二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/08/01 13:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539
初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!
追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。
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- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.160 )
- 日時: 2017/06/06 21:56
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第23話「千速のヤキモチ?幼馴染の絆!」5
「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」
「疾きこと、風の如し! キュアウィング!」
「動かざること、山の如し! キュアモンテ!」
「徐かなること、林の如し! キュアフォレスト!」
「風!」
「林!」
「火!」
「山!」
「「「「プリキュア!」」」」
あ、名乗り変わってる。
変身を終えた瞬間、モンテは顔を真っ赤にして顔を手で覆った。
「また何か変わってた……」
「人数も増えたし、むしろこれが正しい形だと思うわよ……」
私の言葉に、モンテは「うぅ……」と呻いた。
それにしても……。
「今更普通のオンネーン? サンダーブレスが無くても勝てるじゃない」
「まっ! 考えてても仕方ないよ! 一気に終わらせちゃおう!」
フレイムはそう言って腕を構える。
出たよ切り込み隊長。
「侵掠の火よ! 我に集い、力と成れ!」
そう叫び、炎を噴射する。
まぁ、今の彼女なら、初期のオンネーンなら一掃できるだろう、けど……。
そう思っていた時、オンネーンは腕を薙いで炎を振り払い、フレイムの体を殴り飛ばす。
「きゃぁッ!」
「朱莉ちゃんッ! ……千速ちゃん、これってどうなってるの?」
「分からない。でも、明らかにオンネーンの力がパワーアップしているわ……」
私がそう呟いた時、オンネーンが自分が頭で空けた穴から屋根の上に登っていくのが分かった。
逃げられるッ!
「待ちなさいッ!」
私は、特に後先考えずに、穴から飛び出した。
石の屋根に足を付け、屋根の上に上がったオンネーンを睨む。
立ち上がり、攻撃しようとしたところで、私はサンダーブレスを装着していないことに気付く。
「しまっ……!」
直後、顔面を殴り飛ばされた。
視界に閃光が走り、体が軽くなる。
どうにか視界が元に戻り下を見ると、気付けば、私は空中に放り出されていた。
「な……!」
流石に落ちて怪我をすることはないだろうが、また上まで上がるのが少し面倒だ。
とにかく戻ろうと手を伸ばしたとき、誰かに掴まれた。
「さ、皐月ッ!?」
「千速! 大丈夫ですか!?」
いや、今はフォレストだっけ……。
必死な表情で私の腕を掴むフォレストに、私は焦る。
「何してるの!? 別にプリキュアの状態だったら怪我しないし、落ちても問題ないって……」
「そういう問題じゃ、ありません……大事な幼馴染を突き落とすほど、私が冷酷に見えますか?」
その言葉に、私は喉に何か詰まるような感覚を覚えた。
「……見えない」
「でしょう?」
フォレストはそう言って微笑み、私のことを引っ張りあげた。
どうにか足を着け、私とフォレストは対面する。
「千速……私が何かしましたか?」
「えっ?」
「今日はやけに避けられているというか……少し距離を取っている気がする、というか……」
「えっと……」
その言葉に、私は目を逸らす。
すると、逸らした先に皐月が回り込んできて、私はたじろぐ。
「ちゃんと説明してもらうまで逃がしませんよ?」
「うぅ……皐月が、朱莉とすごく仲良くなっていて……ヤキモチ? を、妬いちゃって……皐月が私から離れるんじゃないかって思って、不安になって……」
そこまで言った時、人差し指で額を強く突かれた。
見ると、フォレストが不満そうに頬を膨らませていた。
「えっと……?」
「なんで私を信じてくれないんですか? 私と千速は幼馴染ですよ? それに、今こうしてここで一緒に戦えるのは、全部、千速のおかげです」
そう言って私の手を握るフォレスト。
私はそれに「フォレスト……」と言いつつ、彼女の手を握り返す。
「ごめん……それと、ありがとう」
「いえ、私の方こそ、不安にさせて申し訳ありません。……さぁ、一緒にあのオンネーンを倒しましょう」
その言葉に、私は「うんっ」と頷き、二人同時にオンネーンに視線を向けた。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.161 )
- 日時: 2017/06/06 23:13
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第23話「千速のヤキモチ?幼馴染の絆!」6
「動くこと、雷霆の如し! サンダーブレス! ウィング!」
サンダーブレスを装着し終えた私は、フォレストに視線を向ける。
彼女はフォレストロッドを出すこともなく、ただ真っ直ぐ、オンネーンを見つめていた。
「フォレスト?」
「千速。手を」
そう言って手を差し出してくるフォレストに、私は躊躇なく、彼女の手を握った。
すると、彼女は微笑み、もう片方の手を構える。
「徐かなる林よ! 我に集い、力と成れ!」
その言葉と同時に、オンネーンが、唐突にキョロキョロと辺りを見渡す。
私は、それに首を傾げた。
「ねぇ、これって……」
「冥姫の時に使った技です。一時的に、体を透明化することができる技かと。別の人に効くかも不安でしたが、大成功ですね」
そう言って私から手を離し、皐月は笑みを浮かべる。
私はそれに「そう……」と言いつつ、オンネーンに視線を向けた。
「疾き風よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! ウィングアクセル!」
加速した私は、一気にオンネーンの元まで駆け、蹴りを放つ。
さらに二度、三度、拳を入れ、両足でのドロップキックで吹き飛ばす。
校舎の屋根が抉れ、下にある三階がところどころから見え隠れしている。
こちらの姿が相手には見えないので、殴り放題だ。
「ちょっとウィング学校傷つけないでよ〜……って、いない!?」
その時、屋根の上に上がって来たフレイムの声がしたので見ると、ギョッとした表情で見渡していた。
後ろから遅れて上がって来るモンテを見ていた時、フォレストの技の効果が切れ、私は変身を解く。
「わッ!?」
「あ、もしかして、冥姫の時に使ってた……」
「まぁ、そんな感じ。……フォレスト」
私が声を掛けると、フォレストは頷き、手を構えた。
「徐かなる林よ! 動く雷霆よ! 今、二つの力よ! 我に集い、力と成れ! フォレストロッド!」
フォレストロッドを構えたフォレストは、真っ直ぐオンネーンに向ける。
「二つの力よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! デュアルバーストッ!」
その言葉と同時に、二つの輝きがオンネーンを浄化していく。
やがて、崩れた校舎も修復され、私達は変身を解いた。
「千速」
名前を呼ばれ振り向くと、皐月が両手を上げていた。
首を傾げていると、皐月はムッとした表情をした。
「はいたっち、です。前に朱莉と蜜柑さんがしていました」
「あぁ……確か駄菓子屋で……」
「そうです。だから私達も……」
その言葉に私は肩を竦めつつ、その手に思い切り、自分の両手をぶつけた。
「ねー。私達が今日変身した意味あった?」
「朱莉ちゃん……」
苦笑する蜜柑に、朱莉は「だって〜」と頬を膨らませた。
私はそれにため息をつきつつ、皐月の手を引いた。
「それじゃあ、また校舎、一緒にまわろう?」
それに、皐月は明るい笑みを浮かべて「……はいっ」と頷いた。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.162 )
- 日時: 2017/06/07 10:49
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第24話「友達の友達?走れ絆の二人三脚!」1
<蜜柑視点>
「体育祭……ですか」
掲示板を見上げながら、皐月さんはそう言った。
そこには『体育祭 選手名簿一覧』という見出しと共に、各種目に出る生徒の名前が貼りだされていた。
「そ。学校もさぁ、こんな暑い時期じゃなくて、もっと別の時期にしてくれればいいのにね。もうすぐ夏休みなんだし」
「だからこそ、じゃないかな。夏休みの前に結束力を高めよう、とか」
「そうなのかなぁ」
私の言葉に、朱莉ちゃんは不満そうに頬を膨らませた。
そんなやりとりを見て苦笑しつつ、千速ちゃんは一覧表に目を向けた。
「それで、私達はどの種目に出るの?」
「えっと……確か二人三脚と、足が速い人はリレーだっけ」
「「二人三脚……?」」
二人揃って首を傾げる千速ちゃんと皐月さんに、つい苦笑してしまう。
「二人三脚っていうのは……って、実際に練習してみたら分かるんじゃないかな」
「そうなの?」
「うん。説明するのは難しいかなぁって……」
そう答えながら二人三脚の名簿を見ていた時、自分の名前を見つけた。
相手の名前を確認した瞬間、私は言葉を失った。
「な……!」
「ん? 何が……」
私の名前の横に書かれていた名前は……皐月さんの名前だった……。
あれから朱莉ちゃん経由で聞いた話によると、皐月さんは転校してきたばかりで、前の学校でのデータも存在しないので、ひとまず、皐月さんと仲も良くて足の速さが一番ちょうど良さそうな私が選ばれたのだという。
千速ちゃんや朱莉ちゃんが選ばれなかったのは、あの二人は運動神経が高すぎるので、皐月さんの運動神経によっては一緒にやるのが苦痛になるのではないか、という配慮だ。
でも、よりによって皐月さんと、かぁ……。
「それで、二人三脚というものはどうやってやるのですか?」
体育祭の練習時間になり、校庭に出た後で皐月さんはそう聞いてきた。
私はそれに、ひとまず先生から受け取った二人三脚用のベルトを見せた。
「これで足を縛るから、もう少し寄ってもらってもいいかな?」
「はぁ……」
皐月さんは私に寄って来たので、早速私の右足と、皐月さんの左足を縛る。
途中で外れないようか確認し、私は立ち上がる。
「うおおおおおおおおッ!」
その時、目の前をすごい速さで何かが通りすぎて行った。
見ると、それは朱莉ちゃんと千速ちゃんで、二人三脚をしているとは思えない速さで走っていく。
……元気だなぁ……。
「あの二人のように、この状態で走れば良いのですか?」
皐月さんの言葉に、私は頷いた。
しかし、すぐにとあることに気づき、慌てて訂正する。
「あ、私達はあそこまで速くしなくて良いからね? あくまで自分達のペースで。ね?」
皐月さんまであんな領域を目指し始めたら、私の運動神経と体力では到底届かない。
まぁ、皐月さんの運動神経がどれほどのものかは分からないが、少なくとも私よりは上だろう。
……足手まといにならないようにしなくちゃ……。
「それじゃあ、最初はゆっくり歩くところから始めてみよっか」
「はいっ。でも、どちらの足から?」
「うーん……それじゃあ、私が1って言ったら、右足出して」
「分かりましたっ」
笑顔で答える皐月さんに、私はホッと息を吐く。
皐月さんが右足を出すわけだから……私は左足だよね?
「じゃあ行くよ? 1……」
左足を踏み出そうとした瞬間、皐月さんの右足が動く。
えっ!? なんで!?
そう驚いた次の瞬間、私の体は綺麗に後ろに倒れ、尻餅をつく。
「えっ、1で、蜜柑さんが右足を出すものかと……大丈夫ですか?」
私に手を出しだしながら聞いてくる皐月さんに、私は、早速不安感が襲ってくるのが分かった。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.163 )
- 日時: 2017/06/07 19:01
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第24話「友達の友達?走れ絆の二人三脚!」2
「いち、に、いち、に……」
それから少し練習をして、どうにか歩けるようにはなった。
ゆっくり歩いていた私達は立ち止まり、一度息をつく。
「それじゃあ……次は軽く走ってみよっか」
「分かりました」
頷く皐月さんに私は微笑み、それから掛け声をする。
「いっちに、いっちに、いっちにっ!」
最初の方は、まだ軽くジョギングくらいのペースで走れていた。
しかし、段々と皐月さんのペースが少し速まって、それになんとか合わせようとしていく内に、互いのタイミングがずれ、ビターンッ! と音を立てて、私達は転んでしまった。
「いったぁ……皐月さん、怪我無い? 大丈夫?」
「へ、平気です……蜜柑さんこそ大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。これくらい」
私はそう言いながら、足を縛るベルトを外して、一度二人で立ち上がった。
その時、足音が聴こえたので顔を上げると、朱莉ちゃんと千速ちゃんが、相変わらずの高速度で走っているのが目に入った。
「あはは……朱莉ちゃんは、相変わらず元気だなぁ……」
私がそう呟いて苦笑した時だった。
「そういえば……蜜柑さんは、私のことはさん付けで呼びますよね」
「えっ?」
その声に振り向くと、皐月さんはどこか居づらそうな表情で視線を彷徨わせる。
「朱莉や千速のことは、ちゃん付けで呼びますけど……」
「……それを言ったら、皐月さんも、あの二人のことは呼び捨てするけど、私のことはさん付けで呼ぶよね?」
私が聞くと、皐月さんは「それは……」と言って目を逸らした。
服に付いた砂を払いながら、私は一度息をつく。
「まぁ、二人三脚に名前の呼び方なんて関係ないよ。頑張って練習して、一緒に走ろう?」
私が言うと、皐月さんは渋々といった様子で頷いた。
別に、私は皐月さんのことが嫌いなわけではない。
ただ、彼女が冥姫の時に、彼女の正体を言及する時に少し、攻撃的な言い方をしてしまったことが、少し気がかりで……。
今さら謝るのもアレだし、無かったことにできれば良いのだけれど、残念ながら私はそれができるほど器の大きい人間ではない。
「友人関係って……大変だなぁ……」
足をベルトで縛りながら、私は呟いた。
「蜜柑〜!」
練習が終わり、先生にベルトを返却しに行った時、朱莉ちゃんが私の名前を呼び、抱きついてくる。
私はそれに戸惑いつつも、先生にベルトを返した。
朱莉ちゃんも同じようにベルトを返しに来ていたらしく、赤いベルトを袋に入れてから、私から離れる。
「全く……暑いよ……」
「あはは、ごめんごめん。びっくりさせようと思ったんだけど」
「それなら肩叩くとかだけで良いの。大体朱莉ちゃんは……」
そこまで話していた時、千速ちゃんと話している皐月さんを見つけ、私の足は止まる。
「うん? 蜜柑どーしたの?」
私の反応に違和感を抱いたのか、朱莉ちゃんがそう言って私の顔を覗き込んだ。
それに慌てて誤魔化そうとした時、彼女は「あーッ!」と声をあげた。
「皐月と千速だぁ! なんだ、あの二人を見て止まったのか」
「えっ。えぇっと……それもそう、なんだけど、その……」
私がどもっていると、朱莉ちゃんは「んー?」と言って首を傾げる。
「どしたの? 何かあった?」
「う……二人三脚の練習が上手くいかなくて……皐月さんとも、なんていうか、ギクシャクしてるっていうか……」
一人で溜め込むのが、無意識に苦痛に感じていたのだろう。
気付けば、私はそう、口から零していた。
私の言葉に、朱莉ちゃんは「へぇー」と能天気な感じの声を出した。
「へぇーって……」
「いやー、蜜柑が未だに皐月のことさん付けしてる時点で、なんとなくは察してたよ? 蜜柑そういうの苦手だし」
「はは……朱莉ちゃんには敵わないなぁ……」
私が苦笑していると、朱莉ちゃんはニカッと微笑み、「でもっ」と言って、私の肩をバシッと叩く。
「なんだかんだ、誰かと仲良くなるのは上手だよね! 私然り、千速然り」
「そ、そうかなぁ……」
「そうだよ〜。大丈夫。蜜柑なら仲良くなれるって」
朱莉ちゃんの言葉に、私は曖昧に笑っておいた。
その時、とあることを思いつき、私は「あっ……」と声をあげた。
「ねぇ、朱莉ちゃん。少しお願いがあるんだけど……」
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.164 )
- 日時: 2017/06/07 20:55
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第24話「友達の友達?走れ絆の二人三脚!」3
<皐月視点>
「それじゃあ、今日の練習はここまで。撤収〜」
教師の言葉に、蜜柑さんは私の足からベルトを外し、先生の所に持って行く。
すると、そんな蜜柑さんに、朱莉が抱きついているのが見えた。
あの二人は幼馴染らしい。私と千速はああいうことはあまりしないけれど、あれが普通なのだろうか?
そんなことを考えていると、千速が私の肩を叩いた。
「皐月、一緒に教室行こう」
「あっ……はい」
「……? どうかした?」
返事が曖昧になってしまったせいで、千速が心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
私は、それに慌てて首を横に振った。
「い、いえ! なんでもないんです!」
「そういえば皐月は蜜柑とだっけ。何、喧嘩でもした?」
朱莉と楽しそうに話す蜜柑さんをチラッと見ながら、千速はそう聞いてくる。
それに、私は「ぅ……」と声を漏らした。
「蜜柑さんとは、この間の千速とは違う、心の距離を感じるというか……」
「んー……彼女は、あまり自分から仲良くするようなタイプじゃないから……皐月も、どちらかと言うと、蜜柑みたいに自分からグイグイ行くタイプじゃないでしょう?」
「そう言われてみると……」
私の返答に、千速はフッと微笑んだ。
「皐月は皐月のペースで、蜜柑と仲良くなれば良いんじゃない? 私だって、焦って彼女と仲良くなったわけじゃないんだから」
「そう、ですか……」
「心配しなくても、きっとうまくいくわ」
千速の言葉に、私は「ありがとうございますっ」と答えた。
その時、蜜柑さんの言葉が脳内にリフレインした。
『私達はあそこまで速くしなくて良いからね? あくまで自分達のペースで。ね?』
「友達作りと二人三脚って、似てるんですね」
私の言葉に、千速はキョトンとした表情を浮かべた。
急がなくても良い。私の……ううん。私と蜜柑さん、二人のペースで、仲良くなっていけばいいんだ。
翌朝。今日は珍しく、朱莉や蜜柑さんと合流せずにそのまま学校に着いた。
「今日は、朱莉達は……」
「まだ来てないのかな? 朱莉、寝坊でもしたのかしら」
千速の言葉に私は「さぁ……」と首を傾げつつ、なんとなく校庭の方に視線を向けた。
校庭では朝練習をしている生徒で溢れており、中には、同じクラスの生徒もいた。
そんな中で見覚えのある顔を見つけて、私は固まった。
「こう、もう少し、グッてやって、ダーッ! って」
「それじゃあ分かんないよぉ……」
何やら偉そうに指導をしている朱莉と、彼女の役に立たない助言に苦笑する……蜜柑。
私は慌てて鞄を抱え直し、二人の元に駆け寄った。
「ちょ、ちょっと皐月ッ!」
慌てて私に駆け寄って来た千速も、朱莉達に気付いたようで、私と一緒に走った。
私達に気付いた朱莉は笑顔になり、「おぉー!」と声を掛けてくる。
「二人ともおはよー!」
「えっと……二人は、ここで何を……」
私がそう聞くと、朱莉は何か言おうと口を開き、少し間を置いた後で蜜柑さんの小脇を肘でツンツンとつついた。
それに、蜜柑さんは「うッ」と声をあげ、恥ずかしそうに顔を赤らめて目を伏せる。
「えっと……この間の練習で、皐月さんの足が、私より少し早いからタイミングが合わなかったんじゃないかなって思って。私の足……遅いし……だ、だから、朱莉ちゃんに頼んで、少しでも速くなれたらって思って」
そう言って、恥ずかしそうにはにかんだ。
蜜柑さんの言葉に、千速はなぜか呆れたようなため息をついた。
「朱莉の指導で速くなれるわけないじゃない。朱莉は確実に感覚派なんだし」
「むっ。どういう意味?」
「別に? 私なら、陸上部での先生のアドバイスとかも真似すれば、今よりは速くできるのに。なんで言わなかったの?」
千速の疑問に、蜜柑さんは「えぇっと……」と言って目を逸らした。
「千速ちゃんに言うのも考えたんだけど、その……皐月さんを驚かせたかった、なんて……」
恥ずかしそうに言う蜜柑さんに、私は、自分の胸が熱くなるのを感じた。
すると、千速が「しょうがないわね」と言って、鞄を肩に掛け直した。
「皐月。今すぐ教室に戻って準備するわよ。二人三脚なんだから、皐月だって一緒に練習しないと」
「私も、ですか!?」
「そっ。さぁ、行くわよ!」
そう言って手を引く千速。
私はそれに驚きつつも、蜜柑さんの方に視線を向けた。
「ありがとう……蜜柑」
ポツリと呟いた言葉は、グラウンドを走る生徒達の足音にかき消された。
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