二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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神様のノート 一冊目
日時: 2015/05/12 18:40
名前: 奏月 昴 (ID: rBo/LDwv)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=28346

始めまして、奏月昴と申します。
pixivでも活動していますが、別の所でも活動したくなり、こちらにやってきました。

基本pixivと同じものを載せていく予定なので、お好きな方を閲覧下さい。


とりあえず今は現在進めているシリーズ物を載せますが、ちょこちょことお引越しさせていく予定です。
設定わかんないけど興味がある方、pixivまでお越しいただけるとありがたいです。
何かいい加減ですみません…。

それでは、よろしくお願いします。


※ざっくばらんなあらすじ
会社から帰宅途中に何故か宙に浮いている少年、MZDと出会った私こと、創造者。
彼から貰った創世ノートを使い、世界と創造者の分身、奏月昴を生み出し、この世界の神様として中からの管理を命じる。
その際、昴と約束し、私の事は他言無用とすることになった。

昴は生まれたその日に、この世界で烈達つぎドカ!メンバーと出会い、仲良くなる。
ある日、創造者から教えられた創世ノートの機能である『召喚』を用い、烈達の記憶と姿、力を基にして鏡達を生み出す。

そして二学期が始まる頃、八十稲羽から悠達ペルソナメンバーが、ペルソナが現実でも呼べるようになり、流石に稲羽にはいられないという事で、烈達が通う学校に転校して来て、仲良くなった。

色々あり、十二月。烈達つぎドカ!メンバーがバトルしてから一年後、パステルくんはワンダークロックと呼ばれる巨大時計をジョーカー一味に壊されている事を思い出し、一人立ち向かおうとするも、それをつけていた烈達つぎドカ!メンバー。
彼等の力を借り、ジョーカーを倒し、ワンダークロックを無事直すことが出来た。
ジョーカー達とは和解し、現在はつぎドカ!メンバーの家に、ジョーカーは昴のいる神殿に住むことに。
ワンダークロックが壊れた影響なのか、全ての人々の体の時間が戻ろうとしており、現在、年齢はそのままで一年をやり直している。

昴の管理と私の監視、それに限界を感じた私は、MZDの提案で、戦い慣れた人をノートの世界に永住させる事を決意。
その時、私が高校時代に考えた理乃達が適任という事になり、彼女等の世界をノートの中に作り出し、全てを話した上で永住してもらう事に。現在は悠達と同じ学年で生活している。



—とまぁ、見て分かるかわからないけど、主要となる人物は、つぎドカ!、ペルソナ4、ジョーカー達、それからオリジナルキャラとして理乃ちゃん達になるかな。


「あ、簡易的なキャラ紹介は、もう一個の“ノートに刻まれた一頁”に移したので、そちらを見てくれよな。URLからも飛べるぞ。」


5/12 最終更新


『目次』

☆料理対決シリーズ
〔第一回・可憐な乙女の料理対決〕
・栗拾いからの料理対決へ&華の乙女の料理対決! >>154-160
・実食 完二&烈&鏡&悠 >>164-168
・実食 凪&陽介&クマ&風雅 >>173-177
・結果発表からのO・SHI・O・KI・DEATH☆ >>180-186

〔第二回・続・可憐な乙女の料理対決〕
・料理対決・再び >>1-7
・実食 ローズ&鏡 >>8-11
・実食 完二&リリィ >>12-15
・実食 悠&風雅 >>16-19
・実食 凪&セシル >>20-23
・実食 陽介&クマ >>24-28
・実食 フランシス&烈 >>29-34
・結果発表と例のアレ >>35-43

〔第三回・豪傑な男の料理対決〕
・何でどうしてこうなった(By昴) >>44-49
・実食 氷海&雪花 >>50-53
・実食 七海&由梨 >>56-59
・実食 鈴花&直斗 >>60-63
・実食 葉月&雪子 >>64-67
・実食 千枝&牡丹 >>68-71
・実食 理乃&りせ >>72-76
・結果発表! >>77-86 ※募集は締め切りました
・O・SHI・O・KI☆前半戦 >>94-101
・O・SHI・O・KI☆後半戦 >>110-123

〔第四回・男女混合料理対決地獄編〕
・戦いをもう一度 >>203-209
・実食 一番&二番 >>222-227
・実食 三番&四番 >>233-237
・実食 五番&六番 >>247-253
・実食 七番&八番 >>260-264
・実食 九番&十番 >>286-290
・実食 十一番&十二番 >>301-306
・実食 裏回 >>326-342
・結果発表! >>384-398 ※募集は締め切りました
・賢者に慈愛を、愚者には罰を 賢者編 >>662-671

〔第五回・料理対決・頂上決戦!〕
・評価五のための頂上決戦! >>415-420

〔番外編・審査員一新!? 選抜メンバーの料理対決!〕
・死亡フラグ立たせた奴。前出ろ。前だ。 >>716-723
・実食 一番&二番 >>728-733
・実食 三番&四番 >>738-743
・実食 五番 >>751-756
・対決 五番の料理 >>784-794
・大団円と実食 六番 >>814-822
・実食 七番&八番 >>840-848

〔番外編・挑戦者=変動審査員!? ゲストもありな料理対決!〕
・概要と募集要項 >>856※募集は終了しました


☆言葉泥棒とワンダークロックシリーズ
・言葉が消えた理由 >>435-441
・異次元に突入! >>442-446
・激突! 鈴花VSローズ >>451-455
・激突! 風雅VSフランシス >>456-460
・激突! 烈VSリリィ >>464-469
・激突! 氷海VSセシル >>470-474
・激突! つぎドカ!VSジョーカー >>478-484
・揺蕩いから、覚醒めの時へ >>485-488
・激突! パステルくんVSジョーカー >>491-497
・おかえりの味とただいまの涙 >>498-506


☆マヨナカテレビ事件シリーズ
〔氷海編〕
・虚ろな映身は現身を打つ >>523-532
・穿たれた水器(みずうつわ) >>533-537
・囚われの氷硝 >>540-545
・冷酷なる御霊 >>546-553
・氷雪の女王 >>563-568
・悪夢の終わり >>569-578
・雲の向こうに捧ぐ向日葵の花 >>582-585


☆神様・悪夢相談室シリーズ
・悪夢:ケース「赤羽 烈」>>805-808
・悪夢:ケース「青柳 氷海」 >>831-835


☆もしももしものちいさなおはなしシリーズ
・カラオケネタ >>192-195 ※募集は締め切りました
・どっちの料理ショー >>274-276


☆ノートの世界のTwitter事情シリーズ
・アカウント一覧 >>589

〔本編〕
・その一 >>590-594
・その二 >>595-598
・その三 >>606-609
・その四 >>614-616
・その五 >>622-623
・その六 >>630-632
・その七 >>633-634
・その八 >>317-319

〔番外編〕
・Let's Twitter with JOMANDA >>602-605
・Let's Twitter with JOMANDA2 >>617
・Let's Twitter with JOMANDA3 >>776-778
・異世界の料理対決 その一 >>880-888


☆新・ワイルド能力者のコミュ事情シリーズ
・烈&氷海 ランク1 >>644-649


☆短編
・はんぶんこ >>128-129
・リミットブレイクと暴走娘 >>133-135
・フラワーギフト >>140-147
・年末恒例巫女さんバイト >>349-359
・玉より食物 >>365-371
・「リンちゃんなう!-Try to Sing Ver.-」 rejected by 相方の皆さん >>510-515
・没案「第四回料理対決六番の料理」 >>516
・思いつくままに書いてみた料理対決案 >>558
・没案「第四回料理対決・その後」 >>624 答え+α >>629
・バレンタインデー☆パニック! >>681-689
・猫の猫による猫のためのお花見 >>699-704
・お知らせと次々回予告(!?) >>708-709
・ほのぼの日和 >>770-772
・小ネタつめつめ >>863
・前奏曲・異世界の第六回目 >>866-868
・お知らせと紹介と >>891-893 new!

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囚われの氷硝 その六 ( No.545 )
日時: 2015/01/20 21:04
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fhgz9KYE)

その夜、案の定雨が振り出してきて、午前0時前には本降りの雨となっていた。
天気予報では、また明日には止んでいるようだ。

「…。」

昴は、自室にて、テレビをぼんやりと眺めていた。

—心配だね、氷海ちゃん。

不意に、ノートが開かれて文字が書かれる。それを察知した昴は、ベッドランプを点け、見た。

(セシルの話を聞く限り、十中八九、昨日の夜に入れられてるな。なぁ、氷海の足取り、わかったか?)
—それがね、行方不明になった時間辺りからの心情がまったく描かれないの。
(どういう事だ? お前が呼び出せば、すぐにそいつの視点で物語が描かれる筈だよな?)
—普段はね。けど、ある状況下だと、こうなる。そして、こう言った事は初めてじゃないんだよね。

ある状況下、初めてじゃない事例、昴はすぐに、何の事か思い至った。

(あの事件と…ワンダークロック事件か。お前が干渉出来ない場所に居られると無理ってか。)
—そっ。…この時点で、氷海ちゃんは既に私が干渉出来ない場所に居る事が分かる。どうやら、テレビの中は、私がここからじゃ干渉できない異世界みたいね。けど、それじゃ説明できないのが一個。…入れられるちょっと前の心情でさえも呼び出せないの。
(は? それおかしくないか? 入れられる前はこっちの影響下だから、干渉できるんじゃないのか?)
—…そう、おかしいんだ。でも、これに関しては影君が一つの仮説を立てたの。

影の立てた仮説、それを聞く前に、もうすぐ午前0時になりそうだった事に気が付き、ベッドランプに手をかけた。

(悪い、そろそろ時間だ。また後でな。)
—了解。後でその仮説について話すね。

その文字が書かれた後、昴はノートを閉じ、ベッドランプを消して部屋にあるテレビをぼんやりと見た。
程なくして、非常に鮮明な映像が映し出された。

(やはり入れられていたか!)

昴は苦々しい表情を浮かべながら、成り行きを見守る。
テレビの中は、美しい氷の鏡が万華鏡のような場所が映し出され、その中心に大きな鏡があり、その傍には…。

(…ぴ、ピンクて。氷海、白はいいけど、ピンクて。あとフリフリて。)

ピンクと白を基調としたフリフリの可愛いドレスに身を包んだ氷海らしき人物がいた。

『皆さん、こんばんは。“マヨナカ恋愛相談室”のお時間です。』
(え、恋愛相談って、らしくな…いや、うん、大体の映った奴はらしくないけどさ。)
『今日は、鏡に映し出された方の恋の悩みを相談していきたいと思います。とは言っても、私は鏡に映し出された貴方の本音を話すだけ…。』

そう言って氷海らしき人物は、その手をスッ、と伸ばした。

『でも、私が一番知りたいのは、あの人の心…。ねぇ、来て…。ここに、来て…。』

まるで、誰かを誘うかのようなその仕草に、昴は思わず背筋を震わせた。
何か、言いようのない不安が彼女を襲った。

『私の大好きな—』

それ以降、ノイズが走り、元の静寂が訪れた。

「…。」

昴はベッドに戻り、ベッドランプを点け、ノートを開いた。

—…やっぱり、入れられちゃっているみたいだね。何か随分衝撃映像映ってたみたいだけど、大丈夫?
(正直、動揺してる。…なぁ、影が出した仮説って?)
—…この創世ノートの効果を妨害できるような能力を持った、MZDのような存在が近くにいたのではないか、と言うものね。
(神クラスの存在が近くに?)
—あくまでも仮説だけどね。…でも、正直、この件は一筋縄じゃいかないかも。神様が関わっているなら、尚更。…気を付けた方がいいかも。

その文字を見た昴は、ぐっと強く拳を握り、その拳を…壁に思い切り叩きつけた。

「神? それが何だってんだ?」

その表情は、完全に怒っていた。殺気が外に漏れ出ている。そんな気さえした。

「上等じゃねぇか。俺達の世界を荒らすなんざよぉ…。」
—それには同意。…流石に私も今回ばかりは亜空間事件の時並みに許せない。

ノートの外にいる創造者も怒りの感情を抱いているのか、文字に力が篭っている。

「氷海を入れた犯人、首を洗って待ってろよ…。」
—私達が必ず捕まえて…。

そして、同時に…。

「ボコボコに嬲ってから“消去(デリート)”してやる。」

そう、同じ文章を口走った…。











「」

最後の文面を見るなり、全員昴から距離をとる。

「な、なんだよお前等。」
「す、昴さんが本気で切れるとこうなるんだなーって…。」
「うえ、えぐっ、えぐっ…!」

全員、彼女に対して恐怖心を抱いているようだ。鏡なんて泣いてるし。

「ごめんごめん、確かに俺は切れるとこうなるけど…それは誰だって同じだろ?」
「ま、まぁ、そうだよね…。」

りせが言うと、次々と昴の周りに戻ってくる。

「さて、続き行くぞ。」

全員戻ってきたところで、昴はそう言ってページをめくった。

冷酷なる御霊 その一 ( No.546 )
日時: 2015/01/20 21:11
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fhgz9KYE)

氷海がマヨナカテレビに映った日の、午前四時。一日中起きていた昴は自室でテレビのニュースを見ていた。

(…霧が出るかはわからないが、もし出るとなれば、雨が何日か降った後。)

淡々と天気情報を流す気象予報士の下に映る週間天気。それを食い入るように見る。

(明明後日…二日連続で雨が降るな。)

それを確認した後、昴は一階に降りる。
リビングでは既に、昨日聖域に泊まり込んでいたクマがスタンバイしていた。

「スーチャン、見てきたクマよ。」
「どうだった?」
「…ヒーチャンは間違いなく、テレビの中クマ。ヒーチャンの匂いがしたし、テレビの中、また広くなってたからカクジツクマよ。」
「そうか…。」

昴はクマの報告を聞くと、一つ頷いた。

「クマ、今回は時間がない。明明後日に雨の予報が二日連続ある。以前と同じようにこっちに霧が出るかは分からないが、早めに助けた方がいいのは確かだ。」
「今まで以上に時間がないクマね。でも、それでも、ヒーチャンは助けなアカンクマ!」
「ああ。…頼んだぞ、クマ。」
「任せるクマ!」

そう言って、クマは携帯を取り出した。

「そうと決まれば、センセイに連絡クマ!」
「いや、連絡は俺からするよ。」
「えー…。」
「流石にまだ寝てるだろアイツ等。クマももう一寝入りしておけ。…今回、俺達は力になれないからな。お前達だけが頼りなんだ。」

昴の言葉に、クマは大きく頷いた。

「…分かったクマ!」

そして宛がわれた部屋に戻って行った。
クマがいなくなった後、昴は再び二階へと上がり、ジョーカーの部屋にやって来た。

「…ジョーカー。」

昴が呼ぶと、ベッドの横で座り込んでいたジョーカーが昴の前までやって来た。そのフードの下の表情は、どこか悲しそうな姿を浮かべていた。

「セシルの様子は?」
「今ようやく落ち着いて、眠ったところだ。…ショックだったのだろうな。自分がついていながら、氷海を連れ拐われてしまったのだ。…立ち直るには、時間がいるだろう。」
「…セシルは、責任感が強いからな…。」

そう呟きながら、昴はベッドの上で眠るセシルを見つめた…。

冷酷なる御霊 その二 ( No.547 )
日時: 2015/01/20 21:17
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fhgz9KYE)

セシルが来たのは、数時間前に遡る。
マヨナカテレビの映像から数十分後、突如、呼び鈴が鳴った。

「…ん? 誰だこんな夜中に…。」

あのまま眠れなかった昴は、すぐに一階へと降り、玄関のドアを開けた。

「…。」
「えっ、ちょっ、セシル!?」

そこには、黙ったまま呆然とどこか遠くを見るセシルがいたのだ。
その体はずぶ濡れで、覇気がない。

「お前、何でこんな雨の中何も差さずに…! って、それは後だ! あぁもう! 事情は後で聞くから中に入れ! 誰か! タオル用意しろ!」

昴はセシルを掴み、そのまま中へと入っていく。
そしてジョーカーが用意したタオルで体を拭いてあげた後、暖かいミルクを入れてあげた。

「…済みません、夜分遅くに…。」
「構わないさ。ほら、ミルク。熱いから気を付けろよ?」
「…。」

セシルは、ミルクを一口飲んだ。

「…セシル、どうしてこの雨の中、傘も差さずに来たのだ? 風邪を引いたらどうする。」
「…。」

ジョーカーのお叱りに、セシルは黙ったまま俯いた。
かと思えば、肩を震わせ、嗚咽をあげ始める。

「…ご、めんな、さい…! わたくしが、見ていながら…! 氷海を…氷海を…!」
「…。」

セシルが呟いた謝罪に、ジョーカーは黙ってセシルを抱き締めた。

「セシル、今は何も言うな。…思う存分泣いて、スッキリしろ。話はそれからだ。」
「っ、ジョーカー、さま…!」
「…昴殿。」
「分かってる。…お前の部屋に泊めてやれ。」
「感謝する。セシル、行くぞ。」

ジョーカーはセシルを伴い、二階へと上がっていった。

(…無意識に、ジョーカーに…親に、縋ろうとしたんだな…。それで傘も差さずに無我夢中でここに来た…。辛かったな、セシル…。)

セシルの気持ちがわかったのか、昴は黙ってジョーカーに任せる事にした。











そして、現在に至る…。

「…ジョーカー、朝飯の用意は俺一人でやるよ。お前はセシルの側にいてやってくれ。」
「助かるが…いいのか?」
「構わないって。…今は、セシルの方が辛いんだからさ。」
「…そうだな。では、頼む。」

ジョーカーは昴にそう言うと、再びセシルのいる部屋に戻った。

(…氷海を助けるまで、セシルはあの調子だな…。)

昴は一つ溜息を吐きながら、一階へと降りていった。

冷酷なる御霊 その三 ( No.548 )
日時: 2015/01/20 21:22
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fhgz9KYE)

やがて時間が経ち、寮では朝食の時間となった。
食堂へと集まるも、誰も、何も話そうとしなかった。

「…。」

箸でご飯が盛られた茶碗をつつく音と、周りの人達の話し声が響く。

—おーこーめー。おーこめこめ〜♪

そんな時、誰かの携帯電話が鳴った。

「…あ、俺だ。この着うたは昴さんだな。」
「悠、昴さんに殺されるぞ? その歌、あんまり好きじゃないみたいだから。」
「フッ、由梨。こう言うのはバレなければ問題ないんだ。もしもし?」
『まず理由を聞かせて貰おうか。俺からの着信、お米にしてる理由。』

悠は電話口から響いた昴のその声に、ビクッと体を強ばらせた。

「以前、昴さんの待ちうたがお米だと聞いて、つい。」
『キサマアトデブチコロス。』
「すみませんでしたっ!」

電話口にいても伝わる殺気に思わず土下座する悠だが、その前に昴は通話を切っていた為、その謝罪は届いていないだろう。
程なくして、今度は『記憶』と言う曲が流れる。

「あ、それ、マr」
「ネタバレダメだろ里中。…昴さん、とりあえず言っておきます。神秘的な感じ繋がりでこの曲にしました。」
『俺もこのダンジョンは特殊だったが何だかんだで好きだった。曲もしかり。』

電話口の昴は機嫌がいい。どうやら陽介のお陰で機嫌が直ったようだ。

『本題に入る。お前達は朝飯食い終わり次第、テレビに入る準備をして神殿に来い。理由は何となく分かるだろ?』
「はい。…氷海ちゃんの件ッスよね。けど、入口は…。」
『心配要らない。もう見つけたからな。』
「ほ、ホントッスか!? どこに…!」
『…まさか俺もこんな所が入口だとは思わなかった。…場所は、神殿のリビングだ。』

昴の答えに、陽介は驚くも、どこか納得を見せた。

『とにかく、だ。朝飯終わったら神殿に集合。いいな?』
「了解!」

陽介は通話を切り、スマートフォンをしまった。

「入口、見つかってたのか。」
「ああ。神殿のリビング。あそこが入口になるみたいだ。」

由梨の疑問に陽介が答えると、どこか納得したように頷く。
そんな彼らの横で、理乃が申し訳なさそうな表情を見せる。

「…私達もお力になれればよかったのですが…。」
「理乃ちゃん達はご飯作って待っててよ! あたし達、お腹ペコペコで帰ってくるから! あ、あたしにはスペシャル肉丼で!」
「あっ、私、麻婆豆腐食べたーい!」
「オレ、コロッケおなしゃす!」

千枝が頼んだのを皮切りに、りせと完二も注文する。
その様子に最初は呆気にとられた理乃だが、すぐに笑みを見せ、由梨を見た。

「ええ、任せて下さい。」
「飛びっきりの作って待ってるよ。だから、必ず帰ってこい。氷海も一緒にさ。」
「私、料理できないし、帰ってきたらハグをプレゼントしたげる!」
「七海のハグは洒落にならないよー? 骨、五、六本は逝くから。」

お茶を啜りながら平然と言う葉月の言葉に、全員七海と距離をとる。
確かに彼女の力加減の出来なさのせいで、何度犠牲が出たかわからない。主に理乃が。

「ひっど〜いっ! 葉月、そこまで言う事ないじゃん!」
「葉月は事実を述べてるだけじゃない。」
「へぐぁっ!」

葉月の言葉に反論する七海だか、理乃の鋭い言葉に撃沈した。

「…まぁ、とにかく、無理せずに無事に帰ってこい。信じて待ってやっからさ。」

無理矢理纏めた由梨の言葉に、全員頷いた。
そして、帰りを待ってくれている人がいる事を噛み締めながら、食事を続けた。

冷酷なる御霊 その四 ( No.549 )
日時: 2015/01/20 21:27
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fhgz9KYE)

食事も終わり、ペルソナ組は全員、神殿の前にいた。

「…日曜だってのに制服の集団がいるって奇妙だな。」
「いやー、何か、これで行くの、癖になってて…。」
「まぁ、気持ちはわかるクマ。クマも何だかんだでキグルミ着てるクマからねー。」

玄関口で待っていた昴の第一声に、千枝は難しそうな表情を浮かべながら答える。
そう、休日だと言うのに、全員制服姿なのだ。そして各々、武器を隠し持っている。
テレビに入る準備は万端のようだが、端から見れば怪しい集団だ。

「でも、確実に持っていたら補導どころか逮捕される武器を持っているのに、見つからずにここに来れたのは奇跡で…」

交番を避けて通ったとは言え、ここまで音沙汰がなかった事に直斗は疑問を持つも、笑顔の昴を見て、全てを悟った。
あぁ、この人が根回ししたのだ、と。

「(この人の仕業ですか…。)昴さんが頼んでおいたようですね。どうやって警察官寮に根回ししたかは聞かないでおきます。」
「賢明だ。時間が惜しいから、さっさと入ろ」
「待ってくれ!」

昴が悠達を中に招き入れようとした時、後ろから声がかけられた。
聞き覚えのある声に驚いて振り向くと、そこには、普段着姿の烈がいた。

「ちょっ、烈! お前、どうしてここに!?」
「悪いとは思ったけど、後、つけさせて貰ったんだよ。…お願いがあってさ。」

烈の言うお願いを察知したのか、陽介は厳しい視線を烈に浮かべ、

「駄」
「うん、いいよ。」

拒否の答えを出そうとした横で許可したのは、雪子だった。
許可を出した雪子に驚いた一同は、彼女を見た。

「ちょっ、雪子!?」
「本気なの!? 雪子センパイ!」
「本気だよ。…私、烈君は氷海ちゃんの所に連れて行くべきだと思うの。」
「…理由、聞かせて貰っていいか? 雪子。」

昴の問いかけに、雪子は頷く。

「ここ数日間で、氷海ちゃんは答えを出したんだ。それを聞いて、私は烈君を連れて行くべきだって思ったの。危険だって分かってる。だけど、氷海ちゃんと烈君を引き合わせるべきだって思う。」
「氷海の…出した、答え…。雪子先輩、それって一体…。」

烈が答えを聞こうとしたが、雪子は彼を見て首を横に振った。

「それは、烈君が氷海ちゃんから直接聞くべきだよ。私から言う事じゃないから。」
「…。」
「そこまで言うなら、連れてってやるべきなんじゃねぇか?」
「! 昴さん!?」

雪子の言葉を聞いて、昴まで許可を出した事に驚き、全員、今度は昴を見た。

「烈なら身の振り方は分かってるだろうから、誰かさんみたいに危険な場所に他人の制止も聞かずに一人で向かう事はないと思うけどな。」
「誰かって誰の事?」

千枝は分からずに昴に聞き返すも、

「あぁ…。」
「それは…。」
「言えてるクマ…。」

その誰かさんのせいである意味痛い目を見た三人は、その誰かさんを見た。

「…って、何で三人してあたしを見るの?」
「自分の胸に聞いてみろ!」

恐らく、雪子のダンジョンでの事を言っているのだろうが、等の本人である千枝は、まったく覚えていないようだ。

「…直斗、オメェも若干その口だったよな?」
「はい、今思えば、事件解決の為になんて馬鹿な真似をしたのだろうと思っています。」

直斗も直斗で、事件がまだ終わっていないと言う証明をする為に、一人で無茶をしたので、反論はできない。が、忘れている千枝よりは罪は軽いだろう。

「…それはもう後だ。相棒、どうする?」
「…。」

悠は腕を組み、どうしたものかと考え込む。

「…烈、武器はあるか?」
「いや、能力頼りだったから用意してな…あっ。」

何かを思い出したのか、烈はごそごそとポケットを漁る。
取り出したのは、折り畳み式の警棒。

「これがあった。」
「何で警棒なんか持ってんだよ!?」
「最近、由梨先輩に剣術習っててさ。素振りするのにいいってこれ貰った。」
「何でこんなもん持ってたんだ由梨ちゃんは!?」

クラスメイトの謎の所持品に、陽介はもうツッコミしか返せない。後で本人に聞いてみようと考えるも、教えてくれるかどうかは謎だ。

「…絶対に一人にはならない。俺達の言う事を聞く。それは約束できるか?」
「ああ。千枝先輩みたいに単独行動はしない。約束する。」
「あたしみたいにって酷くない!?」

千枝は何事かを言うが、悠と烈は軽くスルーした。

「…クマ、眼鏡を用意してやってくれ。」
「相棒!?」
「あ…ありがとう、悠先輩!」

狼狽える陽介の横で、烈が悠に礼を述べる。それを見た陽介も、頭を抑えて溜息を吐き、「しゃーねぇな…。」と呟く。どうやら認めてくれるようだ。

「烈、絶対に俺達から離れるんじゃねぇぞ!」
「ああ、わかってる。みんなの足手纏いになるような事はしない。」

烈は力強い眼差しで陽介に答える。どうやら、これなら大丈夫そうだ。

「…さて、今は時間が惜しい。さっさと入れ。」
「おう!」

全員、急いで神殿内へと入った。その足取りはどこか、力強かった。


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