小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第一章 幽霊からのテガミ編(2)



(」゚ロ゚)」(。ロ。)(゚ロ゚」)」「(。ロ。「)
軽く死ぬかと思った。叫びまくった。

バフン、と大きな音がして自分の体がマンホールの冷たい底に打ち付けられる。

けれどそこには新体操で使うような真っ白な超やわらかいハンペンみたいなマットが敷いてあって、どうやら怪我はせずに済んだらしい。ゲロりそうだけど。さらに地上までの距離を見てみると、2mも無い感じだった。
それから数秒すると俺の背後でトスンとまるで猫みたいに軽い音がして、あいつ(謎の中学生)が着地してきた。
………マンホールの中は以外と明るい。たった一つ、電球が天井から吊るされていて、それが黄色を帯びた光であたりを照らしているようだった。天井にぽっかりと空いた、マンホールの出口からは眩しい朝日が降り注いでいる。

「洞窟みたいだな……」
あたりを冷静に見まわしてみると意外と奥行きがあった。どこまで続いているのか知らないが、前後に続く通路はとても長くて薄暗い。通路の先は真っ暗で、どこが通路の終わりなのか、どこまで続いているのかは全く見当も付かない。

「おい、お前。」
「え?」
一瞬、好奇心が祟ってこの中学生のことを忘れていた。そうだった、俺はこいつに落とされたんだった。
……つくづく自分の呑気さに笑える。
よく顔をみれば、女の子だった。かなりボーイッシュな感じの顔つきで、髪は肩につくかつかないかくらいだ。ぱっちりと開かれた真っ黒な瞳は大きく、言ってみればけっこう可愛い。

「昨日、幸せだったか?」その子は急にそんなことを聞いてきた。
「え、いや別に。」
するとその子は満足そうにふーんと相槌を打った。右手の人差し指を顎の先に当てて、斜め上の方を意味ありげに見上げている。整った横顔が上から差し込む白い朝日に照らされていた。
それから少し長めに瞼を閉じた後、ゆっくりと俺の方に振り返ると、


「そう。じゃあアンタは今日からカイコマスターだ。」

と、言い放った。