小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第一章 幽霊からのテガミ編(13)



「……ここなんだけど。」
「…へぇ」


なんとも言えないね。この感じ。
昨日の大雨のせいか、マンホールの蓋はまだ湿っていた。


「でさ、どうやって下まで降りるんだ?」
「……飛び降りる以外ないかも。」

鈴木は まじか、と顔を見合わせてきた。
「優柔不断で草食系男子の象徴のような高橋君がなんてアバウトなwwwじゃあお前が先に降りろよwww」
「……ッ、おいっ!」



もう鈴木なんて信じねー(´;ω;`)(二回目)
なんとアイツは俺の背中をいきなり押して、俺をマンホールに突き落としたのだ。さすが時木の弟。



「うわああああああああああああああああああああああああああ」


って叫びまくったけど、たいした距離落っこちなかった。

しばらくすると、よこでストンと軽い音がして、(前にもこんなことあったよね?)鈴木が猫みたいに軽やかに着地してきた。コイツ体重ないんじゃないか?


「鈴木……お前体重何キロ?」
「68キロだけど?健康的だろ☆」………そんなに笑顔で答えられても。

俺たちが着地したのは水色のブルーシートの上だった。マンホールの中にしてはやけに明るくて、窓もあって、窓の向こうは澄んだ青空が広がっていて…………






………………ん?






ここで一旦、今までの過程を整理しよう。


今は確か、夜の八時だ。
なのに、窓の外には青空が広がっている。
そして、ここは地下のハズ。
なのに、窓から空が見える。



……で、このブルーシートである。


「鈴木、ここってさ……」まさか、まさかと思うけど。



「……ああ、部室っぽいな………」


なんと、4丁目のマンホールから落下して、我が陸上部の部室に着地したらしい。意味が分からん。だってこの前はちゃぶ台とかタンスとかパソコンがあって、電球がぶら下がってる部屋に落っこちたんだったよね……。


「あ、高橋、時計見てみwww」 
鈴木が連絡黒板の上に据え付けられている緑色の時計を指さした。……6時50分。まあ、空が青いところを考えると、朝の6時50分だろう。なんてこっちゃ。

……ちなみに俺の腕時計は20時04分を表示している。さらに意味わからん。



ぬーん、としばらく考え込んでいると、ドア越しに誰かの話す声と足音が聞こえてきた。……たぶん人数は二人で、男の声だ。

「あ、誰か来るぞ。やばい、高橋、隠れろ!!」鈴木がとっさに掃除用具入れの中に隠れた。俺はロッカーと壁の間の微妙な隙間に隠れることにした………って埃やべえ。




ガチャン。 ……ドアの開く音がした。



「~~~、~~~~?」
「~~、~~~~。」

謎の二人が何か喋っているが、コソコソ話していてあまりよく聞こえない。誰も居ないはずなのに、よっぽど秘密の話をしているらしい。


………だれなんだろ?



音をたてないように頑張って、体を捻じ曲げて床とロッカーのスキマから覗き見をすることにした。…よし、これでなんとか見れるぞ……





「………ッ!?」





なんと、なんと、その二人は。








俺と鈴木だった。