逃走中~勇気と頭脳で問題都市に立ち向かえ~
作者/ ヨーテル ◆I.1B0IMetU

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外では、逃走者たちが他の逃走者を雨から救うために動いている。
一方、牢獄にいる者たちはホテルに移動させられていた。
~ホテル内 牢獄~
ヴィータ「おい、誰かホテルに入ってきたぞ」
ルイージ「あれは…竜崎と赤坂さんと…圭一!?」
初春「でも、なんて圭一さんを竜崎さんがおぶってるんですか…?」
牢獄の者たちが、不審がる…
竜崎「くっ…やはり圭一は重いな…」
レナ「竜崎君!圭一君はどうなってるの!?」
竜崎「結論から言うと、倒れた。ミッション1で血を抜いたせいで、毒の影響をモロに受けている。それにこの雨で体温が下がるからな」
詩音「ちょ…圭ちゃんは大丈夫なんですか!?」
竜崎「問題ないと思うが…スタッフ!医者を呼んでくれ!」
ryouki(スタッフ)「わかりました。有能な医者を呼んできます」
ryoukiはその場から立ち去ると、スタッフ室に消えていった。
竜崎「それで…逃走エリアにはあと2人、この雨で困ることになる逃走者がいるらしいのだが…心当たりはあるか?」
竜崎は、圭一を近くにソファに寝かせた後、牢獄の者たちに尋ねた。
ルイージ「あと2人…心当たりはないね」
久「私も、分からないわ」
しかし、牢獄の者たちから有力な情報は得られなかった。
竜崎「そうか…ところで、十六夜咲夜の姿が見えないようだが…」
確保者として牢獄にいるはずの咲夜の姿は、なかった。
魔理沙「あ~咲夜な。なんか、作者が雨の報告をした直後に、牢獄打ち破りそうな勢いで暴れだしたから、いったん薬で眠らされてるぜ。まったく、何で暴れだしたりしたんだか…やれやれだぜ」
竜崎「暴れた…?一見冷静そうな十六夜がか?フム……女の悲鳴、雨、そして十六夜咲夜の暴走…どうやら、この辺に残る2人を特定するヒントがありそうだが……クッ、分からん」
赤坂「竜崎君でもわからないのか…」
竜崎「KAME3が分かったそうですから、あとはKAME3に期待しましょう。俺たちの出番は終わりです」
赤坂「それじゃあ、私は圭一君の傍にいよう」
竜崎「その必要はないでしょう。有能な医者が来るそうですし、赤坂さんだって体力をかなり消耗しているんです。休んだ方がいいですよ」
赤坂「そうか、すまないね…」
竜崎と赤坂は、スタッフから個室の鍵を受け取ると、そのまま階段を上って行った。
***
アカギ「ククク…ホテルが見えたか。入ってもいいんだが…」
アカギ、ホテルにたどり着くが、なぜか中に入らない。
アカギ「まだ、俺のすることが残ってる気がする…ここは、もう少し逃走エリアにとどまっておくか」
アカギは、何かを感じ取ったのか、来た道を戻って行った。するとそこで、偶然ある人物と鉢合わせた。それは…
パチュリー「ア、アカギ!?」
アカギ「パチュリーか。どうした?」
パチュリー「丁度良かったわ。貴方、レミィと妹様を……いえ、レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットを見なかったかしら?」
アカギ「見てねえな。その2人がどうかしたのか?」
パチュリー「いえ、ちょっとね…」
パチュリーは、アカギから目をそらした。言いたくなかったのだ。レミリアとフランが吸血鬼だという事を。
レミリアとフラン…この2人は、500年を生きた吸血鬼である。身体能力は、全逃走者の中でもトップクラスに位置しているが、弱点もある。その弱点は、吸血鬼の弱点がそのまま当てはまる。つまり、レミリアとフランは…流水が苦手なのだ。
通常、人間は雨に打たれたところでどうってことはない。しかし、吸血鬼は違う。雨に少し打たれるだけで、身体からは煙が上がり、溶けてしまうのだ。それでも、死ぬことはないのだが、辛いことに変わりはない。
パチュリー「それじゃあ、アカギは先にホテルに入ってて。私はもう少しエリア内にいるわ」
そう言って、その場から立ち去ろうとするパチュリー。しかし、そのパチュリーの肩を、アカギが掴んだ。
パチュリー「な、何?」
アカギ「……レミリアとフランドールは、おそらく人間ではない。違うか?」
パチュリー「……!!」
突然のアカギの言葉に、パチュリーは目を見開いた。
アカギ「ククク…図星か」
パチュリー「……ええ、そうよ。あの2人は吸血鬼なの」
アカギ「なるほど、確かに吸血鬼なら、雨が苦手なのも納得がいく。このゲームが深夜開催なのも、その2人に太陽の光を当てないためか」
パチュリー「他の逃走者には、この事実は出来る限り知られたくなかったわ…」
アカギ「何故だ?」
パチュリー「人間は、強大な力を持ち、かつ知能を持っている種族を嫌うのよ。もしこの事実を、他の逃走者が知ったら、彼女たちは必ず邪険に扱われてしまう…!」
アカギ「……そうかな?俺は、そうは思わない。なぜなら、ここにいる逃走者は、修羅場をくぐってきた狂人だらけだから…!」
狂人と言われれば、どうしても赤木しげるを思い浮かべてしまう。しかし、実はアカギ以外の逃走者も狂人だらけなのだ。
高町なのは、上条当麻、マリオ、スネーク。少し考えただけでも、これだけ普段命を賭けて戦っている者たちが思い浮かぶ。彼らは、間違いなく狂人…!なぜなら、彼らは目的のために、自分を捨てることが出来るから…!
アカギ「そんな奴らが、いまさら吸血鬼ごときに臆して、邪険に扱うわけがねぇ…!むしろ逆…!受け入れるはずさ、その事実を…!」
パチュリー「その言葉…信じていいの?」
アカギ「信じられねえっていうなら証拠がある。見な、あそこを…」
アカギは、前方を指さした。しかし、そこには何もなかった。
パチュリー「からかってるの?何もないじゃない」
アカギ「よく見てみろ」
パチュリーは、目を細めて前方を見た。すると、人影が見えた。しかも、1人や2人の影の大きさじゃない。ざっと見積もっても、10人…20人くらい…下手をするともっといるかもしれない。
その影は、だんだんこちらに近づいてきている。やがて、パチュリーの目でも目視できるような位置に影がやってきた。その影の正体とは…
KAME3「大丈夫ですか?レミリアさん、フランさん」
レミリア「え、ええ…大丈夫よ」
日南六町「傘が2本しかないと聞いたときはどうなることかと思いましたが…みなさんが来てくれて助かりました」
なのは「みんな、あと少しでホテルだよ!」
アカギとパチュリーを除く、エリア内にいる逃走者全員だった。
まず、なのはと魅音が持ってきた傘で、レミリアとフランの頭上をガード。しかし、傘は2本しかなかったため、少し雨が当たってしまうのだが、他の逃走者が円陣を組み、その中央にレミリアとフランを入れながら移動することで、2人を雨から完全に守っていたのだ。
シグナム「最後まで油断するなよ!ホテルに着くまで、一滴の雨もこいつらに当てさせるな!」
izumi「分かってますよ!」
ゆうやん「最後まで守るんです…!俺たちは仲間なんですから!」
アカギ「ククク…どうだ?」
パチュリー「信じられないわ…まさか、吸血鬼を逃走者全員が守るなんて…」
すると、円陣の先頭にいたKAME3がパチュリーに気付いた。
KAME3「パチュリーさん……守りましたよ」
パチュリー「…なんで?なんで貴方たちは、吸血鬼を嫌わないの…?」
KAME3「ハハ…そんなの、決まってるじゃないですか」
煉「そうです、決まってます」
フラット「ええ、決まってますよね」
――――――『仲間』ですから。
その言葉を聞いた時、知識の魔女パチュリー・ノーレッジは2つのことを確信した。1つは、ここにいる逃走者は全員吸血鬼を救うような愛すべき馬鹿であるという事。そして、2つ目は…
逃走者同士に、確かな絆が存在すること―――

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