逃走中~勇気と頭脳で問題都市に立ち向かえ~

作者/ ヨーテル ◆I.1B0IMetU

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黒子「あら?ホテルって、ここではありませんの?」

パチュリー「どうやらそのようね。すぐに入りましょう」

魅音「ゲーム中断か~おじさんとしては、やる気はいってたからこんなことは勘弁してほしかったんだけどね~」

偶然ホテル前にいた3人。早速入ろうとすると、ホテルの入口にいたスタッフのヨーテルに呼び止められた。

ヨーテル(スタッフ)「このホテルに入ると、明日の深夜1時のゲーム再開まで、外に出ることはできませんが、よろしいでしょうか?」

黒子「え…?別にかまいませんの。外に出る用事もありませんし…」

ヨーテル(スタッフ)「そういう事ではありません。今ホテルに入るという事は、他の逃走者より先にホテルに入るという事ですよね…?」

魅音「それが何か問題があるの?」

ヨーテル(スタッフ)「貴女方は雨に濡れることなくホテルに入る…しかしほかの逃走者は、これから降るであろう雨に濡れてしまうのですよ。これがどういうことか…分かりますか?」

黒子「ぜんっぜん分かりませんの!それは他の逃走者の運が悪かったというか、それだけで…」

黒子の言うことは完全に正論である。他の逃走者が雨に打たれようと、それはこの3人が知ったことではないし、ホテルに入ってしまえばシャワーを浴びることが出来る。今多少の雨に打たれようと、問題はない気がするが…

ヨーテル(スタッフ)「まだ…分からないんですか?気付かないんですか?ならもうぶっちゃけます。今、この雨が降ることによって、困る逃走者が4人いるんです!雨ごときで、困る逃走者が4人もいるんです!ここからは、こちらの事情で言うことはできませんが…どうか、あなた方に人間の心があるのなら…その4人を、助けに行ってあげてください」

パチュリー「だから、その4人って誰なのよ?」

ヨーテル(スタッフ)「私は、このゲームのスタッフです。これ以上は、さすがに…でも、貴女方ならわかるはずです」




ザアアアアアア!ザアアアアアア!

雨が、降りだした…




ヨーテル(スタッフ)「降ってきました。このままホテルに入るか、それとも、このエリア内で困っている4人を救うか…決めてください」

降り出した雨は、ヨーテルを含めた4人の体を濡らす。

と、その時…!




??「ぐわああああああああ!!」

??「きゃああああああああ!!」

??「いやああああああああ!!」




耳をつんざくような悲鳴…!

4人「!」

そして、この悲鳴に連動したかのように…

白井黒子の正義感が…

園崎魅音の記憶が…

パチュリー・ノーレッジの知識が…

黒子&魅音&パチュリー「ああああああああああああ!」

今、開花した…!

ヨーテル(スタッフ)「気づいた…気づいたんですね!?今このエリア内で困っている4人が誰なのか!」

魅音「いや、2人しかわからないけど…助けに行こう!」

パチュリー「そういうことなのね…私としたことが!あ、でもあと2人は?」

黒子「私も2人しかわかりませんが…とにかく助けに行きますの!」

少し不安要素の残る3人だったが、その事実に気付くと一目散に走りだした。




そして、残された作者は…

ヨーテル(声)「頼んだぞ…あの4人を…救ってくれ!」




逃走中は中断された。しかし、どうやら眠れそうにはない。
このエリア内で困っている4人を、助けないことには眠れるはずもない…!



エリア内に轟いた悲鳴。それを、何人かの逃走者が聞いていた。

フェイト「な…何!?」

咲「すごい声…でも一体誰の?」

雨が降ることによって困ることになる、ある逃走者が上げた悲鳴である。




黒子「早く…早く行かなくては!助けに行かなくては…!」

ホテル前で、困っている逃走者のことに気が付いた黒子。

竜崎「…ん?あれは、白井?」

上条「おい、白井黒子!何やってんだ!?」

それを見た、竜崎と上条。黒子の尋常じゃない様子に驚き、声をかける。

黒子「ちょうどいいですの!」

2人は、黒子から事情を聞く。

黒子「この雨で、困ってる逃走者がいるんですの!助けに行きますわよ!」

上条「お…おい!誰だよ、困ってる逃走者って」

竜崎「…ん?ああ、そういう事か!」

竜崎が、突然大声を上げた。

上条「どういうことだ?説明してくれ」

竜崎「時間が惜しい、走りながら説明する。……結論から言ってしまうと、今困っている逃走者は、圭一…そして赤坂さんの2人!」

黒子「その通りですの。あの2人は、ミッション1で血を800cc抜いていますの」

竜崎「そうだ。そして、この突然の雨と、気温の変化。血を抜いた彼らが、耐えられるかどうか…」

上条「いやいや、大丈夫だろ?それくらいは…」

竜崎「彼らは、血を抜いただけじゃない。毒の影響を受けている。それも、血を抜いたせいでかなりの影響を…」

上条「あ!」

ただ血を抜いて、雨に打たれて体温が下がるくらいなら、圭一と赤坂のことだ。あまり問題はないだろう。しかし、ミッション4の毒。これを受けた圭一と赤坂は、今限りなく体調が悪いはずだ。

つまり、今圭一と赤坂は…


血を800抜かれている+強力な毒の影響を受けている+雨のせいで体温が下がっている


という状態になっているという事だ。これでは、いくらあの2人と言えど、危うい…!

上条「じゃあ、早く助けに行かねえと!」

黒子「だからそう言ってますの!ですが…」

竜崎「…どうした?」

黒子「あと2人…困っている逃走者がいるって、スタッフは言ってましたの…」

竜崎「あと2人…?心当たりはないな」

雨のせいで困っている逃走者とは、赤坂と圭一だった。さあ、あと2人は…?




スタッフ「嫌いな逃走者を教えてください!」

なのは「…え、何?こんな時に…」

ホテルに向かっているなのは。しかし、スタッフに妙な質問をされる。

なのは「う~ん…みんないい人そうだったし…あ、でもしいて言えばアクセラレータ君かな…ちょっと苦手なんだよね」

スタッフ「ありがとうございました!」

スタッフは、どこかへ走って行ってしまった。

なのは「なんだったんだろう…あ、ホテルに向かわないと!」

しかし、ここにもう1人の人間が姿を現す。

魅音「あっ、なのは!」

なのは「魅音…ちゃん?」

魅音「お願い!一緒に来て!このままだと、圭ちゃんが…赤坂さんが…!」

なのは「ごめん、何の話?」

魅音「あっ、えっとね…」




説明中…




なのは「大変!じゃあすぐに助けに行かないと!」

魅音「二手に分かれよう!圭ちゃん達が見つかったら連絡して!」

なのは「分かった!」

魅音から事情を聞いたなのは。圭一と赤坂を探す!




そして、作者さん達もこの異常さに気付く。

izumi「ああ、そういうことでか!」

フラット「圭一さんと赤坂さんが危ないです!」

前半戦を、詳しく見ていた作者さん達。ミッション1の様子から、圭一と赤坂の体が危ないことに気が付いた。




煉「悲鳴の聞こえた方に行きましょう!」

しら「あれ、悲鳴って…いくつか重なってませんでしたか?」

煉「…え?」

そう、この雨で困っている逃走者は、圭一と赤坂だけではないのだ…!


竜崎「そうだ…あの悲鳴…女の悲鳴が入ってなかったか?」

上条「そういえば…そんな気もするな」

黒子「女性の方…ですが私には、雨で困ることになる女性の方なんて心当たりはありませんの」

上条「俺たちが来てるのはベストだから、服が透けてしまう…なんてこともないしな」

黒子「不潔ですのよ!」ドカッ!

上条「ゴハァ…」




―――ん――――――くん!




上条「…ん?何か言ったか?」

竜崎「いや…何も?」

黒子「あ…!あれを見てくださいまし!」

黒子が指を刺した方向に目をやると、そこには…



赤坂「圭一君!圭一君!」

圭一「…………」

倒れた圭一に、必死に声をかける赤坂の姿があった。



竜崎「け…圭一?圭一!」

上条「おい、大丈夫か!」

黒子「これは…」

その声に反応して、赤坂が振り返った。

赤坂「ああ、君たちか…見ての通りだ、圭一君が倒れてしまった。意識はない。いまは、私の服をかぶせて体温を保っているが…危険な状態だ」

竜崎「さっきの悲鳴は…赤坂さんのだったんですね」

上条「おいやべぇぞ!早く圭一をホテルに運ばねえと!」

竜崎「赤坂さん、俺が圭一をおぶっていきます」

赤坂「すまないね…こういうことは、私がやるべきなのに…」

竜崎「いいえ、赤坂さんもきついでしょう。圭一と同じ条件でこの2ndステージに挑んでるんですから…」

竜崎は、圭一をおぶって走り出そうとした。その時…



なのは「圭一君!」

魅音「圭ちゃん!大丈夫!?」

日南六町「圭一さん…」

KAME3「これはまずい…」

4人の逃走者が、竜崎たちと合流した。



竜崎「圭一は俺が運んでいく!お前らは、エリア内をくまなく捜索して、いまエリア内で苦しんでいる女を探してくれ!どうやらいるらしいんだ…まだこの雨で苦しんでいる逃走者が…」

魅音「分かった…圭ちゃんを任せたよ!」

なのは「でも、女の逃走者って…誰?」

KAME3「……あ!」

日南六町「どうしました、KAME3?」

KAME3「わかりました!雨で苦しんでいる女性の逃走者…早く助けに行かないと!」

なのは「誰?誰?」

KAME3「あとで説明します!そうだ、なのはさん…エリア内を回って傘のようなものを用意してもらえませんか?」

なのは「傘だね…分かったよ!」

KAME3「魅音さんも、傘を調達してきてください!出来ればたくさん…最低でも4本です!」

魅音「たくさん?分かった!」

KAME3「日南六町さんと俺は、その逃走者の元へ向かいます!傘の用意が出来次第すぐ来てください!」

KAME3は、逃走者たちをうまくまとめて指示を出していた。これによって、各自の役割がはっきり決まり、迅速に動くことが出来た。

KAME3「さあ、1秒も無駄にはできません!行きますよ!」

日南六町「分かりました」




逃走者が、他の逃走者を助けるために雨の中を走り回っていた。それは、今回出てこなかった逃走者も例外ではない。黒子、魅音、パチュリーの3人によって、エリア内で苦しんでいる逃走者がいるという情報は、確実に伝わっているのだから。

圭一は、竜崎が保護したため、命の危険はないだろう。
赤坂は、持ち前の身体能力でこの状況に耐えている。
さあ、残る2人の逃走者を、救うことはできるのか…!