二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/08/01 13:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539
初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!
追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。
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- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.361 )
- 日時: 2017/11/22 23:27
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
Ten years after 7
<蜜柑視点>
「あ、あの……私、朱莉さんって人を探しているんですけど!」
私がそう言うと、目の前にいる女性はキョトンとした。
しまった。色々先を急ぎ過ぎたか。
一度咳をして、私は続ける。
「あ、あの……この工場で何か、撮影を行っていたらしいんですけど……」
「あぁ、うん……」
「そこでスタントマンをしていた、朱莉さんって人を探しに来て……」
「えっと……」
困った表情で、目の前にいる女性は頬を掻く。
確かに唐突に色々言い過ぎたかもしれない。
でも、こうして休んでいる間にも朱莉さんは危険な状態かもしれない。
もし朱莉さんに何かあったら、鬼川先生に見せる顔がない。
しかし、彼女から返ってきた言葉は、予想を大きく裏切った。
「えっと……その朱莉って……私のことなんだけど……」
「へ……?」
しばらくの静寂。
恐らく、今私はすごく間抜けな顔で固まっているだろう。
そして徐々に……状況を理解する。
「……ぇええんッ!?」
大きな声を出しそうになった時、女性……もとい朱莉さんに声を押さえられる。
それから朱莉さんは武器代わりの鉄の棒をもう片方の手に持ち、辺りを見渡す。
奴等に気付かれていないことを察すると、私の顔を見た。
「静かに、ね?」
朱莉さんの言葉に、私はガクガクと頷いた。
すると、朱莉さんは優しく微笑み、私の口から手を離した。
「ご、ごめんなさい……」
「良いよ。まぁ、驚くのも無理はないか」
そう言って明るい笑顔を浮かべる朱莉さん。
彼女に釣られて、私も笑う。
「にしても、なんで私に? もしかして、おぐるの知り合い?」
「あ、はい。えっと、鬼川先生の同僚で……」
私の言葉に、朱莉さんはしばらく真顔で固まる。
少し間を置いてから、釘を傾げた。
「どーりょー?」
「はい、同じ学校で教員を……」
「……ちなみにだけど、貴方は何歳?」
「えっと……二十四歳、ですが……」
「……ぅえんッ!?」
大きな声を出そうとする朱莉さんの口を慌てて塞ぐ。
それから辺りを見渡して、奴等が来ていないことを確認し、朱莉さんの口を離した。
しかし、朱莉さんの顔は焦燥に染まり、震える指で私を指さしていた。
「に、にににににににににじゅうよよよよよよよよ……!?」
「お、落ち着いて……?」
私が慌てて宥めるも、朱莉さんは目を見開いたまま奇怪な声を上げる。
一体何が不思議だったのだろう。
そう思っていると、肩を強く掴まれた。
「……同い年」
「へ?」
「私と、同い年」
「あ、はい」
鬼川先生から聞き及んでおります。
ポカンとしたまま固まる私の体を引き寄せ顔を近づけた朱莉さんは、続けた。
「貴方が、私と、同い年!?」
「えっと……そうみたいですね?」
「ありえないでしょ!」
「えぇぇぇ……」
なんでだ……まさか、老けて見えている?
いや、それなら年上相手には敬語使うハズだし……年下だと思われていたのだろうか?
まぁ、よく童顔だと言われるし、一、ニ歳くらいは……。
「こ、高校生くらいだと思っていた……」
「……」
一、二歳どころの話じゃなかった。
えー……流石にそこまで若くは見えてないと思っていたんだけどなぁ……。
化粧だって一応しているし、他の先生だってそういうことはあまり言わなかったし。
なんだか変な空気が流れ、私は首の後ろの辺りを掻いた。
「えっと……改めまして、鬼川おぐる先生の同僚で、この近くの学校で教員をしています……遠山蜜柑、です……よろしくお願いします」
「あー……うん……ハイ、ヨロシク」
強張った表情で言う朱莉さんに、私は苦笑を零す。
それからふと視線を上げた時だった。
私達の頭上の空間が歪んでいることに気付いたのは。
「あ、朱莉さんッ……!」
「うん? ……危ないッ!」
頭上にある空間の歪みを見た瞬間、朱莉さんは私を押し倒し、床に転がった。
数瞬後、空間の歪みは亀裂へと変わる。
何かが落ちてくるのを見て、私はギュッと目を瞑った。
「いっつつ……だ、大丈夫? 皐月さん」
「は、はい……」
しかし、聴こえたのはそんな会話だった。
私達は恐る恐る瞼を開き、声がした方を見た。
そこには、二人の女性が静かに佇んでいた。
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.362 )
- 日時: 2017/11/23 17:57
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
Ten years after 8
<千速視点>
「ところで、村から逃げるとして……具体的にはどこへ?」
村から出てしばらく走っていた時、皐月さんがそう聞いてきた。
彼女の言葉に、私は「うッ」と呻いた。
すると、皐月さんが僅かに目を細めた。
「まさかと思いますけど……何も考えていないとか……?」
「……」
「はぁ……まぁ、確かに計画を練る時間は無かったでしょうけど……」
「ご、ごめんなさい……」
私が謝ると、皐月さんは「いえ、千速さんが悪いわけではありません」と言った。
しかし、ではこれから何をしようかと考えると、中々迷う。
このまま当てもなく彷徨っていれば、奴等に掴まることは目に見えている。
ではどうするべきか……。
「……アウラシュリフトロレ……」
ポツリと、皐月さんが聴き慣れない単語を呟いた。
つい立ち止まり、私は皐月さんの顔を見た。
彼女も私の顔を見て、微かに目を伏せた。
「……先人達が残した巻物の名です。強い力を持っていて、村の存亡が危うくなった時、救ってくれるであろう……という言い伝えがあります」
「じゃあ、そのアウラ何たらがあれば、村の人達を助けることが出来るの!?」
「あくまで、憶測の話ですが……」
自信無さげに呟く皐月さんの言葉に、私は肩から力が抜けるのを感じた。
その時、こちらに向かって走って来る人影が見えた。
「皐月〜!」
「ッ……!?」
敵襲かと思い、私は咄嗟に皐月さんの前に立つ。
まともな武器はない。徒手空拳で戦わなければ。
皐月さんは、私の肩越しにこちらに向かってくる輩の顔を見る。
「ライデン!」
そして、そう声を張り上げた。
「は……?」
「皐月! 良かった、無事だったんだな!」
そう言ってライデンと呼ばれた男は私達の前に立つと、膝に手を付いて肩で息をする。
そんなライデンの背中を皐月は擦った。
「私は大丈夫ですよ。……それで、村の様子はどうでしたか?」
「あぁ……ケホッ……村人の九割以上はおかしくなっていた。一人正常そうな男が相手していたが、あれもいつまで持つか……」
「正常……もしかして、フウマル!?」
私の言葉に、ライデンは「は……?」と訝しむような表情で聞き返してくる。
しかし、すぐに「お前の知り合いか?」と聞いてくるので、私は咄嗟に頷いた。
「そういえば、オイラが加勢しようとしたら、自分より千速を助けてくれと頼まれた。もしかして、千速って……」
「……私のこと」
「そうか……」
ライデンはそう呟くと、静かに目を瞑り俯いた。
フウマルの状況は、それだけ酷かったのか……。
私は唇を噛みしめ、皐月さんの手を握った。
「千速さん……?」
「皐月さん……ライデン……早く、なんとかしよう……」
私の言葉に、二人は目を見開いた。
今はフウマルの状況を嘆いている場合ではない。
少しでも早く、彼を救うために、行動しなければならない。
「……この林を抜けた先に、アウラシュリフトロレを封印している祠があります。案内しますね」
皐月さんを筆頭に、私とライデンが続く。
ライデンは背後を警戒しながら付いてきている。
その手には、畑仕事ようの桑が握られている。
「ライデン……それ……」
「ん? ……あぁ。念のために持って来ていたんだよ。何も無いよりはマシだろ」
ライデンの言葉に、私は目を伏せた。
確かに、ライデンの判断は間違っていない。
でも、この武器の出番が必要になるということは、奴等を足止めしているフウマルが……———。
「あ、着きまし……」
皐月さんの言葉に、私達は前方に視線を向けた。
そして……絶句。
だって、そこにあった祠の扉が、開け放たれていたから。
「なッ……封印されていたんじゃ!?」
「え、えぇ……誰も取り出せないように、厳重に鍵していたハズです……」
「くッ……!」
ライデンはすぐに祠に飛びつき、中を覗く。
同じように私も覗き込むと、そこには……五本の巻物があった。
「あれ? なぁんだ。巻物あるじゃん」
「……いいえ、巻物は元々、六本の巻物が一つになった一本の巻物があったんです。それが五本ということは……」
「……分裂して、その内の一本が、行方不明に……」
ライデンの言葉に、すぐに皐月さんは中から巻物を引っ張り出す。
どれも真っ白な巻物で、淡く、赤、青、黄、緑、橙に光っている。
一つ一つの色を見つめながら、皐月さんは自分の体を抱きしめた。
「そんな……陰の書が無い……!」
「陰の書……?」
「……人の感情を操作したりする能力がある書です。よりによって、あれが無くなるとは……」
皐月さんがそう言って額に手を当てた時、遠くから複数人の足音が聴こえた。
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.363 )
- 日時: 2017/11/23 20:43
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
Ten years after 9
<皐月視点>
「あ、足音が……!」
千速さんの言葉に、私は足音がする方向を見た。
見ると、そこには……こちらに向かって来る村人の姿があった。
それを見て、千速さんは顔を青ざめさせる。
「そんな……フウマルは!?」
「……やられた、か……」
ライデンの言葉に、千速さんの顔がさらに青白くなる。
すぐにライデンは桑を構え、私達の間に立つ。
「行け! オイラが時間を稼ぐから!」
「でも……!」
「行けッ!」
ライデンはそう叫び、桑を片手に村人達に向かっていった。
私はしばしたじろいでしまうが、すぐに表情の筋肉を引き締めた。
すぐに祠の中からアウラシュリフトロレを引っ張り出し、こちらに向かってくる村人達を茫然とした表情で見つめる千速さんに視線を向けた。
「千速さん……」
「なんで……フウマル、が……」
「千速ッ!」
私が叫ぶと、千速さんはビクッと肩を震わせた。
なんとか五本の巻物を右手で抱え、左手で千速さんの肩に手を置いた。
「逃げましょう!」
「で、でも……フウマルが……」
「フウマルさんはきっと生きています! 貴方が信じなくてどうするんですか!」
私の言葉に、千速さんはクッと唇を噛みしめた。
そしてすぐに表情を引き締め、私の手を取り走り出す。
突然のことだったので驚きはしたが、彼女なりの決死の決断だったのだろう、と考える。
だって、彼女の手が……汗で滲んでいたから。
だから、その決断に応えるように、私は彼女の手を握り返した。
すると、千速さんは微かに驚きを顔に表しながら私を見た。
私が頷き返すと、千速さんは少しだけ表情を緩め、林の中を疾走した。
しばらくすると、千速さんは「ぁあッ!」と叫び私を見た。
「なんか色々めんどくさい! 皐月さん! ちょっとごめん!」
「へ……?」
突然何を謝るのかと驚いていた時、突然私を抱き上げた。
俗に言う、お姫様抱っこというやつだ。
そう分析していた時、千速さんが一気に速度を上げて走り出した。
「ひゃぁ!?」
咄嗟に片手を千速さんの首に絡め、もう片方の腕でアウラシュリフトロレを抱える。
一気に景色は後ろに流れ、顔に葉っぱやら枝がバシバシと当たる。
まるで風のような速さだ……と感心していた時、景色が明ける。
「抜けた……!」
気が抜けたのだろうか。
千速さんはそのまま前のめりに倒れ込む。
私はアウラシュリフトロレを落とさないように両手で庇いながら、地面に転がった。
「千速さ……」
咄嗟に名前を呼ぼうとした時、千速さんの呼吸がかなり乱れていることに気付いた。
それもそうか。人を抱えてここまで走って来たのだから。
むしろ、私と同い年の女性でありながら、あの距離を人一人抱えて走れたことの方が奇跡に近いのだ。
「えと……大丈夫、ですか……?」
「ハァ……これが……ハァ……大丈夫に……ハァ……見える……?」
「いえ、ごめんなさい」
私はそう謝り、押し黙る。
しかし、このままジッとしているのはどうなのだろう……。
少し考えた後で私は立ち上がり、千速さんの隣に立つ。
それから静かに腰を下ろし、彼女の手を握った。
「さつ……きさ……?」
「……無理して喋らなくて良いですよ。……私が、貴方の隣にいたいだけなので」
「……」
私の言葉に、千速さんは何も言わなかった。
まだ呼吸が荒く、息をする度に綺麗な空色の髪が揺れる。
温もった体。まるで、熱気が彼女の体を包んでいるように感じてしまう。
……なぜだろう……彼女といると、とても安心する。
友人どころか、今日会ったばかりの赤の他人であるハズなのに。
でも、こうして隣り合って手を繋いだだけで……すごく、温かいのだ。
「……ふぅ……」
ようやく呼吸が収まってきたのか、静かに息を吐く千速さん。
それに、私は顔を上げた。
「千速さん、もう大丈夫ですか?」
「うん……なんとか。ごめんね、時間掛けちゃって」
「いえいえ」
私の返事に、千速さんは優しくて暖かい笑みを浮かべた。
それからぼんやりとした表情で空を見上げた。
「これからどうしようか。ライデンがなんとか時間稼ぎしてくれるからしばらくは大丈夫だとして」
「そうですね。村からも大分離れていますし」
「んー……」
悩んだ様子の声を発する千速さんを見つつ、私は抱えたままのアウラシュリフトロレを見つめた。
そこで、昔読んだ書物を思い出した。
確かそれによると……昔、先人達はこのアウラシュリフトロレの力で、異世界への逃げ道を作ったとか。
当時は六人で、六本のアウラシュリフトロレを使い、井戸に異世界へ通じる扉を作った。
人数もアウラシュリフトロレの数も昔より劣るが……せめて、異世界に逃げるくらいは出来るのではないだろうか。
そう思い、私は立ち上がる。
「皐月さん?」
「千速さん……異世界に逃げましょう」
私の言葉に、千速さんは目を丸くした。
しかし、すぐに優しく微笑んだ。
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.364 )
- 日時: 2017/11/23 23:19
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
Ten years after 10
<千速視点>
「……で、なんで私達は地面にお絵かきしないといけないの」
「ワガママ言わないでください。これも異世界に行くのに必要な儀式なんですから」
皐月さんの言葉に私はため息をつき、地面を見つめた。
現在描いているのは……魔法陣だ。
二十四歳にもなって何言っているんだと言われるかもしれないが、事実、目の前にあるのは魔法陣以外の何物でもない。
手に持っている石で土を削りながら、巨大な魔法陣を描いているのだ。
「ていうか、これ、雨降ったり上を誰かが歩いたりしたら消えない? 大丈夫?」
「その場合は向こうの世界でほとんど同じ魔法陣を描けば戻って来れますよ。まぁ、労力が掛かりますし、この魔法陣が消えていないことを祈る他ありませんが」
「……」
もしかしたらもう一度この魔法陣を描き直さなければいけないかもしれないという事実に、私は愕然とする。
すると皐月さんはクスクスと悪戯っぽく笑い、また魔法陣の続きを描き始める。
白く綺麗な指を土で平気で汚すその姿に、仕方なく私も続きを描き始める。
「それにしても、こうやって地面に落書きとかするの久しぶりかも」
「え?」
「ん? あ、ホラ、昔よくこうやって、地面にお絵かきしなかった?」
私の問いに、皐月さんは困ったような感じの笑みで目を伏せた。
「……私は、昔からあまり外では遊びませんでしたから……」
「あっ……」
「……でも、なぜでしょう……昔、大切な誰かと遊んだ記憶が、あるような……?」
そう言って顎に手を当て考え込む皐月さん。
私はそれに苦笑しつつ、石で魔法陣の続きを描いて行く。
「まぁ、何でも良いんじゃない? そんな過去があって、今の皐月さんがあるんだから」
「千速さん……意外と良い事言うのですね?」
「ハリ倒すぞ」
私の言葉に、皐月さんはショボンとした顔で続きを描いて行く。
それからひたすら無言で作業を続け、なんとか魔法陣を描き切った。
「ていうか、ひたすら描いたのは良いけど、一体これは何なの?」
「えぇ。これは、この村にある異世界に行ける井戸に彫られたものと同じ魔法陣です」
「え、じゃあその井戸に行けばさっさと異世界行けたんじゃ!?」
「……では、もう一度この林を抜け、村人達に全く見つからないように井戸を探し当てることが出来ますか?」
「うッ……」
冷たく言い放たれた言葉に、私は押し黙る。
すると、皐月さんは「よろしい」と言い、アウラシュリフトロレとやらを構える。
「先人達は、このアウラシュリフトロレの力を完璧に把握し、その力を上手く使える術式も自分達で一から考えだしました」
「え、何それすごい」
「ハイ。だから、この魔法陣さえあれば、異世界に行ける……ハズ、です」
「ねぇなんで尻すぼみなの? なんで目を逸らしながら言うの!?」
私の言及を躱して、「とにかくやってみましょう!」と言う皐月さん。
不安だ……。
「で、具体的にはどうするの?」
「ハイ……ひとまず、このアウラシュリフトロレを持って」
「……?」
そう言われ渡されたのは、青く、淡く光るアウラシュリフトロレだった。
皐月さんは緑色に淡く光るアウラシュリフトロレを持ち、構える。
「それからこのアウラシュリフトロレを構えて、力を込めてください」
「力を……?」
「えぇ。それで、この魔法陣に、力を注ぐのを想像してみてください」
彼女の言葉に、私は目を瞑る。
そして、アウラシュリフトロレに力を込め、それを経由して魔法陣に力が流れ込むのを想像してみる。
まるで……水が流れるように……私の力が、溢れ出て……。
そんな風に想像していると、体から力が抜けるような感覚がした。
「……? ぇえッ!?」
目を開くと、そこにはアウラシュリフトロレから光のようなものが魔法陣に注がれている光景が広がっていた。
驚いていると、皐月さんがキッと私を見た。
「集中してください!」
「で、でも!」
「ここで集中を切らしたら全てが台無しになります! とにかく、意識を集中させてください!」
その言葉に、私は必死に意識を集中する。
すると魔法陣を覆うように溜まっていた光が徐々に渦巻き、やがて、巨大な光の渦と化す。
「な、何、これ……!」
「ッ……とにかく飛び込みますよ! 千速さん!」
「わ、ちょ……!」
慌てた様子で私の腕を引く皐月さんに、咄嗟に抗議する。
しかしその時、一瞬だけど、見えた。
目の前の林に、こちらに向かって歩いて来る村人達の姿が。
……ライデン……!
心の中でライデンの名前を呼びながらも、私と皐月さんは光の渦に飛び込んだ。
別の世界に着いたのは、ほぼ一瞬の出来事だった。
パッ、と一瞬目の前が眩しくなったかと思えば、すぐに下に床が現れ、私達は落下した。
出口が割と高い位置に出来ていたらしい。
「いっつつ……だ、大丈夫? 皐月さん」
「は、はい……」
そんな会話をしつつ、私は顔を上げる。
見るとそこには、二人の女性が、真っ直ぐこちらを見つめていた。
- Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.365 )
- 日時: 2017/11/24 22:48
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
Ten years after 間話 魔法陣の秘密
「では第一回食糧問題解決策会議を始めよ〜」
火燐の言葉に、残り五人が疎らに拍手をする。
その反応に火燐は満足し、その場に腰を下ろす。
ホワイトボード等、板書できるものなど無いので、立つ必要も無いのだ。
「で、具体的にはどうするの?」
風音の言葉に、火燐は「コホン」と咳をした。
「やっぱさ、まずは畑とか田んぼとかを復活させるのが大事だよね!」
「ん〜、まぁ、そこら辺が妥当かもね?」
賛同するような雷香の言葉に、火燐は「でしょでしょ!?」と目を輝かせる。
「……でも、私達小娘にどうにかできるなら、今更戦争なんてしてないんじゃないかしら?」
「ふっふっふ……それはお任せ!」
「な、何か策が……?」
「気合でなんとかする!」
「「「「「……」」」」」
白けた目を向ける五人に、火燐は「酷くない!?」と反論する。
「大体、気合でなんとかって……そうなんとかなる問題?」
「諦めたらダメだよ! 気合だ! 気合だ! 気合だー!」
「……アニマ〇浜口?」
「……ウ〇トラハッピー?」
「ねぇ待って何その単語知らない」
林檎と山那が零した聴き慣れない単語に、火燐は狼狽する。
すると、風音が「コホン」と咳をした。
彼女の席に火燐は姿勢を正し、その場に正座をする。
「……で、とりあえず畑と田んぼの復活?」
「まぁそうだね〜。でも、それ以外にも何か欲しいところ」
「……だったら、異世界に行くのはどうかな?」
「んあ?」
山那の提案に、火燐は聞き返す。
すると、山那はそれだけで動揺してしまい、林檎の背中に隠れてしまった。
「山那。異世界って?」
「え、えっと……前に林檎ちゃんが読んでた書物に、この世界の他にもたくさんの異世界がある、って、書いてあったの……だから、なんとかして異世界に行く方法はあるかもしれないかなって……」
「……アウラシュリフトロレの力を使ったら、行けるんじゃないかな……?」
「それは本当か!?」
影津が零した言葉に、火燐は反応する。
すると影津はそれに動揺し、雷香の背中に隠れた。
「あー……まぁ、アウラシュリフトロレの力を理解することが出来れば、そういう使い方も出来るんじゃないかな? 上手くいけば、その畑とか田んぼの復興にも役に立つかも?」
「おー……じゃあさ、林檎頭良いし、頼めないかな?」
「え、私?」
まさか自分に来ると思っていなかったのか、林檎は目を丸くしてそう答えた。
すると、火燐はコクコクと頷いた。
「林檎頭良いし、こういう作業一番得意そうなんだもん!」
「で、でも……」
「お願い!」
火燐に手を合わせられ、たじろぐ林檎。
見れば、残りのメンバーも期待の眼差しを向けてきている。
仕方がない……と、林檎はため息をついた。
「上手くできるかは分からないけど、善処してみる」
「おう! でも流石に一人じゃキツイでしょ。後は……」
辺りを見渡した火燐の目は、林檎の後ろに隠れている山那で止まる。
目が合い、山那は「あわわ……」と声を漏らした。
すると火燐は山那の手を取り、笑みを浮かべた。
「山那、林檎と一緒に頑張って!」
「えぇ!?」
「……まぁ、山那も畑仕事系は難しいだろうし、頭も良いから力仕事よりもそういう頭を使う作業の方が出来るかも?」
「えっと……」
「まぁ、確かに二人は幼馴染だし、気心知れてる方が楽でしょ」
「うぇぅ……」
「わ、私は、雷香ちゃんがそれが良いって言うなら……」
「……」
満場一致。
怯えたような表情で狼狽える山那に、林檎がオズオズと尋ねる。
「山那は……私と一緒は嫌?」
「えッ……いや、えっと……」
林檎に問われ、山那は言い淀む。
とはいえ、急に決められたから反論しそうになっただけで、林檎と一緒に作業ということ自体は別に嫌ではないのだ。
むしろ、この中で一番信頼できる相手だから、むしろ林檎と一緒じゃない方が山那にとっては辛い。
「ううん……私も林檎ちゃんと一緒に出来て嬉しい」
そう言って明るい笑みを浮かべる山那。
彼女の言葉に、林檎は柔らかい笑みを浮かべた。
「とはいえ……具体的にはどうしようか」
それからの話し合いで、火燐と風音が畑の復興。雷香と影津が田んぼの復興をすることになった。
屋敷で二人きりになると、早速林檎と山那は異世界に行く方法を探ることになった。
「そういえば、異世界の話が出て来た書物ってどこにあったんだけ?」
「えっ……えっと、確か……」
山那の問いに、林檎は自分のスペースに纏めていた書物を探し始める。
この屋敷は村の中では大きい方だが、部屋数があるわけではない。
生活スペースだとか諸々の関係で、一人一つの部屋は与えられなかった。
なので、特に大きな部屋を六人の生活スペースということにした。
部屋の中で布団を敷き詰め、その部屋の壁際にそれぞれの私物を置いて自分のスペースを確保した。
とはいえ、そんな場所に置けるものなど限られていて、林檎のスペースには四冊の書物があるだけだった。
そこから一冊の書物を取り出し、山那の元に持って行く。
「……これ。お父さんが持ってた……」
「お父さんが?」
「うん。……お父さん、学者だったから……」
その言葉に、山那は「あぁ……」と声を零した。
林檎の父親は、村でも優秀な学者だった。
よく奇想天外な発見をしては、村人達を驚かせていた。
しかし、戦争が起こってからは、どれだけ多く人を殺せるかを研究しながら武器を開発している。
「……頑張って戦争を終わらせて、また凄い発明とかしてくれるようになると良いね」
「……ん……」
オズオズと言った山那の言葉に、林檎は小さく頷いた。
それから林檎は父の研究書を開き、中に書いてある文章を読む。
山那は林檎の背中に抱きつき、肩越しにその書物を見る。
異世界の存在について
この世界の他に、別の世界がある可能性あり。
様々な時空軸。全人類の選択により生まれる分岐点。
それらにより生まれた分岐世界から派生し、別世界が生まれた。
文化の発達の差。例えば、今自分達が住んでいる世界より発達した世界。劣った世界。
それらの世界の可能性が……————
「……」
山那は無言で林檎から離れ、床に膝をつき、手をついた。
見事なorzの姿勢である。
それを見て、林檎は呆れたようにため息をついた。
しかしその表情は穏やかなもので、山那に呆れたというよりは、単純に微笑ましいものを見るような目つきだ。
「山那には少し難しすぎたか」
そう言いつつ山那の頭を撫でる。
すると、山那は眉をハの字にして林檎の顔を見上げた。
「ごめんね林檎ちゃん……私には理解できなくて……」
「良いよ。私が先に読んで、要約して後で教えるから」
「ん……分かった」
山那が頷くのを見て林檎は微笑み、手に持った研究書に視線を落とす。
その顔つきは真剣そのもので、冷ややかなものでもあった。
山那はそんな林檎を、慈しみの籠った目で見つめていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
林檎は静かに目を瞑り、研究書を閉じた。
それを見て、睡魔と格闘していた山那はハッと顔を上げた。
「り、林檎ちゃん……読み終わったの?」
「うん……一通りは」
「本当!?」
パァッと顔を輝かせ、山那は林檎に身を寄せた。
すると林檎は顔を微かに赤らめ「……近い」と呟いた。
「それで、えっと……あれ、何を聞けばいいのかな……」
「……お父さんは、異世界に行く方法は見つけていたみたい。でも、それには、膨大な力が必要だって」
「膨大な……力……?」
「うん……どんな力なんだろう……」
林檎はそう言って額に手を当てて考え込む。
その様子をキョトンとした目で見る山那。
やがて、林檎の手から研究書を取り、それを一瞥してから口を開いた。
「……アウラシュリフトロレの力じゃダメかな?」
「えっ?」
林檎が聞き返すと、山那は「あわわ……」と動揺する。
相手がいつも自分が隠れている相手であるため、いつものように林檎の背中に隠れることが出来ない。
仕方がないので顔を研究書で顔を隠すが、すぐに奪われる。
「ねぇ、今なんて言ったの?」
「ぁぅ……だから、その……あ、アウラシュリフトロレの力で、その……異世界に行けないかなって……」
「アウラシュリフトロレ……」
目を丸くしながら呟いた林檎の言葉に、山那は俯く。
しかし、林檎はすぐに目を輝かせ、山那の肩を掴んだ。
「山那すごい! 天才!」
「え? えっ?」
「そっか……アウラシュリフトロレなら、この方法でも……あの術式を少し変えれば……」
「り、林檎ちゃん……?」
オドオドした感じの口調で山那が林檎に声を掛けるのと、林檎が研究書に取り掛かるのはほぼ同時だった。
普段冷静沈着な林檎が興奮している状況に、山那は笑顔で固まった。
しばらく紙に熱心に何かを書いていた林檎は、これまた普段からは想像も出来ないような満面の笑みで顔を上げた。
「山那! 井戸行こう! 井戸!」
「えっ!?」
「井戸だよ! こういうのは分かりやすい出入り口にした方が良い!」
「ぇえッ!?」
「ホラ、早く!」
目をキラキラと輝かせながら手を引く林檎に、山那は戸惑いつつも、少し微笑んだ。
———こんなに楽しそうな林檎ちゃん。初めて見た。
恐らく、自分だけが知っているであろう林檎の顔に、山那は一人楽しそうに笑った。
「ね、ねぇ……林檎ちゃん……こんなのもう無理だよ……」
「大丈夫、山那。自分を信じて……」
「いや、でもさ……縄で吊るされながら書くとか無理じゃない!?」
弱音を吐く山那に、林檎は「良いから書け!」と怒鳴る。
それに山那は目を潤ませながら、井戸の内壁に石で傷を入れ、異世界に行くための術式を書き込む。
ちなもに、そんな山那の体は、林檎が持つ一本の縄のみで支えられている。
「て、ていうか、林檎ちゃんこそ、大丈夫なの……?」
「何が?」
「いや、私の体重一人で支えてるでしょ?」
「……心配する暇があるなら早く書いてくれない?」
「ひッ……!」
林檎の叱咤に、山那は内壁に術式を刻み込む手を速める。
しかし、ずっとそんなことを続けられるわけがなく、また、林檎の体力の問題もあるので、何度か休憩を挟んだ。
水分補給をしたり、軽食を摂ったり、仮眠をしたり。
何度も日が昇っては沈んでいくのを観測しながら、二人は文字通り三日三晩井戸に術式に文字を書き込み続けた。
そして……。
「これで……」
「最後の……」
震える手で、山那は最後の一線を描き終える。
すると、すぐに林檎は山那の体を引き上げ、地面に仰向けに寝転んだ。
目の前に広がる青空を眺めながら、二人は肩で呼吸をした。
「や、やったね……林檎ちゃん……」
「ん……でも、まだ完成じゃない……」
「そうだね……」
林檎と山那は顔を見合わせ、笑い合う。
「……火燐達を呼ぼう」
「えー!? この井戸から異世界に行けるの!?」
林檎の説明を受けた火燐が、真っ先に反応する。
すると、風音がその脳天にチョップを振り落とした。
「いぁッ……!」
「気が早い。……まだ、完成じゃないんだよね?」
風音の言葉に、林檎は頷く。
それから、アウラシュリフトロレを出した。
「皆……アウラシュリフトロレを」
林檎の言葉に、その場にいた全員がアウラシュリフトロレを取り出した。
目の前に揃った六本の筒状の物体に、林檎の表情が引き締まる。
「これの力を……井戸に注ぐ」
その言葉に、全員が表情を強張らせた。
全員の顔を見渡し、林檎は真剣な表情で続ける。
「この術式は、私の父さんが研究して発見したもの。それを、アウラシュリフトロレ用に少し改良した。上手くいくかは分からない。でも……やってみよう」
「え、井戸に直接彫ったんだよね? もしダメだったら……どうするの?」
火燐の言葉に、林檎は顎に手を当てて熟考する。
やがてふと顔を上げ……———
「考えてなかった」
———そう言った。
その言葉に、その場にいた林檎以外の全員がずっこけた。
「まぁ、その時はその時、じゃない?」
「う、うん……この村に井戸はもう一個あるし、今度はもう少し演習とかしてみて……」
雷香と影津の補足に、林檎は「その手があったか」と真顔で言った。
とはいえ、ひとまず今回の実験はまだ失敗してもやり直せる。
皆顔を見合わせ、頷き合った。
「それじゃあ……行くよ」
林檎の声に全員頷き、目を瞑る。
すると、アウラシュリフトロレが徐々に輝き始める。
やがてその輝きが井戸に吸い込まれ、井戸の中に光の渦を作り始める。
目を開いた火燐達は、それを見てその表情を驚愕に染め上げた。
「す、凄ッ……」
感心した様子で声を漏らす火燐の手を、風音が握る。
その風音のもう片方の手は、雷香に握られ、雷香はすでに影津と手を握っている。
影津は山那と手を繋ぎ、山那は林檎と手を繋いでいた。
井戸を囲むように作られた円は、あと、林檎と火燐が手を握るだけで完成する。
「林檎……」
「火燐……行こう」
林檎の言葉に火燐は頷き、その手を握った。
そして、全員で光の渦を見つめる。
「「「「「「せーの!」」」」」」
同時に叫び、全員で光の渦の中に飛び込んだ。
その瞬間、目の前が真っ白になる。
直後、すぐに地面が現れ、尻餅をつく。
「いったぁ……ここは……?」
火燐の言葉に、全員が辺りを見渡す。
見慣れない景色。自分達の住んでいた世界より発達した文化。
それを見て、その場にいた全員がため息を零した。
「もしかして……」
「本当に……」
「成功……?」
「ッ……! ッしゃぁ!」
火燐を皮切りに、全員が喜びを分かち合う。
突然騒ぎ出した少女達を見て周囲の通行人達は奇怪なものを見る目を向けるが、構わない。
皆が皆喜び合い、笑い合う。
「林檎ちゃん!」
「山那!」
二人は抱きしめ合う。
ほとんど無意識での行動だったので、二人とも顔を赤らめながら離れようとした。
しかし、すぐにまた笑い合い、額を付け合わせた。
……この努力が全て水の泡になるのは、また、別の話……。
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