小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第一章 左廻り走路編(9)



結局、駅まで車で送ってもらい、それから電車に乗ること30分。普通に座席で文庫本を読んでいたら、頭上から声が降ってきた。

「あ、高橋君じゃん!」
「ん? ………あ、おはようございます。」

誰かと思って顔を上げると、中距離の金子先輩(佐藤先輩の彼女様)だった。ポニーテールに小麦色の肌と笑顔が似合う、元気系美人さんである。

「昨日は楽しそうだったね。随分盛り上がってたじゃない!」輝かんばかりの笑顔で金子先輩が話しかけてきた。「でもな~7人目っていうのはちょっとムカつく。和尋がタラシってことは知ってたんだけどね(笑)」

「え…?それって、昨日の人生ゲームの話ですよね?なんで知ってるんですか……」
「そうよ。言っとくけど、アレ、女子部室まで丸聞えだったんだからね。みんなで爆笑モノだったわよwww」

マジかよwww って、いやまてよ。ということは……

「柏木さんだっけ? 高橋君の好きな人?」
「……Σ(゚口゚;」
「そんなにショック受けないでよ~。ちなみに私と杏は同じマンションだよ☆」得意げに、Vサインを作りながら金子先輩は笑ってきた。

「━━━(゚ロ゚;)━━!!、っぜ、絶対に言わないで下さいよ!いや、マジで言わないで下さい……」あわわわわ。これはヤバイよ。相当ヤバイよ。
「そんなに心配しなくても、だいじょーぶよ。私そんなに口軽女じゃないから。あ、でも他の奴らが喋らないとは限らないかもね。」金子先輩は吊革にぶら下がりながら喋り続けた。「まーいいじゃない!どーせならこのまま告っちゃえば?」


朝から気分どん底。杏ちゃんとは委員会まで一緒になっちゃったんだぞ………もしバレてたら相当気まずいぢゃないか……





それから。
学校に着くと、黒板にはクラス全員の名字が縦6列でズラッと書いてあった。どうやら俺の知らない間に席替えがあったらしい。教卓には今井とほっしーが二人で並んで立っている。

「お!高橋ー。俺、席替え委員長になっちゃった!」ほっしーがニコニコしながら言った。「ちなみに高橋以外は全員揃ってたから、席替えのクジみんなでもう引いちゃったんだけど……いいよね?」
「ああ、別にいいよ。ところで俺の席はどこになったの?」

「左から数えて二列目、前から3番目のところだな。」今井が黒板の“高橋”と書かれたところを指さしながら言った。
「サンキュ。ほー、前から3番目かぁ……」机はもう移動してあるようなので、言われた通りの席に自分のエナメルを置きに行く。


エナメルを机の上に置いて、教科書を中にしまい、一息ついて新しい席に座る。黒板の見やすさは上々だし、まぁまぁ窓からの風も入って来るし、けっこう当たりの席かもな。
 周りの席はいったい誰になったんだろうか。黒板を見ながら確認すると、前の席は今井、後ろは柚木君、左隣はほっしーで、右隣は……まさかの杏ちゃん(゜Д゜?

「まさか……」
とっさに、教卓で立っている席替え委員長、ほっしーの方を見ると、ちょうど目が合った。さらに口パクで俺に何か言ってきた。


 "  か  し  わ  ぎ  さ  ん  の  と  な  り  だ  ね  !  "

人生ゲーム・ショック二回目。
ニコッと笑って親指と人差し指で丸印を作ったほっしー。得意げである。


ありがたいけど、もしバレてたら、相当気まずいんだよなあ……