二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク
日時: 2014/02/09 17:45
名前: 小雨 (ID: FvJ38Rf9)

はじめまして。
だいぶ遅ればせながらbw発売記念と言う事で、お目汚しさせていただきます。


***注意事項***

*ポケットモンスターの二次創作小説です。

*基本一人称視点で進行。

*bw記念といいつつ、舞台はホウエン地方です。

*登場ポケモンは第五世代までの範囲で登場します。原作のキャラ達も何人か登場しますが、作者はアニメ版をあまり見ていないので、アニメ版には準拠しておりません。ので、アニメを見ている方は違和感を感じることがあるかと思います(すいません)。

*い ち お う ルネシティに住む少年のスピンオフ的作品です。てことで、始まりはルネシティ。なんでそんなモブキャラを選んだのかというと、レジ系ゲットしたくて久々に起動した第三世代ROMのルネシティの雰囲気に魅了されてしまったためです。

*作者の都合のいい解釈、展開、本編との矛盾などが多数出てくるかと思いますが生ぬるい目で見ていただけると嬉しいです。全ては作者の力不足に依るものです。尚、このホウエン地方は皆様の冒険したホウエンではなく、パラレルワールド的なものです。

*作者のランダムマッチにおける勝率は二回に一回程度のレベルです。ネット対戦勝てない人挙手。

*感想等お気軽に頂けると小雨は喜びます。大変申し訳ありませんが、本作品やポケモン等に全く関係の無い話題や雑談等の書き込みはご遠慮くださいますようよろしくおねがいします。


大体ここら辺が許せる方、よろしくお願いいたしますー。

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Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.477 )
日時: 2011/12/15 18:24
名前: 小雨 (ID: BKd.hc6i)

第120話
ヒール

主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)



「ノブヒコは俺達が倒した!代わりにそいつと対戦させて欲しい!」
ショウは運営のテントに向かって言い放った。その目は運営に向いていたが、大胆な行為に大それた物言いの割りになんだか焦点が定まっていないように見えるのは気のせいだろうか。
想定外の出来事に運営テントも会場同様しばらくの間ざわついていたようだったが、やがてトウキさんが口を開いた。
「ショウ、お前初っ端から随分とかき回してくれるじゃねぇか。これはルールがある大会だぜ?そんな例外は認められないな」
「そ、そんな…!」
ショウは明らかに動揺して、焦ったように言った。
「…と言いたいところだが、たまにはこんなのもいいんじゃねぇか。ここまでやって、初戦が不戦勝じゃしまらないからな」
「…ありがとうございます!」
トウキさんのゴーサインが出ると、ショウは後ろの二人の下へ走っていった。


「トウキさん、いいんですか?あんな勝手を許してしまって…」
「ん、なんかまずかったか?」
「これは歴史ある大会です!あんな低俗なパフォーマンスを許してしまっては今まで積み重ねた伝統が…」
「悪いな、ちょっと今回は大目に見てくれ」
全く、先代が主催していた頃は…と、くどくどと話を始めた取り巻きだったが、トウキの意識は別に向いていた。
(ショウ…去年も参加していたが、こんな事するような奴だったか?それに後ろの二人、普通じゃねぇな)
お手並み拝見させてもらうぜ、と、トウキは呟いた。


「ショウ…どうしたんだ?何もこんな強引に…」
そんなに僕を叩きのめしたかったのだろうか。
考えていても仕方が無い。僕はモンスターボールを勢いよく放った。
ボールから光が放たれ、リングの上にザックとルークが立つ。会場の歓声が一際大きくなった。
「スズ選手のポケモンはルカリオとザングースだぁ!さぁショウ選手のポケモンは!?」
リングの上の二人が身にまとっていた衣を脱いだ。
「対するショウ選手のポケモンは…ワルビアルとズルズキン!ホウエン地方では珍しいポケモンです!」
目の前に現れたのは、僕が今まで見たことが無いポケモン…といっても、僕は知らないポケモンの方が圧倒的に多いので、もはやこの表現はあまり意味が無いかもしれない。
見るからに屈強そうな体躯で、二足歩行する巨大な鰐のようなポケモン。もう一方は立派な鶏冠を持つドラゴンのようなポケモンだ。
「ショウ選手のポケモンは、イッシュ地方のポケモンです!……事前に選手登録されていたポケモンとは違うようですが、えぇい、この際気にしないことにしましょう!」

イッシュ地方のポケモン?
僕なんとなく嫌な感覚を覚えた。
実況は、事前に選手登録されていたポケモンではないと言っていた。そして断定することはできないが、灰色達もイッシュ地方からやってきている可能性が高い。これは果たして偶然だろうか…?

「さぁ、それでは大変お待たせいたしました!初出場のスズ選手対乱入者のショウ選手!勝つのはどちらだ、試合開始ー!」
試合開始を告げるゴングの音が鳴り響き、試合が始まった。
勝敗のルールは相手をギブアップさせるか気絶させる事。相手を殺してしまったら例え不慮の事故であっても失格となる。
「ルーク、ザック、がんばれ!」
僕は二人に任せてリングを降りた。ルーもリングサイドで見守っている。
ショウを見たが、彼は俯いていてこちらと目を合わせようとはしなかった。
やっぱり昨日の雰囲気と随分違うな。それにさっきまであんなに威勢がよかったのに…。僕は不思議に思ったが、負けるわけにはいかなかった。

Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.478 )
日時: 2011/12/18 12:29
名前: 小雨 (ID: BKd.hc6i)

第121話
演説

主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)


"ルーク、あいつらを見たことあるか?"
"ううん、初めて見る相手だ。ちょっと待って………鰐の方は地面、悪…鶏冠の方は格闘と悪だと思う"
"それだけわかれば充分だ。少し測ってくる"
言うが早いか、ザックはニヤニヤと笑っている鰐に一直線に飛び掛かっていった。
ザックの爪とワルビアルの爪がぶつかり合って火花を散らす。
ワルビアルはそのまま強引に押し切りザックの首筋に喰らい付こうとするが、ザックはすでに爪を弾き一歩距離を取っていた。再び瞬時に接近し、鋭利な爪で交差気味に切裂いた。
と、ワルビアルの後方からズルズキンが飛び出して蹴りを放つが、ザックは転がるようにして交わし、ルークの隣に戻ってきた。
会場が沸くのを感じる。初戦からの予想外の激しい攻防に、観客は思わず見入っていたようだ。
"できるな…しかもまだ力を出していない"
"ザック、今度は僕も"
ルークも戦闘態勢に入った時だった。
「中々やりますねぇ。こりゃあ遥々ホウエン地方まで来た甲斐があったかな?」
一瞬会場が静まり返った。
「え…………今、しゃべって…?」
アナウンサーも自らの発した言の葉に疑問を感じているようだった。

「やれやれ、喋ることがそんなに珍しいですかねぇ。自分達の言語がどれだけ高尚な物と思ってるんですかねぇ、人間ってぇのは」
聞き間違いなどではない。観衆の目の前にいるポケモンは、人間の言葉を喋っていた。
「たかだかポケモンが、この世界の支配者たる人間様の言葉を喋れるわけがない!なんて思ってました?へっへっへ、そいつは申し訳ない」
ガヤガヤとどよめきが走る。
ワルビアルは尚も続ける。
「しかしアンタ達人間ってぇのは、でかい顔してのさばってるくせして、からっきし弱そうだ。アタシが今ここで大暴れしてやったら、一体何人ぶっ殺すことができるのかなぁ。この中でアタシ達を止められる人間様なんて、はたしてどれくらいいるんでしょうかねぇ」
どよめきが徐々に怒号に変わった。

何を言ってるんだあの鰐野郎は!
悪党が!さっさとやられてしまえ!

「外野からかける声だけは一丁前ですねぇ。大体、その悪ってのも今一つ納得いかないやね。悪ってのは心の在り方じゃないですか?生まれながらにして悪なアタシ達には正義は許されないんですかねぇ…まぁ、アタシは根っからの悪党ですがね」
ワルビアルはからかうように笑いながら言った。

Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.479 )
日時: 2011/12/19 18:25
名前: 小雨 (ID: BKd.hc6i)

第122話
悪者達の意図

主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)


"よくしゃべる奴だな…いや、色んな意味でさ"
ルークは半ばあきれ気味に言った。
"ルーク、気を緩めるな。奴らは強い。…スズ、聞いているか?"
次から次へと言葉を発するワルビアルに半ば茫然としていた僕は、慌てて返事をした。
"わかっていると思うが、警戒しておけ。何が起こっても反応できるように"
「ザック、それは…」
"確定することはできないが、あいつらはお前の町を襲ったやつらに関係がある可能性がある"
"僕たちみたいに人間の言葉を理解することができるポケモンはいるかもしれないけど、人間の言語を発声するなんて事はまず不可能なんだ。だから、もしかしたら…"
「…わかった」
対戦相手が尋常ではないことは、僕も感じていた。大体、人の言葉を話すというだけで充分異常だ。
だけどあるいは。僕は以前襲ってきた灰色の刺客達を思い返していた。
ハブネークを強制的に変異させ。シュバルゴの痛覚を取り除くような処置を行った、ルネシティを襲った奴らだったら、あるいは。

「それにしても、兄さん強いですねぇ。シュバさん達を退けたってのも頷ける話ですよ。アンタなら砂漠でも十分やっていける強さだ…なんて言ってもなんの意味もないか、へへへ」
「!」
"…聞いたな、スズ"
「うん…やっぱり…」
よく喋るワルビアルの一言によって、疑惑は一瞬にして確信に変わった。
「おっとルネシティのぼっちゃん、余計なことは言わないでくださいねぇ。もし情けない事しようもんなら、無作為にここの人間共ぶっ殺しちゃいますよ?」
ワルビアルは鋭い目で僕を見て告げた。
「なっ…!」
"ワルビアル、何が望みだ"
「んっ!?頭の中に声が……?」
"答えろ、何が望みだ"
ルークが再びワルビアルに問いかけた。
"へっへ、こいつは便利ですねぇ。いや、別に望みなんて大層なもんはありませんよ。ただ、兄さん達にはアタシ達と戦ってほしいってだけです"
「…本当にそれだけ?」
"えぇえぇぼっちゃん、そうですとも。アタシ達は戦闘が大好きなんですよ。最もさっきも言った通りアタシは悪党だから、信じろってのも難しい事かもしれませんがねぇ"
"スズ…大丈夫。少なくとも、嘘は言っていないみたいだ。…応じなかったら観客の人たちをぶっ殺すっていうのも…"
僕には選択の余地は無かった。それに、
「…今までだってそうしてきたんだ。お前の言うとおり、余計な事はしないよ」
"そうですか!そいつはありがたいですねぇ。あ、アタシはビアルって言います。組織では砂鰐なんて呼ばれてるんで、そっちで呼んでくれても構いません。こっちの相棒は、竜戦士といいます。以後お見知りおきを"
自らを砂鰐と呼んだワルビアルは、仰々しく頭を下げた。

Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.480 )
日時: 2011/12/30 16:50
名前: 小雨 (ID: BKd.hc6i)

第123話
ダブルバトル

主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)


"俺はザック。こいつはルークだ"
ザックは手短に自己紹介を済ませると、再び向かい合った。
"砂鰐とやら。戦闘が望みとあらば、存分に応えてやろう"
ザックが駆け出す。
"話が早くて助かりますよ。へへ、これでアタシ達も心置きなく暴れられるってもんだ"
砂鰐は嬉々とした表情で、迫り来るザックを迎え撃った。
ザックは至近距離での連撃を見舞う。砂鰐は避ける様子も見せず拳を固めて、連撃を飲み込むような大振りの一撃を繰り出した。
ザックは潜り抜けるようにそれを交わして砂鰐の真横に回りこみ、脇腹に一撃を見舞う。
よろめいた砂鰐に再びザックが攻撃をしかけようとした時、ザックの背後に回りこんでいた竜戦士が蹴りを放った。
"これはタッグバトルだ、油断しない事だな"
"油断?"
ザックは竜戦士の蹴りをかろうじて受け止め、その隙に飛び出していたルークが逆に蹴りを放つ。
すかさず砂鰐が、竜戦士の足を捕まえていたザックに攻撃を加えた。
"ちっ…"
ルークと向かい合った竜戦士は、超接近戦で拳を繰り出しあう。
竜戦士は独特の動きでルークの攻撃を流れるようにかわし、ルークも竜戦士の攻撃を捌き切っていた。
"はっ!"
ルークと竜戦士が同時に放った飛び膝蹴りがぶつかり合った。
"…っ!"
力負けしたのは竜戦士の方だった。顔をゆがめると、竜戦士は衝撃を殺して空中で一回転しながら後方へ飛んだ。
砂鰐が放ったエネルギーがリングを割り、追撃にかかろうとしたルークの動きを強引に止めた。
両者の間に再び距離が保たれる。

"竜戦士、アンタから見てあのお二人どうです?"
"強い。特にザックという白い方、戦い慣れています。あの頃の砂漠でも充分通用するでしょう。ルークという波導使いの方はまだ荒削りなところがありますが、俺では力負けしてしまう"
"なるほどねぇ、アタシもほぼ同意見ですよ。どれ、もうちょっと引き出しを見させてもらいましょうかね"
砂鰐はリング中央に一歩踏み出すと、指をクイクイと曲げて不敵に笑った。
"本気で来いって言ったんだぜ。お二人さん、そんなもんですかい?"
"!このっ…!"
ルークの右腕から炎が迸り、砂鰐に向かって放たれる。
砂鰐は虚をつかれた様に言った。
"へぇ、波導の兄さんは炎も使えるんですかい!…なんにせよ、こりゃあシュバさん達のペアじゃあちっとばかし厳しいかもなぁ"
砂鰐は闘気を練り、襲い来る炎に向けて放った。炎はそのまま闘気の塊を飲み込み、砂鰐を襲う。
"うあっつつ!だがさすがにあの野郎程の火力じゃあないようだ…竜戦士さん、舞ってください!"
砂鰐の放った闘気のエネルギーは炎をかき消すには至らなかったが、その威力を弱める事はできたようだった。砂鰐はそのままリングに拳をつき立てる。地割れが二人めがけてリングを走り、ザックとルークを分断した。
と、砂鰐の背後で力が膨れ上がっていくのを感じた。
"!ルーク、後ろのヤツをとめろ!砂鰐は俺が抑える!"
言うが早いか、ザックは飛び出していった。
"わ、わかった!"
一瞬遅れてルークも続く。
鋭利な爪で砂鰐に切りかかるザックを追い越し、ルークは竜戦士目指して走った。竜戦士の周囲で舞い踊っていたエネルギーが収束しようとしているのが見える。
"間に合わない…!"
ルークは走りながら波導弾を放った。竜戦士を直撃し、砂煙を巻き上げる。
"…少し遅かったな、波導使い"
ルークはそのまま竜戦士に迫り、とび膝蹴りを放った。迎え撃つように竜戦士も飛び膝蹴りを放つ。今度は吹き飛ばされたのはルークの方だった。
竜戦士はそのまま追い討ちをかけるようにルークに迫る。吹き飛ばされたルークも体勢を建て直し、竜戦士を迎え撃った。
"………っ!"
早い。…重い!先ほどやりあった時より明らかに強力になっていた。
次第に撃ち負けたルークは、リング中央まで押し戻されてしまった。
"ルーク、大丈夫か?"
"うん…あいつ、さっきと比べ物にならないくらい強化されてる…"
荒い息を吐きながら、ルークが言った。
"今度は俺がやる。お前は鰐のほうを頼む"
"わかった………ザック、その傷…!"
ザックの胸から血が流れ出していた。
"心配するな、怪我したわけじゃない"
その手にはハブネークの尾で作られたペンダントが握られている。毒が体を駆け巡り始めた証だった。
その出血量と比例するように、ザックの威圧感も増していく。
"へぇ、あちらさんもまだ奥の手隠してたみたいですねぇ。どれほどのものか見せていただきましょうか"
少々の疲労の色を見せながらも、砂鰐は不敵に呟くのだった。

Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.481 )
日時: 2011/12/31 10:52
名前: 小雨 (ID: BKd.hc6i)

第124話
殻の中のこころ

主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)



竜戦士の鋭い蹴りがザックに向けて放たれる。
ザックはそれを受け止めるとそのまま引っこ抜くように持ち上げて、竜戦士を地面に叩きつけた。
"っ…"
衝撃に、一瞬竜戦士の息が止まった。ザックはそのまま馬乗りになり、竜戦士に向かって拳を打ち下ろす。
"ありゃりゃ、こりゃまずいですねぇ…それっ!"
砂鰐の放った大地を揺るがすエネルギーが、二人に向かって走る。
ザックと竜戦士は飛びのき、地割れが収束するとすぐさま立ち上がって打ち合いを始めた。
"お前の相手は僕だっ!"
地割れを起こし、隙が生まれた砂鰐めがけ、ルークが至近距離から拳を叩き込んで間合いをとった。
"あたた…そう慌てなくてもすぐに相手してやりますっってぇのに…"
至近距離での攻防は、小回りの利くルークに分があるようだった。
"ところで波導の兄さん。さっきの炎、知り合いの感じとそっくりなんですが、どうやって覚えたんです?"
"…おそらくお前の知り合いのおかげだよ。炎を使うシャンデリアみたいなやつだった"
"シャンデリア…やっぱり幻燈鬼さんの炎ですか。…あの女、片腕奪ったとかよく言えたもんですねぇ。幻燈鬼さんも、相棒があれじゃあもったいないやねぇ"


「す、すごい攻防です…!いったい誰が!誰がこれほどの戦いを予想しえたでしょうか!」
実況の声と周囲の歓声で、僕は我に返った。
掌にはじっとりと汗が滲んでいる。隣で観戦していたルーも心配そうな表情でリングを見つめていた。
相手は灰色の組織の一員なのだ。
灰色の一員、という言葉を頭の中に思い浮かべて、ふと疑問が浮かんだ。
周囲に肝心の灰色の姿が見えない。どこかに身を隠しているのだろうか。それとも、リングの対角線上にいるショウこそが…?
少し考えて見たが、その可能性は少ないように思えた。
今にして思えば、ショウの様子が明らかにおかしかったのは、そのあたりに起因しているのではないだろうか。
大観衆の只中で、逆に大観衆を人質に取る事によって、僕達との戦いを実現させる。
どこか腑に落ちないところはあるが、僕はひとまずそのように結論を出す事にした。

"……私が悪いのだ"
隣にいるルーが呟いたと気づくのに、少し時間がかかった。
「えっ……?」
"私がショウの期待を裏切ってしまったのだ"
「それは、どういう…」
あまり余裕が無かったとはいえ、ルーとまともな会話を交わすのは初めてかもしれない。
"私は仲間達の中で、一番殻を纏うのが早かった。そして、唯一殻を破る事ができなかった"
ルーのその体は、未だに堅守な殻で覆われている。
"仲間達は次々と殻を破り、大空へ飛び立って行った。一人、また一人と。私はそれを、見送るばかりだった"
空には太陽が輝いていて、雲ひとつなかった。ルーは大空を見上げながら続ける。
"ついに私は最後の一人になってしまった。それからどのくらいの時が経過した頃だろうか。自分の頭の中だけで物事を解決していくうちに、私は徐々に感覚が狂っていくのを感じた。気力は無くなり、他種族との争いを避け、いつしか殻を破ろうという気持ちすら失って行った"
"そんな時、ひょんな事からショウと出会った。彼は私を見つけた時、大いに喜んでいた。感動に打ち震えていたと言っても過言ではないぐらいだ。どうやら私たち竜族は、人間達の間で特別な感情を持たれる存在のようだ"
僕は何となく、リングの対角線上にあるショウの姿を見た。
"私は殻を破るのが怖かった。殻を破ればこの身をさらさなければならない。他者とかかわりを持たねばならなくなるかもしれない。争い事にまきこまれるかもしれない。臆病な私は、ショウの期待にこたえることができなかったのだ。彼と行動を共にするうちに私も彼の力になりたいと思うようになっていった。しかし長年閉じこもったままの私の体と心は、思うように動いてはくれなかった。いつまでたっても殻を破る事のできない私をショウは臆病者と罵り、流星の滝に捨てて行った。しばらく彷徨っているうちに吸血蝙蝠達に襲われ、そこをスズに発見されたというわけだ"
"先日ショウと再会したとき、私は情けなくも嬉しかった。思わず走り出してしまうくらいに嬉しかった。あのような別れ方をしたとはいえ、一人でいた私を連れ出してくれたのは紛れも無くショウなのだ"
ルーはリングの上の戦いを見ながら言った。
"…ショウはあのような奴らを所持していなかったし、付き合いがある様子も無かった。おそらく昨夜、何かあったのだろう"
僕はルーの話をただただ聞くばかりだった。


「全く、てめぇは使えねぇなぁ!あぁ!?」
突如歓声をかき消すような、大きな声が響いた。


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