小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第一章 幽霊からのテガミ編(6)



次の日。

昨日、時木にカイコマスターのサイトのURLを貰ったので、早速つなげてみた。つながったはいいものの、時木がドロンしたショックでパスワードを忘れてしまい、結局見れなかった。


「よっ、高橋!」

高校へ続く坂を登っていると、同じ陸上部の鈴木が後ろから追い付いてきた。朝日で鈴木のメガネが光っていて、ちょっとウケた。

「おはよ。鈴木は今日朝練やってく?」
「いんや。ちょっと野暮用があるんでね。今日は出ない。」

鈴木は男の俺が言うのもなんだか気持ちが悪いが、かなりのイケメンだと思う。女子ウケよりも男子ウケの方が良さそうな感じのイケメン。

「そういやさー、高橋お前、川口さんと同じ班なんだって?」

あーまだ班員誰だか把握してなかったんだよねー。てか川口さんって誰だっけ?

「あの、ちょー可愛い子。茶髪でオシャレな感じの!」
「ああ、あの人ね。あんま興味ない」

そう答えると鈴木は マジでー!?ありえんー!! とか絶叫した。
「だって川口さんと一緒になったのって、お前と柚木とあと何だっけ…忘れたけど、あと男二人と一人女の子でしょ。いいなあ。ラッキーだよなあ。お前もうちょい嬉しそうにしろしwww」

鈴木はそれからずっと いいなぁーいいなあぁー しか言わなくなった。

「はあ……」
まあ、川口さんだか何だろうが俺は杏ちゃんが居るだけでいいんだけどね。

……杏。
そういや時木も杏だったね。なんたる偶然。

「おい、高橋聞いてんのか?」
「あ、ごめん。なんか言った?」

鈴木は アハハハハ と笑って俺の右肩らへんを指さして言った。



「なんかお前、肩に芋虫のっけてるぞwww」 



なんと。
なんと俺の右肩に。

蚕がのっかっているではないか






うぎゃあああぁぁぁあああああああ ΣΣ(´Д`川


「取って!とって!鈴木、頼むとってえええええぎゃああああああああ」
「……(゜ー゜笑」
「笑 じゃねー!! うぎゃあああ鈴木とって!とってよ!うぎゃああああ」

鈴木は悠長に写メを取り始めた。いや、ムービーか!?
「いいよーいいよー高橋君。もっと騒いでーwww」

 もう鈴木なんて信じねー(´;ω:`)
なんとか走ったり跳ねたりしたら蚕は取れた。もうこの学ラン着たくない。………後日談になるが、俺はこの日から学ランを着ていない。気温13℃でもワイシャツ一丁だぜ。

鈴木はまだケータイを構えている。
「おい、高橋、顔が泣きそうだぜ。かわいーwww カシャっとな。」
「撮るなーっ!」
「さっき、とって!とって!言ってたじゃんかwww」

鈴木はヒャハハハハハハと醜悪な笑い声を残して残りの坂を一気に駆け上がっていった。ちくしょう……速い……

ふと、昨日の朝に聞いた時木の言葉を思い出した。
“昨日のそのサイトでお前は勘違いしているみたいだが、カイコマスターっていうのは、昆虫の蚕とはあまり関係ない。”


――――――――― 関係おおアリじゃねえか!


それから。
部室に行って着替えて、朝練を済ませた後に校舎に入って上履きに履き替えたわけだが、上履きの中に何か入っている。B5サイズの紙切れ。
 
紙切れにはこう書いてあった。
“カイコには気づいたか?あれはお前の蚕だからな、名前とか付けてやるんだぞ。ちなみにどこ行ってもちゃんとついてくるから安心しろ。”




………安心できねぇ。