして、その奥に……黒髪の少女が岩に腰掛け、俯いていた。
 こちらに背を向けているため、私の存在には気づいていないらしい。
 私は息を潜め、足音を忍ばせ、ゆっくりと少女の背後に回り込む。

「……わッ!」
「ひゃぁッ!?」

 肩を叩く感じで驚かせると、少女……影津はビクッと肩を震わせて、可愛らしい声をあげて驚く。
 私はそれに笑いつつ、彼女の隣の岩に腰掛けた。

「よッ」
「な、なんだ雷香ちゃんかぁ……ビックリしたぁ……」

 そう言ってムスッとする影津に、私はケラケラと笑った。

「……どうしたの? こんな所に来るなんて、ハチが死んだ時以来じゃん」

 しばらく笑ってから、声のトーンを落としてそう聞いてみる。
 すると、影津は唇を噛みしめて、俯いた。

 元々この場所は、私と影津の、二人だけの秘密の場所だった。
 幼い頃ここを見つけてから、二人だけでよく一緒に来て、楽しく遊んでいた。
 しかし、火燐達と出会い遊ぶようになってからは、主に、影津の逃げ場所のようになっていた。
 ここを知っているのは、影津以外には私くらいしかいないし。

「……今日も、雷香ちゃんに守られちゃった……」

 しばらくして、小さな声でそう呟く影津。
 どう答えようか迷っている間に、影津は続ける。

「昔から、ずっとそうだ……弱い私は、雷香ちゃんに守られてばかりで……同じプリキュアになって、一緒に戦うようになって、少しは雷香ちゃんの力になれるかなって思ったけど……私には、陰の書の力は、全然使いこなせなくて」
「……影津は昔から、戦いとか苦手だもんね」

 励ますつもりでなんとかそう言葉にすると、影津は眉間に皺を寄せた。

「私はただ……雷香ちゃんを助けたいだけなのに……」
「ううん。私は、影津が一緒にいれば、それだけで幸せだよ?」
「でも、弱い私じゃ、雷香ちゃんだけじゃなくて、火燐ちゃんや、風音ちゃんや、山那ちゃんや、林檎ちゃん……皆に迷惑掛けちゃう!」

 その言葉に、私は口ごもる。
 瞳を震わせる影津は、私の様子に、静かに目を逸らした。
 それに、とにかく彼女をフォローしなければと、私は口を開く。

「だったらさ! 私も手伝うから、一緒にフォローし合おうよ! 影津の力って、どんなんなの?」
「……人の感情を目に見えるエネルギーに変換して、その感情エネルギーを、別の感情に替えたり、逆流させたり、なんか色々、操作したりできる……みたい」
「え、それ凄いじゃん!」
「……でも、この操作ってすごく複雑で、いざ本番になると、全然上手くいかなくて……!」

 そこまで言った影津の目に、涙が浮かぶ。
 彼女は自分の手で涙を拭いながら、口を開く。

「怖いの……失敗したらどうしようって思ったりしたら、緊張しちゃって、頭の中、真っ白になっちゃって……エグッ……集中しないとダメなのに……全然、できなくてぇッ……」
「……影津……」
「雷香ちゃんが羨ましいよ……雷香ちゃんは、雷の力を上手に使いこなせて、皆のサポートも出来るし……私なんかとは全然……」
「そんなこと言わないでよ! 私だって、影津を助けた時、咄嗟だったから、力抑えきれなくて……あの男の人を……」

 そう呟きながら、私は自分の手を見た。
 影津の陰の力が集中しないと本領を発揮できない力なら、私の力は強すぎて制御の効かない技だ。
 味方のサポートが出来るのは大きいけど、興奮状態になったりすると、つい攻撃し過ぎてしまう。
 戦争の鎮静化が目的の私達にとっては、もう少し調節していかないといけない。
 もう……人殺しなんて、したくないよ……。

「そっか……雷香ちゃんも、悩んでいたんだ」

 影津は、そう言って目を伏せる。
 私はそれにしばらく放心するが、やがて、彼女の肩に手を置いた。

「ウジウジ悩んでいても仕方ないよ! 今できなくても、これから頑張れば良いんだよ!」
「……これから?」
「うん! だから、今日はゆっくり休んで、明日から頑張ろう?」

 ね? と笑いつつ手を差し出すと、影津はしばらくポカンとした表情を浮かべる。
 やがて、明るい笑みを浮かべ、「うんっ!」と大きく頷き、私の手を強く握った。
 それから私は影津の手を引き、拠点にしている屋敷へと帰った。

Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.343 )
日時: 2017/09/08 23:16
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

風林火山外伝「雷と陰の話」3

<影津視点>

 夜。皆が寝静まった中、私は一人目を覚ます。
 ……眠れない。
 明日になったら、きっとまた、戦争の鎮圧をしないといけなくなる。
 そしてまた私は皆の役立たずになって、また雷香ちゃんに守られるんだ。

 そんなことを考えながら、私は布団から抜け出し、なんとなく縁側から外を見つめる。
 しかし、そこから見えるのは林ばかりで、あまり良い景色ではない。
 私は障子に凭れる形で座り、ぼんやりとその夜景を見つめた。

「なんで、同じ人間同士なのに、人は皆争い合うんだろう……」

 そう呟きながら、私はアウラシュリフトロレを取り出し、ぼんやりと見つめる。
 同じ人間同士なのに……同じ種族なのに……。
 戦争の一時的な鎮圧だけじゃダメ……出来る事なら、戦争自体を終わらせなくちゃ……。
 今日の雷香ちゃん達を見て、改めてそう思う。
 皆すでに疲れ果てていて、これ以上戦争が続いたら、体を壊してしまうかもしれない。
 他の四人はまだしも……雷香ちゃんだけは、絶対に助けたい。
 でも、それじゃあどうすれば良いのだろう……。

 ……全員消す……?

 咄嗟にそう考えて、私は慌てて首を横に振った。
 流石にそんなことは出来ない。戦争をしている中には、私の……私達の家族もいるのだから。
 じゃあ、他の手段を考えないと……でもどうすれば……。
 そこまで考えて、私は目の前にあるアウラシュリフトロレを見つめた。

 この陰の力で、どうにかできないかな……。
 人の感情を目に見えるエネルギーにして、それを操作できる力。
 どういう操作が出来るのかとかは、よく分からない。
 でも、落ち着いて考えれば、きっと分かるハズ。
 戦いの最中にやろうとすると、集中力が乱されて上手く操作が出来なくなる。
 だったら、丘の上とかから操作をしたら良いのではないだろうか。
 離れた場所なら、戦いにも巻き込まれないし、集中して陰の力を使えるかもしれない。
 問題は、どんな風に操作するか……。

「そうだっ!」

 そこでとある案が思いつき、私は立ち上がる。

「皆がどれだけ人を恨んでいるのか、見た目で分かるようにすれば良いんだ! そうすれば、皆戦争をやめてくれるハズだよ!」

 声に出してみると、だんだんそれが名案に思えてきた。
 きっと皆、誰かから恨まれるのは嫌なハズだ。
 ひとまず恨みの感情を感情エネルギーにして……上手くいけば、その感情エネルギーを本人に逆流させてみよう。

 でも、これで本当に戦争は終わるのだろうか……。
 ……ううん。きっと終わる。いや、終わらせるんだ。
 今日、本当は、一人だけ離脱してしまおうかと思った。
 でも、雷香ちゃんに励まされて気付いた。

 村の人達のことは、正直もうどうでもいい。
 でも、雷香ちゃんのことだけは守りたい。
 小さい頃から、私のことを守り、いつも笑わせてくれていた雷香ちゃん。
 せめて彼女のことは……守りたいから。

「影津? 何してんの?」

 その時、背後から声が聴こえ、私は振り向いた。
 見ると、そこには寝ぼけまなこを擦りながら私に近づいて来る雷香ちゃんの姿があった。

「雷香ちゃん……」
「たまたま起きてみたら、影津いないんだもん……また急にいなくなったのかと思ったよ」

 そう言って寝癖がついた頭を掻いて、優しく笑った。
 それにどう答えれば良いのか分からず口ごもっていた時、突然、強く抱きしめられた。

「ッ……!?」
「……影津いなくなったら、やだよ……」

 その一言に、私は息を呑む。
 本当に雷香ちゃんが発したのかと疑いたくなるような、弱々しい声。
 顔を上げると、そこには、私の顔を見つめる雷香ちゃんの顔があった。

「雷香ちゃん……」
「絶対、私の前からいなくならないでよ?」

 不安そうに言う雷香ちゃんの言葉に、私は小さく頷く。
 すると、雷香ちゃんは私の体を離して、恥ずかしそうに笑った。

「あはは……変なところ、見せちゃったな……」
「ううん。平気」

 私はそう言いつつ、暗い林に目を向ける。
 本当に突然のことだったから、未だに心臓はドキドキいってるし、顔が熱い。
 胸の辺りを押さえながら、私は口を開く。

「もし……私の命を犠牲にしたら、戦争が終わらせられるとしたら……どうする?」
「えっ……?」

 聞き返す雷香ちゃんに、私は彼女の方に体を向け、口を開いた。

「どうする?」

 もう一度聞く。
 すると、雷香ちゃんは顔を歪めた。

「なんで、そんなこと聞くの……? そんなの、影津を選ぶに決まってるじゃん!」
「……雷香ちゃん……」
「影津がいない未来なんて嫌だッ! 私は……影津と一緒に、大人になりたいよ……」

 その言葉に、私は決意を固める。
 今日決めた作戦は、絶対に失敗しない。
 成功させて、雷香ちゃんと一緒に笑い合える未来を掴むんだ。
 その為にも……絶対に……。

「……ごめんね。変なこと言って」
「影津……?」
「ちょっとだけ考えちゃったんだ。私が死んで戦争が終わるなら、そんな手段あっても良いかなって」
「ちょ……!?」
「でも、考え直した。私も……雷香ちゃんと一緒に、大人になりたいなって」

 私の言葉に、雷香ちゃんは笑みを浮かべた。
 覚悟は決めた。絶対、成功させよう。
 でも、もし本当にダメだったら……その時は村の人達を、皆殺しにしてしまおう。

 雷香ちゃんとの未来を、掴むために。

Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.344 )
日時: 2017/09/09 14:48
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

風林火山外伝「雷と陰の話」4

 翌日。戦争が始まるまで皆が力を蓄えている間、私は一人で屋敷を抜け出して戦争をしている場所に向かった。
 いつ頃から始まるか、そんなものは不定期なので分からない。
 基本、皆は戦争の音が聴こえてから動き出す。
 私は体力も無いし運動も苦手で、足も遅い。
 でも、なんとか急いで、戦地に向かう。

「……まだ、誰もいない……」

 丘の上から身を乗り出して見るが、まだ戦地には誰もいなかった。
 仕方がないので私はアウラシュリフトロレを構え、先に変身しておく。
 ちょうどキュアシャドウになった時、ゾロゾロと人々がやって来るのが見えた。

「よしッ!」

 私は早速手を構え、叫ぶ。

「知り難き陰よ! 我に集い、力と成れ!」

 そう叫んだ瞬間、赤と黒のオーラが現れる。
 確か、赤が怒りで、黒が怨念だ。
 私は集中して、全ての怨念の感情エネルギーを増幅させる。
 怒りの感情エネルギーを抑えると、一気に黒いオーラが充満する。

「なんだこれは……!」

 困惑した様子のざわめきが聴こえ、私は一人静かに拳を握り締める。
 まずは第一段階、成功だ。
 あとは逆流させて……。
 そう思い、手を掲げて怨念の感情エネルギーに集中する。
 すると、嫌な感覚が背筋を走り、私は体を震わせた。

 寒い……苦しい……。
 私は無意識に自分の体を抱きしめ、肩を震わせた。
 誰かを恨んでいる感情というものは、こんなに気味悪いものなのか……。
 しかし、村の人々もこの感覚に困惑したりはしているが戦いを止める雰囲気はない。
 私はすぐに立ちなおし、手を掲げ、怨念の感情エネルギーに改めて集中する。
 エネルギーの流れを探り出し、それを逆流させて、発信源の人へと流し込む。

 次の瞬間、人々は全員胸を抑え、悶え苦しみ始める。

「皆さんッ! これは、皆さんの恨みの感情を具現化したものですッ! こんなに大量の怨念で満たされてるんですッ! だから、争うのはやめてくださいッ!」

 私はすぐにそう叫んだ。
 このまま苦しむのだって嫌だろうし、皆、これで戦争を止めてくれるハズ。
 そうすれば、私達は……雷香ちゃんは戦わなくて済む。
 ……そう思っていたのに……。

「どうして……?」

 しかし、人々はしばらくして怨念のエネルギーに慣れたのか、すぐにフラフラと立ち上がり、戦いを始める。
 刀と刀がぶつかり合う音を聴きながら、私はへたり込んだ。

「……なんで……もう、どうすれば良いのか分かんないよ……」

 そう呟いた瞬間、心の中にどす黒い感情が生まれる。
 結局、コイツ等は何をしても戦争は止めないんだ……。
 きっと、私達がどれだけ頑張って、どれだけ悩んでも、戦争は終わらない。
 だったら……もう、どんなに頑張って戦っても、意味なんて無い……。
 こんな奴等のために、雷香ちゃんが犠牲になるくらいなら……。

「じゃあもう……皆消えちゃえば良いんだッ!」

 そう叫んだ時、私の頬を涙が伝った。
 直後、私が握り締めていたアウラシュリフトロレを中心にするように、充満していた怨念の感情エネルギーが全て私に流れ込む。
 そうか……こんな使い方も、あったのか……。
 感情エネルギーを私の体に流し込むことで、パワーアップもできる。
 そしてその力で……私は、コイツ等を皆殺しにする……!

「影津!?」

 その時、声が聴こえた。世界で一番、大好きな声だ。
 振り向くとそこには、私の方に駆け寄って来る雷香ちゃんの姿があった。
 彼女は血相の悪い顔で私の目の前まで走って来ると、私の肩を掴んだ。
 すると、怨念の感情エネルギーによる気味の悪さから、すぐに手を離す。

「雷香ちゃん……」
「影津……何、これ……」
「私ね、分かったんだ。どんなに私達が頑張っても、きっとあの人たちは戦争を止めない……」
「それは……!」
「だから、毎日チマチマ鎮静活動をしても意味ないんだよ。でも、私は雷香ちゃんが傷つく顔は見たくないの。……雷香ちゃんには、笑っていてほしいから」

 そう言いながら、私は雷香ちゃんの手を優しく握る。
 すると、私の体に纏う怨念の感情エネルギーが、彼女の腕に這う。

「ッ……」
「だからね……私、あの人たち皆殺す。そうすれば、私達だけで笑い合える、最高の世界が出来るハズだから!」

 私の言葉に、雷香ちゃんは目を見開いた。
 血の気の引いた顔で、怨念の感情エネルギーの向こう側にある私の顔を見つめる。

「影津、ダメ……そんなこと……!」
「……なんで雷香ちゃんまでそんなこと言うの!?」

 そう叫んだ瞬間、一気に怨念の感情エネルギーが流れ込んでくる。
 きっと、私の中で溜まっていた怨念と、体に纏っていた怨念が、同調したんだ。
 そう理解した時、私の体が、少しずつ怨念のエネルギーに溶け込んでいくのが分かった。

「影津……!」
「雷香ちゃん……ごめん。一緒に大人になれそうにないや……」

 でもせめて、雷香ちゃんだけは大人になって、ずっと笑っていて。
 そう言葉にすることは、叶わなかった。
 気付いた時には、私の体は怨念の感情エネルギーに溶かされ、完全に同化していた。

Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.345 )
日時: 2017/09/09 17:23
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

風林火山外伝「雷と陰の話」5

<雷香視点>

 目の前で起こった出来事に、私は言葉を失う。
 屋敷から影津がいなくなっていて、二人の秘密の広場にもいなかったから心配していた時、戦争の気配を感じて仕方なく来てみた。
 すると、そこには、黒い霧に覆われた影津の姿があった。
 彼女は村の人達を皆殺しにすると言い……黒い霧のような生物へと変化した。

「なんで……かげつ……」
「雷香ッ!」

 言葉を失っていた時、火燐に腕を引っ張られ、私は距離を取る。
 すると、影津だった何かは戦地の方に飛んでいく。
 不思議なことに、戦地にいる人々は、全然動かずぼんやりした感じだった。
 すると、彼等が持っている武器に影津だったものは憑りつき、化け物に変わっていく。

「何あれ……」

 火燐が零した声に、私は「さぁ……」と返しつつ、ただ目の前に広がる光景を見つめた。
 武器が巨大化した化け物は、人々を襲おうとしている。
 だったら、私達がするべきことは一つしかない。
 ……それは、分かっているのだけれど……。

「あれ……影津ちゃん、なの……?」

 林檎の腕を抱きしめながら不安そうに呟く山那の言葉に、私は唇を噛みしめる。
 あれは……影津なのだ。
 たとえ異形の化け物になろうと、たとえ黒い靄のような存在になろうと、あれが元々は影津であることは変わらない。
 影津を倒すことなんて……できないよ……。
 しかし、そんなことを考えている間にも、化け物は人々を倒していく。
 考えている場合ではない。

「とにかく、行くよ! 皆!」

 火燐の言葉に、私は咄嗟にアウラシュリフトロレを取り出す。
 しかし、暴れる化け物を見た瞬間、私は動きを止めてしまった。

『雷香ちゃん!』

 嬉しそうに笑う、影津の顔。
 それを思い出した瞬間、体中の筋肉が硬直して、動けなくなる。

「……雷香!?」
「無理だよ……影津を倒すことなんて、できない……」

 そう漏らした瞬間、火燐は私の目の前まで来て、私の顔を思い切り叩いた。
 パァンッ! という音と共に、頬に鈍い痛みが走る。

「ッ……」
「雷香……確かに私だって影津を倒したくなんて無いよ。でもあれはもう影津じゃない。化け物だ!」

 火燐の言葉に、私は言葉を失う。
 顔を上げると、そこには、暴れ狂う化け物の光景が目に映る。

「確かに、雷香は影津と一番仲良かったもんね……でも、もうあれは……」

 風音の言葉に、私は耳を塞ぎたかった。
 でも、事実なのだ。
 今目の前にいるのは、影津から生まれた化け物であることを。
 でも、もしあの化け物を倒してしまったら……影津は……?
 そもそも……影津はどこに行ったの……?

「雷香ちゃん!」

 山那に叫ばれ、私はハッとする。
 とにかく、今はボーッとしている場合ではないか……。
 私は首を振って忘れ、改めてアウラシュリフトロレを構える。

「じゃあ改めて、いくよ!」
「「「「「プリキュア! フィフスオーラチェンジ!」」」」」
「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」
「疾きこと、風の如し! キュアウィング!」
「動かざること、山の如し! キュアモンテ」
「徐かなること、林の如し! キュアフォレスト!」
「動くこと、雷霆の如し! キュアサンダー!」
「「「「「レジェンドプリキュア!」」」」」


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