小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第一章 幽霊からのテガミ編(3)



「わかった。お前、


            カイコマスターになれ。」




………えーと。
蚕??

「え、、、蚕マスターって言った?」
奴は何も答えずに、パソコンの電源を点けた。まだ真っ暗なパソコンの画面の方を見つめて、俺に背中を向けたまま、また話しかけてきた。

「昨日、変なもの見たろ。」
「うん。」
「おい、なんだった…?」
ゆっくりと俺の方に振り返った奴は、興味津々な顔をしている。
「――― えーっとね、いっつも行ってるサイトがあるんだけど、そのサイトの中のいろんな文字が“カイコ”になってたな。あとそのサイトに熊のキャラクターがいるんだけど、それが芋虫を握ってたりしてたぐらいで――――― あとはいつもと変わりないかな。」…………自分で説明していて思ったけど、けっこう昨日すごいことがあったんだね。

「そうか。そんじゃ、説明してやろう。カイコマスターについて」
たった今立ち上がったそのパソコンの壁紙は真っ黒だった。真っ黒な背景に一つ、穴が開いたように“インターネット”のアイコンがあった。

「昨日のそのサイトでお前は勘違いしているみたいだが、カイコマスターっていうのは、昆虫の蚕とはあまり関係ない。」
「……あまり?」
「察しの通り、少しは関係があるという事だ。まぁ、その話は一段落してから話そう。」
そこまで話すと、奴はパソコンの方に向き直って真っ黒な画面に一つだけあるアイコンをダブルクリックした。
「カイコマスターは様々な方法でランダムにこの国に在住している者の中から選ばれる。お前が選ばれた方法は“ネット選出”だろう。
まぁ、そんな事はどうでもいいが―――― カイコマスターというのはお前の知っている言葉で表すなら………うーん、まぁ人助けと言ったところか。私もカイコマスターに救われた身だからな。その活動内容は契約終了後にしか伝えられない。ああ、収入は約束するから安心しろ。」


……はぁ(´A`; 
朝から変な奴に捕まってしまったようだ。あれかな、こいつは厨二病ってやつかな……

「へぇ、そうなんだ」とりあえず、返事をする。
「もう帰れ。人が来る。」
「え?」
「帰れと言っている。そこにハシゴがあるだろ、登れば地上に出れる。助けが欲しいなら手伝ってやるが?」

いいや、けっこうです。

それにさ、
電車、行っちゃったと思うんだよね。もうやだ……