逃走中~勇気と頭脳で問題都市に立ち向かえ~

作者/ ヨーテル ◆I.1B0IMetU

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~喫茶店~

ryouki(スタッフ)「皆様、お疲れ様でした。これより、1時間の休憩時間といたします。この時間をどう使うかは皆様の自由です。飲み物や食べ物が欲しければ、近くのスタッフにお申し付けください。それでは、失礼します」

逃走中1stステージが終わり、1時間の休憩時間となった。それを聞いた逃走者たちは…

マリオ「疲れた…もう寝よう」

黒子「こうも眠くては、この後戦えませんの…少し仮眠を取りますの」

圭一「この体を休めないとな」

喫茶店にある机に突っ伏すなどして、ほとんどの者が眠りについた。特に、1stステージを戦った逃走者たちにその傾向が強いようだ。

この喫茶店には、牢獄も入ってきている。その中にいる確保者たちも、全員が眠りについていた。こんな深夜の時間帯である。眠くなってしまうのも無理はない…いや、むしろそれが正常である。

しかし、この中でも眠っていない逃走者もいた。今回は、喫茶店にいる人たちの様子を見てみよう。




・・・・・・

竜崎「眠れないな…」

2ndステージを前にして、眠ることが出来ない竜崎。ゲーム中に眠くなるといけないので、コーヒーを飲んでいる。

アカギ「俺は夜型なんでね、この時間帯に起きてるのは慣れてるさ」

竜崎「不健康だな…病気になるぞ?」

アカギと竜崎が同じテーブルにいる。何とも、面白い光景である。

アカギ「しかし暇だ。何か暇つぶしになる物はないか?」

竜崎「トランプならあるが…ポーカーでもやるか?」

アカギ「クク…暇つぶしにはちょうどいいな。2人でやるか…」

竜崎「いや、2人だと面白くないだろう。そこの3人、ポーカーやらないか?」

竜崎が、別のテーブルで話をしている3人に声をかけた。彼らもまた、こんな時間だというのに仮眠もとらず起きている。

上条「お、いいぜ。ただ、たぶん負けるけどな。不幸体質なもんで…」

梨花「やるのです。今いくのですよ~」

フラン「あ、やるやる!」

こうして、暇つぶしのポーカー勝負が始まった。


   ***


竜崎「1回チェンジ、ドロップは無し。手役が一番強かった人の勝ちでいいな?駆け引きも何もないが、暇つぶしだからこれでいいだろう」

竜崎が、トランプを何回かシャッフルし、自分を含めた5人に配る。

上条「それにしても、ミッション1で血を抜いたのは誰なんだ?」

竜崎「さっき竹井久から聞いたんだが、どうも圭一と赤坂らしい」

梨花「大丈夫なのですか?」

アカギ「見る限りは平気そうだったぜ。大丈夫だ、俺も麻雀で血を賭け、1800ccほど血を抜かれたことがあるが、生き残った」

竜崎「よく生き残ったな…まあ、お前だから生き残れたんだろうな」

彼らは、ポーカーの最中に他愛のない(?)話をしていた。

上条「よし、俺は2枚チェンジするぜ」

竜崎(2枚チェンジ…?ということは、スリーカード以上確定?)

フラン「じゃあ…1枚変えるね!」

竜崎(1枚か。考えられるのはツーペア…もしくはフォーカードだが…いや、フォーカードなんて普通入らない。おそらくツーペアだな)

梨花「じゃあボクは、5枚全部変えるのですよ~」

竜崎(言うまでもなくノーペアか…)

竜崎「なら俺は、3枚チェンジだな。アカギ、お前は?」

アカギ「2枚チェンジといこうか。それと、カードは下から取ってくれないか?」

竜崎「下から…?分かった」

竜崎は、アカギの行動に違和感を覚えつつも、カードを配った。

竜崎「それじゃあ、オープン。俺は9のスリーカード止まりだ」

上条「9!?じゃあ俺は負けか…ほら、2のスリーカードだ」

すると、梨花が一瞬妖しく微笑んだ。そして、手札をさらす。

梨花「ストレートなのですよ」

9~Kのストレートであった。

上条「はぁ!?」

竜崎(なんだ今の…こいつの笑い方は。こいつ、本当に小学生なのか?)

5枚チェンジでストレートを引き当てた。なんという強運…!しかし、それを上回る強運がこのテーブルにはあった。

フラン「見て見て!フォーカード!!」

上条「う…嘘だろ?」

フランの手札は、紛れもなく8のフォーカード。つまり、カードが配られた時点でフォーカードが完成していたのだ。

梨花を上回る、圧倒的強運…!

竜崎「どうやら、フランドールの勝ちのようだな」

竜崎は、テーブルの上にばらまかれたカードを回収しようとするが、アカギがまだカードをオープンしていないことに気付く。

竜崎「アカギ…お前の手札は?」

アカギ「ククク…お前らは強いな。運だけでストレートやフォーカード。しかし残念だ。俺もお前ら並み運は持っている。ならば引き分けになるか?いやならない。なぜなら、俺にあってお前らにない物がある…?なんだかわかるか?」

上条「おい…いったいこいつは何を言ってるんだ?」

フラン「さあ…?」

アカギ「ククク…それは、カードに対する嗅覚さ…!」

アカギが、ゆっくりと手札を開ける。その手札に、他のプレイヤーは言葉を失った。

4人「ロ…ロイヤルストレートフラッシュ…」

♠のロイヤルストレートフラッシュ。JOKER無しのポーカーでは、最強の役である。

竜崎「…ん?」

皆が呆気にとられている中、竜崎が何かに気付いた。

竜崎「アカギ…お前、この形からこの2枚チェンジしたのか?」

カードが配られた時点でのアカギの手札は、♠の10、J、Qと、♥のQ、♣のQの5枚だった。

つまりアカギは、スリーカード確定の手をわざと崩し、ロイヤルストレートフラッシュを作った…

竜崎「なぜ…そんなことを?」

アカギ「そこの金髪。そいつに、大物手の気配があった。少なくとも、スリーカードでは勝てない。フォーカードなら数字で勝てそうだったが、それは無理だと察した。案の定、古手梨花に最後のQがあった。なら、ロイヤルストレートフラッシュしか勝つ方法はなかった。ただそれも、普通にチェンジしては駄目だった」

竜崎「…山の下から2枚交換したのは、ロイヤルストレートフラッシュが出来る気配を感じていたからなのか?」

アカギの感覚。それは、常人のそれをはるか上回っている。しかし、それ以上にすごいのは…

竜崎(その感覚に、すべてを委ねられることだ。常人は、たとえそれを感じ取っていても、自分の感覚を疑ってしまう。しかし、アカギにはそんな疑いの念は一切ない。……人間的に狂っているな、アカギは)

上条「いやいや、それってただノーレートだから遊んでみただけだろ?」

竜崎「そんなことはこの男はしない。アカギは、勝負に対して人一倍暗い。大体、遊んでみるなんて気持ちが1%なんてあろうものなら、カードに対する嗅覚は薄れてしまう。そうだろ、アカギ?」

アカギ「ククク…まあ、そういうこと」

竜崎「2ndステージでその狂った感覚が活かされることを、期待してるよ」

アカギは、そのまま席を立つと、カウンターへ向かってしまった。

上条「あいつ…もしかして狂人なのか?」

竜崎「そうだな。それも、ただの狂人ではない。狂った奴っていうのは、理性を飛ばして暴れることはできても、アカギのように冷静にはなれない。ギャンブルで自滅していく奴なんかがまさにそう。負けが込んで、狂って、馬鹿な勝負をする」

梨花「そういえば、こないだ圭一がそんな感じだったのですよ。もちろん、お金は賭けてないただのゲームですけど…」

竜崎「それが普通だ」

上条「なんにせよ…怖い奴だな」

竜崎「全逃走者の中で、アカギに勝てる奴はいない。赤木しげるの狂気の力…それは、俺たち人間の理解をはるかに超えているんだ。そういう意味では、アカギが味方で本当によかったよ」




赤木しげるの恐ろしさ。竜崎、上条、梨花、フランの4人は、それを改めて再確認したのである。
あの狂気の力は、逃走中2ndステージで、どのように活かされるのか…!