小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第一章 幽霊からのテガミ編(10)



「ぬん。」

パソコンの前で苦悶する俺。カイコのパスワードが相変わらず分からない。まじ何だっけ?




「kaiko-japan じゃ、ないかな?」




……?!
どこからか声がする。すばらしく嫌な予感がする。

恐る恐るキーボードに視線を落とすとまぁ、真っ白なアイツ ―― 蚕がいた。もうビビらないぞ。

「…サンキュ。だが、どいてくれ。打てない」
「しょうがないなぁ。」そう言うとカイコはうんしょ、うんしょとキーの上から退いた。………キーに触りたくないな。


なんかもう、虫が喋ってんのに何も驚きを感じないというー(´・ω・`)

カイコのサイトには4つ項目があった



  ~カイコ連合委員会 日本支部~

    ▼ 概要および目標
    ▼ 会員
    ▼ 掲示板-東日本
    ▼ 掲示板-西日本


…しぇー。
まず初めの概要だけでも見ておこうか。



     ●概要

      人助け。メンバー増やし。
      報酬:人助けは心を豊かにします。それが報酬です。
        

              ――― 以上。



まーこんな事だろうと思ってたけどね。さすがにこれは無いでしょ。報酬ってwww確かに心豊かになりそうですがねwwwんじゃ、次に掲示板でも見ておこうか。


「高橋、携帯ブルブルゆってるよ?」カイコが語りかけてきた。なんか…可愛くなってきた……俺は変態なんだろうか。



―――― あ、メールじゃない。電話だ。誰だろ?


「はい、もしもし。高橋ですけ、

「俺だ。鈴木だ。」


……予想ガイです。

「あ、鈴木。大丈夫だったの?ずっと校門の前で待ってたんだけど。」
「えーマジで!? やっぱ、お前って俺のことが……(照)」

「ない。断じてそーゆーのないから」……なにが(照)だ。

「いやー、あの後ね、先生がタクシー呼んで裏門からレントゲン撮りに病院行ったんだよね。骨折もしてなかったしヒビも多分入ってないって。まぁ、とにかくスマン」

「や、いいんだ。俺が勝手に待ってただけだし。」裏門から出たのか……てか、携帯電話だからか、ノイズがやけに煩い。


鈴木の声が、いきなり真面目なものになった。
「―――高橋、俺さ、医務室にいるとき何か喋ってた?」




……なんて答えよう。
「……うん。その…亡くなったお姉さんの話とか」



携帯の向こうで はぁ、という諦めが混じったため息が聞こえた。

「……そうか。なんか意識が朦朧としててさ、うっかり喋っちゃったみたい。昼休みのお前の携帯の着信がずっと気になってたんだ。あれ、時木杏って、同姓同名なんだよね。その、俺の姉ちゃんと。」


……同姓同名?鈴木とか高橋とかなら分かるが、時木とか妙な名字じゃ同姓同名はもう本人なんじゃないか?

「あのさ、無礼なのは十分承知だけど……鈴木の、その、お姉さんって黄色いパーカー着てたりしてなかった?」



―――― 何も返答が返ってこない。

「あ、鈴木?ごめん。嫌なら答えなくていいんだ」…やばいやばい。


「……うん。着てた。黄色いパーカー。」


やっぱり、そうなのか。


「…高橋、明日さ、朝練少し早く来れるか?」
「うん。6:00の始発に乗れば7:00なる前には学校に着けるよ。」

「すまんな、ありがと。じゃ、また明日。」
「……うん、じゃあね。」



ツー、ツーツーツー、


……電話が切れた。カイコが何か喋っている。「高橋、明日早いの?」

「うん。5:30に家を出る。だからもう風呂入って寝るよ。」
「そっか。睡眠は大事だからね。」そう言うとカイコは空中から突然現れた繭の中に入っていった。


――――― 明日、ね。