小説カイコ ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作

第二章 鎌倉編(3)
その後、学校が終わり、部活も終わり、いつもよりちょっと早めに駅に着くと時木が待っていた。
「おい、国由はどうだったか!?」 会うなり挨拶もなしに鈴木の安否を聞いてきた。
「特に異常なし。部活でしか会ってないけど、普通に400メートル何本か走ってたよ。」
「そうか……良かった。」時木はほっと肩を落とした。
………こういうところ、やっぱりお姉ちゃんなんだな。思わず、笑ってしまった俺を、時木が睨み返した。
「言っとくがな、私はお前より3つも年上なんだからな!? ガキ扱いされては困る!」 言いながら俺の右肩にパンチを喰らわした。
「はいはい、すいませんでした(笑)」時木のパンチを軽く受け止めながら駐輪場へ急いだ。
「コ……コノヤロォ!!(/`A´)ノ」
そんなこんなして、しばらくして家に着いた。夕飯を早く終わらせて早速土我さんにメールを打ってみた。いつものことになってきたが、カイコと時木は勝手に俺の部屋に上がり込んでいる。
メールを打ってから2,3分するとすぐに土我さんから返信が返ってきた。今は土我さんも時間は空いているらしいのでそのままメールを続けることにした。
何回かやり取りをしているうちにだいたいだけど土我さんのことが掴めてきた。
土我さんについて判ったことは年齢は20代前半であること、普段は夜の10時から朝の7時まで働いていて昼は寝ていること。木曜日と日曜日が暇であること。知人に幽霊とか妖怪とかに詳しい人がいて、請け負いの知識は持っていたので俺の相談に乗ってくれたこと。
こちらからも時木と鈴木の今昔の関係や悪時木についてできるだけ詳しく、正確に教えた。するとこんな返信が返ってきた。
『 高橋君、メールじゃいろいろ面倒くさい。今から電話はムリかな? 』
……どうしよう。電話するにしても家からじゃ弟に聞かれる可能性が極めて高い。
『 ありがとうございます。ちょっと家からじゃやばいので近くの公衆電話からかけさせてもらいます。 』
こう返信すると土我さんは快く電話番号を教えてくれた。
「おい高橋。外から掛けるのか?」時木とカイコが聞いてきた。
「うん、俺んち電話はリビングにしかないからさ、ちょっと弟たちには聞かれたくない内容になりそうだし。」
「そっか。」
テレフォンカードと一応10円玉を何枚か持って、近くのセブンまで歩いて行くことにした。カイコは繭の中に入り、時木は俺に付いてくると言った。
玄関で靴を履いていると小2の妹が寄ってきた。
「たかしー、どこ行くのー?」……面倒な奴が来たな。
「コンビニ。」
「じゃあ、アイス買ってきてねー。」
どうやら時木は妹には見えていないらしい(見えてたら困るが)。一方、時木は不思議そうな目で妹を見ている。
玄関を出てコンビニへ向かう道を歩く。
「おい、高橋。」
「ん?」
「お前の妹、私のこと見えてたぞ。」
……へ?だってさっきガン無視だったじゃんか。
「そうか?……ん、気のせいだったかな。」そう言うと時木は眠たそうにアクビをした。
コンビニに着いて緑色の公衆電話から伝えられた電話番号を打つと、しばらく電子音が鳴った後に土我さんが電話に出た。
「はい、 苓見です。高橋君かな?」
………とても柔らかな声が受話器から聞こえてきた。

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