小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第一章 幽霊からのテガミ編(7)



昼休み。屋上で鈴木と弁当をつっついていた。

放送部の放送が流れている。「一、二年生へ連絡です。火曜日のホームルームは総合超過となります。遠足の予定等は各自で立てるようにしてください。」

………我が校では7時間授業がスタンダードだ。だから「放課後あつまろー」っていうのは部活ができなくなる。更に朝も夕もホームルームが無く、一週間に一回だけ火曜の7限にホームルームがあるのだが……


ぬん。いつ話し合えばいいんだ。

班員は男子は俺と柚木君と荒木君と田中君、女子は杏ちゃんと川口さんだった。まぁ、それはいいものの、杏ちゃんとこの前少し喋っただけで、あとは全く喋ったことがない。さらに田中君は出席番号的に近いから分かるが、柚木君と荒木君って……顔も分からないなぁ……

口下手がここで効いてくるとはね。


「あーあ。面倒くせー。」鈴木が大きく伸びをしながら叫んだ。
「え。鈴木ってそういうの好きそうじゃん。女子と話せればそれだけで幸せなんでしょ?」

鈴木はふぅ、とため息をつくと、そのまま後ろへ倒れて寝っころがった。「俺、男子だけの班なんだ。」

「あー。F組もやっぱ作ったかぁ、男子だけ班。ま、女子が少ないからしょうがないよね。」
「だってさ、高橋、考えてみろよ。男子だけじゃ観覧車もプリクラも気持ち悪いぢゃんか。お化け屋敷もつまんないよ。」

その時、左ポケットの携帯が着信を知らせた。

“時木 杏”

……あいつにメアド教えてなかったよな?!
「お、着信?だれだれー女の子だったら許さんぞ。」鈴木が携帯を覗き込んで来た。


「あ、いや違うんだ。別にそういうのじゃなくて、」


瞬間、俺の携帯の画面に伸ばした鈴木の腕が止まった。
鈴木は携帯の画面を見つめたまま何も言わない。
鈴木特有のふざけた表情も消えて、大きく目を見開いている。なんか、異常だ。演技じゃない。


「鈴木?」 ―――― 何も答えない。
「おい! 鈴木ったら、」


ハッと、鈴木が俺の方を振り返った。鈴木の薄い茶色の瞳と目が合った。
「あ、俺、いや………大丈夫だ。そんなハズないよな……」
「そんなハズって……?」

鈴木はううん、と首を横に振る。「なんでもないからよ!」いつも通りのふざけた笑顔が顔に戻ったが、無理に笑顔を作っていることぐらい俺にだってわかる。

「鈴木!」
思わず、立ち上がろうとした鈴木の手首をつかんだ。

鈴木は うん?と俺の方へ振り返った。
「やだなぁ、高橋。俺は女のコとしか手ぇ繋がないって決めてんの。それとも俺がイケメンすぎて俺のこと好きになっちゃったとか?」

アハハハハハハと鈴木は陽気に笑った。



気のせいかもしれない。鈴木は本当になんでもないかもしれない。
でも、やけに胸が騒ぐのはなんでだろう?


………その時、風が吹いて鈴木の食べていたカレーパンの袋が顔に当たった。



         ◇

鈴木と別れてから、時木からのメールを確認した。

“お前あんまりだな!最悪だな。お前のカイコ、泣いて帰ってきたぞ”

……蚕って泣くの?
なんか泣いてるところ想像すると鳥肌が立つが、泣かせてしまったのなら謝ろう(笑)
っていうかどうやって蚕は時木のところまで行ったのだろうか。まさか電車に乗ったりしないよな。蚕が改札通ってたりしたら、少し面白いかも……いや、気持ち悪いだけか。

教室につくと、川口さんと思われる人が俺の方に駆け寄ってきた。

「高橋君!みんな待ってるよ!」
「へ?」
「忘れたの? え・ん・そ・く」
「あ、ごめん。」

いやー申し訳ない。みんな集合していたとは。
川口さんに引っ張られて教卓の後ろに行くと、男三人と杏ちゃんが居た。

「じゃ、高橋も来たところで全員集合だね。」声をあげたのは男三人の中で唯一顔が分かる、田中君だった。

川口さんがハーイ!と手を挙げた。「まず、自己紹介でしょ」
「んじゃあ遅刻の罰として、高橋君からー!」


……はあぁぁ。
ちゃんと俺、やってけるかな。