小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第一章 幽霊からのテガミ編(1)



ピピピピピピピピピピピ…… ピピピピピピピピピピピ……


翌朝。目覚まし時計の音で目が覚めた。時刻は5時半。布団の温もりの中でぼうっとした意識のまま、何となくさっき見た夢を思い出そうとした。が、あまりうまくいかなかった。草刈りをしている男の子の夢だったことは確かなんだけど。

意味分かんないや(´Д`;


そういや、昨晩のカキコの異変はどうなったのだろうか。カイコは流石にないだろ。小説カイコか……ぷぷぷ。
朝ごはんのお茶漬けを胃袋に流し込み、歯を磨きながらパソコンの電源を点ける。しばらくするとブーンと聞き慣れた粗動音がして、デスクトップの草原が現れた。そのまま、インターネットを開いてカキコのサイトへと飛ぶ。
…………特に異常なし。
昨日「カイコ」だった部分は何事も無かったかのように「カキコ」に戻っていて、熊のキャラクターが持っていた白い芋虫もいつも通り羽ペンに戻っていた。まるで、ハナっから何も無かったかのように。
謎は多いままだったが構っているヒマはない。腕時計に目を落とすともう6時になっていた……まずい、これ以上ゆっくりしていると電車を逃してしまう。
玄関を出て、自転車の置いてある駐車場へと向かった。昨日の晩は雨が降ったらしく、玄関のタイルがじめじめと湿っていて、植木の葉も多く朝露を光らせていた。自転車のハンドルも水で湿っている。

―――― ん?
チャリのカゴの中にエナメルを詰めようとしたら、いっぱいに何か妙なものが詰まっていた。ピンポン玉より一回り小さめのカラフルなボール。赤もあれば青も黄色も緑色もあって、目がチカチカする。あれだ、スーパーボールって言うんだっけ。奴らがざっと100個以上詰まっているっぽい。
しかしこんなタチの悪いいたずらをしたのは誰なんだろう。それより、これは一体どうしたらいいんだろうか……。
そんなことを考えていると、ポーンと後ろから軽い音がして、足元で何かが跳ねていた。勢いよく跳ねるソレは青い、スーパーボールだ。

急いでボールの飛んできた方向を見ると、誰かがこちらを見ていた。朝って言ってもまだ暗くて顔がよく分からない。けれど、シルエットから判断するに投げた犯人は子供らしい。俺と目が合うと、そいつは走って逃げて行った。

「おい、ちょっと待てよ!」
走りながら叫んでも振り向きもしない。数十メートルくらい走るとそいつは急にピタリと止まった。華奢な体に山吹色の腰まであるパーカー。近所の中学生だろうか?


「スーパーボール投げたの、き…」
「やっぱり。」
君だよね? と聞こうとして、急に言葉を遮られた。すると、そいつはくるりと体の向きを変え、いきなり真正面から俺に体当たりを食らわせた。細い体のどこにこんな力があったのかと思わせるぐらいに物凄い勢いで。

「うわっ、」
派手に尻餅をついてしまうかと思ったが不思議なことに俺の背後にあるべき地面が無かった。……どうやら信じられない事にマンホールのフタが開いていて、俺はその中に突き落とされたらしい。






              嘘だろ/(^o^)\wwww