二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク
日時: 2014/02/09 17:45
名前: 小雨 (ID: FvJ38Rf9)

はじめまして。
だいぶ遅ればせながらbw発売記念と言う事で、お目汚しさせていただきます。


***注意事項***

*ポケットモンスターの二次創作小説です。

*基本一人称視点で進行。

*bw記念といいつつ、舞台はホウエン地方です。

*登場ポケモンは第五世代までの範囲で登場します。原作のキャラ達も何人か登場しますが、作者はアニメ版をあまり見ていないので、アニメ版には準拠しておりません。ので、アニメを見ている方は違和感を感じることがあるかと思います(すいません)。

*い ち お う ルネシティに住む少年のスピンオフ的作品です。てことで、始まりはルネシティ。なんでそんなモブキャラを選んだのかというと、レジ系ゲットしたくて久々に起動した第三世代ROMのルネシティの雰囲気に魅了されてしまったためです。

*作者の都合のいい解釈、展開、本編との矛盾などが多数出てくるかと思いますが生ぬるい目で見ていただけると嬉しいです。全ては作者の力不足に依るものです。尚、このホウエン地方は皆様の冒険したホウエンではなく、パラレルワールド的なものです。

*作者のランダムマッチにおける勝率は二回に一回程度のレベルです。ネット対戦勝てない人挙手。

*感想等お気軽に頂けると小雨は喜びます。大変申し訳ありませんが、本作品やポケモン等に全く関係の無い話題や雑談等の書き込みはご遠慮くださいますようよろしくおねがいします。


大体ここら辺が許せる方、よろしくお願いいたしますー。

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Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.522 )
日時: 2012/08/19 22:33
名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)

- On the other hand 13 -

灰色達の幹部
蛇…ほっぺに蛇の刺青
焔…赤い口ひげ
鳶…肩に翼の刺青

---このように、今まで困難とされていた技マシンの再利用化が実用レベルで動き出しました。未だ謎に包まれていたオーバーテクノロジーの解明に大きな一歩を踏み出したとして…---



自分は天才だ。
自分は特別だ。
自分は世界の主人公だ。
世界は自分を中心として動いている。

これらの考えは、往々にして妄想である。
多くの人は新しいステージに進むに従って、より多くのものを目にする。突き抜けた存在を目にする。
それらを目の当たりにして、自らが凡才であると知る。
所詮自分は自己においての主人公でしかないし、世界は自分がいなくたって動いているのだ。
自らを非凡とする考えは、世界の広さを知らない者の考え。このような思考を抱く者ほど、逆に自らの見識の狭さを戒めるべきだ。

と、蛇は思う。

蛇自身がこのような考えに行き着くにあたっては、随分と時間がかかった。
蛇は、勝ち続けてきたからだ。
新しいステージにおいては、常に人を負かして来た。相手にその凡庸さを悟らせる側の人間だったのだ。
思うように周囲を動かす事ができたし、何をやっても負ける事はなかった。
多くの者が見えていない物事を見通す事ができたし、世界を形作る真理さえも理解する事ができると思っていた。

一人の少年と出会うまでは。



「あ、蛇さん。ごめんね、あの女の子帰しちゃったよ」
ボスの部屋の扉を開けた蛇に、部屋の主はあっけらかんとした口調で話しかけてきた。
「あぁ…それは別に問題ない。それより…」
蛇はこぶし大の石を取り出した。
「ついさっき発掘班から届いた」
少年は無言でそれを受け取る。
「…石………………」
真っ黒い石だった。しかし、その存在感が路傍の石ころではない事をアピールしていた。
その吸い込まれそうな暗黒を凝らして見ると、小さな銀河が中で蠢いているようにも見える。
少年はしばらく無言で受け取った石を見つめていたが、次第になにやらブツブツと呟き始めた。蛇はその様子を見ると、何も言わず部屋を後にした。


少年は、通常持ち得ない頭脳を持っていた。それに比例するかのような知識欲。
と同時に、人として誰しもが持ちえる物が欠落してしまっていた。
それは感情。少年は、ただ知識欲のために動く存在だった。それゆえ人は、少年と話すとどこかちぐはぐな印象を抱く。ちぐはぐな印象は、やがて畏怖へと変わる。
代償としては果たして見合っているのか。等価交換と言えるのかどうかは定かではないが。

この少年なら、いつか世界の全てを解き明かす事ができる。
ならば、その手伝いをするのだ。
この少年を、遠くまで運ぶのだ。どの人間も届かぬ領域へ。
そのためならば、どのような事でもやってみせよう。
一般的に悪と呼ばれている行為も厭わない。善悪の概念や正義など、簡単に遷ろうものだ。

この少年が全ての高みに立ったとき、我々には新しい世界が拓けるのだ。

Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.523 )
日時: 2012/08/20 22:43
名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)

第152話 海底へ


主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)



慣れない布団。
見慣れぬ天井。
そんなものはいつの間にか、あまり気にならなくなっていた。
しかし、今夜ばかりはなかなか寝付く事ができなかった。
僕の胸は複雑な鼓動を刻んでいた。
いよいよ明日、故郷に帰る。竜戦士は死人は出ていないと言っていたが、町がどのようになっているのか想像もつかない。
暗い天井を見ながら寝転がっていると、嫌な妄想ばかりが浮かんできてしまう。
「ルーク、いよいよ明日だよ」
僕は隣で眠っている相棒に声をかけた。
「なんだかルネシティを出たのが随分前の事みたいだ」
"町を出てから色々あったからね"
今までの旅の思い出が真っ暗な空間にともし火のように浮かんできた。
最初の頃は、どうしたらいいのかさっぱりわからなかった。たった一人で何ができるのだと思った。でも今は仲間がいる。心強い味方もついてくれている。
"大丈夫だよスズ。僕達は負けない。またみんなで笑えるようになるよ"
「…ありがとう…もう寝ないとね!明日は絶対に失敗できないんだから」
"うん。僕達の故郷を取り戻すんだよ"
ルークの力強い声が暗闇に響いた気がした。


明けない夜はない。それがどんなに長く感じられたとしても。
翌朝、僕は最後の調整をするべく集合場所へと急いだ。緊張がスパイスとなったのか、今日ばかりは寝坊することなく起床することができた。
「スズくん、最後に突入までの流れを確認しておくよ。まず君が海中からルネシティに潜入。君が送る合図を機に、我々が空から突入する。海底にいる間、我々とは意思の疎通ができないと考えてくれ」
「わかりました。ルネに潜入後は、ギィに空へ向かって水柱を打ち上げてもらって注意を引き付けます。それを合図としてください。それと、思ったんですが…波導による通信はどうなんでしょうか?海底にいる時も連絡が取れたほうが何かと便利な気がするんですが…」
ルーク達と会話をするように遠距離でも連絡を取れるのなら、よりスムーズに潜入工作を行う事ができると思ったのだ。
そんな僕の問いかけに、フウ君とランちゃんが答えた。
「もちろん海底においても、波導を用いた通信を利用して連絡を取ることはできます。その通信内容も盗聴されないように暗号化することも可能です。しかし、"暗号化された通信が存在する"という事自体を隠す事はできないのです。海中にそんなものがあると感知されてしまっては、確実に怪しまれてしまうでしょう」
なるほど…確かに、通常海底にそんなものは存在しないだろう。
「わかりました。…みなさん、こうして力を貸していただいて本当にありがとうございます!」
「お礼は故郷を取り戻せたときに頼むぜ」
トウキさんが拳を突き出しながら笑った。
「スズ…気をつけるんだぞ」
アスナさんが心配そうに僕を見て言った。
「小僧なら大丈夫じゃ!」
「必ずスズさんの力になって見せますわ!」
「スズさん、私も空からの突入を必ず成功させます。ルネシティで合流しましょう!」
…仲間というのは、なんて心強いんだろう。
今の僕の中には、ルネシティを出たときの途方にくれた思いは完全に霧散していた。
この人たちとだったらなんだってできる。力強い気持ちが湧き上がってくるのを感じた。
「じゃあ行こうか…ギィ、頼むよ!」
"あいよ"
勇ましい咆哮と共にモンスターボールの中からギィが飛び出し、その巨体を着水させる。僕はその背にまたがった。
小さな泡が包み込み、僕達は海底へと潜水を開始した。

Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.524 )
日時: 2012/08/22 20:58
名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)

第152話 海の底の攻防


主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)



海の底は静かだった。時折こぽこぽと、独特の音が聞こえた。
ギィが作ってくれたダイビングの泡一枚隔てた向こう側は、地上の生き物が生きていけない世界。僕たち人間の祖先が海から生まれたなんて、ちょっと信じられない。随分大胆に進化したものだなぁと思う。

今、僕達はルネシティへの帰路についている。
久方ぶりの故郷。懐かしい思いもあるが、これから待ち受けているであろう事を想像すると、そんな感傷に浸っているわけにはいかなかった。

「ギィ、調子はどう?」
どのくらい進んだだろうか。ルネシティにはかなり近づいただろう。それはすなわち、灰色達の警戒ラインに接近しているであろう事も示していた。
"やっぱりあんまり慣れないなぁ…この泡維持するのすごく疲れる。スズ、無事に故郷を取り戻したらうまいものいっぱい食べさせてくれよな"
「うん、わかった」
"スズのお母さんの作るごはん、すごくおいしいんだよ"
そう言われても今まで当然のように母さんの料理を食べていたのであまり実感が湧かないが、母さんの料理の味は懐かしかった。
"ああ、父ちゃんもそう言ってたよ"
「え、父ちゃんって…ギィのお父さん?」
まるで僕の母さんを知っているかのようなギィの口ぶりに、僕は思わず問いかけた。
"!……2…3…後ろから何かくる!"
突然、場の空気を引き締めるようなルークの緊迫した声が響いた。
僕はあわてて背後を振り返り、薄暗い海底を凝視した。
何も………いや、何かいる!
目を凝らさないと見えないけれど、こちらに向かってくるポケモンの姿が見える。
クラゲのように透き通っていて、奇妙な動きで確実にこちらに近づいてきていた。
「見つかった!」
"くそっ!"
ギィの速度が上がった。
背後から黒い球体が飛んでくる。右に左にとルークの指示でそれをかわしてはいるが、徐々にギィの息遣いが荒くなってきた。右へ左へと回避する動作は、大きな負担となっているようだった。
「!ギィ、前!」
前に振り向いたとき、突然、目の前に海月のようなポケモンが出現した。
"くっ、こいつ、気配を…!"
"うわぁ!"
あわてて回避しようとするも間に合わない。僕は訪れるであろう衝撃に備えたがしかし、ギィの体は海月を通り抜けた。
と同時に、なんとも嫌な感覚が全身を包んだ。今までに感じた事の無い、形容し難い不快感。自分の中の全てを乱雑に覗き込まれ、その全てを否定されたような、なんとも言えない感覚。
"二人とも、しっかり!"
ルークの声で我に返る。
"あいつらは呪いを振りまいている!前に幻燈鬼にかけられたものとは違うみたいだけど、似た感覚だよ"
"…あいつに…触っちゃだめだ…"
ギィが息も絶え絶えに言う。
"すごく嫌な感じだ。今もルークの声で我に返らなかったら、この泡を張り続けることなんてできなかった!"
海底でのダイビングの強制解除。それはすなわち、海中で呼吸ができない生物の死を意味していた。
「くそっ…ギィ、ルネシティまで全速力!」

Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.525 )
日時: 2012/08/25 01:34
名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)

第153話 迫る魔手

主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)



"右斜め前…今度は後ろから!"
海水を掻き分けるようにして、黒い球体が飛んでくる。ルークの指示通り攻撃をかわすも、その全てを回避する事は難しい。
それ自体の攻撃能力はさほど高くはないようだったが、何発か被弾するうちにじわじわとダメージは蓄積されてしまう。
ダイビングを維持しつつクラゲたちに対応するのは、今のギィには未だ経験不足だった。
「くそ…このままじゃ…」
ギィは荒い息をついていた。
クラゲ達に回り込まれる頻度が増えたように感じる。
いつまでもこいつらと追いかけっこをしているわけにはいかないのだが、追撃を振り切る事ができない。いつの間にか僕達は、袋小路に追い込まれてしまっていた。
このクラゲ達は訓練されている…今更ながら、そんな事に気がついた。
ただ闇雲に僕達を追い回しているわけではなかったのだ。
くそ…こんなところで…もう少しなのに!ルネシティは目の前なのに…!
クラゲが僕達を囲むように包囲し、ゆっくりと距離を縮めてきた。ゆったりとした動きの背には、絶望をまとっているように思えた。
暗い海の底。この中に放り出されたら、ひとたまりも無い。クラゲたちに攻撃を加えられるまでもなく、僕は窒息してしまうだろう。
不思議と僕の中に恐怖はなかった。あるのは、ただ、悔しさ。
たくさんの人に助けてもらってここまで来ることができたのに、故郷を目の前にしてこんな海の底で…っ!
そんな僕の心中などお構いなしに、クラゲはすでに目の前まで迫っていた。
その魔手が僕達を包み込むように広がり、そして…




「あんた、ジムリーダーなんだってな?それも飛行タイプのさ」
スズが海底からの突破を試みているのとほぼ同時刻。ルネシティから離れた上空で、ナギと鳶が向かいあっていた。
鳶は白鳥を思わせる優雅なポケモンに乗っていた。美しい純白の翼を持つポケモン、スワンナである。
対するナギは、トロピウスに乗っている。以前の戦闘で捥がれた翼はすでに再生していた。
「…顔を合わせるのは初めてですね。ヒワマキシティジムリーダー、ナギと申します」
ナギは丁寧に自己紹介をした。
「あぁ、俺は鳶ってんだ。なに、リベンジってわけ?前の時は随分手ごたえ無かったから、物足りなかったぜ。あんたなんかがジムリーダー張れるようじゃ、ホウエンのレベルってすげぇ低いんじゃねぇの?」
くくっ、と鳶は挑発するように言い放つ。
しばしの沈黙の後にナギは言葉を紡いだ。
「…私の実力が至らないのは事実です。あなたに引けをとってしまった事から、それは言い逃れようがないでしょう。ですが」
ナギは鳶を見据えて続ける。
「私のその不甲斐無さのせいで、ホウエンのレベルが低いとまで思われるのは心外です」
ナギは静かに言葉を紡いでいたが、静かな怒りが篭っていた。
「へぇ、おねーさん見た目と違って結構熱いね。いいぜ、じゃあ俺に勝って証明してみせなよ!」

Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.526 )
日時: 2012/09/11 23:30
名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)

第154話 或る空域の戦い

鳶…灰色達の幹部の一人。鳥ポケモン使い。
ナギ…ヒワマキシティジムリーダー。



言うが早いか、鳶のスワンナが冷気を吐き出した。凍てついたエネルギーがトロピウスめがけて迸る。トロピウスは高度を上げる事でそれを回避した。
冷静に見えるナギの心はその実、怒りに燃えていた。その矛先は目の前の相手ではない。自らに向かっていたのだ。


ジムリーダーである自分を頼ってきた少年スズ。
切羽詰った様子の少年の口から語られたことはナギを驚かせた。
ナギはルネシティ開放への協力を約束し、他のジムリーダーへの協力を要請する事を提案したわけだが…その少年を、ナギは裏切ったのだ。
良くも悪くも、人は人と関わる事によって世界に対して影響を及ぼす。歯車のようだと、ナギは思う。
少年の口から語られた事を信じきることができずにミスを犯し。
あげく、空からの襲撃を警戒されるという事態を招いた。
キナギタウンで再開を果たしたとき、ナギは少年に罵倒される覚悟でいた。何をされようとも、全て受け入れる覚悟でいたのだ。

少年は、ナギを許した。いや、そうではない。少年には許す、許さないの選択肢すらなかった。
無事で本当によかったと、今にも泣き出しそうな顔でそう言ってくれたのだ。
少年は、以前会った時と随分印象が変わっていた。幼さが薄れ、逞しさが増したようだった。
頼もしさを感じる反面、自分にはその資格がないと思った。助けを求めてきた少年が過酷な思いをしている間、私はベッドの上で寝ていたのだから。


「バルジーナ、毒まみれにしてやれっ!」
鳶が新たに繰り出したバルジーナによって猛毒が放射された。
「トロピウス、吹き飛ばしてください」
トロピウスがその大きな両翼を羽ばたかせ、散布された毒を押し返す。
毒がナギを取り囲むように広がった。
「これは…毒の結界といったところですか…」
散布された毒煙によって、数十メートル先の景色さえ見えない。ナギの視界は極端に狭くなってしまった。
毒の幕を切り裂くように、次々と冷凍ビームが撃ち込まれる。
ナギは紙一重でそれを回避するが、このままでは追い込まれてしまうのは明らかだった。
いつまでも毒を退け続けられるわけではなし、凍てつく冷気はトロピウスの一番の弱点だった。

「しぶとくかわしてやがるな…この前とは違うってわけか。だが、それかわすので精一杯じゃねぇか?」
鳶が大空に目をやった。はるか上空で鋭い目が光る。
遥か上空で旋回していたウォーグルが、急降下を開始した。逞しい体躯は次第に速度を増し、再びトロピウスの翼をもがんと闘気をまとう。
その降下速度と纏った闘気が、独特の風切り音となって響き渡った。

「!空を切り裂く音…やはりきましたね」
さながら隕石のように力を纏ったウォーグルが毒煙に突っ込み、大空に小さな悲鳴が響き渡った。


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