二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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【完結】風林火山プリキュア!
日時: 2017/08/01 13:12
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539

初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!

追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。

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Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.326 )
日時: 2017/07/31 17:23
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第49話「故郷を掛けて!オグルVSプリキュア!最後の戦い!」6

 体が熱くなるのを感じながら、私はゆっくりと瞼を開いた。
 瞼を開くと、自分の服が黒い炎で僅かに燃えているのが見えた。
 肌も少し焦げてる……火傷、かな……。
 でも、良かった……千速は無事で……。

「朱莉! 大丈夫!?」

 慌てて後ろから、私の服の裾を掴みながら叫ぶ
 大丈夫じゃない……けど、まだ耐えないと……。
 そう思っていた時、オグルが皐月に視線を向けた。

「皐月ッ……」

 私はすぐに立ち上がり、皐月の前に立った。
 すると、ほとんど同時に黒い炎が飛んできて、またもや私の体を焼く。
 熱い……痛い……。
 私は膝をつき、一度大きく深呼吸をする。

「朱莉、なんで……」
「まだ……まだぁッ!」

 私は叫び、すぐに駆けだす。
 蜜柑の前に立った瞬間、背後から「朱莉ちゃん……!」と声がした。
 振り向くとそこには、すごく不安そうな顔で私を見ている蜜柑がいた。
 ははっ……相変わらず、怖がりだなぁ。蜜柑は……。

「大丈夫だよ、蜜柑……私がいるからね……」

 私はそう言いながら蜜柑に向き直り、しゃがんで、へたり込む蜜柑と目線を合わせる。
 血の気の引いた顔で私の後ろの何かを見ている蜜柑の頭を……撫で……———。

「ッ……ぁぁぁああああああッ!」

 痛みやら熱気が体中に伝わって、私は絶叫する。
 痛いッ! 熱いッ!
 前に倒れた私の体を、蜜柑が抱きしめる。

「朱莉ちゃんッ! しっかりしてッ! 朱莉ちゃんッ!」
「朱莉、すごい火傷……」
「なんで、ここまで……」

 駆け付いてきたのか、千速と皐月の声がする。
 私はそれに、なんとか声を振り絞る。

「当たり前でしょ……? 友達を守るのに、理由なんて……いらない……」
「……その友達に、守るほどの価値があるのか……?」

 オグルの声がした。
 私はそれに、体をオグルの方に向ける。
 そして、できるだけ声を大きくして言った。

「当たり前じゃん……! 友達がいれば、私は何倍でも強くなれるんだ……! 今は、ロウソクの火、でも……風が吹けば、その火は何かに燃え移る……林に燃え移れば火事になる……それが山なら山火事だ……!」

 私はそう言いながら、震える体を奮い立たせて、立ち上がる。
 まるで生まれたての小鹿のような、情けない姿。
 でも、そんなこと関係ない。
 自分の足でしっかりと立ち上がった私は深呼吸をして、叫んだ。

「友達がいれば、私の強さは……無限大なんだからああああああああああああああッ!」

 そう叫んだ瞬間、私達の周辺と、ライデン、そしてオグルの体が光り始める。

「この光は……アウラシュリフトロレ……?」

 それはアウラシュリフトロレだった。
 私達のアウラシュリフトロレが強い光を放ち、また、ライデンは、彼が持つレジェンドクロックから光が出ていた。
 そうか、あれは、雷の書の力が籠っているから……。
 じゃあ、オグルは……? そう思って振り向いてみると、オグルの体から、アウラシュリフトロレが飛び出そうとしているのが見えた。

「なんだ、これは……!」
「まさか、朱莉の友達を想う正義の心に、アウラシュリフトロレが反応して……?」

 フウマルのその呟きと共に、私達のアウラシュリフトロレ、そしてレジェンドクロックと、オグルから出てきたアウラシュリフトロレが空中で集まる。
 やがて、それは巨大な光となり、その光が収まると、真っ白な筒状の物体が一つ、そこにはあった。
 見た目はアウラシュリフトロレに似ているけれど……何だろう、これは……ていうか。

「アンタ、アウラシュリフトロレが無くても生きられるのね」

 私の呟きに、オグルは「そういえば」という表情をする。
 まぁ、その辺はどうでもいいか。それを言ったらオルコとオウガはどうなるんだという話だし。
 私は軽くスルーをして、真っ白なアウラシュリフトロレを握り締めた。
 次の瞬間、それは強く光る。

「眩しッ……何、これ……」

 そう呟いた時、私はハッとする。
 これが出来上がった時の状況から察するに、これは全ての伝説の書の力が込められている。
 だとすれば、このアウラシュリフトロレを展開するには……。

「……プリキュア。オールオーラチェンジ」

 そう呟いた瞬間、アウラシュリフトロレが展開する。
 舞う文字は白く、私の体に付く度に白いコスチュームに変わっていく。
 見た目的には、プリキュアの衣装を少し派手にして、少し輝きを増した感じ。
 白銀に煌くマントを見つめながら、私は口を開いた。

「疾きこと、風の如く。徐かなること、林の如く。侵掠すること、火の如く。動かざること、山の如く。知り難きこと、陰の如く。動くこと、雷霆の如し。郷を掠むるには衆を分かち、地を廓むるには利を分かち、権を懸けて動く。迂直の計を先知する者は勝つ。これ軍争の法なり」

 ……長いな。
 これが、伝説の書の全容? 確か、全てを理解した者は、世界を支配できるほどの力を手に入れるって……。
 ていうか、普段ならこの後でキュア〇〇みたいなのが出てくるはずなのに、何もない。
 そうだ! それなら私が決めてしまえば良いんだ!
 うーん……さっきフウマルが私の正義の心がどうとか言ってたから……。

「全てを守ること、正義の如し! ジャスティスフレイムッ!」

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.327 )
日時: 2017/07/31 20:42
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第50話「全てを守るヒーローに!笑顔よ、力と成れ!」1

「全てを守ること、正義の如し! ジャスティスフレイムッ!」

 不思議と、体が軽い。
 ボロボロだったハズの体がすっかり全回復して、今なら宇宙までジャンプできそうなくらい。

「ジャスティス……」
「フレイム……?」
「朱莉……ちゃん……?」

 不思議そうな顔をする三人。
 私はそれに笑って見せる。

「間抜けな顔してるなぁ……皆」
「何だ……なんだその力はああああああああああッ!」

 オグルはそう叫び、一気に怨気を発動する。
 黒いオーラが溢れだし、気味の悪い感触が辺りを支配する。

「言ったでしょ! 友達がいれば、私の強さは無限大なんだって」

 私はそう言い、ゆっくり足に力を込める。
 すると、風の力だろうか。微かな風が吹いて、白銀のマントをなびかせる。

「行くよ……オグル……!」
「ッ……ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 オルコは叫び、掛けていた眼鏡を握力だけで破壊する。
 ……って、それ伊達眼鏡なんかい!
 私は一度息をつき、オグルに向かって駆けだした。

「調子に……乗るなぁぁぁぁぁッ!」

 オグルは叫び、背中から伸びる翼を羽ばたかせ、空に飛びあがる。
 私はそれに立ち止まり、オグルを見上げた。

「なっ……空飛ぶとか卑怯!」
「うるさいッ!」

 そう言って片手を上空にかざすと、黒い炎の巨大な玉ができる。
 私はそれに立ち止まり、両手を構える。

「来い……オグルッ!」
「うおおおおおおおおおおおあああああああああああああああッ!」

 叫びと同時に、炎の球が放たれる。
 私はそれを、一度深呼吸をしてから、手をしっかり構える。
 炎を受け止めた瞬間、手が触れる箇所から炎が消えて、散っていく。

「おぉぉ……すごい」
「朱莉ちゃん。もしかしたら朱莉ちゃんも飛べるかもよ?」

 蜜柑の言葉に、私は自分のマントを見る。
 あー、確かに。……行ってみますか。

「それじゃあ……行くよ、オグル!」

 私はそう言いながら、膝を曲げて構える。
 それからジャンプすると、マントが翼のように変わり、私の体を浮かす。
 やがてオグルの高さまで届いた私は、彼の目を見つめる。

「ッ……ふざけるなぁッ!」

 叫び、オグルは手を構える。
 それに、私は咄嗟に空中を蹴り、横に跳ぶ。
 すると、それだけで私の体は高速で動き、一瞬で大量の分身を作る。

「まさか、あれはウィングアクセルの……?」
「……! 消えろッ!」

 オグルはそう叫び、全範囲に向かって黒い炎を噴出する。
 分身は全て焼き払われ、本物の私が残る……ハズだった。

「いない……本物も燃えたか?」
「んなわけないでしょッ!」

 私は叫び、林の書の力で消していた自分の姿を現す。

「あれは、林の書の……!」
「はぁぁぁぁッ!」

 皐月の声を聴きながら、私はオグルにかかと落としを喰らわせる。
 それを肩に受けたオグルは顔をしかめ、地面に叩き付けられる。
 その間に私は地面に着地する。
 しかし、油断していたのか、起き上がったオグルに腹を蹴り飛ばされた。

「がッ……!?」

 私は声を漏らしながら、後ろに吹き飛んだ。
 すると、足元が水に変わる。
 前に小動物オンネーンに追いかけられた時に罠に嵌めた時に使った池か!
 私は冷静に、自分が着地する位置を見極めて、足場を発動する。
 モンテムーロの能力だと出せる足場はせいぜい四つ。
 一、ニ、三……着水しそうになる度に山で足場を作り出し、四つ目の山の上でしっかり着地する。

「朱莉ちゃん……水の上に立って……」
「ホラ、オグル来なよ」

 私がそう挑発すると、オグルは顔いっぱいに怒りの感情を表しながら、一気にこちらに向かって駆けてきた。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.328 )
日時: 2017/07/31 21:45
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第50話「全てを守るヒーローに!笑顔よ、力と成れ!」2

「掛かったね……」

 こちらに向かって飛んでくるオグルに私はほくそ笑み、背中の後ろに隠した手に雷の力を纏わせる。
 まだ……まだ……まだ遠い。
 少し近づいてくるオグルに、私は唾を呑み込む。

「うおらあああああああああああああッ!」

 オグルは叫び、腕を振り上げた。
 今だッ!

「はぁッ!」

 私は叫び、彼よりも高く飛び上がる。
 そのまま雷を纏った腕とは反対の腕に炎を纏わせ、オグルを見下ろす。

「でりゃぁッ!」

 叫び、その炎をオグルにぶつける。
 すると、彼の背中から生えた羽の内一本が消え、彼は池に落下する。
 それを見届けながら、私は腕に纏わせた雷の力を池に向かって放つ。

「いっけええええええええええええッ!」

 その叫びと共に、池に雷が走る。
 オグルの叫び声を聴きながら、私はゆっくりと下降する。

「これで終わりだよ、オグル……私の全身全霊を込めるから……」

 そう呟きながら、私は手を挙げる。
 すると、その手に何か、力が籠るのが分かった。

「まだ、俺は終わらないッ!」

 オグルは叫び、一気にこちらに向かって飛んでくる。
 私はそれに腕を構え、叫んだ。

「全てを守る大いなる力よ! 我に集い、怨念を打ち払えッ! プリキュア! オールヒーリング……!」

 しかし、いざオグルを浄化しようとした瞬間、胸の中にトゲトゲした嫌な感触が走った。
 私はその体勢のまま固まり、オグルを見つめる。
 怒りに染まった表情をしていたオグルは、私を見て、少しキョトンとした表情をした。

「なんだ……? 舐めているのか……?」
「……やっぱり……オグルを倒すことなんてできない……」

 気付いたら、私の目から涙が溢れ出ていた。
 今なら、オルコやオウガを倒して泣いたあの二人の気持ちが分かる。

「だって、オグルは鬼人なんだもん……倒すことなんて……できないよ……」

 私の言葉に、オグルは私の顔を見た。
 やがて、ゆっくりと私の前まで来て、抱きしめた。

「っ……」
「今なら分かるよ……お前を、好きになった理由……お前は単純で馬鹿で、後先考えずに動く……でも、その行動は全部他人を優先していて……すごく、温かいんだよな」
「……今更優しくすんなよ馬鹿ぁ……!」

 私は泣きながら、オグルの体を押し返そうとした。
 しかし、その腕にはなぜか力が入らなくて、上手くいかない。
 すると、オグルは私から距離を取り、私の涙を指で拭った。

「泣くなよ……俺はお前の敵なんだぞ?」
「分かってる……分かってるよ、馬鹿ッ……」
「……あぁ。俺は確かに馬鹿だ。今はお前を倒す絶好のチャンスなのに、全然、攻撃していないんだからな」

 オグルはそう言うと、私の頭に手を置いた。

「やれよ。お前に倒されるなら……本望だ……」
「っ……全てを守る大いなる力よっ……我に集い……怨念を打ち払えッ!」

 私がそう声にすると、腕にまた、光が纏う。
 それをオグルの胸に当てて、私は叫んだ。

「プリキュア……! オールヒーリング……フレイムッ……!」

 そう呟いた瞬間、大きな光がオグルの体を消していく。
 少しずつ怨気が消えて、光の屑となっていく。

「キュア……フレイム……」
「オグル……」

 私が名前を呼ぶと、オグルは微笑む。
 そして、小さく口を開いた。

「大好き……だった……」

 その言葉と共に、オグルの体は消えていく。
 私は、空中に広がる光の屑を見つめながら、静かに口を開いた。

「……私もだよ、鬼人」

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.329 )
日時: 2017/08/01 10:06
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第50話「全てを守るヒーローに!笑顔よ、力と成れ!」3

 それから私は変身を解き、私達は全員で千速達の村人たちが捕まっているという場所に向かった。
 捕まえている檻は木製だったので、ひとまず村にあった斧で壊した。

「千速……!」
「お父さん、お母さん……!」

 何人かを外に出していた時、千速の両親らしき人が、千速を抱きしめた。
 お父さんの方は紺色の髪で、お母さんは千速と同じ、綺麗な空色の髪だった。
 ……千速の髪色はお母さんからの遺伝だったのか。

「お前……皐月か……?」

 そして、それ以外の村人たちは、皐月を見て驚いている。
 まぁ、四年間も行方不明だったらしいからね……しょうがないか。

「皐月、心配したんだぞ……!」

 すると、皐月の祖父らしき人物が飛び出して、皐月の体を抱きしめた。
 そういえば、村長は皐月に関してすごく過保護だったみたいな話を聞いたな。
 ……心配だったんだろうなぁ。
 私と蜜柑は顔を見合わせ、静かにその場を後にした。
 私達は、ここでは部外者だから。

「それにしても、やっと幽鬼軍との戦いが終わったのかぁ……なんか、ちょっと感慨深いかも」

 村長の家から離れて、なんとなくその辺を散歩しながら私は呟いた。
 そんな私の言葉に、隣を並んで歩いていた蜜柑は「そうだね」と言って笑う。

「結構色々あったからねぇ……でも、今が十二月だから、実質八ヶ月程度っていうのが信じられないかな」
「そんなものかぁ。でも中身が濃かったよねぇ。ホラ、蜜柑と初めて喧嘩したのも、その時期だったし」
「確かに。千速ちゃんや皐月ちゃんとも、たった八ヶ月ですごく仲良くなったし……忘れられないよね。この事」
「そうだね〜」

 のんびりした口調で私が言っていた時、蜜柑が立ち止まる。
 振り向くと、心配そうな顔で私を見ている蜜柑がいた。

「……蜜柑……?」
「朱莉ちゃん……無理して笑わなくて良いよ?」
「えっ?」
「今この林には、朱莉ちゃん以外に、私しかいないから……誰も見てないから……だから、全部吐き出して良いんだよ?」
「無理して笑ってなんて……」

 そこまで言った時、私の頬を涙が伝った。
 あぁ、なんか今日は、泣いてばっかりだな……。
 また泣いてしまった私に蜜柑は曖昧に笑って、両手を広げた。

「ッ……蜜柑ッ!」

 私はすぐに蜜柑に駆け寄り、彼女の華奢な体を抱きしめた。
 抱きしめながら、私は泣いた。

「鬼人はぁッ……たくさん、勉強教えてくれたのにッ……何も、返せないまま……私がぁッ……」
「よしよし……朱莉ちゃんは悪くないよ……」
「うわぁぁぁぁぁぁぁんッ!」

 子供のように泣きじゃくる私の背中を、蜜柑は撫でる。
 泣くのは、今だけで良い。
 明日からはきっと、笑えるから。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.330 )
日時: 2017/08/01 09:56
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第50話「全てを守るヒーローに!笑顔よ、力と成れ!」4

 村を取り戻した今、千速と皐月が私達の世界にいる理由はない。
 ライデンの作った空気の穴から私と蜜柑を送り、あとは千速と皐月だけが帰るだけという時になった。
 私の家の前で、千速は口を開く。

「それじゃあ、ホントに……今までありがとう。二人のおかげで、村を取り戻せたよ」
「ヘヘッ……あっちの世界でも頑張ってね」

 私の言葉に、千速は「もちろん」と言って笑った。
 その返答に、皐月がクスクスと笑った。

「お二人も、こちらの世界で引き続き頑張ってくださいね。朱莉は無茶をしすぎず、蜜柑は……大変でしょうが、朱莉のお世話を」
「ちょっと何さぁその言い方」

 私が不満そうにそう言って見せると、皐月は「ごめんなさい。つい」と言って舌を出した。
 彼女の反応に、蜜柑は「フフッ」と笑みを零した。

「……もう、皐月ちゃん達はこっちには来れないんだよね?」
「……えぇ。あの井戸は、幽鬼軍から逃げるための手段ですから。幽鬼軍がいない今、すでに運転は停止しています」
「でも、ライデンの力があれば……」
「……元々これは、雷の書の力の片鱗みたいなものだから。……その力が無くなった今、恐らく、今回使ったのが、最後になるかな」

 ライデンの言葉に、私は「そっか……」と返す。
 もう、千速達とは会えないのか……そう思った瞬間、すでに枯れ果てたと思っていた涙が、ボロボロと頬を伝った。

「やだ……千速達とまだお別れしたくないよ……」
「朱莉ちゃん……そんなに泣いたら、私まで泣いちゃうじゃん……」

 泣き出してしまった私を見て、蜜柑まで泣く。

「馬鹿……こうなることくらい、分かってたことじゃない……今更泣かないでよぉ……」

 私達を窘めようとした千速も泣きだし、その横では皐月も涙を流す。
 四人全員泣き出してしまい、止める者もいない。
 なんとか両手で涙を拭いながら、私は声を振り搾る。

「ぜったっ……絶対に、千速達のこと、忘れないからねッ……ずっと、友達だからねッ……」
「そうだよッ……どれだけ離れていても、私達、ずっと友達だからぁッ……」

 私に続いて蜜柑が泣きながら言った言葉に、千速も皐月もコクコクと頷く。

「私もッ……二人のこと、忘れないッ……忘れるもんかぁッ……」
「例え二度と会えなくてもッ……私達の絆は、永遠に繋がっていますッ……」

 皐月の言葉に、私達は頷く。
 別れは笑顔でって決めていたのに、結局皆泣いちゃって……まぁ、私が一番に泣いたんだけど。
 ていうか今日はホント、泣いてばっかりだな……でも、せめて最後は笑おう。
 私は袖で涙を拭い、無理矢理笑って見せた。

「それじゃあ、千速、皐月! またね!」

 その言葉に、二人は目を見開く。
 やがて、二人も涙を拭い、笑った。

「えぇ。また!」
「また会いましょう……蜜柑も泣かないで」

 皐月の言葉に、蜜柑も慌てて涙を拭って、笑顔で「うんっ」と頷いた。
 それから二人は穴に入り、それは静かに閉じていく。

「……それじゃあ、蜜柑。行こうか」

 私の言葉に、蜜柑は「うん」と小さく頷いた。
 行こう……明日に。
 前を向いて、笑って、歩いて行くんだ。
 それが今、私達がするべきことだから。


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