小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第二章 鎌倉編(1)



おはよーございます。
昨日(今日と言うべきか?)夜中に時木に起こされ、クソ眠い高橋です。
 結局、あれから2時間、3時まで悪時木をどうやって鈴木から抜けばいいのか善時木とカイコと話し合い、良案出ずして終わり、5時半に目覚まし時計で起きてしまったので全然寝た気がしないのだ。

そして今、鈴木と一緒に電車に乗っている訳です。

「……で、高橋。まとめとしては、俺には今、姉ちゃん(悪)が取り憑いてて、俺は2倍速でオジサンになってるんだな!?」

「まあ、そーゆーことだね。」……可哀想に。。。
「……ヤダ!早くオヤジになるのは絶対イヤだ!」
 「うん、でね、どうやらカイコが言うには二つに別れた善時木と悪時木を合体させて、もとの一人の人格にすれば、生前の記憶が完全に復元されるんじゃないかって。そしたら時木は人格も記憶も生前の時木とぴったり一緒になって、お前に取り憑く必要も無くなる…らしい。」

「……で、どうすればいいワケ?」
「そこなんだ。論点は……」

ぬーん。
始発で人が居ないからできる話だよね。田舎でスミマセン。
 すると、カイコが口を挟んだ。
「ねえ、鈴木君。思い当たることはない?杏がこの世にまだ留まっている理由について。僕の考えだと、杏は何か未練があるんじゃないかなあ……」
 「うーん……未練だらけだとは思うけど……っていうか姉ちゃんに直接聞けないのか?」
「それがさ、時木は昨日、お前についての記憶が少し戻っただけで、なんで自分が分裂したかはさっぱりらしいんだ。」

「マジか……」鈴木が眉間にしわを寄せた。
 鈴木は悪時木は見ることはできたけれど、善時木は見ることはできなかった。カイコが言うには、それは悪時木の方が霊力が強いかららしい。

その時、鈴木が声を上げた。
「……親父、かなあ?」

というと?

「いやー、前の親父と母親&俺がうまくいってなかったんだよね。親父は俺のこと何でだか嫌ってて、だから俺も親父のこと嫌ってたんだけど、姉ちゃんは家族で唯一、親父とうまくやってたワケよ。
 で、姉ちゃんが変な病気かかって入院した時に、親父の奴、“どうして杏なんだ!国由が代わればいい!!”とか言い出してさ、もう母親マジギレ。更に普段から溜まってた親父に対する不満も一気に爆発してさ、そのままノリで別居始めて、離婚しちゃったんだ。」

 「そうなんだ……」
「うん。それでまあ、姉ちゃんからしたら、自分のせいで離婚しちゃったんじゃないかとか、自分のせいで俺を傷つけちゃったんじゃないかとか、思うところは沢山あったんだと思うんだよね。もちろん姉ちゃんは何も悪くないけど。」



……なんか、自分がいかに幸せ者だったか痛感させられたよ。

でも、
どうすれば、どうすればいいのだろう?