月下のクリムゾン  るりぃ ◆wh4261y8c6 /作



第漆妖『羅門深紅隊』7



「だいたい、お主が素直に紅様の頼みを承諾していれば……わらわは紅様と仕事にいけたのじゃぞ!?」

「何ですかそれ! 僕が悪いんですか!? そもそもあなたが同行することないんですよね! 紅さん一人でも十分でしょう!!」

「わらわは紅様をお守りするのが仕事なんじゃ!」

「そんなこといって! この前の戦いには姿もあらわさなかったじゃないですか!」

「あ、あれは紅様に頼まれた情報収集を……ッ!」

「蛭子様? どなたかいらっしゃるんですか?」

急に女中の声がして障子が開くと、蛭子は元の通り肘掛けにくつろいでいた。
微笑を向けて、膝元にいる仔猫を撫でる。

「いや、猫と遊んでいたの。大丈夫よ。」

「に、にゃあー♪」

「……そうですか? 空耳かしら。失礼いたしました。」

首を傾げながら女中が障子を閉めて下がると、二人は安堵してため息とともに肩の力を抜いた。

「……ああ……紅さん、早く帰ってきてください……。僕が団子に殺されそうです……」

「紅様ぁ……さみしいです……。」


二人の嘆きは奥州に届くはずもなく。
団子の山だけがそれをじっと見守っていたのだった。