二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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【完結】風林火山プリキュア!
日時: 2017/08/01 13:12
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539

初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!

追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。

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Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.221 )
日時: 2017/07/06 23:22
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第33話「お父さんがやってくる!?朱莉の憧れの秘密」5

 放課後。いつも通り四人で帰ることになり、私達は生徒玄関から外に出た。
 その時、校門の前に人だかりができているのが見えた。
 しばらく目を凝らして見て、その人だかりの中心人物を見た瞬間、私は嫌な汗がドバッと出てくるのが分かった。

「お……お父さん!?」
「おー朱莉。待ってたぞ」

 明るい笑みを浮かべながら言うお父さんは、自分を囲むファンをなんとか押しのけながら、私の方に近づいてくる。
 私は、それに寒気がするのを感じた。

「ちょっ……お父さんは有名人なんだから、こんな目立つこと……!」
「一応車に乗って来たし、顔だって隠しているんだがなぁ……なぜ分かったのか」

 そう言いながら頭をボリボリと掻くお父さん。
 まず私に遺伝したその目立つ赤髪を隠してから言え!
 マスクとサングラスだけでファンの目を誤魔化せるか!

「もぉ〜……それで、なんでここに?」
「うん? あぁ、折角の帰省だし、娘にもっと家族サービスをしてやろうと思ってな。紅助もと思ったが、アイツは部活があるからなぁ……」
「私だって部活の助っ人する時あります〜! 年がら年中暇人じゃないです〜!」
「まぁ良いから。……とりあえず、人が集まって来たから、一度車に乗ろうか」
「えっ」

 辺りを見渡すと、確かに私達を囲うように人だかりができ始めている。
 でも、蜜柑達が……。
 そう思っていると、蜜柑に背中を押された。

「ちょっ……」
「朱莉ちゃんのお父さんが帰ってくることなんて、そう中々無いよ? 楽しんできなよ!」
「なっ……」

 反論しようとした時、「蜜柑ちゃんもああいっていることだし」と言ってお父さんは私の腕を引き、車に連れ込む。
 それからなんとか車を発進させて、強引に突き進む。
 なんとかお父さんのファンの人たちも振り切り、道路を普通に走り始める。
 強引な手段に、私はドッと疲労が来るのを感じた。

「お父さんってば……ホント、こんな強引に……」
「悪い悪い。ひとまず、色々周ってみようか。俺もこの街は久しぶりだからなぁ」
「正月に帰って来てるくせに……」
「そう言うなって。ちなみに、夕食は紅助と母さんも連れて外食にしようかと思っているんだが」
「本当!?」

 私が身を乗り出して聞くと、お父さんは大きく頷いた。
 外食! それだけで、私は今までの全ての所業を許す気になれた。
 鼻歌すら歌うくらい上機嫌になった私を見て、お父さんは嬉しそうに笑う。
 しかし、突如血相を変えて、ブレーキを強く踏んだ。

「わ、何!?」

 顔を上げると、道路の真ん中で、ちょうどぶつかる寸前の距離に、見慣れた男が立っているのを見た。
 その瞬間、私は頭に血が上った。

「オグル……!」
「キュアフレイム……家族と楽しくドライブとは、暢気なものだな」
「きゅあふれいむ……? 朱莉、知り合いか何かか?」

 間抜けな声で聞いてくるお父さんに、私は口ごもる。
 その時、オグルがオンネーンの黒い影を、車体に当てているのを見た。

「クッ……お父さん、とりあえず車出て!」

 私はお父さんの腕を引いて車から飛び出した。
 走っていた場所がちょうど歩道に面していたため、なんとか車に轢かれずに出ることができる。
 その時、車が膨張して、巨大なオンネーンになる。

「こんな時に……!」

 私はすぐにアウラシュリフトロレを取り出し変身しようとする。
 しかし、そこですぐ近くにいるお父さんに気付き、体が強張る。
 ダメ……これじゃあ変身できない……!

「朱莉、逃げるぞ!」

 私の事情を知らないお父さんは、そう言って私の手を引いて走りだす。
 アウラシュリフトロレを狙っているオンネーンは、当然追いかけてくる。

「お父さん、走って逃げるなんてできないよ!」
「諦めるな! とにかく、どこかに逃げ込むことができれば……」

 そんなことを話しながら走っている間にも、オンネーンは追いかけてくる。
 段々と距離が縮まり、腕を伸ばせば届く距離。
 その時、腕を強く引っ張られる感覚があった。

「なっ……」
「朱莉! 絶対に逃げ切れよ!」

 そう言って、お父さんは私の体を強く突き飛ばした。
 私はそれによろめき、尻餅をついた。
 顔をあげると、オンネーンがお父さんの体を掴み、持ち上げているのが分かった。

「お父さんッ!」
「朱莉……! 早く、逃げろ……!」

 苦しそうに言うお父さん。
 私はそれにアウラシュリフトロレを握り締め、真っ直ぐ掲げた。

「これがアンタ達の目的なんでしょう!? だったら、関係のない人を巻き込むのはやめて!」
「関係あるさ。コイツは貴様の父親なんだろう? 使えるものは使うまでだ。さぁ、父親を返して欲しければ、アウラシュリフトロレを渡せ」

 オグルの言葉に、私はアウラシュリフトロレを構える。

「おい、朱莉、何をする気で……」
「お父さん……ごめん。私、お父さんに隠していたことがあるの」
「何を……」

 お父さんの言葉を待たずに、私は声を張り上げた。

「プリキュアッ! フォースオーラチェンジッ!」

 隠していてごめんなさい、お父さん。
 私は今、スーパーヒーローをしています。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.222 )
日時: 2017/07/07 18:07
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第33話「お父さんがやってくる!?朱莉の憧れの秘密」6

「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」

 名乗り、掛け声を言う。
 やってしまった、というのが、一番の感情だった。
 私は一度深呼吸をして、顔を上げ、お父さんを見つめた。

「キュア……フレイム……?」
「お父さん……」

 言葉に出来ない感情が、胸中を渦巻く。
 私は一度深呼吸をしてそれを落ち着かせると、真っ直ぐ、オンネーンを睨んだ。

「オンネーン……大切なお父さんを傷つけた貴方を……私は許さないッ!」

 叫び、地面を蹴る。
 オンネーンはそれに、攻撃を仕掛けてくる。
 私はそれを紙一重で躱し、少しずつ距離を詰めていく。

「動くこと、雷霆の如し! サンダーブレス! フレイム!」

 叫ぶのと同時に、腕に雷が纏い、腕輪と化す。
 私は拳を握り締め、それを大きく振りかぶり、そして……オンネーンを殴りつけた。

「ガァッ……!?」

 うめき声をあげながら、オンネーンの体は揺らぐ。
 今はオンネーンを倒すことは重要じゃない。
 奴の手の力が緩んだ隙をついて、私はお父さんを救出し、すぐに距離を取る。

「朱莉……お前……」
「ごめん。説明は後。今は……アイツを倒さなくちゃ」

 私はお父さんを守るように間に立ち、拳を構える。
 その時、腕を掴まれた。

「な……!?」
「やめろ! お前を危ない目に遭わせるわけには……!」

 必死な表情で言うお父さん。
 私はそれに胸が苦しくなるのを感じながら、その手を振りほどき、ゆっくりと距離を取る。

「お父さん……大丈夫。私、強いから」

 それだけ言って、私はオンネーンの方に顔を向け、一気に駆けだす。
 視界が一気に後ろに流れ、オンネーンとの距離は、ほぼゼロになる。

「侵掠の火よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! フレイムバーンッ!」

 叫び、私は拳を突き出した。
 炎がオンネーンにぶつかるが、それがかき消される。
 舌打ちをした時、オンネーンが滅茶苦茶な方向にタイヤのようなものを飛ばした。

「はッ……そこには誰も……」

 そう言いつつ視線を後ろに向けた時、私は血の気が引くのを感じた。
 タイヤが向かう方向には……お父さんが……。

「お父さぁぁぁぁぁぁんッ!」

 私は咆哮し、お父さんと向き直る形でタイヤとの間に立った。
 その瞬間、背中に衝撃を感じ、私はお父さんの横を通り過ぎる形で吹き飛ぶ。

「ガハッ……!」

 口から吐息が漏れる。
 何度も地面を跳ね、アスファルトに体を打ち付ける。
 体をぶつける度に、私の中で、とある光景が蘇っていくのが分かった。

 迫る、巨大な鉄の塊。
 血相を変え、私を庇うお父さん。
 響き渡るブレーキ音。
 そして……———

「ぁ……思い……出した……」

 ようやく体が完全に停止した時、私はそう呟いた。
 やっと思い出したよ……お父さん……。
 私は一度……お父さんに命を救われていたんだ……。


 昔、父はご当地ヒーローのようなものをしていた。
 私達の町……忍ヶ丘には、忍が付くということで、忍者をモチーフにしたヒーローがいた。
 ローカル放送でこの街限定で特撮番組もしていて、お父さんは、そのヒーロー役だった。
 よくお母さんは、私や紅助を連れて、撮影を見に来ていた。
 まだ幼かった私は、ヒーロースーツを着て戦う父が、ただカッコよくて、憧れで、誇りだった。
 将来は、お父さんのようなカッコいい忍者ヒーローなることが夢で、よく蜜柑にもその夢を話していた。

 しかし……ある日の撮影中に、事故があった。
 その日、撮影の中でカーレースのシーンがあった。
 その際使っていた車の一台のブレーキが撮影中に事故で破損し、車は暴走。
 暴走した車は、運悪く私の方向に突っ込んで来た。
 まだ幼かった私は逃げきれず、これまた運が悪いことに母もその時私から離れていたため、守れない。

 その時に私を守ってくれたのが……お父さんだったんだ。

 結果として、お父さんは重症を負ったが、後遺症なども特に無く、無事に俳優を続けることができた。
 しかし、自分の撮影で私を傷つけそうになった罪悪感から、お父さんはローカルヒーローをやめ、都会に出て、ちゃんとした特撮ヒーローとしての活動を始めた。
 元々、お父さんは演技力もあるし、顔も良くてアクションもできて、都会のテレビ局から声がかかっていたらしい。
 私が気軽に見に行けない都会に行くことで、二度と家族を危険な目に遭わせないように。


 ———……私は……。
 私はただ……お父さんと一緒にいたかっただけだ。
 でも、自分のせいでお父さんが家にいなくなって……それから、私は自分がお父さんといたらダメなんだって、思った。
 だから、お父さんと一緒に戦うなんて無理だって。
 でも、やっぱり夢は諦めきれなくて……ヒーローになりたい。忍者になりたい。
 そんな、漠然とした気持ちだけが、残ったんだ……。

「朱莉!」

 心配して駆け寄ってくるお父さん。
 私は、それに、目の奥が熱くなるような感触を覚えた。

「お父さん……ホント、こんな、人騒がせな娘で……ごめんね……」
「朱莉、何を……」
「でも私は、それでも、お父さんの為に戦いたいからッ!」

 私は父とオンネーンの間に立ち、サンダーブレスを構えた。

「レジェンドクロックッ!」

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.223 )
日時: 2017/07/07 20:33
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第33話「お父さんがやってくる!?朱莉の憧れの秘密」7

「レジェンドクロックッ!」

 叫んだ瞬間、目の前で光が弾けた。
 バチィッ! という落雷音と共に目の前が光り、やがて、レジェンドクロックが浮遊する。

「時計が……?」

 お父さんの呆けるような声がする。
 確かに、何が起こっているのかイマイチ分からないだろう。
 しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。
 私はすぐにレジェンドクロックを受け止め、サンダーブレスを装着した腕をかざす。

「侵掠の業火よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! フレイムバーニング!」

 そう叫ぶと、時計から巨大な火の球が現れ、オンネーンに飛んでいく。
 それに一息ついた時、遠くからこちらに駆け寄ってくる人影が見えた。

「あk……フレイム!」
「モンテ、皆!」

 駆けつけてきたモンテ、ウィング、フォレストに、私は体から力が抜けるような感覚を覚えた。
 しかし、すぐに立ち直り、四人並んだ状態でオンネーンに視線を向ける。

「一気に行くよ……皆!」
「「「「今、大いなる伝説よ! 我等に力を貸し給え! レジェンドクロック!」」」」

 そう叫んだ瞬間、レジェンドクロックから光が飛んできて、三人の手首と私のサンダーブレスに絡まる。
 やがて、それより派手な腕輪に変わるのを見ながら、私たちは次の言葉を叫んでいく。

「侵掠の業火よ!」
「疾き烈風よ!」
「不動の豪山よ!」
「徐かなる森林よ!」
「「「「今、四つの力よ! 我等に集い、力と成れ!」」」」

 すると、巨大な手裏剣が出てきて、私達はそれに乗って飛んでいく。
 やがて、オンネーンの頭上に行くと、私達は叫んだ。

「「「「プリキュア! オールターンオフイリュージョン!」」」」

 そう叫んでから手裏剣から離れると、それはゆっくりと落下していく。
 私達はそれに背を向けて着地し、胸の前で指を組む。

「「「「忍ッ!」」」」

 背後からの爆発音を聞きながら、私は変身を解き、お父さんの方に駆けだした。
 お父さんは、驚いたように口を開いて、私を見ていた。

「朱莉……」
「お父さん!」

 駆け寄った瞬間、腕を引かれ、肩を掴まれる。
 驚いていると、お父さんは顔を寄せてきた。

「大丈夫か!? 怪我とか……」
「だ、大丈夫だと……お父さんの方こそ怪我は……」

 そこまで言った時、私はお父さんに抱きしめられていた。
 体が強く締め付けられ、息が少し苦しくなる。

「良かった……お前が無事で……」
「お父さん……うッ……」

 お父さんの優しさに、気付いたら、私の涙腺が刺激されて、涙が零れる。
 私もお父さんを抱きしめ返し、腕の中で、私は泣いた。


 あれから、蜜柑達のことを説明したり、プリキュアについて説明していたりしたら、気付いたら、空は茜色に染まっていた。
 すぐに紅助とかを迎えに行こうかとお父さんが言ったが、それより、私は先に行きたい場所があったので、そちらを優先させてもらった。
 それから車を走らせて着いたのは……夕焼けに染まる河川敷の広場のような場所だった。

「ここは……」
「ここで……事故があったんだよね?」

 私の言葉に、お父さんは目を見開いた。
 それに、私は微笑んで見せてから、少しお父さんから距離を取って、ポーズを決める。

「変身! 忍ヶ丘を守る正義の味方! ニンジャ仮面!」
「朱莉、お前……」
「……思い出したんだ。小さい頃のこと。……私のために、この街のヒーローから、全国のヒーローになったんだって」

 そう言って見せると、お父さんは狼狽した表情で視線を逸らす。
 私はそれに微笑み、忘れ物であろうサッカーボールを拾って、軽くリフティングをして見せる。

「……?」
「ヒーローに憧れてから、毎日運動しまくってたら……その辺の男子よりも、運動はできるようになってた」

 そう言いつつ、私は軽くボールを蹴ってお父さんにパスする。
 慌てて足で受け止めたお父さんは、私の顔を見た。
 私はそれに歯を見せて笑って見せる。

「私、お父さんみたいなカッコいいヒーローになりたい! 悪い奴を倒して、皆を守るヒーローに!」
「……そんな職業、無いだろう?」
「あるよ。アクション俳優」

 私の言葉に、お父さんは目を見開いた。
 私は続ける。

「ずっと忘れてた将来の夢。……私、お父さんみたいに、皆を笑顔にするヒーローになりたい。だから、アクション俳優になりたいな」
「……俳優っていうのは、甘くないんだぞ? アクション俳優になろうと思ったら、演技力だって必要だし、勉強だってできないと。仮になれても、競争率が高いから人気になれるとは限らないし、それに……」
「なるって決めたんだから、なるもん!」

 お父さんの言葉を遮るように言って見せる。
 すると、彼はしばらく呆けた後で微笑み、私の頭を優しく撫でた。

「そうか……それじゃあ、今日の夕食の時に、お母さんにも話してみような」
「……! うん! ……あ、そうだ!」

 私が手を打ちながら言うと、お父さんは首を傾げる。
 その表情に、私はクスクスと笑いつつ、お父さんの服の裾を掴み言葉を続ける。

「さっきやったニンジャ仮面の名乗り! 本家見せてよ!」
「本家って……久しぶりだからなぁ。できるかな」
「できるって〜。ホラ、早く早く!」

 私が急かすとお父さんは困ったように笑い、私から離れる。
 そして、ポーズを決める。

「変身! 忍ヶ丘を守る正義の味方! ニンジャ仮面!」

 その姿は、幼い頃に見た私のヒーローそのものだった。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.224 )
日時: 2017/07/09 11:35
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第34話「目指せ不動の生徒会長!蜜柑に清き一票を!」1

「なんで朝から数学の小テストなんて返すかなぁ……」

 相変わらず悪い点数のテストを眺めながら、私はぼやいた。
 それに、蜜柑が苦笑した。

「朱莉ちゃん数学相変わらず苦手なんだね……千速ちゃんと皐月ちゃんはどうだったの?」

 私から話題を逸らすように、そう言って千速達に視線を向ける。
 それに、千速は落ち込んだような笑みを浮かべた。

「私は89点……もう少しで90点いけたのに」
「ケアミスが多かったですからね、千速は。私は95点です。最後の問題が分からなくて……」

 二人とも、そんな高得点でよく落ち込めるなぁ。
 私なんてギリギリ50点越えたようなものなのに。
 そう思いつつ、私は蜜柑の問題用紙を取る。

「それで、蜜柑は何点なのかなぁ?」
「ちょ、朱莉ちゃん返して!」

 恥ずかしそうに言いながら腕を伸ばす蜜柑を無視しつつ、私はテストの点数を見る。
 しかし、すぐに愕然とした。

「嘘……100点……」
「……流石蜜柑。揺るがないわね」
「そういうの良いから〜返して〜!」

 泣きそうな顔で言う蜜柑に、私は渋々テスト用紙を返した。
 蜜柑はそれを受け取り、目を伏せる。
 100点って自慢したい点数なハズなんだけどなぁ……よく分からない。
 そう思っていた時、江沢先生が「それじゃあ席つけ〜」と言うので、私達は慌てて着席した。

「それじゃあ、テストも返却したし、あとは……あぁ、そうそう。そろそろ生徒会長選挙があるから、立候補したい生徒がいたら、朝のHRが終わったら職員室に来るように」

 生徒会長選挙、かぁ……もうそんな時期なんだ……。
 そうぼんやりと考えつつ、私はなんとなく蜜柑に視線を向けた。
 そこで、とあることに思いつき、私はポンッと手を打った。


<蜜柑視点>

「私を……生徒会長に!?」

 私が驚いてそう返すと、朱莉ちゃんは大きく頷いた。

「うんっ。蜜柑って成績も良いし、優しいし、生徒会長に向いてると思うの!」
「いやいや……私にそんな大役無理だって……」

 そう断っていた時、千速ちゃんと皐月ちゃんがこちらに歩いてくるのが見えた。
 ちょうどよかった! きっとあの二人もこれを聞いたら反対してくれる!

「朱莉、蜜柑。何を話しているんですの?」
「おっ! 皐月に千速! ホラ、今朝生徒会長選挙の話があったじゃない? それで、蜜柑が立候補するのが向いてると思うんだけど」

 朱莉ちゃんの言葉に、私は二人に期待の眼差しを送る。
 お願い、反対して!

「あぁ……確かに。蜜柑成績優秀だし、素行も良いし……充分生徒会長に向いていると思う」
「蜜柑は優しいですし、全校生徒のことを考えられる良い生徒会長になれそうですね」

 しかし、期待していた願いとは裏腹に、二人の返答はまさかの肯定派だった。
 彼女等の言葉に、私はただ愕然とした。

「じゃあ、そういうことだから! 早速先生の所に行こう!」

 そう言って私の腕を引く朱莉ちゃん。
 ……胃が痛い……。

Re: 【感謝】風林火山プリキュア!【参照2000越え】 ( No.225 )
日時: 2017/07/09 15:43
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第34話「目指せ不動の生徒会長!蜜柑に清き一票を!」

 よりによって先生までもが肯定派だったなんて……。
 机に突っ伏して、私は深いため息をついた。

『へぇ、遠山が生徒会長に……うん。良いと思うぞ』

 何が良いと思う、だ……。
 私は頭を抱え、額を机に当てる。

「それじゃあまずポスター作りだよね。蜜柑の大きな写真を貼って〜」
「そ、そんなの恥ずかしいから……」
「あー。あとタスキも作らないとね! くぅ〜腕が鳴る!」

 一人で暴走する朱莉ちゃんに、私は苦笑することしかできない。
 その時、誰かが私の席の前に立った。

「遠山さん、生徒会長に立候補したんだって?」
「ふぇ……?」

 顔を上げると、そこには、黒髪の男の子が立っていた。
 えっと確か……隣のクラスの……———

「———……岩室 秀樹君、だっけ……?
「ん? あぁ、嬉しいなぁ。僕の名前覚えててくれたんだ?」

 そう言って、岩室君はニコッと微笑む。
 私達の会話に、朱莉ちゃんが「なになに〜?」と言って身を乗り出してくる。

「何の話?」
「いや……遠山さんが生徒会長選挙に立候補したって聞いたから、挨拶に」
「あ、もしかして……」

 朱莉ちゃんの言葉に、岩室君は大きく頷く。

「あぁ。僕も立候補したんだ。遠山さんとは、ライバル同士、になるのかな?」
「そ、そうだね……えっと……」

 私がオロオロしていると、岩室君は「そんなに挙動不審にならなくても」と言って爽やかな笑みを浮かべた。

「正々堂々。お互い、頑張ろうか」
「う、うん……」

 私の返答に、岩室君は爽やかに微笑んで、軽く手を振って教室を出て行く。
 何人かの女子はその様子を頬を赤らめてみている。

「……彼は?」

 その時、千速ちゃんがそう聞いてきた。
 あぁ、そっか。千速ちゃん達は知らないんだ。

「彼は岩室秀樹君。成績優秀で運動神経抜群。正義感が強くて優しくて、二年生の中でもリーダー的存在、っていうか……」
「生徒会員だし、生徒会長に立候補してくるのも想像してはいたけれど……くぅ〜! これは強敵だぁ!」

 朱莉ちゃんの言葉に私は苦笑しつつ、俯いた。
 やっぱり、私が生徒会長になんて、なれるわけがないんだよ……。
今更断れないし、とりあえず、無難に選挙さえ終われば、それで……。

「あの、蜜柑……」

 その時、不安そうな表情で皐月ちゃんが聞いてくる。
 私はそれに首を傾げ、「なぁに?」と聞き返す。
 すると、皐月ちゃんは少し迷うように唇を動かし、やがて、ゆっくりと口を開いた。

「蜜柑は一体……何がしたいんですか?」


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