二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク
- 日時: 2014/02/09 17:45
- 名前: 小雨 (ID: FvJ38Rf9)
はじめまして。
だいぶ遅ればせながらbw発売記念と言う事で、お目汚しさせていただきます。
***注意事項***
*ポケットモンスターの二次創作小説です。
*基本一人称視点で進行。
*bw記念といいつつ、舞台はホウエン地方です。
*登場ポケモンは第五世代までの範囲で登場します。原作のキャラ達も何人か登場しますが、作者はアニメ版をあまり見ていないので、アニメ版には準拠しておりません。ので、アニメを見ている方は違和感を感じることがあるかと思います(すいません)。
*い ち お う ルネシティに住む少年のスピンオフ的作品です。てことで、始まりはルネシティ。なんでそんなモブキャラを選んだのかというと、レジ系ゲットしたくて久々に起動した第三世代ROMのルネシティの雰囲気に魅了されてしまったためです。
*作者の都合のいい解釈、展開、本編との矛盾などが多数出てくるかと思いますが生ぬるい目で見ていただけると嬉しいです。全ては作者の力不足に依るものです。尚、このホウエン地方は皆様の冒険したホウエンではなく、パラレルワールド的なものです。
*作者のランダムマッチにおける勝率は二回に一回程度のレベルです。ネット対戦勝てない人挙手。
*感想等お気軽に頂けると小雨は喜びます。大変申し訳ありませんが、本作品やポケモン等に全く関係の無い話題や雑談等の書き込みはご遠慮くださいますようよろしくおねがいします。
大体ここら辺が許せる方、よろしくお願いいたしますー。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146
- Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.517 )
- 日時: 2012/08/12 13:15
- 名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)
第149話
作戦会議
主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)
「早速だが、ナギくんに話を聞いてみようと思うんだが構わないかな?」
「もちろんです」
ナギさんは立ち上がって言った。頭に巻いていた包帯は、すでに外している。
「ナギくんは、ルネシティまではたどり着いていないんだね?」
「はい…敵の領空内に入り込んでしまったのでしょう。お恥ずかしい話ですが、トロピウス共々撃墜されてしまいました」
表ではトロピウスが日光浴をしていた。捥がれてしまった翼は、徐々に再生しつつあるようだった。
「私はその後、キナギタウンに流れ着きました。偶然町を訪れていたフウとランに介抱されたのです」
「ふむ…みんなも知っての通り、ルネシティは特殊な環境だ。潜入経路も限られてくる。それについてはスズくんの方が詳しいと思うが…」
センリさんが僕を見て言った。
「僕もみなさんの知識とそう変わりは無いと思います。ルネシティに入るには、空路か海路しかありません」
僕は立ち上がって言った。とはいえ、僕は自分の意思でルネシティを出たことが無い。灰色達が襲ってきた時だって…………あれ。そういえばあの時はどうやってルネシティを出たんだっけ。ギャラドスの棲みかにルークと落ちて、その後意識を失って……。
気がついたらミナモシティの砂浜に倒れていたのだ。
「空路は警備網が張り巡らされているようだな。それについてはナギ君が実証してくれている」
うーんと唸りながら、センリさんが呟くように言った。
「では、海路を行くということですの?」
「確証はないが、海路にも何らかの警戒体制が敷かれていると考えて間違いないだろう。その程度の対策を考えない相手とは思えないからね」
「しかし実際問題、海か空、どちらかを突破するしかないぞい。ミクリがいれば海底からの突破も可能かも知れんが、今のワシらの中にそこまでのスキルを持ったのはおらんしの…」
誰もが頭を悩ます中、ナギさんが口を開いた。
「迷う事はありません、空から突破しましょう。私に任せてください、もう遅れを取ったりはしません」
「ナギくんの腕を信用していないわけではないが、少々リスキーだな…もしナギくんの身分が相手に知られていたとしたら、さらに警備を強化されている可能性もある」
「………あの」
ずっと話を聞くだけだった僕が口を開いた。
「海からも攻めましょう。僕のギャラドスなら、ダイビングが使えます」
「海と空、両方から攻めるわけか…スズくんのダイビングの腕は?」
「ここまで来るときもダイビングで来ました。まだ不慣れな部分はありますが、距離的なものは問題ないと思います」
「スズさん…まさかこうなる事を予期して、キナギタウンまでギィさんに乗ってきたんですの?」
「スズ…そうだったのか…。それに引き換え私達ときたら、自分のことばかりで…くっ、自分が恥ずかしい!」
ダンッ!と、アスナさんが拳で机を叩いた。
あの時は別段そんな考えがあったわけではなかったのだが、過去の自分を真剣に悔いている様子の二人を見るととてもじゃないがそんなことは言えなかった。僕は曖昧な顔をして頷いた。
「スズくん…さっきも言ったが、海路も警戒態勢が敷かれている可能性が高い…危険だぞ?」
「お願いです、やらせてください。ルネシティは僕の故郷なんです。指をくわえて見ているわけにはいきません!」
僕は思わず身を乗り出して言った。
- Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.518 )
- 日時: 2012/08/13 21:10
- 名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)
第150話
作戦概要
主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)
「策としては悪くないと思うぜ。こんな事は言いたくないが、仮に空と海どっちかがダメだったとしても、総崩れって状況は防げるしな」
「確かにリスクは分散させることはできるが、しかし…」
センリさんは腕を組んで、独り言のように呟いている。
「小僧とて、ここまで戦い抜いてきたんじゃ。信じるに足るのではないか?」
トウキさんとテッセンさんが後押ししてくれた。その甲斐あってか、
「…そうですね。スズくん、海路については君にお願いする」
センリさんは僕の申し出を承諾してくれた。
「はい!」
「では、今後君も我々と同列に扱う。保護する対象ではなく、同じミッションをこなす仲間としてだ。いまさら脅かすわけじゃないが、これは命がけだ。海底にいる君を助ける術は今の我々にはない。わかっているね?」
僕はセンリさんを目をまっすぐに見て頷いた。
「では、空と海両方から攻めよう。スズくん、君はルネシティに潜入が成功したら何らかの方法で我々に合図を送り、灰色たちの注意を引き付けてくれ。注意が君に向いている間、私達はその混乱に乗じて空から突入、というのはどうだろう?」
センリさんはそんな僕をしばらく見ていたが、やがて話を始めた。
話し合いは続き、いつの間にやら随分と時間が過ぎていた。窓から差し込む夕日で、一同はそのことに気がついた。
「もう夕方か…話込んだだけあって、方針はほぼ固まりましたね」
僕はおおむねの流れを、頭の中で再度整理してみた。
まず僕が海路を通ってルネシティに進入し、灰色たちの目をこちらに向ける。その隙に乗じて、空から残りのメンバーが急襲する(僕からの合図が無ければ、デッドライン経過後に空からの襲撃を行う)。
ルネシティに潜入後は、各人以下のような動きをする。
----
・飛行能力に長けているナギ、ツツジ両名は、ルネシティの住人を保護しつつ、町の外への避難を行う(僕が無事合流できた際は二人と行動を共にし、住人の保護をサポートする)
・トウキ、アスナ、テッセンの三名は遊撃部隊として灰色達の制圧
・ミクリ救出要員として、センリ
・通信部隊として、フウ、ラン
※相手の最大戦力を、コードネーム持ちのポケモン達と仮想。遭遇した際には必ず通信にて一報をいれる
----
驚いたことに、フウ君とランちゃんのポケモンが構築する波導ネットワークを介す事により、僕とルークのような各メンバー間での通信が可能になるというのだ。難しい話はよくわからなかったが、僕達が普段ルークを介して行っている意思の疎通を、広範囲で行うイメージなのだそうだ。
小さな双子のジムリーダーは、随分と強い波導の力を持っているようだった。
あくまでこの動きを目安とし、各自状況変化に対応していく。リュウラセンの塔での灰色達の映像を見たとはいえ、その戦力はいまだ不透明な部分があるからだ。
作戦の決行は明日。
僕は自分の故郷の風景と、いよいよ開始を目前に控えた作戦とを重ね合わせようとしてみた。
しかし、のんびりとした平和を内包したルネシティの風景は、どうしてもそれに馴染もうとはしてくれなかった。
- Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.519 )
- 日時: 2012/08/15 21:11
- 名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)
On the other hand 12
灰色達の幹部
蛇…ほっぺに蛇の刺青
焔…赤い口ひげ
鳶…肩に翼の刺青
ルネシティの住人
シズク…スズの友達
ノリ…スズの友達
軽い調子の若者が部屋を出て行った後には、難しい顔をした男二人が残された。
別に難しい顔をしているわけではないのだが、いつの頃からかそれが刻み込まれてしまったようだ。
人間の顔には、その者の足跡が刻まれる。人格が形成された後であれば、その人となりから人物というものを、ある程度推測できるものだ。
目の前の蛇という男は、一筋縄ではいかぬ男だった。冷静にして沈着。それなりの期間行動をともにしている焔でもその思考を読みきることはできなかった。
しかし正面の男に刻みこまれた雰囲気から、それだけは痛いほどに感じとることができた。
「鳶のやつも、もう少し落ち着いた行動というものができないものか…」
一人言を発したつもりだったが、蛇がそれを拾った。
「あの気質は奴の長所であり短所でもある。足をすくわれることにもなるだろうがな」
目の前の男の言動に焔は少し驚いて、蛇を見た。
「なんだ?」
視線に気がついた蛇が言う。
どこか蛇らしくない。そんな感覚を抱いたのだ。
その言葉が、鳶を気遣うような響きを帯びていたからだろうか。
「いや、なにもない。…俺もそろそろ行くぞ」
そういい残して、焔は部屋を出た。
焔は戦場を駆けていた。
金でその命を貸し出し、対価を得る。
いかにも傭兵という言葉がしっくりと馴染むような風貌だった。
闘争に明け暮れることこそ、その存在理由。面白そうな依頼であれば命の危険を顧みず赴き、どんなに割りのいい仕事でもそこに闘争がなければ受けなかった。
命を天秤にかけ、つねにその天秤を自らへ傾けてきた。
緋色の戦闘パラノイア。
いつしか焔は、そんな二つ名を冠するようになっていた。
焔にとって、ルネシティは退屈以外の何者でもなかった。
反抗する者もいない。制圧も瞬く間に終えてしまい、ホウエン最高峰と名高いジムリーダーとも、ついぞ戦闘を行うことはなかった。
戦いに不自由しないという蛇の口車に乗り組織に入ったものの、焔は大きな戦闘に飢えていた。
「……!………!」
洞窟の外から、なにやら声が響いてくる。静かなこの町では珍しい事だった。
珍しいこともあるものだと洞窟の外に出た焔の目に、ある光景が飛び込んできた。
「シズクを返せ、ちくしょう!」
洞窟の入り口で暴れている、一人の少年がいた。胸には「8」のプレートをつけている。
洞窟の入り口で番をしている者達に食って掛かっており、それを面白がってか数人の者たちも集まってきていた。
「いい加減しつけぇぞ。言っておくが、悪いのはあの女の子なんだぜ。大人しく俺たちに従ってりゃあいいものを、約束を守らないからこうなるんだ。ボスのとこに連れて行くって言ってたからなぁ、もうまともな姿で会えないかもしれないなぁ」
「うるせぇ!お前らなんか一人じゃ何もできないくせにっ…!」
「あぁそうだよ。人間は弱いからな、だから徒党を組むんだ。一人ひとりは弱くても、みんなの力を合わせれば強くなるだろう?それの何が悪いんだ、いい話じゃないか」
「約束を破るな。みんなで力を合わせよう。俺たち何か間違ったこと言ってるか?」
笑い声が起こる。
輪の中心にいるのは、ボスと同じくらいの歳に見える少年だった。
その顔は腫れ上がり、血がにじんでいた。
「おい、そいつはなんだ」
「あ…焔さん。さっきボスのところに連れて行かれた女の子を返せって、怒鳴り込んできたんですよ」
たった一人で。ポケモンも持たずに…か。
そういえばルネシティを制圧した時ただ一人だけ抵抗したガキがいたと報告にあったが、こいつがそうか?
少年は突然洞窟から現れた焔の巨躯を見てひるんだようだったが、すぐに血走った目で睨みつけてきた。
焔はしばらく少年の目を見ていたが、やがて小さく鼻を鳴らすとくるりと背を向けて、再び洞窟へと歩き出した。
「せっかくの戦いを楽しめ、小僧。憎しみを理由に戦っても、何も面白いことなどないだろう」
「お、お前らが言うな!誰のせいで俺たちがこんな目に合わされてると思ってんだ!」
「俺たちのせいだ」
「な…っ!」
「とでも言えばお前の気は晴れるのか?起こってしまったことは変えられない。情けないことばかり吠えるのはやめるんだな」
ちくしょう!と叫ぶ声が、洞窟に消える焔の背に覆いかぶさってきた。
洞窟の中を歩いていると、程なくして一人の少女が駆け抜けていった。
今のが、さっきのガキが言っていた娘の事か。ボスのところに連れて行かれたと聞いていたが、思いのほか元気そうだった事は焔を驚かせた。
この組織にスカウトされた当初、リーダーは蛇だと思っていた。しかしそれは、単なる思い込みだったことを知った。
確かに実質的な組織の統率は蛇が担っており、その資質は十分すぎるほどだと感じた。
だから入団する際に「ボスに引き合わせる」と言われたとき、焔は意外に思ったものだった。この男より、まだ上がいるのかと。
初めてボスと面会したとき、焔のボスに対する認識はすぐに誤りだったと気づいた。
戦場にいたのでは決して遭遇することの無い人種。
目の前にいる人物と殺し合いをすれば、十中八九焔が勝つだろう。
しかし、それができる気がまったくしないのだ。まるで無に相対しているような…
ボスのその外見からは、何も読み取ることができなかった。
「焔」
自室に戻った焔を、年老いた武神が出迎えた。
「武翁か。どうした」
「いや、珍しく楽しそうな顔をしとると思っての」
「楽しそう?俺がか?」
「さっきの食って掛かってきた子供じゃろ。儂とお前さんは少々似ているところがあるからの、わかるわい」
「ふん…それよりそろそろ出番がありそうだ。各々準備を整えておけ。もしかしたら久方ぶりの大きな戦いになるかもしれん」
「こと戦闘に関しては焔殿の勘は当たるからな。準備は怠らんようにしておくか」
モンスターボールの中から狒々王の声が聞こえた。
炎魔蝶と幻燈鬼は無言のままだったが、内なる炎が猛っているのを感じる。
室内の温度が上昇したような気がした。
- Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.520 )
- 日時: 2012/08/18 16:38
- 名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)
第151話 技マシン 38
主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)
キナギタウンの日が落ちる。作戦会議を終えた僕達は、宿に戻ったり町を散策したりと、めいめいに過ごしていた。
何かして気を紛らわせようかと思ったが、これと言ってやる事も思いつかなかった僕はひと足早く宿に戻ると窓の外を眺めてぼんやりしていた。
水平線に沈んでいく夕日が、海原を赤く染めている。
「スズ、入っていいか?」
ノックの音とともに、アスナさんの声が聞こえた。
どうぞ、という僕の声とほとんど同時にドアが開き、アスナさん、テッセンさん、センリさんといった面々が部屋に入ってきた。
「?どうされたんですか?」
予想外の訪問者に僕は少し驚いていると、アスナさんが口を開いた。
「スズ、私がフエンタウンで言ったことを覚えているか?」
「えぇと、僕のパーティは炎に対して無策すぎると。あの直後にシャンデラ…幻燈鬼と遭遇して、もう駄目かと思いました」
「覚えていたか。しかし今のパーティを見る限り、大丈夫そうだな。あの時はコイキングだったギィも、今や立派な姿になった」
「ありがとうございます。それで、お話というのは…」
「うん。スズ、お前は技マシンというものを知っているか?」
「わざマシン、ですか?まぁ、一応は…見たことはないですけど…」
僕の返答を聞くと、アスナさんは何やらディスクのようなものを取り出した。
技マシンというのは、ポケモンに技を覚えさせるための装置のことだ。実物を目にしたことはなかったが、さすがに耳にしたことはあった。これを使えば、通常習得することのできない技を覚えさせることができるのだ。
「まぁ、つい最近までポケモントレーナーではなかったお前が目にしたことがないのも無理からぬことかもしれないな。これがその技マシンだ」
「これが…」
手渡されたそれを、僕はまじまじと眺めた。
「スズくんとツツジくんがムロタウンに向かった後、私達も準備を進めていてね。少しでも戦力強化を図るため、君にこの技マシンをプレゼントしようと思っていたんだよ」
「小僧ももはや立派な戦力じゃからな」
言うと、二人も技マシンを取り出した。僕の前に三枚のディスクが並べられた。
「私が送るのは38番目の技マシンだ。中身は、『だいもんじ』。強力な炎の技だ」
僕みんなのことを思い出してみた。怪我の巧妙ではあるが、ルークは幻燈鬼の呪いの影響で炎を扱うことができる。メメが炎を扱うのは酷というものだろうし、チーは戦闘員ではない。
「誰に覚えさせようかな…」
"俺は遠慮する。炎を扱いこなせる自身はあまりないしな"
"おいらもパス"
ザックとギィが申し出を断った。
「スズ、悩んでいるならルーに覚えさせるのはどうだ?」
「ルーにですか?それはどういう…」
「ドラゴンに炎技というのは、まぁポケモンバトルにおけるテンプレートのようなものだ。それに、ドラゴンが炎を使う姿はかっこいいだろうが」
「確かに…」
僕は炎を吐いているボーマンダの姿を想像してみた。
「ルー…いいかな?」
"私に使いこなすことができるだろうか…"
ルーは不安そうな声をあげながらも、モンスターボールから出てきた。
「大丈夫。ルーならきっと使いこなせるさ」
「話はまとまったようだな。ではスズ、技マシンをルーの頭の上に置くのだ」
僕は言われたとおりに、ルーの頭に技マシンを置いた。
頭上に置かれたディスクが光り、やがて消える。
「よし、成功したようだな」
「え、こんな簡単に?」
その工程はあっという間に終わった。
「あぁ。外に出て使ってみよう」
「は、はい…。ルー?」
いける?と、僕はルーを見た。
"ああ…不思議な感覚だなこれは。自分の中の欠けていたものが埋まっていくような、そんな感覚だ"
ルーは少し戸惑っているようだが、習得は成功したらしい。
「じゃあルー、いくよ…大文字!」
僕の声に呼応し、ルーの体が光った。目の前に作られた炎が夕闇を一際明るく照らす。ルーが海へと炎を放つと、やがてその炎は海上へと消えていった。
「すごい…」
僕も、ルー自身も驚いたようにしばらく炎の軌跡を追っていた。
「上出来だ。姿こそ殻に包まれてはいるが、お前のコモルーはかなり高レベルのようだな。これはボーマンダに進化したときが楽しみだ」
アスナさんの声で僕は我に帰った。
不思議なものだ。ついさっきまで炎を吐くことなんてできなかったのに、一瞬にしてそれを可能にしてしまった。技マシンとはいったい、どういう仕組みなのだろうか。
「よし、では次はワシじゃな」
テッセンさんがディスクを手に持って、言った。
- Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.521 )
- 日時: 2012/08/18 22:57
- 名前: 小雨 (ID: L.Y1jWRR)
第151話 技マシン 38
主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
ギャラドス(ギィ)
ユキメノコ(メメ)
ザングース(ザック)
チルット(チー)
コモルー(ルー)
「小僧、ワシは何じゃ!?」
波の音もかき消すような大きな声で、テッセンさんが問いかける。
「え、と…ジムリーダー…ですよね?」
「鈍いぞ小僧、なんのジムリーダーかと聞いているのじゃ!」
「は、はい、電気タイプのジムリーダーです」
「その通り!そんなワシが送るのはこれじゃ!」
テッセンさんはそう言うと、僕にディスクを放ってよこした。
慌ててそれをキャッチする。
「24番目の技マシン、10万ボルトじゃ!強力な電撃技じゃぞい!そういえば小僧はライボルトの電撃をくらったことがあったのう。あの時はこの技をかなり微弱にしていたんじゃぞ」
海を越えてキンセツシティへと渡ったとき、泥棒と勘違いされてテッセンさんのライボルトに食らわされたそれだ。あの時は気絶してしまって…僕は思わず身震いした。
"………"
キンセツシティでの事を思い出しているのか、ギィの入っているモンスターボールが小刻みに震えていた。
「じゃ、じゃあこの技は誰に覚えてもらおうかな…」
"メメがおぼえたい"
メメが珍しく、積極的に名乗りでた。
僕は少し意外だった。メメは戦いを好むタイプではなかったからだ。
"メメもみんなをまもりたいから"
僕の考えを読んだかのようにメメはそう言うと、僕の前に立った。
「わかった…じゃあメメ、いくよ?」
ディスクを頭に乗せると、メメはコクリと頷いた。
ディスクが光り、やがて収束する。
「よし、成功したようじゃな!早速使ってみるのじゃ!」
「わかりました。いくよメメ…10万ボルト!」
メメの周囲が一瞬光ると、バチッバチッという音がして周囲が一瞬明るく照らされ、手のひらから電撃が迸った。
"これ、メメが…"
メメは自分でも驚いているようだった。
"す、すげぇなねぇちゃん…"
目の前ではじけた電撃に、ギィが驚いたように言った。
「ふむ、なかなかじゃな。これならば実践でも十分通用するじゃろう」
テッセンさんが満足そうに言った。
「最後は僕だ。僕が送る技マシンは42番…からげんきという技だよ。これはぜひザックくんに薦めたいね。この技は、体に異常が起こったときに真価を発揮する。君の新しく芽生えた特性とあわせれば、驚異的な威力を発揮するだろう」
ザックは頷いていった。
「ザック…いいかな?」
"もちろんだ。頼む"
僕はザックの頭上にディスクを置いた。ディスクは同様に光を放ち、やがて消える。どうやら技の習得に成功したらしかった。
「この技は今試してみてもそれほど威力は出ないだろうけど……ど、どうした、その傷は!?」
ザックの胸から、十字に血液が流れ出していた。
「ザック!毒を…」
ザックはそのまま、自分の倍以上はあろうかという大岩に拳を叩き込んだ。
衝撃を受けた岩は一瞬にして砕け散る。
"に、兄ちゃん!"
すぐにチーがぱたぱたと飛んできて、ザックの毒を治療した。
胸から滲むように流れ出る血が徐々に収まってゆく。
"もう、無理しないで!"
チーがむくれたように言った。
"すまん。使ったことの無い技を実戦でいきなり試すのも危険だからな…把握しておく必要がある。しかし不思議な技だな。力が膨れ上がっていくような感覚だ"
"だからって…"
"すまなかった…頼りにしているぞ、チー"
ザックがガシガシとチーの頭を撫でた。
"し、しょうがないなあ、兄ちゃんの毒は全部チーが治してあげるからね!"
「スズくん、あれは…」
一部始終を見ていたセンリさんが、呟くように言った。
「ザックのペンダントはハブネークの尾の刃を削って作られているんです」
「なるほど…しかし私が口を出すことではないかもしれないが、かなり強力な毒のようだが…」
「僕も本当は、あの力を使ってほしくはないのですが…」
ムロタウンでの砂鰐達との戦いの後、僕はザックにそう言ったのだ
"お前が気に病む必要は無い。この力を使うのは、俺自身の未熟さ故だ。いつかこの力を使わずともすむような戦士になりたいものだな"
そう言ってザックは笑っていた。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146
この掲示板は過去ログ化されています。