逃走中~勇気と頭脳で問題都市に立ち向かえ~

作者/ ヨーテル ◆I.1B0IMetU

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リュカ「え!?あの、僕通報者じゃ……いや、ごめん。どうせ信じてくれないだろうね。だから……全部倒す!」

とうとう竜崎と文に見つかってしまったリュカ。推理中は、ついに最終決戦を迎える。

竜崎「(リュカ……さすがだな。自分が通報者であることを否定せずに、倒しに来た)」

普通の人間ならば、ここは通報者であることを否定するだろう。しかし、否定したところで、竜崎と文が信じるわけがない。否定しているときは、動揺したふりをしているという事。それが隙となり、撃破される可能性を生んでしまう。そういう意味で、リュカの判断はさすがと言わざるを得ない。やはり、ここは経験の力が出る。

文「じゃあ……いきますよ!」

竜崎「ああ!」

竜崎、文、そしてリュカ。この3人は、1つずつバトルボールを保持している。殴り合いという事になるわけだが、竜崎と文が組んでいる分、リュカは不利となる。

が、しかし。そんな圧倒的劣勢を感じさせないほどの、リュカの戦闘能力は高かった!

竜崎「はあっ!」

まず、竜崎が至近距離からバトルボールを押し出すように投げる。普通はこれで撃破される。しかし、リュカは……

リュカ「やっ!」

竜崎「避けるの速いな!」

身体を1回転させ避ける。

文「甘いですよ!」

さらに、文がリュカの頭上からバトルボールを持って襲い掛かる、2段攻撃を仕掛けるが……

リュカ「ヒラリ!」

文「いっ!?」

文がバトルボールを投げる前に、リュカが避ける。文は、バトルボールを投げるタイミングを失い、そのまま地面に着地した。

文「速いですね……」

そう。リュカの武器は、その小柄な体を活かしての回避だった。もともと、リュカはスピードを生かすタイプではないが、それでも逃走者64人の中ではトップクラスの速さを持っている。

リュカがなぜここまで残ることが出来たのか……それは、



竜崎「はっ!」

リュカ「よっと!」(回避)

スピード!



文「やあっ!」

リュカ「よっ!」(回避)

スピード!



竜崎「行けっ!」

リュカ「危ない!」(回避)

そしてスピードなのだ!!




文「はぁ……はぁ……竜崎さん、当たりませんよ」

竜崎「まいったな……」

竜崎と文は、バトルボールを拾っては投げていたが、リュカのスピードの前に全く当てることが出来ない。幸いにも、時間はまだあるため、時間切れでゲームオーバーという事はないが、リュカが攻撃してくる可能性も考えたら、あまりうかうかしていられない。

文「竜崎さん、突撃してください。私に考えがあります」

竜崎「考え……?分かった。やってみよう」

文の作戦で、竜崎突撃!



リュカ「(また突撃……でも!)」

リュカにとって、これを避けることくらい造作もない。竜崎の動きをよく見ていれば、たとえ至近距離でも、避けることが出来る。

リュカ「(よく見るんだ……竜崎さんの動きを!)」

リュカは、竜崎の動きに注目していた。しかし、リュカにとっては、そして竜崎にとっても意外な方向から、リュカに向かって声がかかった。



文「……ゲームセットです。リュカさん」

リュカ「…………え?」

なんと、文がいち早くリュカの後ろに回り込み、リュカを羽交い絞めにしていた。

リュカ・竜崎「(いつのまに!?)」

これには、味方の竜崎でさえ驚いていた。竜崎がリュカに突撃するために走り出したのがおよそ2秒前。その間走った距離が15mほど。だが、文はその2秒間で、25mほどの距離を移動した。まさに、瞬間移動といってもいいほどの速さである。

文「速さが自慢なのは、貴方だけではないのですよ。リュカさん。……さあ!」

竜崎「あ、ああ……それじゃあリュカ。ゲームセットだ」

竜崎は、もう抵抗することのできないリュカに、優しくバトルボールを落とした。

ポンッ



リュカ            ゲーム残り時間

撃破 残り10人        25:00




・・・・・・

主催者「勝負……あったな」

エリー「勝負……ありましたね」

主催者「『運命』…」

エリー「え?」

主催者「『運命』ってものについて、もう1度考えてたんだ。俺の出した答えを言おう。『運命』とは…………誰も覆すことのできない、絶対的な力だ!!」

・・・・・・




プルルルル……プルルルル……

一ノ瀬「メール。撃破情報……!」

圭一「な、なんて書いてあるんだ!?」

一ノ瀬「ちょっと待って……『アパート付近にて、竜崎悠太によりリュカ撃破 残り10人』!」

咲夜「竜崎……やったのね!!」

KAME3「うおおおおおおお!!!今日は大パーティーだ!!!」

圭一「……へっ!さすがだぜ、竜崎!」

逃走者たちの中で起こる大歓声!逃走中の途中、ハンターに見つかるかもしれないという危険も顧みず、逃走者たちは勝利を喜ぶ!!














…………が、それもつかの間。実はこのメールには、おかしなところがある。それに最初に気付いたのは、KAME3と翡翠煉だった。

KAME3「あれ?普通、通報者が撃破されたら、『通報者リュカ撃破』ってメールが送られてきませんか!?」

煉「本家では、裏切り者が捕まると、必ずそのことがメールによって告知されていた。今回はそれがない……ということは」

そして浮かび上がる、最悪の可能性。それには、竜崎や咲夜もすでに気づいていた。

竜崎「まさか、リュカは……」

咲夜「通報者じゃ……ない?」

これこそが、真実。竜崎達が必死に情報を集め、情報戦に持ち込んだ結果。これこそが、推理中の最期。




咲夜「そんな……!そんなことって……!」

KAME3「咲夜さん、泣かないでくださいよ……俺だって悔しいんですから!」

その事実には、完全で瀟洒なメイドが涙を流し……



一ノ瀬「うそでしょ……こんなの嘘よ!」

圭一「あああああああああ!!」

情報を提供した一ノ瀬と圭一が正気を失い……



竜崎「うっ……うはっ!」

文「竜崎さん!?大丈夫ですか!?あれ、なんか私も……」

幻想郷の伝統ブン屋と、県No1の高校に通う天才が、ショックで倒れる寸前まで精神を壊した。




全ては、通報者の手の中だったのだ。やはり、運命に抗うことなどできないのだ。今いる逃走者の力だけでは、最早、通報者にこれから立ち向かうなんてことは、出来るわけがなかった。