小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第二章 鎌倉編(2)



………で、俺は古典の授業を犠牲にして考えたのだ。



まず、時木が成仏しない理由について。
――――― 時木に聞くしかないだろうね\(^o^)/

それから、鈴木から悪時木を抜く方法について。
――――― 誰かに頼るしかないだろうね\(^o^)/

最後に、俺は何ができるのか。
――――― 何もできないだろうね\(^o^)/



……こんなんだ(笑)


そして来る昼休み。
暇人な俺は、若きオタク共で溢れ返っている昼休みのコンピューター室に乗り込んで、カイコマスターのサイトの掲示板にこんな書き込みをしたのだ。


“新参の高橋という者です。突然ですが、相談です。今、僕の友達に幽霊が憑りついていて、寿命が2倍速で縮んでいるらしいのです。祓ってあげたいんですが、誰かいい方法を知っている方はいらっしゃいませんか?”


こんなクソ恥ずかしい書き込みをして、その後はしばらくソリティアで10分くらい時間をつぶした。さすがにまだレスは返ってきてないだろうけど、期待感に押されて、もう一回カイコのサイトを覗いてみた。


すると、恐ろしいことに、3件もレスが入っているではないか。。。カイコマスターってみんな暇人なのか?

掲示板のトップで、赤色のnew!という表示がついている3件のレスにはそれぞれ投稿者の所在地名と名前が表示されていた。

……なんて書いてあるのか。

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○new! 時木 杏(千葉県 我島岡市)
 
 今日の8時に駅で待ってる。遅れるなよ。
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○new! 苓見 土我 (神奈川県 鎌倉市)

 除霊には相当の経験者か、それなりの血族の者であること、強力な使い魔を持っていることが必須です。話は変わりますが、東京都にお住まいですか?それとも職場か、学校からここに書き込みしたのですか?できれば直接会って、詳しくお話しを伺いたいのですが、どうでしょう。ここに、僕のメールアドレスを載せておきます。
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○new! 長谷川 れいこ (岩手県 盛岡市)

 気を付けて!霊は生きているニンゲンとは違います!! 高橋君がどのような霊との関わり方をしているか分からないけれど、どんなに親切でも、仲良くなっても、生きている者と死んでしまった者には大きな隔たりがあることをどうか忘れないで!
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……うっひょー。みんなマジレスしてくれたことに心から感謝します(-ω-) 正直、馬鹿にされるかと思ってた。

に、しても。
この土我さんも長谷川さんも随分と博識だし親切だ。土我さんはメアドまで載せておいてくれたし。本当に、ありがたい。でも、携帯から土我さんにメールするのはちょっと怖いし気が引けるので、家に帰ってからパソコンでメールを入れてみることにしよう。

いつのまにか、カイコがキーボードの隣に居た。
「高橋、土我と連絡を取るの?」
「……うん。っていうか、カイコは土我さんと知り合いなの?」
「まあね。知り合って100年以上は経つかなー。」

うん?それは冗談で?

「いや、馬鹿にしないでよね!高橋!僕はこう見えても今年の7月で164歳になるんだからね?ちょっとは人生の先輩として敬ってほしいかなあ?」
「……それは、とんだSFだなwww」

カイコが む、と少し怒って見せた。そんなちょっとした動作も可愛いと思ってしまう………って、俺は変態なのか?!

「ところで高橋。今日はいつ部活が終わるの?」
「うーん……頑張って6時半には終わらせたいところだけど……無理だろうな」


カイコは、早く終わらせてよね!と言い残すと、空中から突如現れた白い繭の中へ消えていった。