小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第二章 後編(8)



「左回りぐるぐる………」

頭がいっぱいだった。拓哉はいったい何を言いたかったんだろう。
家に帰ってからも謎がずっと俺の中で渦巻いていた。気が付くと、レポート用紙に左回りのぐるぐる模様をいくつも描いていた。

「ねぇ……カイコ。」筆箱のへりで寝ているカイコに声を掛けた。
「うん?」

「なんか、知らない?……ぐるぐるについて。」
「ぐるぐるぅ?あ、それもしかして輪廻転生説のこと?」カイコが眠そうに言った。
「あーそれ倫理で習ったわ。でもなぁ、拓哉がそんなこと知ってたとは思えないけど。」
「一応、土我にでも聞いてみたら?ちなみに土我はそっちの世界のエキスパートだから(笑)とんでもない話が聞けると思うよ。土我どうせ日中は暇人なんだしさ。」そう言い終わると、カイコはよっぽど眠いのか、また黙ってしまった。

暇人って……でも、深夜に働いている人に電話かけるのもなあ。ふつーに考えて非常識だよな。。。

とか何とか考えながらも、俺は土我さんにメールを打ってしまった。本当に自分の意気地の無さに失望する。
すると土我さんから2分もかからず返信が来た。……本当に暇人なのかもしれない。

『今、僕、日本橋ってところに来てるんだけど。高橋君の最寄りの駅ってどこ?そこで落ち合おう。』

そんな……ここまで来たら1時間はかかりますよ…
『俺の町は我島岡っていう田舎です。けっこう時間がかかりますし、申し訳ないんで…』
『我島岡? ああ、JRと京成どっちが近い? 今、無位山行きの電車乗ったところ(笑)』
『えええ!? そんな……本当にすいません。えっと、JRの方が近いです。』

失礼だが、カイコの言う通り土我さんは相当ヒマなのかもしれない。というか、なんで鎌倉からはるばる日本橋まで来てるんだ……皇居でも見に来たのかな……


「早く駅に行った方がいいよ。」カイコがまた眠たそうな声を上げた。「土我のことだよ、どっかの公衆トイレから壁部屋でワープしてくるから。」