小説カイコ       ryuka ◆wtjNtxaTX2 /作



第二章 鎌倉編(4)



話は飛んで、今日は日曜日。
気持ちのいいくらいスカッと晴れた青空だ。さすが鎌倉(?)

今までの経緯を説明すると、木曜日の電話で土我さんと今日、会うことにしたのだ。
 我島岡駅から総武本線を使って東京駅まで行き、そこで鈴木と合流してから、横須賀線を使って、土我さんとの待ち合わせの場所の逗子駅に着いた。もちろん、カイコも時木も付いて来ている。いいよね、二人は電車代が浮いてwww

「俺さ、今まで鳩サブレを一回も食ったこと無いんだよね。」鈴木が眩しそうに目を細めながら言った。

鳩サブレか。そういやしばらくお目にかかってないなあ。。。

耳元で、カイコの声がした。
「あ、あれだよ高橋。あの茶色いコート着てるのが土我! おーい、土我ー!!」

カイコが呼ぶと、茶色いコートを着た男の人が俺たちの方に振り返った。染めているのか白髪なのか、灰色の髪の毛をしていて、優しそうな雰囲気を身にまとっている人だ。

俺たちに気が付くと、にこっと微笑んで、ブーツの音をコツコツ鳴らしながらこちらへ歩いてきた。

「こんにちは。高橋任史君………で合ってるかな?」
「はい、そうです!よろしくお願いします。えっと、こっちが鈴木で、こっちが……見えてますかね、時木です。カイコはご存じなんですよね?」

 土我さんは時木が見えていた。それから鈴木と時木の二人にそれぞれ丁寧に挨拶するとカイコの方に向き直った。

「カイコ、久しぶり。変わらないね。何年ぶりだっけ?」
「うーん。。。60年は経ってるよねぇ。それに、土我の方こそ全然変わってないよ。第一さ、そのコートいつまで着てるつもりなの??」



……WHAT??

話についていけず、呆気にとられている俺たちに土我さんは気づいたらしく、話をこっちへ戻してくれた。

「あ、ごめんね。久しぶりだったもんでさ……。」申し訳なさそうに笑いながら、土我さんは頭を掻いた。

それから、カイコの提案で近くの公園まで歩いて行った。歩いていく途中で、土我さんは時木とずっと話していた。

「ふーん、成程ね。それで杏ちゃんは、もう一回家族で集まりたいとかは思わない?」
「うーん……どうだろ。なにせ親父が親父だし。。。白状すると、あんまり家族についての記憶がないんだよね。」時木はどうにも困った様子で答えた。「でもさ、国由に憑りついた方の私を知りたい気持ちは大きいんだ。」

「じゃあ、無理矢理でも最初に国由君から杏ちゃんの片方をひっこ抜いちゃうのがいいのかな?」

その時、鈴木が話に入ってきた。
「あー、、、土我さん?姉ちゃんは何て言ってますか?」


………そっか。鈴木には時木が見えてないのか。

「えっとね、初めに国由君から杏ちゃん(悪)を無理矢理引っこ抜いちゃおうって事になったんだけど。。。どうかな?」

鈴木はキョトンとした後、土我さんの方に向き直った。
「う~んと、なんだかよく分かんないけど、全部おまかせします。よろしくお願いします(笑)」
「……ったく、コイツは面倒くさくなるといつもこうなんだ。」時木が隣で毒づいた。


……でも、そうするには時木が分裂した理由を突き止めなきゃいけないんじゃ?

すると、土我さんはフフフと笑った。
「それなしでやれる方法があるんだけどね。成功するかどうかは任史君にかかってるよ。」