二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/08/01 13:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539
初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!
追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。
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- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.236 )
- 日時: 2017/07/16 13:31
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第35話「オルコの罠?皐月の怒り!」6
「レジェンドクロックッ!」
私が叫ぶと、目の前がバチィッ! と弾け、レジェンドクロックが現れた。
それと同時にフォレストロッドがはじけ飛び、緑の光と黄色の光に分解される。
二つの光は空中で絡まり合い、私の腕に絡みつき、腕輪になる。
その様子を見つめながら、私はレジェンドクロックに手をかざした。
「徐かなる森林よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! デュアルコンフュージョン!」
叫んだ瞬間、黄色と緑の光が空中に浮かぶ。
私が手を出すと、それらはオンネーンにぶつかり、弾き飛ばす。
すぐに私は三人の元まで後退し、レジェンドクロックを囲う。
「「「「今、大いなる伝説よ! 我等に力を貸し給え! レジェンドクロック!」」」」
そう叫んだ瞬間、レジェンドクロックから光が飛んできて、三人の手首と私のサンダーブレスに絡まる。
やがて、それより派手な腕輪に変わるのを見ながら、私たちは次の言葉を叫んでいく。
「侵掠の業火よ!」
「疾き烈風よ!」
「不動の豪山よ!」
「徐かなる森林よ!」
「「「「今、四つの力よ! 我等に集い、力と成れ!」」」」
すると、巨大な手裏剣が出てきて、私達はそれに乗って飛んでいく。
やがて、オンネーンの頭上に行くと、私達は叫んだ。
「「「「プリキュア! オールターンオフイリュージョン!」」」」
そう叫んでから手裏剣から離れると、それはゆっくりと落下していく。
私達はそれに背を向けて着地し、胸の前で指を組む。
「「「「忍ッ!」」」」
背後に爆発音を聴きながら、私はオルコを見つめた。
「クッ……次こそは……!」
彼は、そう言うとどこかに消えて行った。
なるほど、全て嘘であり、演技だったというわけか。
私のために幽鬼軍を裏切ったということも……私を、好きだと言ったことも……。
「皐月?」
そこで千速に名前を呼ばれ、私は我に返る。
顔を上げると、千速が不思議そうな表情で私を見ていた。
「な、なんですか?」
「いや、なんだか深刻な表情してたから……。それにしても珍しいよね。皐月があんなに本気で怒るなんて」
「それ思った。騙したりとか、そんなに嫌いなの?」
「そういうわけではないのですが……」
私はそう呟きながら、自分の胸に手を当てた。
なんなんだろう……言葉にできないこの感情は……。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.237 )
- 日時: 2017/07/17 20:36
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第36話「消された記憶?消滅した友情!」1
−−−
「ははっ、確かに面白いショーだったなぁ! オルコ」
馬鹿にするように笑うオウガに、オルコは忌々しそうに睨んだ。
その光景を見ながら、オグルは手に影を纏わせる。
「ん? 何してるの?」
「いや……最近少し、俺に宿る怨念の力が上がっている気がしてな……少し実験をしてみるか」
「実験?」
オルコがそう聞き返したとき、オグルは空中に向かって怨念を放出した。
それは強引に空中に穴を作り、その中に膨大な量の怨念が入っていく。
「うわ、何してるの!?」
「……俺達は、皐月の記憶からこの肉体を得た。怨念を使えば、人間の記憶を具現化して、何かを作り出すことも可能だと思ってな」
「へぇ……?」
「そして、その具現化したものや記憶を使った人間の記憶やらを弄れば、新しい世界を作り出せると思ってな……」
「新しい世界……?」
オルコの問いにオグルはニヤリと笑い、怨念で埋め尽くされた空間に触れる。
すると、怨念は怪しく輝き、黒い手が伸び始める。
「あくまでちょっとしたお遊戯さ。これで、少しプリキュアをからかってやろうと思って……な」
その言葉に、オウガとオルコは顔を見合わせた。
−−−
<朱莉視点>
「いっただきまーす!」
私はそう言うと同時に、タコさんウインナーを咥えた。
相変わらずの美味しさに、私は頬を押さえた。
「んまー!」
「ホント、朱莉は好きなものを美味しそうに食べるわよね」
「だって、好きなものは美味しいし、美味しいものを美味しく食べるのは当たり前じゃん?」
「あっそ」
私の言葉を受け流し、千速は玉子焼きを食べる。
ぐぬぬ……私のことは無視ですか……。
悔しく思っていると、蜜柑が隣から「まぁまぁ」と言って宥めてくる。
宥められても悔しいことに変わりはない!
「あの、ところで皆さん……あちらの空間が、少し歪んでいるようなのですが……」
その時、皐月がそう言って遠くを指さす。
私達はそれに動きを止め、皐月が指さす方向を見た。
「な……!?」
見ると、そこでは空に赤黒いヒビのようなものが走っているのが見えた。
今まであんなの見た事ない……嫌な予感しかしないよ。
私は、咄嗟に蜜柑を抱きしめ、庇うようにヒビに背を向ける。
隣では、千速が皐月とヒビの間に立っているのが見えた。
すると、背後からバキィンッ! という音が聴こえ、直後、背筋が寒くなるような嫌な感覚がした。
「何、あれ……」
震える千速の声。
見ない方が良い、と、なんとなく本能が訴えかけてくるのを感じるが、それでも、見ないと不安だ。
実際、私の肩越しにそれを見ているであろう蜜柑の顔が、すごく青ざめているから。
「一体、何が……?」
恐る恐る振り返ってみると、そこには……空間の一部に巨大な穴が空き、その奥では、ゾッとするほどの膨大な量の闇が渦巻いている。
そこから数本の黒い腕がこちらに伸び、今にも私達を捕まえようとしている。
一度それを見てしまったが最後。腰から力が抜け、私達はこの屋上から逃げるという選択肢を失われる。
「朱莉ちゃん……」
その時、手を強く握られた。
見ると、蜜柑が泣きそうな顔で私を見ている。
そうだ。私が怖がったら、蜜柑を不安にさせてしまう。
私は握られた手を左手で優しく包み、右手で彼女の頭を撫でた。
「大丈夫だよ、蜜柑。私が、ついているからね」
「朱莉ちゃん……私、朱莉ちゃんと一緒なら、怖くないよ」
泣きそうな笑みで言う蜜柑。
大丈夫。二人なら……ううん……。
「四人なら、怖いもの無しだよね」
私はそう言って、千速達に顔を向けた。
千速と皐月は、それに、小さく頷いた。
「そうだね」
「……千速。泣きたくなったら、私に頼れば良いんですよ? 千速は、怖がりですから」
皐月はそう言って微笑むと、千速の手を握る。
千速はそれに恥ずかしそうに笑ってから、その手を両手で包んだ。
「何言ってるの……私が皐月を守るんだから」
「二人の世界に入らないでよ。私達は全員で全員を守り合うんだよ」
私の言葉に、三人は頷く。
その時、黒い手が、私達の体を掴んだ。
目の前が真っ暗になり、そのまま、私達の体は闇の中へ……———。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.238 )
- 日時: 2017/07/17 22:12
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第36話「消された記憶?消滅した友情!」2
ジリリリリリリリリリッ!
甲高い目覚ましの音に、私はハッと瞼を開く。
なんだろう……とても長い夢を見ていたような感覚がする……。
私は体を起こし、額に手を当てた。
「朱莉〜。ご飯出来てるわよ〜?」
「あっ……はぁい!」
母の声に、私はベッドから降りて駆けだす。
階段をトントンと音を立てながら軽快に降りて行き、リビングに行くと、すでにそこでは紅助がガツガツと食事をしていた。
私はすぐに椅子に座り、「いただきます!」と挨拶をして、朝食を食べ始める。
「姉貴はホント、朝からうるさいなぁ……」
「モグモグ……うるさい。紅助こそ、たまに夜中に音楽流すじゃん? あれ超迷惑なんだけど」
「う、うるせぇ……」
「はいはい。良いから早く食べてしまいなさい。遅刻するわよ」
「「はーい」」
お母さんの言葉に私達は同時に返事をして、ご飯を掻き込む。
それから食事を終えると、歯を磨いて顔を洗い、制服に着替える。
あぁ、眠い……この眠気のせいで、小学生の頃は遅刻魔だったなぁ。
でも、中学生になってからは目覚まし時計を使ってるおかげで、寝坊が原因の遅刻はしていない。
でも寝すぎて授業中すごく眠いんだよね……辛い。
そんな、毎朝の如く思う愚痴を心の中で吐き捨てつつ、私は鞄を持って部屋を飛び出した。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい」
お母さんに見送られながら、私は走って学校に向かう。
今日も快晴! 清々しい朝の空気を吸いながら、私は勢いよく地面を蹴って進んでいく。
「おっはよー!」
教室に着き扉を開くと、私は大きな声で挨拶をした。
すると、教室にいた皆が「おはよー」と挨拶を返してくれる。
ふむ。今日も良い日になりそう!
「朱莉おはよう。朝から元気だね」
すると、優香がそう声をかけてきた。
私はそれに頷いた。
「ヘヘッ、元気が私の取り柄みたいなものですから」
「元気だけは、ね」
「何を〜!?」
憎まれ口を叩いた歩美に掴みかかろうとした時だった。
「ひ、火場さんっ……」
小さな声で名前を呼ばれ、私は動きを止める。
振り向くとそこには、オドオドとしている遠山さんがいた。
背が低くて、蜂蜜みたいな色の髪を三つ編みで一つ結びにしているのが可愛らしい。
「ん? 遠山さん、どうしたの?」
「えっと、今日、火場さんが日直って聞いたから、これ、学級日誌」
そう言って差し出されたのは、黒くて固い表紙に『2年1組 学級日誌』と書いた紙が貼ってある本だった。
私はそれを受け取り、「あぁ!」と思い出す。
「すっかり忘れてた! わざわざこれ、職員室から持って来てくれたの?」
「あ、うん……生徒会の用事で寄った時に、先生が」
「へぇ〜。ありがとね!」
私がそうお礼を言うと、遠山さんは「どういたしまして」と言ってはにかみ、踵を返して歩いて行く。
その様子を眺めていた優香は「へぇ〜」と声をあげた。
「あれって、生徒会副会長の遠山蜜柑……だよね?」
「え、それって男子に一番モテてるっていう!? 小さくて可愛い〜! 朱莉、いつの間に友達になったの!?」
「友達ではないよ? でも、友達になりたいなぁ、とは思うけど」
私はそう言いつつ、自分の席に戻っていく遠山さんの後ろ姿を見つめていた。
「ふーん……でもさぁ、あんな可愛いと、やっぱり恋の噂、すごいよね!」
すると、歩美がそう言った。
それに私は「恋の噂?」と聞き返す。
「うんっ。一番有名なのだと、会長の岩室君と付き合ってる、とか」
「大穴で行くと、三組の藤谷とかね」
「藤谷……って、勇太!? 遠山さんと勇太は無いでしょ!」
私の言葉に、歩美と優香は「なんで〜?」と不満そうに返す。
「いや、だって、勇太と遠山さんは……あれ?」
そこまで言って、私は首を傾げる。
勇太と遠山さんの間に何かあった気がしたけど……なんだっけ?
「あれ、って……ちょっと朱莉しっかりしてよ」
「ごめんごめん。まぁでも、勇太なんかに遠山さんは勿体なさ過ぎるでしょ」
「あ、それは言えてる!」
そんな雑談をしながらも、私は無意識に自分の頭に手を当てる。
なんだろう……何か、違和感……。
−−−
<蜜柑視点>
「それじゃあ、今日の話し合いはここまでです」
昼休憩の生徒会会議は、会長である岩室君の言葉で締める。
それから、私は今日の話し合いで決まったことをまとめた書類を持って、立ち上がる。
その時、机の上に段ボールと、いくつかファイルやら書類やらが積んであるのを見つけた。
「岩室君。これは?」
「うん? あぁ。後で職員室に持って行く予定だったやつだよ」
「ふぅん……じゃあ、ついでに持って行っておくね」
「え、でも……」
「大丈夫だよっ。流石の私でもこれくらいは持てるから! ……多分」
尻すぼみな言い方をすると、岩室君がガクッとずっこけるような素振りをした。
しかし、すぐに微笑んだ。
「まぁ、そこまで重くないし。よろしく頼める?」
「……! うんっ!」
私はそう返事をすると、私が持って行く予定だった書類を上に乗せ、段ボールを持ち上げる。
け、結構重い……腕がプルプルと震えるのが分かる。
腰を後ろに曲げる感じでなんとか持ち、私は生徒会室を後にした。
しばらく持っていると、指の感覚が無くなってきたので、一度床に置いて休憩をする。
あとはここから階段を下りて、少し廊下を歩けば、職員室だ。
「あと少し……」
そう呟きながら両手をグーパーしていた時だった。
窓から、バスケットボールをドリブルしている火場さんが見えたのは。
「わ……」
小さく声を漏らしながら、私は窓の外を眺める。
バスケ部でもないのに、バスケットボールを素早くドリブルする火場さん。
そして、片手でレイアップシュートを決めると着地し、自分のチームメイトに向かってピースして見せた。
すごいなぁ……火場さんは。
やっぱり、住む世界が違うんだ。
私の学校には……というより、私のいるクラスには、住む世界が違うと思う人が三人いる。
その内の一人が火場朱莉さんだ。
いつも元気で明るくて、色々な人と話せるコミュニケーション能力の持ち主。
キラキラしていてカッコよくて、私の憧れ。
「……って、こんなことしてる場合じゃないや」
私はそう呟き、慌てて段ボール箱を持ち上げる。
それから早歩きで廊下を突っ切り、階段に差し掛かる。
うぅ……箱とかのせいで足元が見えないし、不安……。
恐る恐る、探るように一段ずつ降りていく。
段ボール箱の中身は割れ物ではないらしいので、落としても問題はないが、上に乗っている書類やらファイルやらは一度落としたら悲惨だろうなぁ……拾う作業、絶対に疲れる……。
そう思っていた時、ズルッと足が滑る感触がした。
「しま……!?」
踏み外した!?
そう思った時だった。
「危ない!」
その声と共に、ガクンッと体の動きが止まる。
ゆっくりと私の体を立て直すように、前からの力が加わり、私は無事に普通の姿勢に戻る。
「ふぅ、危ない危ない……大丈夫? 怪我とか」
そう言って段ボール箱の向こう側から声を掛けてきた人の顔を見た瞬間、私は息が止まるような感覚に陥った。
「か、かか風間さん……!?」
「ん? なんだ遠山さんかぁ。生徒会のやつ?」
「あ、うんっ……えっと……」
「重そうだね。持とうか?」
そう言って書類を持とうとする風間さんに、私は慌てて「大丈夫!」と答える。
「あ、提出する先生が違うやつとかあるから……自分で持って行った方が、分かるからさ」
「そっか……じゃあ、頑張ってね。さっきみたいに転ばないように」
そう言って、頭を撫でられる。
予想もしていなかった状況に、私はしばらくの間呆然とする。
「フフッ。それじゃあ、また教室で」
爽やかに笑いながらそう言うと、短い空色の髪をなびかせながら歩いて行く。
私はそれにしばらくの間呆けた後で、階段の段に静かに腰掛けた。
「風間さんに、声掛けられちゃった……」
風間千速さん。私が、住む世界が違うと思う人の内の一人。
陸上部のエースで、いつも冷静沈着。
でも、時々見せる笑顔と優しい性格に、彼女に惚れている女の子は多いという。
うわぁ、良いのかなぁ……一日の内で、憧れてる三人の内二人と話しちゃった……。
恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じながら、私は立ち上がる。
とにかく、早く職員室に行って、この書類とかを持って行かなくちゃ。
心の中でそう呟き、私は速足で階段を下りて行った。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.239 )
- 日時: 2017/07/16 22:04
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第36話「消された記憶?消滅した友情!」3
<千速視点>
「千速〜。部活行こ〜?」
放課後になり、鞄の準備をしていると、同じ陸上部の梨花がそう言って来た。
私はそれに頷き、鞄を持って立ちあがる。
二人で廊下を歩いて玄関に向かうと、それぞれ靴を取り出そうと下駄箱の蓋を開けた。
すると、バサバサという音を立てて、足元にカラフルな封筒が落下した。
それを見た梨花は、数枚手に取って、ニヤッと笑った。
「へぇ〜……流石千速。モテモテですな?」
「う、うるさいなぁ……いつものことでしょ?」
「はいはい、いつものことね」
梨花はそう言って笑うと、私と一緒に落ちた封筒を拾ってくれた。
その時、一枚の紙に手が当たる感触がして、私は無意識にそれを拾った。
「ん? どうしたの?」
「いや、何だろう、これ……」
それは、学校で配られたプリントの隅を千切ったような適当な紙だった。
開いてみると、中には『放課後、屋上に来てください。大事な話があります』という文章があった。
告白目的ならもう少し綺麗な紙を使うハズだし……妙だ……。
「千速〜?」
「ごめん、ちょっと急用できたから、これよろしく!」
「え、ちょ!?」
途中まで拾っていたラブレター達を全て梨花に押し付け、私は、その紙一枚を片手に、上靴で廊下を駆けた。
二段飛ばしで階段を駆け上り、やがて、屋上の扉の前に立つ。
「ゼェ……ハァ……ゲホッ」
荒くなった呼吸をなんとか整え、私は屋上の扉を開いた。
「あら……思っていたより、早かったですね」
「……皐月さん……?」
そこにいたのは、同じクラスであり、私と同じ転校生である、神林皐月だった。
風に揺れる綺麗な緑髪を手で押さえながら、緩い笑みを浮かべて、彼女は柵に凭れ掛かっていた。
「こんにちは、千速さん。こうしてちゃんとお話をするのは、初めてですわよね?」
「そうだね……でも、まさか皐月さんが私のことを好きだったなんて……」
「違います。自惚れないでください」
「あ、はい」
あれ、思ってた展開と違う。
ポカンとしていた時、皐月さんは辺りを見渡してから、ゆっくりと口を開いた。
「千速さんは、今年の春にご両親を亡くした、と聞きました」
その言葉に、私はムッとする。
確かに、私に両親はいない。事故で他界し、今は祖母の家で暮らしている。
私の表情を見た皐月さんは「あぁ、いえ。それを馬鹿にするわけではなく」と言った。
それに、私はなんとか冷静を取り戻し、次の言葉を待つ。
「……そのご両親の顔と名前、憶えていますか?」
「……はぁ?」
突然の言葉に、私は聞き返す。
私の聞き返し方が悪かったのか、皐月さんはムスッとした表情で私を見た。
「だから、貴方の両親の顔と名前です」
「そんなの覚えているに決まっているじゃない。私の両親は……」
そこまで言って、私は言葉を詰まらせる。
……言えない……?
それに、顔も出てこない。
口を開いた状態で固まった私を見て、皐月さんは静かに首を横に振った。
「やっぱり……」
「えっと、皐月さん……?」
「……私には、そもそも家族の記憶がありません。十歳から、この学校に通うようになるまでの記憶もです」
確か、皐月さんは一学期の終わりごろに転校してきたハズ……。
そう思っていた時、突然顔を覗き込まれた。
「わッ!?」
「貴方は覚えていますか? この学校に来るまでの記憶を」
「え……?」
突然の言葉に、私はしばらく固まる。
言われてみたら……覚えていない……。
それどころか、なぜ陸上部に入ったのか、とか、今までの日常の記憶もかなり曖昧だ。
私の様子に、皐月さんは「やっぱり……」と漏らした。
「やっぱり、って……」
「千速さん」
私の言葉を遮るように、皐月さんは口を開く。
そして、私から距離を取るように歩きながら、「例えばの話ですが……」と言う。
しばらく歩いた後で立ち止まり、ゆっくりとこちらに振り返りながら、声を発した。
「もし、私達の記憶が何者かにより弄られているとしたら……どうしますか?」
「どうする、って……どうしようも無いよ。だって、私達は、ただの中学生だよ? 大体、記憶を弄るって、そんなことできるわけないじゃない。漫画の読みすぎだよ」
「私はホラー系しか読みません。それに、私だって勘違いだと思いましたよ? でも、千速さんまで、両親の名前すら出てこないなんて、おかしいですよね?」
その言葉に、私は口を噤む。
すると、フッと彼女は微笑み、私の前に立つ。
「あくまで、これは私達の中でも仮説でしかありません。偶然と偶然の重なりがこのような状況になってしまっただけかもしれませんし。でも、もしかしたら、この世界が何者かによって作られた偽りの世界という可能性が……」
「あのぉ……」
突然聴こえた声に、私は扉の方に視線を向けた。
そこでは、オドオドと扉を開けながら入って来る、蜜柑さんの姿があった。
「蜜柑さん?」
「ぁぅ、えっと、もう屋上の鍵を閉める時間なので、あの……」
その言葉に、私と皐月さんは顔を見合わせた。
「……このことは、私達の秘密にしましょう。続きは、また明日」
「う、うん……」
私の返答を聞いた皐月さんは、僅かに顔を綻ばせてから、扉の方に向かって歩いて行く。
それについて行こうと思ったが、屋上に他に生徒がいないか一生懸命探している蜜柑さんを一人にするのはなんだか申し訳なく、私は壁に凭れて、彼女の作業が終わるのを待っていた。
「ふぅ……って、風間さん!?」
「終わった? それじゃあ、一緒に下いこっか」
私が言うと、蜜柑さんは目を見開いて、黒目の部分がせわしなく右往左往する。
その様子を見てるとなんだか可笑しくて、私は「あははッ」と笑ってしまった。
「ぅえ……?」
「あははッ! 遠山さんって面白い! 成績優秀だし、割となんでもできると思ってたんだけどなぁ?」
「そんなッ……私なんか、何も……」
彼女の反応に、私は「そんなことないでしょう」と言いながら、二人並んで廊下を歩く。
そこで、皐月さんに秘密だと言われた話のことを思い出す。
もしかしたら聞かれていたかもしれないし、一応確認してみようかな。
「ねぇ、蜜柑さんは、さっき私が皐月さんと話してたこと、聞いてた?」
「えぇ!? そんな、お二人の会話を盗み聞きするなんて恐れ多いこと……」
お二人に、恐れ多い……?
明らかに同級生相手に使う言葉じゃないよね。
私はそれに呆れてしまい、息をついた。
「ホント、蜜柑さんってすごい自己評価低いんだね……よく生徒会副会長になろうって思ったね。あ、良い意味で」
私がそう言った時、蜜柑さんは足を止める。
予想外の出来事に私も足を止め、振り向いて彼女を見る。
「蜜柑さん?」
「私……なんで、生徒会副会長になったんだっけ……?」
その言葉に、私は、気付いたら彼女の手を引いて、走り出していた。
- Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.240 )
- 日時: 2017/07/16 23:22
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第36話「消された記憶?消滅した友情!」4
<皐月視点>
児童玄関を出た時、ちょうどスポーツドリンクが入った水筒を運ぶ朱莉さんに出会った。
彼女が両手で運ぶカゴの中では、青い水筒がガラガラと音を立てている。
「あれ、神林さん! 今から帰り? 遅くない?」
「朱莉さん……いえ、少し友人と世間話を。朱莉さんは?」
「私は、今日は女子サッカー部の助っ人! ついでに、色々飲み物をね」
そう言って、爽やかな笑みを浮かべる。
一つにまとめた赤くて綺麗な髪が風に揺れ、まるで、軽やかに草原を走る馬の尻尾に見えなくもない。
「そうですか。大変ですね」
「いやぁ、好きでしていることだし。大変とかは、無いかな」
「そうですか」
私の言葉に、朱莉さんは白い歯を見せて笑った。
彼女はとても友好的な性格で、友達も多く、いつも様々な人と話している。
いや、友達が多いどころか、逆に彼女と友好関係じゃない人間の方が少ないくらいだ。
そこで、先ほど屋上にやってきた蜜柑さんを思い出す。
あくまで噂の範疇だが、彼女と朱莉さんは小学校も一緒だと聞く。
朱莉さんの性格だし、やはり、蜜柑さんとも友人なのだろうか。
「そういえば、さっき蜜柑さんにも出会いましたよ?」
「へぇ〜、遠山さんと?」
しかし、彼女の反応は予想とは違った。
私は、つい首を傾げてしまった。
「えっと、朱莉さんと蜜柑さんは友達ではないのですか?」
「え、なんで?」
「いえ、二人は小学校の頃からのご友人だと聞いていますし、友達なのかと」
「あぁ、そういえば……」
そこまで言うと、朱莉さんは不思議そうに斜め上の方を見つめる。
やがて彼女の眉間に皺がよっていき、首を傾げ始めた。
「私……なんで、遠山さんと友達じゃないんだろ?」
「えっ……?」
「皐月さぁん!」
その時、背後から名前を呼ばれ、私は振り返った。
すると、そこには蜜柑さんの手を引いて走って来る千速さんの姿があった。
「ちょ、風間さん足速すぎ……って、火場さんに、神林さん!?」
「皐月さん、さっき話してたの、蜜柑さんもらしくて……!」
「あ、私も先ほど、朱莉さんが……」
そう言いながら四人で近づいた瞬間、ドクンッと鼓動の音が脳内に響いた。
どうやら三人も同じだったらしく、胸を押さえて、皆、不思議そうな顔をしている。
「えっと……」
「……少し、落ち着いて話したいことがあるので、皆さん、お時間よろしいですか?」
「あっ……じゃあ、私屋上の鍵返してくるねっ」
「私は陸上部に休むことを伝えないと……」
「私も水筒持って行かないと」
そんなこんなで一度解散し各々の用事を済ませた後で、私達は、ひとまず千速さんの家の近くの公園でベンチに座って話した。
「それで……何の話を……」
終始、恐怖かと言わんばかりのレベルで怯えている蜜柑さんは、鞄で自分の身を守るようにしながらそう言った。
なぜそんなに怖がるのか、と思いつつ、私は先ほど千速さんにした説明を二人にも行う。
全てを聞き終わった後で、朱莉さんは腕を組み、首を傾げた。
「それで……なんで私が招集されたの?」
その言葉に、私達は全員ずっこける。
「はは……つまり、過去の記憶の中に、曖昧っていうか、忘れるハズのない部分を忘れていたりする人たちを集めたってことだよね?」
「はい。特に、朱莉さんの性格ならば、お二人が友人関係にある方が自然ですから。朱莉さんが蜜柑さんを嫌っていた、とかならまだしも」
「そんなことないよ! むしろ、友達になりたいってずっと思ってて!」
「いや、火場さんと私なんかが友達なんて……!」
「あの、話を戻しても……?」
私が口を挟むと、二人は慌てて姿勢を正す。
その様子に私は苦笑しつつ、続ける。
「それで、私達四人が揃って記憶に曖昧な部分があるのは、おかしいのではないか、と」
「おかしいと言ってもさぁ、記憶が無くても今まで生活できてたんだから、気にしなくても良くない?」
「私達は貴方みたいに単純思考じゃないの。自分と一緒にしないで」
「うッ……そんなハッキリ言わなくても良いじゃん」
ムスッと子供のような表情をしながら言う朱莉さんに、私達はため息をつく。
その時、ハッとした表情になった朱莉さんは、突然スクッと立ち上がった。
「そうだ! だったらさ、私達友達になれば良いじゃん!」
「はぁ!?」
突拍子の無い言葉に、千速さんが驚いた声をあげる。
彼女の反応に、朱莉さんはニシシッと笑った。
「だって、遠山さんと私が仲良くしてないのが変なんでしょ? だったら仲良くしちゃえば良いんだよ! そしたら何も変なことなんて無いじゃん!」
そう言って蜜柑さんの手を握る。すると、ほとんど同時に、どこかにヒビが入るような音がした。
蜜柑さんはそれに目を見開き、朱莉さんの顔を見た。
「ホラ、これで友達! そうだ。ついでに神林さんと風間さんも友達になろーよ! あんましまともに話したことないよね?」
「いや、今はそういう話してるんじゃなくて……!」
千速さんがそう言った時、朱莉さんは問答無用で彼女の手を握る。
ピシシッ……!
先ほどよりも、少し大きい音。
「ホラ、神林さんも!」
朱莉さんの言葉に、私は少し戸惑う。
しかし、それもありか、と開き直り、千速さんと蜜柑さんの手を握った。
ビシィィィィッ!
巨大な音がして、私はつい顔を上げた。
そして、息を呑んだ。
「何ですか!? これは!」
私の言葉に、三人も顔を上げる。
見ると、空に赤黒いヒビが入っており、そのヒビの奥には暗闇が見えた。
よく見ると、そのヒビは私達を囲うように、空間全て、四方八方に張り巡らされており、かなり不気味だ。
「何これ……気持ち悪ぅ……」
「ねぇ、これ、逃げた方が……」
蜜柑さんがそう言ったのとほとんど同時に、全ての空間がはじけ飛ぶ。
すると、一気に暗闇が押し寄せてきて、私達の体を呑み込もうとする。
その時、私達の服の一部が光り、やがて、ピンク色の筒状の物体が出てきた。
「何ですか、これは……!」
そう言いつつ、私は右手を離し、筒に触れてみる。
すると、それは強い光を放ち、私達を包み込み、一時的に闇から隔離する。
直後、頭に言葉が浮かぶ。
「もぉ〜わけわかんない! とにかく、やってみる!?」
朱莉さんの言葉に、私達は頷き、筒状の物体を構え、同時に叫んだ。
「「「「プリキュア! フォースオーラチェンジ!」」」」
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