複雑・ファジー小説

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〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【完結】
日時: 2022/05/29 21:21
名前: 銀竹 (ID: iqu/zy5k)
参照: https://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=18825

いつもありがとうございます。
闇の系譜シリーズは、四作目のアルファノル編以降、別サイトに移動しております。
詳しくはアルファノル編のスレにて!
………………

 人々の安寧を願ったサーフェリアの前国王、サミル・レーシアス。
彼の興した旧王都──アーベリトは、わずか七年でその歴史に幕を閉じることとなった。

 後に『アーベリトの死神』と称される、召喚師ルーフェンの思いとは……?

………………

 はじめまして、あるいはこんにちは!銀竹と申します。

 本作は、銀竹による創作小説〜闇の系譜〜の二作目の後編です。
サーフェリア編がかなり長くなりそうだったので、スレを上・下と分けさせて頂く事にしました。
一部残酷な表現などありますので、苦手な方がいらっしゃいましたらご注意下さい。

 今回は、サーフェリア編・上の続編となっております。
サーフェリア編・上の知識がないと通じない部分も出てきてしまうと思いますが、伏線以外は極力分かりやすく補足して、進めていきたいと考えています(上記URLはサーフェリア編・上です)。

〜闇の系譜〜シリーズの順番としては
ミストリア編(上記URLの最後の番号五桁が16085)
サーフェリア編・上(17224)
サーフェリア編・下(19508)
アルファノル編(18825)
ツインテルグ編
となっております。
外伝はどのタイミングでも大丈夫です(16159)。
よろしくお願いいたします!

…………………………

ぜーんぶ一気に読みたい方→ >>1-430

〜目次〜

†登場人物(第三章〜終章)† >>1←随時更新中……。

†用語解説† >>2←随時更新中……。

†第三章†──人と獣の少女

第一話『籠鳥ろうちょう』 >>3-8 >>11-36
第二話『憧憬どうけい』 >>37-64
第三話『進展しんてん』 >>65-98

†第四章†──理に触れる者

第一話『禁忌きんき』 >>99-150 >>153-162
第二話『蹉跌さてつ』 >>163-189 >>192-205
第三話『結実けつじつ』 >>206-234

†第五章†──淋漓たる終焉

第一話『前兆ぜんちょう』 >>235-268 >>270-275
第二話『欺瞞ぎまん』 >>276-331
第三話『永訣えいけつ』 >>332-342
第四話『瓦解がかい』 >>343-381
第五話『隠匿いんとく』 >>382-403

†終章†『黎明れいめい』 >>404-405

†あとがき† >>406

作者の自己満足あとがき >>407-411

……………………

基本的にイラストはTwitterにあげておりますので、もし見たい!って方がいらっしゃいましたらこちらにお願いします。→@icicles_fantasy

……………………


【完結作品】
・〜闇の系譜〜(ミストリア編)《複ファ》
ミストリアの次期召喚師、ファフリの物語。
国を追われ、ミストリアの在り方を目の当たりにした彼女は、何を思い、決断するのか。

・〜闇の系譜〜(サーフェリア編)上《複ファ》
サーフェリアの次期召喚師、ルーフェンを巡る物語。
運命に翻弄されながらも、召喚師としての生に抗い続けた彼の存在は、やがて、サーフェリアの歴史を大きく変えることとなる──。

・〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下《複ファ》
三街による統治体制を敷き、サーフェリアを背負うこととなったサミルとルーフェン。
新たな時代の流れの陰で、揺れ動くものとは──。

【現在の執筆もの】

・〜闇の系譜〜(外伝)《複ファ》
完全に狐の遊び場。〜闇の系譜〜の小話を載せております。

・〜闇の系譜〜(アルファノル編)《複ファ》
ミストリア編後の物語。
闇精霊の統治者、エイリーンとの繋がりを明かし、突如姿を消したルーフェン。
召喚師一族への不信感が一層強まる中、トワリスは、ルーフェンの後を追うことを決意するが……。
憎悪と怨恨に染まった、アルファノル盛衰の真実とは──?

【執筆予定のもの】

・〜闇の系譜〜(ツインテルグ編)《複ファ》
アルファノル編後の物語。
世界の流転を見守るツインテルグの召喚師、グレアフォール。
彼の娘である精霊族のビビは、ある日、サーフェリアから来たという不思議な青年、アーヴィスに出会うが……。




……お客様……

和花。さん
友桃さん
マルキ・ド・サドさん
ヨモツカミさん


【お知らせ】
・ミストリア編が、2014年の冬の大会で次点頂きました!
・サーフェリア編・上が、2016年の夏の大会で銅賞を頂きました!
・2017年8月18日、ミストリア編が完結しました!
・ミストリア編が2017年夏の大会で金賞を頂きました!
・サーフェリア編・上が、2017年冬の大会で次点頂きました!
・2018年2月18日、サーフェリア編・上が完結しました!
・サーフェリア編・下が、2019年夏の大会で銀賞頂きました!
・外伝が、2019年冬の大会で銅賞頂きました!
・サーフェリア編・下が、2020年夏の大会で銀賞頂きました!
・サーフェリア編・下が、2020年冬の大会で金賞頂きました!
いつも応援して下さってる方、ありがとうございます(*^▽^*)

Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【1月完結予定】 ( No.404 )
日時: 2021/02/01 21:00
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r1a3B0XH)


†終章†
『黎明』



 みるような冬が過ぎて、季節は春になった。

 吹き抜ける風に撫でられ、一面の花が、さわさわと揺れている。
春は、シルヴィアがいなくなった離宮の庭園を、燦々さんさんと照らし出し、鮮やかに彩ったのであった。

 離宮の石壁に寄りかかって、ルーフェンは、細く立ち昇っていく灰煙を見上げていた。
足元では、ぱちぱちと音を立てながら、黒ずんだ紙片を舐めるようにして、炎が蠢いている。
燃やしているのは、全て、離宮の中から見つかった魔導書であった。

 人を寄せ付けなかったシルヴィアの自室には、禁忌魔術に関する魔導書が、大量にしまい込まれていた。
それが、召喚師一族に代々受け継がれてきたものなのか、それとも、シルヴィアが独自に集めたものなのか、それは分からない。
ただ、蠱惑こわく的に囁き、滴るような色香を以て誰かを誘っている、それらの魔導書を、ルーフェンは、一部を除いて燃やし尽くした。
それが、自分が母にしてやれる、唯一のことのような気さえしていた。

 シルヴィアの部屋からは、侍女とのやりとりらしき沢山の手紙や、手記なども見つかった。
ルーフェンは、それらも、一切中を見ることなく、全て燃やしてしまった。
孤独に綴られた母の想いなど、今更知りたくなかったし、読んではいけないと思った。
彼女が人知れず死んでから、ルーフェンの胸中には、ずっと、虚ろな闇が沈んでいる。
その物悲しさに似た何かを、なかったものとして忘れるためにも、ルーフェンは、亡き母を理解したくなかったし、これからも先もずっと、憎んでいたかったのだった。

 物陰から、長らくこちらを注視していた気配が動いて、ルーフェンは、すっと目を細めた。
警備の者達には、しばらく離宮周辺には近づかぬようにと言ってある。
最近、度々こういうことがあった。
シュベルテにて、教会と対するように並んだ召喚師を、イシュカル教徒が、虎視眈々と狙っているのだ。

 ルーフェンが、指を動かして焚き火を消し、魔力を練り上げた、その時だった。

「──死ね! 邪悪なる悪魔の使い手め……!」

 突然、離宮の影から、男が叫びながら飛び出してきた。
口ぶりからして、やはり教会の人間のようだ。

 男は、持っていた剣を振り上げ、猛然と走ってきたが、しかし、その刃が、ルーフェンに届くことはなかった。
斬りかかる寸前に、いきなり男が白目を剥き、血反吐を吐いて地面に倒れたからだ。

 男は、手足を痙攣させながら、しばらく地面の上でのたうっていたが、やがて、動かなくなると、そのまま息絶えた。
次第に、庭園全体を覆い尽くすように、禍々しい魔力を渦巻き始める。
大気が淀み、草木が戦慄わななき、花の間を行き交っていた蝶は、射落とされたように地に転がった。

 只ならぬ空気を感じて、身を強張らせたルーフェンの前に、それは、煙のように現れた。
重みを感じさせない、華奢な体躯に衣を靡かせ、滝のような黒髪を、ふわりと広げて地に降り立つ。
橙黄の目を怪しく細め、音もなく舞い降りてきたそれは、人の形をしていたが、人間ではなかった。

「……何者だ」

 低い声で尋ねると、それは、温度のない瞳を、ルーフェンに向けた。
滲み出た汗がこめかみを伝い、背筋が冷たく凍っていく。
まともに相対あいたいしてはならないと、本能が告げていた。

 それは、口端をあげると、男とも女ともとれぬ、中性的な声で答えた。

「我が名はエイリーン。北方の砦、アルファノルの召喚師にして、闇精霊の王……」

 ルーフェンは、はっと目を見開いた。
信じ難い言葉であったが、このような魔力を見せつけられてしまえば、その正体は疑いようがない。
それは、紛れもなく、他国の召喚師であった。

「……サーフェリアに、何の用だ」

 続けて尋ねると、エイリーンは、不愉快そうに眉をひそめた。
そして、ふと、視線を落として、転がっていた男の死体の腹を、片足で踏みつける。
その瞬間、死体から、凄まじい腐臭が立ち上ぼり、見る間に肉が溶け、白い肋骨が剥き出しになった。

 腐敗は留まることなく進み、こそげ落ちた肉が滴って、水溜まりのように汚汁おじゅうが広がっていく。
ややあって、半分白骨化した腐乱死体を軽く蹴ると、エイリーンは、忌々しげに鼻を鳴らした。

「口の利き方には気を付けよ。……このようになりたくなければな」

「…………」

 ルーフェンが、ここで抗う理由はないと、口を閉じる。
探るような視線を向けながらも、表向き、従順な姿勢を見せたルーフェンに、エイリーンは、満足げに返した。

「なに、そう身構えるな。争いに来たわけではない。我はそなたと、取引をしに来たのだ」

「取引……?」

 エイリーンは、黒髪を翻して、ルーフェンに近づいてきた。
底光りする橙黄色の眼差しが、銀色と交差する。
その瞳の奥にある、怨嗟(おんさ)と狂気に震える炎を、ルーフェンは、はっきりと見たような気がした。

「我に従え、サーフェリアの召喚師よ。さすれば、そなたの望みを叶えよう。命短き人の身では、決して知ることのない、この世の姿を見せてやろう」

 そう言うと、エイリーンは、唇を釣り上げるようにして嗤ったのだった。


Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【1月完結予定】 ( No.405 )
日時: 2021/02/01 21:11
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r1a3B0XH)



  *  *  *


 誰かが髪に触れた感触で、ファフリは、ゆっくりと目を開けた。
ぴくっと狼の耳を動かしたユーリッドが、心配そうにこちらを覗き込んでいる。
慌てて起き上がると、ごんっと二人の額がぶつかって、ユーリッドとファフリは、思わず草地に突っ伏して呻いた。

「ごっ、ごめんね、ユーリッド! 痛かった……?」

「……う、うん。大丈夫、大丈夫。俺、石頭だから……」

 額を擦りながら尋ねると、ユーリッドが、むくりと起き上がる。
ユーリッドは、ファフリの手を握って、立ち上がるのを手伝うと、自分の髪や服についた草を、ぱたぱたと払った。

 ファフリもそれに倣って、羽毛の混じった髪に指を差し入れると、草や花弁がはらはらと落ちてきて、なんだか恥ずかしくなった。
頭上では、そんなファフリを笑うように、緑葉がかさかさと揺れ、枝に止まっていた小鳥が、鳴きながら飛び立っていく。
昼休憩の時間に二人で会おうと、城の中庭で待ち合わせをしていたのだが、先に到着していたユーリッドが、ぐうすか大の字になって寝ているのを見て、いつの間にか、ファフリもその隣で、昼寝をしてしまっていたようだった。

 暖かな陽射しに向かって、ユーリッドは、うーんと伸びをした。

「ごめん、なんか、すっかり寝込んじゃったなぁ。俺、そろそろ戻らないと」

「え? まだ、お昼の時間だよ」

 真上で燦々さんさんと輝いている太陽を一瞥して、ファフリが目を瞬かせる。
ユーリッドは、頭をぽりぽりと掻くと、困ったように答えた。

「そうなんだけどさ、教官に、放置されてた倉庫整理を頼まれちゃって。今日中に終わらなさそうだから、昼休憩を早めに切り上げて進めないとなって、イーサと約束したんだ」

「……そっか。見習い兵でも、お仕事大変なのね……」

 しゅん、と俯いたファフリであったが、我に返ると、慌てて表情を引き締めた。
ユーリッドは去年、屈強な獣人兵士たちで構成されたミストリア兵団に入団し、立派な正規兵になるべく、頑張っているのだ。

 剣を握らせてもらえるのは十二歳からなので、今、十一歳のユーリッドは、毎日雑用ばかり押し付けられているらしい。
それでも、かなりの重労働のようで、朝から晩まで、汗だくになって働いている。
無理を言って、遊びに来てもらっているのはファフリなのだから、別れを寂しがるような素振りは、見せてはいけないと思った。

「……疲れてる日は、無理してお城に来なくても、大丈夫よ。怪我とかしないように、頑張ってね。私、応援してるから」

 笑顔になって、ファフリが言うと、ユーリッドは、ぱちぱち瞬いてこちらを見た。
ファフリの声は明るかったが、何かを察したのだろう。
ユーリッドは、拳をぐっと握って、力こぶを作って見せた。

「爆睡しておいてなんだけど、俺は元気だから、平気だよ。俺もファフリと話したいし、毎日は無理かもしれないけど、ファフリが寂しいと思う日は、いつでも会いに来るよ! 明日でも、明後日でも、正規の兵士になった後でも」

 そう言って、ユーリッドは、歯を見せて笑った。
その開けっ広げで、真っ直ぐな言葉を聞いていると、いつも、ファフリの胸はぎゅっと締め付けられる。
昇格して、訓練兵や正規兵になると、容易に兵舎から抜けられなくなることを、ファフリは知っていた。
それでも、迷いなく会いに来ると言ってくれるユーリッドの言葉が、本当に嬉しかった。

 ファフリは頷いてから、控えめに言った。

「ありがとう、ユーリッド。私、嬉しい……。でも、訓練兵や正規兵になったら、もっと忙しくなると思うし、任務で遠くに行かなきゃいけないこともあるはずだわ。私はユーリッドが元気なら、寂しくないから、本当に無理しないでね」

「ああ、そっか……。確かに、任務で遠征したら、流石に来られないなぁ」

 難しい顔で下を向いて、ユーリッドは、しばらく何かを考えているようだった。
だが、ややあって、顔をあげると、ユーリッドは、言葉を継いだ。

「……そう、そうだね。もしかしたら、間が空くことはあるかもしれない。でも、ファフリが寂しいときとか、困ったときは、どこにいても、絶対行くから。それで、いつか、一緒に遠くを探検してみよう! ファフリ、前に城から出て、いろんなところに行ってみたいって言ってただろ?」

 ファフリは、眉を下げた。

「う、うん。でも、それは、ちょっとした夢のお話っていうか……。私は、城から離れちゃ駄目って、お父様に言われてるから……」

 目線をそらしたファフリに、ユーリッドは、ぶんぶんと首を振った。

「そんなの、俺が強くなればいいんだよ! ファフリだって、この国で一番強い召喚師様の娘なんだから、これから、びっくりするくらいムキムキになって、強くなれるさ。俺とファフリが強くなって、どんな悪者も倒せるようになったら、どこに行ったって、誰も文句は言わないよ」

「ム、ムキムキ……には、ならないと思うけど……」

 ユーリッドは、雲一つない、真っ青な空を仰いだ。

「この前、初めて、ミストリアの地図を見たんだ。こんなにでっかいノーレントが、地図の上だと、豆粒みたいだった。ミストリアは、本当は、すっごく大きいんだよ。そんでもって、海の向こう──他の国も含めたら、この世界は、俺達が想像もできないくらい、ずっと、ずーっと遠くまで……広がってるんだよ!」

 いつか、行ってみような、と笑って、ユーリッドはファフリの手を握った。
ファフリは、束の間黙っていたが、やがて、笑みを返すと、深く頷いた。

「……うん!」

 二人だけの約束を交わすと、ユーリッドは、慌ただしく塀を登って、兵舎へと帰っていった。
戻ってきた小鳥が、ぴちぴちと鳴いて、ファフリに話しかけてくる。
ファフリは、しばらくの間、その鳴き声に耳を傾けていた。

(海の向こう……か)

 不意に、目を閉じると、ファフリは、見たことのない海の先を想像した。

 遠い、遠い、獣人ではない、別の種族が住まう国。
そこには、ファフリと同じ、召喚師の力を持つ者たちがいるという。
彼らが一体、どんな風に生を受け、歩んでいるのか──考えるだけで、魂が共鳴し、ざわめくような気がした。

 花の香りを乗せて、爽やかな風が吹き抜けていく。
風は、どこから生まれて、消えていくのだろう。
もしかして、海を渡り、世界中を駆け巡って、ファフリの知らないことを、沢山見てきているのだろうか。

 風を感じるように、手を広げると、ファフリは、澄みきった空気を、すうっと吸い込んだのだった。






See you next story....

~闇の系譜~(サーフェリア編)【完】

Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【1月完結予定】 ( No.406 )
日時: 2021/02/01 21:56
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r1a3B0XH)

~あとがき~


 皆様、お疲れ様です!銀竹です。
上巻も合わせると、大体五年くらい続けてきたサーフェリア編ですが、本日、無事に完結させることができました。
いや、ほんと、ようやく終わりましたね……まじで長かった(笑)後半とか、怒涛の更新ラッシュしてすみませんでした……。
私としてはすごく削ったつもりなのですが、これだけの長さになったので、もう自分の組んだ執筆スケジュールが信じられないですね。
まあ何はともあれ、読んでくださった皆様、誠にありがとうございました!
ちなみに闇の系譜、現時点で単行本換算すると20巻分くらいの文字数(大体200万字)あるので、もしミストリア編とか外伝も含めて読破してる方がいらっしゃったら、本当にすごいです……。

 さて、下巻に関して。
ファンタジーというよりは、人間ドロドロ政権奪い合い劇場って感じでしたが、いかがだったでしょうか(笑)
上巻と同じく、小難しいなぁって思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、個人的に嬉しかったのが、今までの執筆ものの中で、下巻が一番参照数の伸びが良かったことですね。
長編って、基本的には読者さんが減っていくもので、もうここまでくると新規読者さんはつかないだろうし、減っていく一方だよなーくらいに思ってた分、余計に嬉しかったです。
理由は、色々考えてたんですが、一つは下巻の執筆期間が他より長かったこと。
あともう一つは、割とスポットライトがあたる登場人物が多かったからかなぁと勝手に思ってます。
上巻は、基本がルーフェン視点で、彼の成長を中心に物語を進めてました。
下巻も、ルーフェンとトワリスが主ではあるのですが、上巻に比べると、色々な登場人物に焦点を当ててたんですよね。
リリアナとか、アレクシアとか、あとはハインツ、サイ、ジークハルト……などなど。
作者的には上巻が気に入ってるんですけど、上巻は、ルーフェン以外の主要登場人物が、おじいちゃんおじちゃんおばあちゃんって感じで、ここは老人ホームか?って状態でした。
私は若者より老人が活躍する物語が好きなので、ああなったわけなんですが、客観的に考えると、下巻の方が彩りはあったのかなぁって気がします(笑)

 下巻は、登場人物だけじゃなくて、要素としても色々詰め込みました。
友情だったり、恋愛だったり、親子愛だったり、憎しみ愛(合い)だったり。
なんでいろんな要素を詰めたかっていうと、ルーフェンよりも、トワリスのほうが、精神的には成長してほしかったからなんですよね。
強者という意味では申し分ないルーフェンだと思ってるんですが、内面は陰キャ小学生なので、対するヒロイン、トワリスには、広い視野をもって、様々なことに関わって成長してほしいなと思ってました。
まあトワリスはトワリスで、融通利かなかったり、あまっちょろい部分はありますが、土壇場に強いのは彼女の方。
ルーフェンは、ダークヒーロー的な側面があるので、トワリスには正統派ヒロイン(拳でのしあがっていくタイプ)として、真っ直ぐさを保っていってほしいなと考えてます。

 上巻と比べると、下巻のルーフェンは、悪い意味で大人になってしまったなぁって感じでした。
最初の方は特に、なに考えてるか分からないし、トワリスにも読者さんにも「昔のほうが良かった……」と思われたかもしれません。
彼がなにを考えているかは、後半に書きましたが、それでも、明らかに闇側の人間であることは確かなんですよね(笑)闇の系譜だし。
ジークハルトという主人公的性格の登場人物が現れたこともあり、本格的に正統派ヒーロー側と、ダークヒーロー側の二つに、焦点が分かれてきたような感じがします。
ルーフェンに関しては、上巻では成長しましたが、下巻ではどちらかというと落ちてますよね。
成長してから落ちて、あれだけ嫌ってた母側に寄っていくのが下巻でした。
ちゃんとハッピーエンドにはなりますが、ルーフェンは、いわゆる主人公らしい主人公ではないので、好き嫌いは分かれるのかなぁって思っています。

 あとは、下巻は、モブじゃない名前ありの登場人物を、結構殺してしまいました。
あんまり報われない死は好きじゃないので、それぞれ意味のある死、終わりの死として扱ってきましたが、書いてて私が病みそうでしたね(笑)
下巻は通じて、まあ長かったってのもありますが、結構書くのしんどかったです……。

 なんか、書きたいことが多すぎて、うまくまとまらないので、あとは長ったらしい解説パートに載せようかと思います。
解説あとがきパートは、例のごとく長いので、ぶっちゃけ読まなくて大丈夫です。
ただ、省いちゃった背景とか、伏線とか、詳しく知りたいって方がいらっしゃいましたら、話ごとに書くので、部分的にでも読んで頂けたらなと思います。

 どこか別の場所でも書いた気がしますが、サーフェリア編は、私が闇の系譜を書こうと思った原点となるお話です。
本当に、ずーっと書きたかったお話なので、サーフェリア編を書き終えた今、割とガチで、人生の目標を一つ達成した!ってくらいの心境です。
正直、淡々とあとがきを書いている場合ではないですね。言語化すると「ァアッ……アァアアァ」って感じです。
闇の系譜はまだ続きますが、書きたい場面は大方書けたので、割と満足してます。

 今後についてですが、次はアルファノル編が始まります。
主人公はルーフェンとトワリスですが、メインでジークハルトとか、バジレットおばあちゃんの孫シャルシス、あと闇精霊のエイリーンあたりが出てきます。
……が、ちょっと疲れたので、すみません、休憩します(笑)
好きで書いてるので、嫌になったとかではないのですが、単純に疲れました。
外伝書いたり、絵描いたりはすると思いますが、アルファノル編の更新自体は、数か月後になるかなと思います。

 はい、それでは、ここまでお付き合いしてくださった方、重ねてありがとうございました!
他の編を読み返したり、アルファノル編もまた読んでくれたら、とっても嬉しいです。
ではでは!



2018.3.4~2021.2.1
銀竹

〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【完結】 ( No.407 )
日時: 2021/02/07 18:31
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r9bFnsPr)

~あとがき~②

 恒例のあとがき解説、他編での伏線などを含めた補足説明のパートになります!
とりあえず思い付いたことを書いていますが、あくまで作者目線の説明になりますので、もし他にも分からないこと、知りたいことがありましたら質問して頂ければと思います!

 ミストリア編からサーフェリア編の下巻までの内容全てを含みますので、ネタバレが嫌って方は、あとがきは見ない方が良いかと思います。
よろしくお願いしますー!


†第三章†──人と獣の少女
第一話『籠鳥』

 下巻はアーベリトに遷都した後からスタートです。
ヒロインのトワリスが出てくるところですね!

 強風で倒壊した建物の下から見つかった半獣人の少女、トワリス。
彼女は残酷絵師であるオルタ・クレバスに使役されていた奴隷でした。
この残酷絵師という職業、実は日本の江戸時代後期に実際にあったものです。
痛め付けた人間の様子(囚人がモデルの場合が多かったようですが)や、戦場の様子を絵に描く絵師ですが、刺激的な作品を描くというので、結構人気があったみたいですね。
私、歴史は全然詳しくないので、専門的なことは何も語れないのですが、闇の系譜を書くにあたり、ちょいちょい国内外の史実を参考にさせて頂くことがあります。
で、トワリスの話を描く時は、奴隷の歴史に関して色々調べたんですけど、年頃の女の子の奴隷の扱いってまぁー……ひどいもんなんですよね(^-^;
リアリティは大事にしたいんですけど、ちょっとこれ描写すんのはな……って思う史実が多かったので、最終的に、トワリスは残酷絵のモデルにされてた、くらいで留めました。
 割と認知されている文化だった、という意味では、別にオルタがやってたことは、犯罪ではなかったんですね。
奴隷制が廃止されているシュベルテとアーベリトでやらかしたので、連行されましたが、ハーフェルンで残酷絵を描き続けていれば、処罰されることなんてありませんでした。

 さて、本編に戻りまして、逃げたトワリスを捕まえるとき、ルーフェンは悪魔フォルネウスを召喚しています。
フォルネウスの能力は、強制催眠、強制暗示ってところなのですが、ルーフェンは、トワリスの他にも、上巻にてノーラデュースでリオット族やオーラントさんにもこの術をかけています。
この設定も裏設定に過ぎないので、ちゃんと決めているわけではありませんが、一度強い暗示を受けると、その他の意識介入は受けづらくなります。
だから、サーフェリア編上巻の二章四話で、オーラントさんにはシルヴィアさんからの術が効きづらかったし、下巻にて、トワリスとハインツも、アーベリトをシルヴィアさんに襲われたとき、なんだかんだで逃れられたのかもしれません。

 残酷絵師オルタ・クレバスの支配下から脱し、ルーフェン十五歳に助けられたトワリス十二歳。
うまく新しい環境に踏み出せないトワリスに対し、ルーフェンは「俺はこの国の、召喚師様だからね」と声をかけ安心させようとします。
この言葉、上巻であれだけ召喚師への就任を嫌がっていたルーフェンが言ったのかと思うと、感慨深いものがありますね(笑)
この言葉は、別に本心ではなく、あくまでトワリスを元気付けるためのものでしたが、全くの嘘というわけではありませんでした。
アーベリトの遷都を実現させ、サミルと一緒に過ごせたことは、ルーフェンにとって「召喚師の立場だったからこそできたこと」です。
上巻の二章三話、リオット族の話の時に、「いつか召喚師で良かったと思うことが来るんだろうか」とルーフェンがぼやいていたシーンがありますが、それは強いて言うならこの時期だったのかなと思います。

 本来であれば、拾った奴隷を国王や召喚師が面倒見るなんてあり得ませんが
・トワリスが見つかったのが慈善活動に力を入れているアーベリトだった。
・トワリスはオルタに買い取られていたので、世間に見世物にされて話題になっているような状態ではなく、存在を隠しやすかった。
・見つけたのがルーフェン(権力者)だった。
・何より、半獣人。
以上のような理由から、トワリスはサミルさんとルーフェンの元でしばらく厄介になります。
流石ヒロイン、色々と運が良かったですね。

 ちなみにトワリスのお母さんである獣人女性は、ミストリア編にてロージアン鉱山(ハイドットの廃液流してたとこ)で働いていたスレインという獣人です。
南大陸の獣人なので、原始的というか、都市部には進出していない貧しい獣人だったんだと思います。
彼女は鉱山で働いている内に、ハイドットの廃液が公害蔓延の原因であると知り、武具精錬の廃止を訴えますが、当時の宰相キリスの妨害によって、その訴えは召喚師(国王)リークスに届きません。
精錬継続(廃液流出続行)の命令が下り、身の危険を感じたスレインたちは、仲間の鉱夫たちと共に国外へ逃亡。命がけで海を渡り、サーフェリアに到着します。
(★この辺の前後関係、詳しい年表はサーフェリア編上巻に載せてます。更に詳細を知りたい方はミストリア編を読んでね)
 サーフェリアの港湾都市、ハーフェルンに漂着したスレインらは、人間に見つかり捕獲され、奴隷として売り飛ばされます。
(★ハーフェルンでは奴隷産業が盛んで、その他違法な密売など色々横行してます。サーフェリア編上巻での王都争奪戦の際に、ハーフェルンの領主クラーク・マルカンは、その点をサミルさんに指摘されてますね)
過酷な環境で、運良く生き残ったのはスレインのみ。
女性だったのと、獣人が珍しかったので見世物にするために生かされていたのだと思いますが、その過程で彼女が人間との間に身籠ったのが、トワリスです。
 ミストリア編の四章三話にて、トワリスは、このことに気づいてますね。
サーフェリア編の段階では、調べても母親の情報が集められず、悶々としていたトワリスですが、運命とは不思議なもので、売国奴扱いされてミストリアに単身乗り込んだ際に、ロージアン鉱山で母親の真実にたどり着きました。



第二話『憧憬』

 トワリスのアーベリトでの生活が始まりました。
この時のトワリスにとって、ルーフェンは助けてくれた不思議なお兄ちゃん的存在です。
周囲から、召喚師であるルーフェンを持ち上げる言葉を聞いて(当時のアーベリト自体が王都になったことでテンションアゲアゲだった)、なんとなく「そんなすごい人なんだなぁ」くらいの認識をしていたんだと思います。
 この時に、一通りの生活の仕方を家政婦のミュゼから、文字の書き方なんかをルーフェンに教えてもらって、トワリスは脱野生児を目指します(笑)
前回の一話でルーフェンに魔術を教えてもらうシーン、そして今回の二話で文字を教えてもらうシーンは、書きたかった場面の一つです。
ルーフェンからすると、トワリスは自分だけに懐いてるペットとか、妹みたいな存在でしたが、トワリスは色々教えてもらって、ルーフェンのことを意識するようなこともあったんじゃないかなと思います。
女の子は、年上のお兄さんに憧れちゃう時期ありますよね。そういう、人間らしさっていうんですかね……トワリスの年頃の女の子感を出したかった話でした!

 文字を覚える過程で、サミルさんを訪ねてセントランスの人間がアーベリトにくる描写があります。
こちら後で関わってきますが、この頃からセントランスはアーベリトを敵認定してますね。
 また、ダナおじいちゃんがトワリスにおすすめしていた絵本『創世伝記』、こちらも後々関わってくるものです。覚えておかなくても大丈夫ですが、このあとがき読んでくださった方はなんとなーく頭の隅に置いておいてください(笑)

 この話では、サミルさんとルーフェンの間にある、ちょっとした溝が垣間見える場面もあります。
レーシアス邸に入り込んだ刺客をルーフェンがあっさり殺して、サミルさんとその他がびっくらポンするシーンですね。
サミルさんは、ルーフェンを少しでも召喚師という立場から解放してあげられるようにと、アーベリトを王都にして彼を引き取りました。
しかし、ルーフェンからすれば、居心地の良い場所を与えてくれたサミルたちのことは、どんな手段をとっても守りたいと考えていました。
実際、当時のアーベリトは王都として機能していくには不十分なところばかりで、サミルの考えでは甘いというルーフェンの危機感の高さは、正しかったように思います。
ただ、ルーフェンはルーフェンで、自分だけが頑張らなければという極端な思考に偏っていったので、そのあたりがまだ視野の狭い子供っぽかったのかなぁと。
まだ距離感が掴みきれていない、親子初心者同士のぶつかり合いだったんですね。
 そんな二人をみて、トワリスは彼らの力になりたいと思うようになりますが、その頃に彼女の孤児院行きが決まってしまいました。
納得いかないトワリスですが、今度は情けではなく実力でレーシアス邸に置いてもらえるようにと、魔導師になることを決意します。
ここからトワリスの新たな人生がスタートする感じですね。



第三話『進展』

 トワリスの孤児院生活が始まりました。
コミュ障&獣女ということで、全然馴染めてないですね(笑)
それでもいいやと吹っ切れて、魔導師になるために一人で黙々と勉強しているトワリスですが、なんやかんやあってリリアナという友達ができました。
リリアナは今後も出てきて、ミストリア編ではユーリッドとファフリを助けてくれる重要人物ですね。
いつも笑っているリリアナですが、本当は弟の前では明るく振る舞っていなければと空元気を見せがちな女の子でした。
そんな彼女の歩けない脚が治せないかと悩んでいる内に、トワリスは自分に合った魔術の使い方を編み出しますし、最終的にトワリスはリリアナの親族に引き取られて里親までゲットすることになります(笑)
彼女との出会いは、トワリスにとっても非常に大きなものでした。
 ちなみに、リリアナの叔母のロクベルさんは、結構裕福な家の人です。
旦那さんが成功した商家の人間で、亡くなってからもロクベルさんに遺産を遺したので(ロクベルさんめちゃめちゃ性格良いから、夫婦仲も良かったに違いない)、余生は趣味程度にお店開いて過ごそうかなーって考えてました。
そこでリリアナとカイルが孤児になっていることを知り、引き取ることを決意。ついでにリリアナと仲良かったトワリスも貰い受けました。金持ちにしかできないことですね!

 ロクベルを後見人としてマルシェの姓を借りたトワリスは、ダメ元で魔導師団の入団試験を受けてみます。
そこで待ち受けていたのは、上巻でも出てきたジークハルト・バーンズ十五歳。
新人魔導師代表で試験官として出てきたジークハルトですが、彼は当時から飛び抜けた秀才として注目を集めていました。
次話から、トワリスの魔導師としての生活が始まります!

Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【完結】 ( No.408 )
日時: 2021/02/08 21:53
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r9bFnsPr)

〜あとがき〜③

†第四章†──理に触れる者
第一話『禁忌』

 獣人混じり故の身体能力の高さが奏功し、なんと実技試験で首席合格しら魔導師団に入団できたトワリス。
魔術に関しては独学なので、筆記試験の成績はギリギリだったものの、持ち前の直向きさで努力して五年。
そこそこの成績上位の訓練生として、トワリスはいよいよ正規の魔導師になるため、卒業試験を受けることになります。
彼女が試験のために組むことになったのが、入団試験の筆記首席合格者サイ・ロザリエスと、トワリスともう一人だけの女魔導師アレクシア・ファオール。
どちらも今後出てくる重要人物です。

 些細な伏線なんですが、トワリスとサイが初めて出会った時のシーンで、サイは、やたらとアーベリトのこととかトワリスの出自とかに詳しいんですよね。
トワリスは半獣人ということもあって有名人なので、調べれば分かることではあるんですが、それにしたって、トワリスは何も言っていないのにサイくん語りすぎ。
後にサイの話が出てきますが、この時から彼は、意識的にトワリスに近づいたと思われます。

 さて、始まった卒業試験、魔導人形ラフェリオンの破壊。
超絶性格の悪いアレクシアに、不信感を抱きながらもついて行くサイとトワリス。
散々振り回される二人ですが、最終的には、アレクシアの目的がラフェリオンに使われていた自分の姉の目だったのだと分かります。
アレクシアは、特別な透視能力を持った一族の生き残りだったんですね(その能力を使って、トワリスをはじめ多くの人を脅してきました)。
そんでもって、本当のラフェリオンの正体は、人形でありながら人間の心を持つ依頼人、ケフィ・ハルゴンだったわけですが、実は、彼は最初から、トワリスたちに紅茶を出しても自分は一杯も飲んでません。
しかも、淹れたての紅茶なのにぬるいと描写してあります。
ここで彼がラフェリオンだと気づいた方はいらっしゃらないかと思いますが、紅茶を飲めない、おいしさが分からない、といった描写は、彼が実は人形であるからでした。

 読者さんには、屋敷で暴れまくってた人形の方をラフェリオンと信じて頂きたかったので、討伐するまでのサイとトワリスの作戦立てのシーンは、結構力を入れて書きました(笑)
上半身の動きと車輪の回転が連動してるんじゃないか、とか、術式が身体のどこにあるか、とか、どこまで追跡能力があるか……などなど。
でも、本物のラフェリオンはその人形じゃないので、あのシーンは本来いらないっていうか、ただのフェイクなんですよね(笑)
頑張って読み込んで下さった方がいたら申し訳ないなぁと思いつつ、騙されて下さってたら嬉しいですb

 ラフェリオン事件が無事に解決し、サイとトワリスは、正規の魔導師に昇格。
アレクシアは、勝手放題やった責任をとって留年になりました。
最後、アレクシアとトワリスが話すシーンで、またジークハルトも出てきます。
この時のジークハルトは、史上最年少の20歳で宮廷魔導師になったスーパーエリートですね(今までの最年少記録はジークハルトパパのオーラントさんでした、バーンズ遺伝子すごい)。
ただ、まだ若いので、魔導師団上層部の腐敗に直接的に手を出せるわけでもなく、悶々としている様子です。
トワリスとジークハルトは、結構気が合いそうというか、ストイックな努力家タイプなので、良い上司と部下になりそうですよね。
そんな二人のことを、アレクシアは割と気に入ってます。
散々暴言を吐きまくってトワリスをいじめたアレクシアですが、彼女はその目の能力故か、裏表のない人間が好きです。なので、ジークハルトとトワリスにはとっても懐いているほうだと思われます(笑)
好きな相手ほどいじめたくなる……なんて表現では収まらないレベルで性格悪いですが、トワリスに対して言っていた「異端」だの「気持ち悪い」だのという言葉も、アレクシアの生い立ちを考えると、全部本人にブーメランなんです。
そう考えると、魔導師団に同期で入団した女二人同士、しかもちょっと特殊な身の上同士というので、アレクシアは最初から、トワリスと友達になりたくて声をかけたのかもしれません。
……いや、そんなことないか。

 前話で出てきたリリアナは普通に良い友達なので、アレクシアには、またちょっと違った関係になる相手として登場してもらいました。
作者的には、アレクシアを書くのはとっても楽しかったです(笑)
小説でこんなに悪口書きまくることあるか?ってくらい悪口を書きました。
闇の系譜はそんなにぶっとんだキャラがいないので(ぶっとびすぎてると作者が好きになれないので)、その中で比較するとアレクシアはインパクト強めだよなと思います。
強烈すぎて、好き嫌いは分かれると思いますが、彼女の狙いとか、最後の回想を見てアレクシアに対する印象が変わったら良いなと思います!



第二話『蹉跌』

 唐突にサイコパス感を出してきたサイくんについては、ひとまず置いておいて。
 無事に正規の魔導師になれたトワリス。
残念ながら、希望のアーベリトには配属されず、港湾都市ハーフェルンの領家令嬢、ロゼッタ・マルカンに専属護衛として仕えることになりました。

 ハーフェルンの領主クラーク・マルカンは、サーフェリア編上巻の王位争奪戦の時にも出ています。
ハーフェルンは、サーフェリアではシュベルテに次ぐ大都市で、物流の要となっている港町です。
シュベルテとは三街の協定を結ぶ前から友好関係にあり、特に召喚師一族に対してはかなり好意的ですね。
好意的というか、ハーフェルン自体がシュベルテの軍事力に依存している節があるので、その総括者である召喚師には媚び媚びなのです。
交易が盛んな分、人や物の出入りが激しい都市でもあるので、非合法な商売やら違法市場やらが黙認されている犯罪の温床でもあります。
上巻では、そこをサミルさんに指摘されたりもしていますし、トワリスが最初に奴隷として暮らしていたのもハーフェルンですね。
クラークさんはやり手の商売人ですが、仄暗い部分からは目を逸らしがちのちょっと腹黒い人です。

 さて、そんなクラークさんが溺愛している娘ロゼッタですが、裏で煙草を吸ってるようなとんでもない不良娘でした。
彼女はすごく頭の切れる人間だと思っていて、クラークさんの狡猾さをちゃんと受け継いでいる&視野が広いので、将来は一層街を盛り上げていける人間になるんじゃないかと思います。
が、トワリスみたいな社会人一年目のぺーぺーには、ちょっとキツい雇用主ですよね。
よく言えば真面目、裏を返せば愚直すぎるトワリスなので、良かれと思ってしたことが空振りまくり、五月病(?)にかかります。

 更にトワリス的にショッキングだったのが、偶然再会したルーフェンの不貞(笑)が発覚したことです。
ルーフェンが女とイチャコラしてたことに深い意味はないんですが、ロゼッタという婚約者がいながら、そういうだらしないことを平然とやってたっていう事実が、潔癖なトワリスからすると一番衝撃かなと思って、書きました。
トワリスって、明らかにルーフェンに夢見てたんですよね……。
憧れのお兄ちゃんフィルターがかかったまま成長して、再会しちゃったので、今回の件でルーフェンの株は大暴落しました。
上巻では主人公だったルーフェンですが、下巻の前半では、腹の底の読めないキャラポジションでいてほしかったので、掴みどころのない描写を増やしました。
まあ実際ルーフェンって、元々こういう感じでしたけどね……上巻でも侍女のアンナちゃん唆したりしてましたし(笑)
ルーフェンは、なかなか人に心を開かない野生動物みたいなところがあるので、慣れるまでは人に執着しないし、割と誰にでも愛想が良いです。
ちなみにロゼッタも、ルーフェンのことはなんとも思ってません。
ただ前述の通り、ハーフェルンは召喚師と仲良くしておきたいので、ロゼッタがルーフェンとラブラブだとクラークさん的に都合が良いんですよね。
ルーフェンも、婚約者くらいいておかしくない立場なので、別に誰でもいいけど、どうせなら頭良くて割り切った関係で付き合える人が楽だなってことで、ロゼッタと婚約関係を結びました。
まあビジネスパートナーみたいな感じですね。
 しかし、トワリスはそんなこと全く知らない上、潔癖なところがあるので、ルーフェンを完全に女の敵認定します。
憧れのお兄ちゃん→不潔変態野郎→何考えてるか分からない人……てな具合で、だんだんトワリスのルーフェンに対する認識が変わっていく様子を、最後まで見守って頂ければと思います。



第三話『結実』

 今までの頑張り過ぎが祟って、ついにガス欠を起こしてしまったトワリス。
この辺りから、ルーフェンのトワリスに対する認識も変わってきます。
 トワリスの愚直さに呆れつつ、昔のよしみもあって、なんとなく放っておけず世話を焼くルーフェンですが、多分彼は、トワリスが魔導師になることには元々反対だったし、そもそも本当に魔導師になるなんて思ってなかったんでしょうね。
心労で倒れるくらいなら、魔導師なんかやめて、またアーベリトに来ないかと誘います。
しかし、元はと言えば、トワリスは、情けをかけられるのは嫌だという動機でレーシアス邸を飛び出しているので、その誘いは断ります。
ルーフェン的には、折角助けてあげるって言ったのに、なんでそんなヘロヘロの状態で断るんだと、内心納得いかなかったんじゃないかなと思います。

 ルーフェンの予想外だったのは、精神面はともかく、戦闘技術面ではトワリスはめちゃめちゃ強かったってところですね。なんてったって実技首席なので、伊達に拳と脚力で魔導師団をのし上がってきてません(笑)
魔力は少ないですが、身体能力が高い&細かい魔力の調整は上手いので、潜在能力だけで言えばトワリスはかなり上位の実力をもった新人という設定です。
 昔ルーフェンに教わった魔術の進化系的な幻術を使い、祝宴に紛れていた刺客たちを見事ぶっ倒したトワリス。
元は意思疎通も満足にできなかったようなトワリスが、こうして魔導師になるまで、一体どれだけ苦労したのだろうと、ルーフェンは感動します。
しかし、うっかりトワリスにときめいたことがバレて、ルーフェンはロゼッタに睨まれます。
でも、喧嘩別れみたいになってますが、ここで、ルーフェンとロゼッタの間に亀裂が入ったりはしてません。
ロゼッタの目的は、リオット族の所有権をルーフェンに譲ってもらうこと、そんでもって父クラークの命を狙う刺客を祝宴の場に誘き寄せて、ついでに倒してもらうことでした(★本編には書いてないですが、この刺客たちは三街を敵視しているセントランスの者達です)。
そもそもが利用しあってる関係なので、全く問題はないですね!
ロゼッタとルーフェンの、腹の探り合いしてるような関係、個人的には好きなので、書くの楽しかったです(笑)

 乳母よりうるさいという理由で、結局ロゼッタに解雇されたトワリス。
今がチャンスとばかりに、今度こそ言い方を間違えないよう、「可哀想だからじゃなくて、君の力が欲しいからアーベリトに来て欲しいんだよ」とルーフェンはトワリスを口説きます。
結果、成功。念願叶って、トワリスのアーベリト配属が決まりました。
これは完全にルーフェンの職権濫用でもありますね(笑)
 ちなみにこの時、ルーフェンは20歳くらい、トワリスは17歳くらいです。青春ですね。
ハーフェルンパートは、ルーフェンとトワリスの関係がちょっと進化するお話でした。


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