二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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【完結】風林火山プリキュア!
日時: 2017/08/01 13:12
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539

初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!

追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。

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Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.231 )
日時: 2017/07/15 14:18
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第35話「オルコの罠?皐月の怒り!」1

−−−

「プリキュアの友情によってパワーアップするやつ……ホント、何なんだろうね」

 オルコの呟きに、オグルは忌々しそうに舌打ちをした。

「レジェンドクロック……あの道具の力は未知数だ」
「あとレジェンドクロックの力に目覚めていないのは……お前が大好きなキュアフォレストだけだな」
「……皐月ちゃんは、俺が倒すよ」

 フッと微笑みながら言うオルコに、オウガは呆れたような表情をした。

「じゃあ一体どんな倒し方をしてくれるんだ?」
「フフッ、任せてよ。倒せなくとも、面白いショーは見せれると思うからさ」

 オルコはそう笑うと、空間に穴を作り、その中に入って行った。

−−−

<皐月視点>

「あーあ、最近蜜柑の生徒会が忙しいし、千速も陸上部で忙しいみたいだから、つまんなーい」

 石を蹴り飛ばしながら言う朱莉に、私は苦笑する。

「仕方ないですよ。二人とも、やらないといけないことですから」
「うぅー……でもぉー……」

 そこまで言っていた時、あかりは唐突に前方を見て足を止めた。
 私も同じように立ち止まり、前を見た。
 そして、息を呑んだ。

「オルコ!?」

 そこには、ボロボロになったオルコの姿があった。
 私は荷物を朱莉に預け、慌てて駆け寄った。

「あぁ、冥ちゃん……いや、今は皐月ちゃん、だっけ……」
「そんなことはどうでもいいです……どうしたんですか、こんな……」

 傷に触ろうとすると、オルコが小さく「触らないで」と言い、私の腕を掴んだ。
 そして「あ、ごめん……」と言って、手を離した。

「皐月ちゃんの手、綺麗だから。俺を触ったら汚れちゃうよ」
「うわ、キザだなぁ……」

 なぜか震えながら言う朱莉に苦笑しつつ、私はオルコに肩を貸して立たせる。

「そんなことないですよ。困っている人がいたら助ける。……人として当然です」
「……ははっ……ありがとう」

 そう言って笑うオルコの消えそうな笑顔に、私の胸は痛くなる。
 その時、彼の体が軽くなるような感覚がした。
 見ると、朱莉がもう片方の肩を支えているのが見えた。

「全く、皐月は仕方ないなぁ……私が連れてくよ。腕力には自信あるし!」
「ありがとうございます……では、風間家まで、よろしくお願いしますね」
「合点!」

 胸を叩いてそう言うと、朱莉はニッと笑った。
 私はそれに笑い返し、二人でオルコを運んだ。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.232 )
日時: 2017/07/15 18:20
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第35話「オルコの罠?皐月の怒り!」2

「ハイ、とりあえずこれで大丈夫ですよ」

 私はそう言いながら、オルコの腕に巻いた包帯をしっかりと結ぶ。
 それに、オルコは申し訳なさそうな笑みを浮かべた。

「ごめんね……迷惑掛けちゃって」

 オルコが放った言葉に、私は顔の前で手を振った。

「とんでもないですよ! それより、どうしたんですか? この怪我……」
「……皐月ちゃんと戦いたくないって言ったら、怒られちゃって。裏切り者、って」
「私と……?」
「え、それって……」

 朱莉はそこまで言うと顔を髪と同じくらい赤くして、頬に手を当てて呆ける。
 どういう反応なのかしら、それは……。
 私達の反応に、オルコは苦笑した。

「冥姫の頃から、ずっと好きだったんだよ? 皐月ちゃんのこと」
「……へ!?」

 素っ頓狂な感じの声が出る。
 その時、鞄からライデンが飛び出して人間の姿になると、私の腕を引いてオルコと距離を取らせる。

「お前、何が目的だ!」
「何が目的、も何も、本心を言ったまでさ」
「でも、お前達が皐月にしたことが許されるわけないだろッ!」

 吠えるようにしてライデンが言うと、オルコは目を伏せた。
 少しして、フラフラと立ち上がり、床に膝をついて正座をする。
 何をするのかと思っていると、突然両手を床につき、額を床から数センチくらいの距離まで下げる。
 まぁ、土下座というものだ。

「な……!?」
「本当に、あの事に関しては、済まなかった……俺一人が謝って許されることではないが、どうか、この通り……」
「ちょ、ちょっと、どうすんのこれ……」

 驚いた表情で聞いてくる朱莉に、私は首を横に振る。
 どうすると聞かれても……。

「とりあえず、顔を上げてください。私は怒っていませんから」
「いや、せめて謝らなくちゃ……俺の気持ちは本物だから……」

 その言葉に、私と朱莉は顔を見合わせた。
 すると、扉が開いた。

「皐月ただいま〜! 今日部活が早く終わって、途中まで蜜柑と……」

 上機嫌な様子で部屋に入って来た千速は、私と朱莉、そして土下座しているオルコと、人間の姿になっているライデンを順番に見て、首を傾げた。

「これ……どういう状況?」

 さて、どこから説明したものか……。


「で、なんで私まで連れてこられたの……?」

 ひとまずこのメンバーが揃っていて蜜柑がいないのは仲間外れだと思い、フウマルに頼んで蜜柑を連れてきてもらった。
 蜜柑は困ったような笑みでオルコを見つめつつ、朱莉の後ろに隠れている。
 朱莉はそれに笑いつつ、宥めるように蜜柑の頭を撫でた。
 二人の様子に私は少し呆れつつ、オルコに視線を向けた。

「私と朱莉が帰っていたら、ボロボロになったオルコが倒れていて……流石に放置する気にもなれなかったので、治療も兼ねて連れて来たんです」
「なんでボロボロなんかに……」
「なんか、皐月のために幽鬼軍裏切って来たんだって。それで怒られて追放されたとか」
「ホント、ごめん。もう怪我は治ったし、もう出て行くから」

 オルコの言葉に、私は首を横に振る。

「ダメですよ。まだ、怪我も治っていませんし」
「でも……」
「もう幽鬼軍を辞めたのであれば、今更貴方を毛嫌いする理由もありませんしね」

 その言葉に、オルコは驚いたように目を見開き、俯いた。
 私はそれに息をつき、千速達に視線を向けた。

「でも、まだ完全に信用するのは早いわよ?」

 千速は腕を組みながらそう言い、オルコを睨む。
 ライデンは敵意剥き出しで同じくオルコを睨み、フウマルはどっちつかずな笑みで、それでも、すぐに千速を庇える位置にいる。
 蜜柑は相変わらず怯えた様子で朱莉の後ろに隠れ、朱莉は蜜柑を守るように立ってオルコを見つめている。
 まぁ、これが当然なのかもしれない。でも……。

「では、私がオルコの世話を見ます。だから、安心してください」

 気付いたら、そんなことを口走っていた。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.233 )
日時: 2017/07/15 20:12
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第35話「オルコの罠?皐月の怒り!」3

「えっと、幽鬼軍が何を食べるのか分かりませんが……」

 私はそう言いながら、ひとまず作って来たオニギリを置く。
 これを作っている最中に和子さんが帰って来た時は焦ったが、咄嗟に千速を言い訳に使ったら許してもらえた。

『ち、千速が部活で疲れてお腹が空いたと言っていたので、軽食を……!』
『まぁそうなの? じゃあ夕食は少なめにしてあげた方が良いかしら……』
『いえ、いつも通りで大丈夫だと思います!』
『そう……?』

 先ほどの会話がリフレインする。
 もしかしたら和子さんの中で千速が大食いイメージがついてしまうかもしれない。
 その時は謝ろう。
 でも、オルコのご飯だって作らないといけないし、これは不可抗力だと思う。

「あぁ、俺達も人間と同じもの食べるから大丈夫だよ。……うわぁ、美味しそう!」

 オルコは嬉しそうに言うと、オニギリを一つ手に取り、頬張る。
 ただの塩むすびなのに、彼がとても美味しそうに食べるから、なぜかとても美味しそうに見える。
 頬張っていた分を飲み込んだオルコは、嬉しそうに笑った。

「すごく美味しいよ! 流石皐月ちゃんだ」
「そんな、ただご飯に塩を付けて握っただけですから……」
「……じゃあ、皐月ちゃんが握ってくれたから、かな?」

 爽やかな笑みで言うオルコの言葉に、私はその意味がよく分からず首を傾げた。
 その時、「はい、近づきすぎ〜」という言葉と同時に、ライデンが私の襟首を掴んで引っ張る。
 顔を上げると、ライデンはムスッとした表情でオルコを見ていた。

「ハハッ、二人は本当に仲が良いんだね。俺も皐月ちゃんとそれくらい仲良くなりたいなぁ」
「黙れ幽鬼軍ッ! 皐月さえ許せば今頃お前なんてなぁッ!」
「ライデン落ち着いてください。オルコは私にお礼を言っていただけですよ?」
「それが気に食わないんだッ!」

 威嚇するような表情で言うライデンに、私は息をつく。
 朱莉と言いライデンと言い、私の周りには、自分の親しい人に近づく異性に威嚇する人が多い気がする。
 私とオルコを二人きりにして、仮にオルコが裏切ったりした時用の見張りということでライデンがいるわけだが、これではオルコは過ごしにくいだろう。
 私はため息をつき、ライデンの腕を掴む。

「ライデン。フウマルと交代してください」
「なにッ!?」
「オルコを警戒するのは分かりますが、貴方は警戒しすぎです」
「でも……!」
「ライデン」

 私が窘めると、ライデンはぐぬぬ……と苦悶の表情を浮かべ、一度オルコを睨むと、苛立った様子で部屋を出て行った。
 しばらくして、入れ替わりになるようにフウマルが入って来た。

「ははっ、ライデンは子供だから……」
「……フウマル君も俺を恨んでるんじゃないの?」
「あぁ。今すぐその顔面を殴り飛ばしたいくらいには恨んでいるよ」
「フウマル!?」

 私が声を掛けると、フウマルは肩を竦めて、手近な壁に背中を預ける。
 まぁ、ライデンと違って我慢は効くか……。
 私はため息をつき、オルコに顔を向けた。

「ごめんなさい。こんな男性陣しかいなくて……」
「しょうがないよ。一応、敵だったわけだし」
「でも……」

 私はそこまで言うと、俯いた。
 すると、オルコはフッと微笑んで、私の頭に手を置いた。

「オルコ……」
「皐月ちゃんが気に病む必要はないさ。これは、俺の自業自得なんだから」
「それは……!」
「俺は幽鬼軍で、君やフウマル君を捕まえて記憶を書き換えた一味のメンバーで、君や千速ちゃんの故郷を崩壊させて、君のお友達に酷いことをして……」
「そんなこと言わないでくださいッ!」

 咄嗟に私は叫び、オルコの体を抱きしめた。
 彼の動きは止まり、体が強張る。
 私はさらにその体を強く抱きしめ、叫んだ。

「人はッ! 罪を償うことができます! その罪をなかったことにはできませんが、その罪の分だけ良い事をすれば、人は許してくれますッ! だから、そんなことを言わないでくださいッ!」
「皐月ちゃん……」

 私は彼の体を離し、少しだけ距離を取って、彼の顔を見上げる。
 そして、笑って見せた。

「反省すれば、きっと、人は許してくれます……だから、そんな悲しいことは言わないでください」
「……皐月ちゃん……」

 震える唇でオルコは言葉を紡ぐ。
 そして、私の頭に手を置き、優しく撫でた。
 やがて、彼の口はゆっくりと弧を描き、彼は微笑んで……———

「君って……本ッ当に騙しやすいよねッ!」

 ———……そう言って、私の体を強く、突き飛ばした。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.234 )
日時: 2017/07/15 22:23
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第35話「オルコの罠?皐月の怒り!」4

「ぁ……!?」

 一瞬、何が起こったのか理解することができなかった。
 やけに体が軽くなって、少しだけ、体が浮いている気がする。

「皐月ッ!」

 その時、フウマルが声を張り上げた。
 同時に体が誰かに受け止められる感触がして、視界が固まる。
 ……突き飛ばされた……?
 ぼんやりとした思考の中で、ようやくそれだけを自覚する。

「ホント、皐月ちゃんって中身は十歳の頃から変わってないねぇ。ちょっと甘い言葉吐けばすぐに釣り上げられちゃうんだから」

 その言葉に、私は顔を上げ、目を見開く。
 不敵な笑みを浮かべるオルコの手には、アウラシュリフトロレが握られていた。

「返してッ!」
「ははッ! 返せって言われて素直に返すと思う!?」

 その言葉に、私はたじろいだ。
 すると、オルコはニヤリとさらに深い陰鬱な笑みを浮かべ、窓に向かって蹴りを放つ。
 バァンッ! という音と共に窓ガラスは弾け飛び、茜色と藍色に染まる空が見える。

「何の音!?」

 その音に、隣の部屋にいたであろう千速とライデンが駆け込んでくる。
 そして、私とフウマル、アウラシュリフトロレを持つオルコを交互に見て、一気にその表情を引き締める。

「皐月に何をしたッ!」

 ライデンはそう叫ぶと、オルコに掴みかかる。
 オルコはそれをギリギリで躱し、ライデンの腹を蹴る。
 それだけでライデンは床に転がり、右半身を打ち付けた。

「ライデン……!?」
「フンッ、雑魚は引っ込んでなよ!」

 オルコはそう捨て台詞を吐くと、窓ガラスが消失した窓枠から飛び出した。

「皐月、すぐに追うよ!」
「はい! あ、でもライデンが……」

 地面に倒れ伏すライデンに視線を向けた時、すぐにフウマルが立ちあがり、ライデンの傍まで行く。

「大丈夫。そこまで重傷じゃない。ここは拙者が付いているから、二人はオルコを!」
「……分かりました。千速!」
「了解!」

 千速はすぐに私の腕を引き、走り出す。
 和子さんには「少し出てくる」とだけ言って外に飛び出し、オルコを探した。
 すると、ちょうどオルコがアウラシュリフトロレを片手に、空中に穴を作っているところだった。

「オルコッ!」

 千速が叫ぶと、オルコは穴を作る手を止め、私達に視線を向けた。
 最初、千速を見て、少し忌々しそうな表情をした。
 しかし、私を見た瞬間、なぜか気まずそうな表情をして視線を逸らした。
 ……?

「……へぇ。追いつけるとは思ってなかったよ」
「千速は足が速いですからね……当然です」

 私の言葉に、オルコは「そうかい」と言って微笑んだ。
 彼の顔を見た瞬間から、沸々と湧き上がってくる感情。
 それを押さえきれず、私は一歩ずつ、彼に近づいた。

「皐月ちゃん……?」
「オルコ。確かに、貴方は敵ですし、私からアウラシュリフトロレを奪うためにそういう手段に出ることは分かっていました」
「まさか、皐月……」

 震える声で呟く千速に、オルコは困惑した表情で私を見る。
 私はそれを無視して続ける。

「えぇ、確かに貴方がこういう悪行を行うことは仕方がないでしょうそれは認めます。ですが、だからといって、人の善意を踏みにじり、その優しさに身を投じ、あまつさえ、自らだけが甘い蜜を吸って、そしてその全てを裏切り逃げるなどという腐りきった性根……一度叩き直さなければいけないようですね」
「皐月ちゃん? えっと、変身していない時に俺に近づいたら危な……」
「黙りなさいッ!」
「はいッ!?」

 ピシッと気を付けをしながら返事をするオルコに私は軽くため息をつき、彼の手からアウラシュリフトロレを取り返し、パンッともう片方の掌に打ち付ける。
 すると、オルコはビクビクした表情で私を見下ろしていた。

「……頭が高いですよ? 説教される立場なのですから、それ相応の姿勢になりましょうか」
「は、はいッ!」

 オルコはそう言うとすぐに正座をする。
 それに説教を開始しようとした時、向こう側から朱莉と蜜柑が走って来るのが見えた。

「フウマルから電話でオルコが暴走したって……って、何してんの?」
「何って……説教ですが?」

 私の言葉に、朱莉は「えぇ……」と困惑した様子の声を漏らす。
 蜜柑はオロオロと私達を順番に見た後で、震える唇を開いた。

「えっと……変身して浄化するチャンスじゃないの? これ」
「え!?」
「ふむ……それもそうですね。では、行きましょう」

 私がそう言いつつアウラシュリフトロレを構えると、皆もおずおずと構えた。
 そして、声を揃えて叫んだ。

「「「「プリキュア! フォースオーラチェンジ!」」」」

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.235 )
日時: 2017/07/16 12:02
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第35話「オルコの罠?皐月の怒り!」5

「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」
「疾きこと、風の如し! キュアウィング!」
「動かざること、山の如し! キュアモンテ」
「徐かなること、林の如し! キュアフォレスト!」
「風!」
「林!」
「火!」
「山!」
「「「「プリキュア!」」」」

 いつも通り名乗りを終えると、私はすぐにオルコに向かって駆けだそうとした。
 しかし、オルコはすでに近くの民家の屋根の上に上がっており、その腕には影を纏わせていた。

「オルコ! 逃げるなんて卑怯です! 正々堂々と戦いなさい!」
「何が正々堂々だよ! 逃げなかったら即座にフルボッコにされる展開だからそれ!」
「……フォレストってマジギレするとあんな怒るんだ……」
「冥姫だった時以外では初めて見たわね。怒ってるところ。……まさか説教型だったとは」
「皐月ちゃん優しいから、基本怒らないからねぇ……」

 やけに暢気な三人の会話を聴きながら、私はオルコの元に駆けだそうとする。
 その時、オルコは影を纏わせた手を近くにあった木に当てた。

「しま……!?」
「邪悪なる魂よ! 我に仕えよ! いでよ、オンネーン!」

 その言葉と同時に、木が膨張して化け物になる。
 私はすぐに後ずさり、オンネーンと向き直る。

「ほらそうやって考え無しに突っ込むからー!」
「……それ、朱莉ちゃんに一番言われたくないことだと思うけど?」
「嘘ぉ!?」
「この中で一番考え無しに突っ込むのフレイムだもの」
「そんなことないよ!」
「貴方達はなんでそんなに暢気なんですか!?」

 ついツッコミを入れると、三人とも視線を逸らした。
 まさか、私に原因があると……?

「……って、危ない!」

 その時、朱莉はそう言って私の腕を引く。
 すると、私がいた場所に、オンネーンの枝で出来た腕が突き刺さる。
 アスファルトにヒビが入り、枝が抜けると、パラパラと黒い破片が落ちるのが分かった。
 ……あぁ……。

「大丈夫? フォレスト」
「えぇ、おかげで助かりました……」

 私はそう感謝を述べると、改めてオンネーンに視線を向ける。
 ひとまず素手じゃ敵わない……先にフォレストロッドを……。
 そう思っていた時、枝が目の前まで来る。
 しまった……時間が……!?

「不動の山よ! 我に集い、力と成れ!」

 その時、蜜柑がそう叫んで山を作り出す。
 最も、何も着けていない状態でのこの技など、時間稼ぎできても一瞬程度だが。
 しかし、その一瞬の間に千速が私の体を抱きしめる形で突き飛ばし、距離を取らせる。
 即座に山は破壊され、枝が地面に突き刺さる。
 相変わらずの威力に、私は息を呑む。

「フォレスト、ボーッとしすぎ……モンテじゃあるまいし」
「千速ちゃんそれどういう意味!?」
「……少し怒りで我忘れすぎなんじゃない? 少し落ち着いて、冷静に。怒りで暴走なんて、皐月らしくないもの」

 その言葉に、私は俯いた。
 確かにそうだ……。オルコへの怒りは、戦いが終わった後で存分にぶつければ良い。
 今はただ、冷静に……徐かに、行こう。

「徐かなる林よ! 動く雷霆よ! 今、二つの力よ! 我に集い、力と成れ! フォレストロッド!」

 フォレストロッドを取り出した私は、オンネーンに向かって構える。
 すると、オンネーンは私の方に無数の枝を、まるで鞭のようにしならせながら飛ばしてきた。

「フォレストッ!」
「大丈夫ですッ!」

 私は叫び、フォレストロッドを構えたまま駆けだす。
 剣など使ったことはないが、見様見真似の剣術でそれらをいなし、オンネーンの懐まで近づく。
 怒りは時に、人の力になる。けど、怒り狂えば、それは己の身を滅ぼす毒となる。
 冷静に使いこなし、そして、自分の力とする。
 私はオンネーンのすぐ目の前まで来ると、奴の首筋にフォレストロッドをあてがい、微笑んで見せた。

「私の勝ち、ですか?」
「ふざけるなッ! まだ戦いは終わってない!」
「いいえ、終わりです!」

 オルコの言葉に私はそう返し、オンネーンから離れ、フォレストロッドを構え叫んだ。

「レジェンドクロックッ!」


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