二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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神様のノート 一冊目
日時: 2015/05/12 18:40
名前: 奏月 昴 (ID: rBo/LDwv)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=28346

始めまして、奏月昴と申します。
pixivでも活動していますが、別の所でも活動したくなり、こちらにやってきました。

基本pixivと同じものを載せていく予定なので、お好きな方を閲覧下さい。


とりあえず今は現在進めているシリーズ物を載せますが、ちょこちょことお引越しさせていく予定です。
設定わかんないけど興味がある方、pixivまでお越しいただけるとありがたいです。
何かいい加減ですみません…。

それでは、よろしくお願いします。


※ざっくばらんなあらすじ
会社から帰宅途中に何故か宙に浮いている少年、MZDと出会った私こと、創造者。
彼から貰った創世ノートを使い、世界と創造者の分身、奏月昴を生み出し、この世界の神様として中からの管理を命じる。
その際、昴と約束し、私の事は他言無用とすることになった。

昴は生まれたその日に、この世界で烈達つぎドカ!メンバーと出会い、仲良くなる。
ある日、創造者から教えられた創世ノートの機能である『召喚』を用い、烈達の記憶と姿、力を基にして鏡達を生み出す。

そして二学期が始まる頃、八十稲羽から悠達ペルソナメンバーが、ペルソナが現実でも呼べるようになり、流石に稲羽にはいられないという事で、烈達が通う学校に転校して来て、仲良くなった。

色々あり、十二月。烈達つぎドカ!メンバーがバトルしてから一年後、パステルくんはワンダークロックと呼ばれる巨大時計をジョーカー一味に壊されている事を思い出し、一人立ち向かおうとするも、それをつけていた烈達つぎドカ!メンバー。
彼等の力を借り、ジョーカーを倒し、ワンダークロックを無事直すことが出来た。
ジョーカー達とは和解し、現在はつぎドカ!メンバーの家に、ジョーカーは昴のいる神殿に住むことに。
ワンダークロックが壊れた影響なのか、全ての人々の体の時間が戻ろうとしており、現在、年齢はそのままで一年をやり直している。

昴の管理と私の監視、それに限界を感じた私は、MZDの提案で、戦い慣れた人をノートの世界に永住させる事を決意。
その時、私が高校時代に考えた理乃達が適任という事になり、彼女等の世界をノートの中に作り出し、全てを話した上で永住してもらう事に。現在は悠達と同じ学年で生活している。



—とまぁ、見て分かるかわからないけど、主要となる人物は、つぎドカ!、ペルソナ4、ジョーカー達、それからオリジナルキャラとして理乃ちゃん達になるかな。


「あ、簡易的なキャラ紹介は、もう一個の“ノートに刻まれた一頁”に移したので、そちらを見てくれよな。URLからも飛べるぞ。」


5/12 最終更新


『目次』

☆料理対決シリーズ
〔第一回・可憐な乙女の料理対決〕
・栗拾いからの料理対決へ&華の乙女の料理対決! >>154-160
・実食 完二&烈&鏡&悠 >>164-168
・実食 凪&陽介&クマ&風雅 >>173-177
・結果発表からのO・SHI・O・KI・DEATH☆ >>180-186

〔第二回・続・可憐な乙女の料理対決〕
・料理対決・再び >>1-7
・実食 ローズ&鏡 >>8-11
・実食 完二&リリィ >>12-15
・実食 悠&風雅 >>16-19
・実食 凪&セシル >>20-23
・実食 陽介&クマ >>24-28
・実食 フランシス&烈 >>29-34
・結果発表と例のアレ >>35-43

〔第三回・豪傑な男の料理対決〕
・何でどうしてこうなった(By昴) >>44-49
・実食 氷海&雪花 >>50-53
・実食 七海&由梨 >>56-59
・実食 鈴花&直斗 >>60-63
・実食 葉月&雪子 >>64-67
・実食 千枝&牡丹 >>68-71
・実食 理乃&りせ >>72-76
・結果発表! >>77-86 ※募集は締め切りました
・O・SHI・O・KI☆前半戦 >>94-101
・O・SHI・O・KI☆後半戦 >>110-123

〔第四回・男女混合料理対決地獄編〕
・戦いをもう一度 >>203-209
・実食 一番&二番 >>222-227
・実食 三番&四番 >>233-237
・実食 五番&六番 >>247-253
・実食 七番&八番 >>260-264
・実食 九番&十番 >>286-290
・実食 十一番&十二番 >>301-306
・実食 裏回 >>326-342
・結果発表! >>384-398 ※募集は締め切りました
・賢者に慈愛を、愚者には罰を 賢者編 >>662-671

〔第五回・料理対決・頂上決戦!〕
・評価五のための頂上決戦! >>415-420

〔番外編・審査員一新!? 選抜メンバーの料理対決!〕
・死亡フラグ立たせた奴。前出ろ。前だ。 >>716-723
・実食 一番&二番 >>728-733
・実食 三番&四番 >>738-743
・実食 五番 >>751-756
・対決 五番の料理 >>784-794
・大団円と実食 六番 >>814-822
・実食 七番&八番 >>840-848

〔番外編・挑戦者=変動審査員!? ゲストもありな料理対決!〕
・概要と募集要項 >>856※募集は終了しました


☆言葉泥棒とワンダークロックシリーズ
・言葉が消えた理由 >>435-441
・異次元に突入! >>442-446
・激突! 鈴花VSローズ >>451-455
・激突! 風雅VSフランシス >>456-460
・激突! 烈VSリリィ >>464-469
・激突! 氷海VSセシル >>470-474
・激突! つぎドカ!VSジョーカー >>478-484
・揺蕩いから、覚醒めの時へ >>485-488
・激突! パステルくんVSジョーカー >>491-497
・おかえりの味とただいまの涙 >>498-506


☆マヨナカテレビ事件シリーズ
〔氷海編〕
・虚ろな映身は現身を打つ >>523-532
・穿たれた水器(みずうつわ) >>533-537
・囚われの氷硝 >>540-545
・冷酷なる御霊 >>546-553
・氷雪の女王 >>563-568
・悪夢の終わり >>569-578
・雲の向こうに捧ぐ向日葵の花 >>582-585


☆神様・悪夢相談室シリーズ
・悪夢:ケース「赤羽 烈」>>805-808
・悪夢:ケース「青柳 氷海」 >>831-835


☆もしももしものちいさなおはなしシリーズ
・カラオケネタ >>192-195 ※募集は締め切りました
・どっちの料理ショー >>274-276


☆ノートの世界のTwitter事情シリーズ
・アカウント一覧 >>589

〔本編〕
・その一 >>590-594
・その二 >>595-598
・その三 >>606-609
・その四 >>614-616
・その五 >>622-623
・その六 >>630-632
・その七 >>633-634
・その八 >>317-319

〔番外編〕
・Let's Twitter with JOMANDA >>602-605
・Let's Twitter with JOMANDA2 >>617
・Let's Twitter with JOMANDA3 >>776-778
・異世界の料理対決 その一 >>880-888


☆新・ワイルド能力者のコミュ事情シリーズ
・烈&氷海 ランク1 >>644-649


☆短編
・はんぶんこ >>128-129
・リミットブレイクと暴走娘 >>133-135
・フラワーギフト >>140-147
・年末恒例巫女さんバイト >>349-359
・玉より食物 >>365-371
・「リンちゃんなう!-Try to Sing Ver.-」 rejected by 相方の皆さん >>510-515
・没案「第四回料理対決六番の料理」 >>516
・思いつくままに書いてみた料理対決案 >>558
・没案「第四回料理対決・その後」 >>624 答え+α >>629
・バレンタインデー☆パニック! >>681-689
・猫の猫による猫のためのお花見 >>699-704
・お知らせと次々回予告(!?) >>708-709
・ほのぼの日和 >>770-772
・小ネタつめつめ >>863
・前奏曲・異世界の第六回目 >>866-868
・お知らせと紹介と >>891-893 new!

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おかえりの味とただいまの涙 その三 ( No.500 )
日時: 2015/01/17 21:51
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: OR22W8s.)

「…。」

そんな光景を眺める鈴花。箸を止めず、目の前の美味しそうなご飯を食べ続ける。

(この味…どこだっけ? どこかで、食べた。昴さんの作り方じゃない…。どこで…あっ…!)

食べた事のある味付け。そして、春巻きに口をつけた瞬間、思い出した。

「っ…!」

思い出した瞬間、鈴花の目から溢れんばかりの涙が零れ落ちた。

「…鈴花? ど、どうしたの?」

急に泣き出した鈴花が心配になり、風雅は声をかける。

「…これ…味なの…!」
「えっ?」
「これっ…お父さんが作る味付けなのっ…! それ、思い出したら…涙が、止まらなくてっ…!」
「!?」

それを聞いた他のつぎドカ!メンバーも、思い思いの品を口に含むと、氷海が何かに気がついたのか、口許を覆った。

「この、玉子焼き…! まさか、お父様…!?」
「その玉子焼き、氷海のお父さんの手作りなんだね…。」
「ええ…! でも、何故…!? 凄く、凄く美味しいのっ…! いつもの玉子焼きよりも、凄くっ…!」

ぽろぽろと泣き出す氷海。何の変哲もない、いつも作って貰っている玉子焼き。いや、玉子焼きだけじゃない。この氷海のお弁当箱に入っているもの全て、氷海の父親がよく氷海に作る味付けだった。
いつものお弁当なのに、今食べているこの中身は、とても美味しく感じられた。

「じゃあ、このご飯はやっぱり…母さんが作ったのか…。えへへ…ホントだ。氷海の言う通り、何の変哲もない野菜炒めなのに、いつもより美味しいや…。グスッ…。」

薄々感ずいていた風雅も、目の前のお弁当を見て、溢れ出す涙を堪えきれずに、その瞳から零した。

(…母さんの肉じゃがの味付けだって思ったら、本当に母さんの作った弁当だったのか…。)

一人、涙を堪えながらも食事を続ける烈。泣き出した一同を前にしても、涙を堪える。ここで泣く事はプライドが許さないのか、あるいは違う要因か…。

「いつもよりも美味しいのは、簡単な理由ですわ。」

かたっ、と音がした方を見ると、そこには牡丹がいた。どうやら起きてきたのだろうか、寝癖が少しついている。

「牡丹…。」
「私達も、こちらに再び帰ってこれた日…鈴花の料理を食べて、あの時一緒に食事をしていなかった昴さん以外、全員涙しましたわ。…同じ事を、無意識に考えてね。」
「それって…。」
「…死と隣り合わせの場所から、“帰りたい場所”に帰ってこれた事が嬉しかった。“非日常”から“日常”に帰ってこれた事が嬉しかった。私達にとって、鈴花の料理は“日常”でしたからね。」

“非日常”から“日常”への帰還。
ただ、料理を食べただけ。その何気ない行為だが、その行為は、牡丹達を“非日常”から“日常”へと引き戻すきっかけとなるには十分だった。

「あぁ、これも言わねばなりませんわね。」

牡丹は優しい笑みを湛え、鈴花を背後から抱き締めた。

「…お帰りなさい、鈴花。」
「う…牡丹…! 牡丹っ!」

鈴花は徐に立ち上がり、牡丹を強く抱き締めた。そして、彼女の胸で泣きじゃくる。

「牡丹っ、ごめんっ…! ごめんなさい…!」

ただただ、謝りたかった。普段から憎まれ口を叩いているのに、こうして心配してくれて、受け入れてくれる牡丹を、心配させた事を。
牡丹は何も言わずに、鈴花を撫で続ける。

おかえりの味とただいまの涙 その四 ( No.501 )
日時: 2015/01/17 21:56
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: OR22W8s.)

「あらあら、鈴花ったら。謝らなくてもいいのにね。…私達はこれ以上、心配させたのだから。」
「…!」

クスクスと優雅に笑みを称えながら、雪花もリビングへと入ってきた。

「雪花!」

雪花の姿を見て安心したのか、氷海は彼女に飛び付いた。
飛び付かれた雪花は一瞬だけ驚くも、すぐに笑みを浮かべ、そっと抱き締めてあげた。

「雪花…雪花…う、うぅ…!」
「何も言わないでいいわ。…お帰りなさい、氷海。」
「う、うぅっ…! うっ、ひっぐ…た、だい、ま…! うぅっ…!」

嗚咽のせいで、上手く言えない。だが、きっと、伝わっただろう。ただいま、と。

「…鈴花…氷海…。」
「風雅も泣いちゃえばー? 僕の胸なら空いてるよー?」
「う、うわぁっ! お、驚かさないでよ凪!」
「あははー、ごめんねー。気配隠すの、癖になってー。」

いつの間にか横にいた凪に、風雅は驚いて飛び退く。謝罪する凪だが、いつもの調子で返した為、反省しているのかわからない。

「あ…そうだ…。」

凪の顔を見た瞬間、思い出すのはフランシスに壊された、凪が作ってくれたヨーヨー。戦いの最中の不可抗力とは言え、壊してしまったのは事実なので、謝りたかった。

「凪、その…ヨー之助の事だけど…。」
「ヨー之助がどうかしたのー?」
「…戦ってる最中に…壊しちゃって…。」
「ふーん。そう。」

風雅はその凪の答えを聞いて、思わず俯けていた顔を振り上げた。

「そ、そうって…! 僕は君が作ってくれたヨーヨーを」
「ヨーヨーなら、いつでも作ってあげるよー?」
「いつでもって…! ヨーヨーを壊されて、悲しくないの!?」
「そりゃ悲しいよー?」

でもね、と、凪は笑顔で風雅を見ながら、続ける。

「ヨーヨーは壊れても替えが効くけどー…そのヨーヨーを操る風雅は、替えが効かないでしょー?」
「…! あっ…!」
「ヨーヨーは壊れたのは悲しいけど、それは些細な事ー。だって、風雅が無事に帰ってきたからねー。」

凪はいつもの笑みで、風雅と同じ目線で座る。

「お帰りー、風雅ー。」
「っ…! たっ…ただいま、凪…!」
「わー、涙腺大崩かーい。よしよーし。」

先程よりも大粒の涙を流している風雅を、凪はそっと抱き締め、頭を撫でてあげた。

「…。」

ジョーカーは、泣き続ける三人と、その三人を優しく包み込む分身達を見て、ローブのフードを深く被った。目にはうっすらと、涙が見える。

「…いい奴等じゃん…。」
「ええ…。凄く暖かくて…優しい方達ですわ…。」

ローズもセシルも、そんな彼らを見て、何故か安堵するのを感じていた。

「烈君…この人達は…?」
「ここに住んでる、昴さんの家族みたいなもので…俺達の記憶と力を元に昴さんが生み出してくれた、俺達の、大切な分身だ。」
「神の使い、と言ったところか。」

リリィの疑問に答える烈。その横では、フランシスが何やら考え込んでいた。

「…神は総じて、我儘で自分勝手なのだと思っていたが…これならば、俺達の言い分も聞いてくれるか…? 」
「昴さんはそう言った神様じゃないよ。ちゃんと真摯になって、俺達の話を聞いてくれると思う。」

フランシスにそう答えると、烈は立ち上がった。

「烈君…?」
「ちょっと、トイレ。」
『大か? 小か? どちらにしろ、我慢はよくなぷぎゃっ!』

何か言っていた黒が突然現れた宝石に潰される。

「…汚い。空気読んで。」

…どうやら、リリィが落としたようだ。
烈はそんな光景に乾いた笑いを浮かべると、廊下へと出ていった。

おかえりの味とただいまの涙 その五 ( No.502 )
日時: 2015/01/17 22:02
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: OR22W8s.)

「…っ…!」

廊下へと出た直後、烈の中で堪えていた感情が爆発しかけた。本当は、あの場で泣きたかった。だが、プライドが許さないのと、一人は涙を堪えて、話が出来る人が必要だと考えた烈は、必死で溢れそうな感情を抑え込んだのだ。

「…烈。」

自分の名を呼ぶ声に、烈は顔をあげ、その姿を目に映す。
そこには、鏡がいた。頭に少し寝癖をつけ、いつもの笑顔を浮かべて、自分を見ている。

「鏡…。」
「…あのお弁当ね、最初は、すーさんが作ろうとしたんだって。でもね、きっと自分の料理じゃ、戻ってきたっていう実感が湧かないだろうって思って、やめたんだって。」
「…。」
「…そう考えて、すーさんは…烈達の家に行ったの。りせを神殿に帰した後、MZDと一緒に。」

ワンダークロックの件を相談し、その足で烈達四人の家を周り、お弁当の件を頼んだのだろう。烈達四人を、“日常”へと帰ってきたと、実感させる為に。

「夜中なのにね、烈達の家族、全員承諾してくれたの。理由、わかる?」
「…。」

烈は首を横に振る。それを見た鏡は続ける。

「教える為、だよ。烈達の“日常”を。烈達の“日常”がある場所は…ここだって、教えてあげる為。それから…面と向かっては言えない、“おかえり”を伝える為。」
「っ!」
「大切な家族が作った手作りのお弁当を残さず食べる…。これも、大切な“日常”でしょ?」
「あぁ…! あぁ、そうだな…!」

溢れ出てきた涙を拭いながら、鏡の言葉に答える烈。
鏡はそんな烈を包み込むように、抱き締めた。

「えへへ、また、烈をぎゅーできて、オレ、嬉しいよ。」
「ば、馬鹿野郎…! 恥ずかしいだろ…!」
「いいじゃん、誰も見てないもん。」

烈をぎゅっと包み込み続ける鏡。まるで、烈の涙を隠してあげるように。

「…お帰り、烈兄ちゃん!」
「っ! この、馬鹿弟…! 兄ちゃん、泣かすなっ…!」
「えへへー。」
「笑って、誤魔化すなっ…!」

悪態をつきながらも、泣き続ける烈。
鏡は烈から貰い泣きしながらも、彼の頭を撫で続けた。

おかえりの味とただいまの涙 その六 ( No.503 )
日時: 2015/01/17 22:07
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: OR22W8s.)

四人は一頻り泣いた後、洗濯物を干し終えた昴を迎え、リビングへと再び集まった。
昨日からあまり寝ていない鏡達はもう一度睡眠をとる為、各々部屋に戻ったようだ。

「…まずは、烈、風雅、氷海、鈴花。それから、パステルくん。よく無事に帰ってきてくれた。それと、パステルくん。よかったな、言葉が戻ってきて。」
「昴さん、あの…ごめんなさい…。心配、かけさせてしまって…。」
「お仕置きなら、いくらでも受けるさ。その覚悟はあるから…。」

謝る氷海と、力強い目を浮かべる烈に、昴は軽く笑みを称えた。

「お仕置きはするつもりなんかないよ。」
「で、でも、私達、昴さんに心配させてっ…!」
「心配させたのは俺だって同じさ。あの事件でな。」

昴の言葉に反論を返す鈴花だが、その続けられた言葉で、何も言い返せなくなった。

「俺はただ、お前達が無事に、生きて帰ってきてくれた。それだけで嬉しいよ。」

そう、笑顔で言う昴に、鈴花は再び泣き出し、昴へと飛び付いた。

「う、うぅ…! ごめんなさい…! ごめんなさいっ、昴さん…!」
「謝らなくていい。…謝らないで、鈴花。」

昴は、鈴花が落ち着くまで、その頭を撫で続けてやる。
そして、鈴花が落ち着いたのを見計らい、食後の紅茶を全員に淹れた。

「さて、紅からかいつまんで聞いたが、お前の口からも聞きたい。いいか? ジョーカー、パステルくん。」
「うんっ! あのね…。」

パステルくんは穴の中で起こった出来事を、余す事無く話す。ジョーカーも、ワンダークロックを壊そうとした本当の目的を…タイムワープがもたらす惨事を話すが、ワンダークロックを破壊した後に起こると言う、時間軸の乱れについては知らなかった事は話さなかった。

「…ジョーカー、お前はワンダークロックを壊した時に起こる時間軸の乱れは知らなかったって紅に聞いたが、それは本当か?」

話そうとしなかったジョーカーに、昴は問いただす。これは大事な事だからだ。

「…ああ。タイムワープの柱と言うのは知っていたが、時間を司っているとは…。」
「もし、知っていたら、お前はどうした?」
「…どうも、していなかっただろう。ワンダークロックを破壊する、と言いもしなかった。それどころか、ワンダークロックを…守っていたかもしれん。」
「…やっぱり、いい奴等じゃん。」

ジョーカーの告白を聞いた烈は、ポツリと呟いた。リリィに対して感じていた直感は、当たっていたようだ。

「…ねぇ、昴さん。ワンダークロックはこれからどうするの?」

パステルくんは不安そうに聞いた。また、ワンダークロックを破壊しようとする存在がいるかもしれない。それを危惧しての質問だった。

「MZDと話したんだが…ワンダークロックへの道を、MZDの力で封印しようって事になった。そうすれば、誰も触れられないからさ。」
「…しかし、それではタイムワープを悪用する者が…。」
「させねぇよ。」

昴はまるで、ジョーカーの不安を一蹴するかのように言う。

「残念ながら、俺は時を越えられないけど…MZDがマスターと一緒に何とかするってさ。」
「マスター…? MZDは先程貴殿と一緒にいた者だろうが…。」

聞きなれない名前に、首を傾げるジョーカー。

「名前はマスターハンド。ある世界の、創造の化身…まぁ、神様だ。そんな考えを巡らせる輩を見つけて止めて…俺がお説教する。そういう体制を作っていこうって、MZDと話してた。多分、マスターも承諾してくれるだろう。とにかく、そんな不届き者がいたら、創造神三人でとっちめるから大丈夫だ。」
「そうか…。」

少しだけ、ホッとしたような表情を浮かべるジョーカー。三人の神様が味方についてくれる、それが、心強いのだろう。

おかえりの味とただいまの涙 その七 ( No.504 )
日時: 2015/01/17 22:14
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: OR22W8s.)

「…ジョーカーも安心したところで…これからどうするんだ? お前等は。」
「我等…?」

ジョーカーは考えた。ワンダークロックを破壊する事に必死で、それから先を考えた事がなかったのだ。

「…そうだな。ワンダークロックについても解決したから…住み処にしている場所に帰」
「私、帰らない。」

帰る場所を言おうとしたジョーカーだが、リリィはそれを遮り、きっぱりと言った。

「リリィ!? な、何故…!」
「…烈君に、興味を持った。だから、側で見ていたい。」
「俺んちに住むって事か?」

烈が問うと、リリィは頷いた。

「…烈君の家に、同棲したい。」
「どっ、どどどど同棲いぃぃっ!?」

ジョーカーはリリィの言葉に、驚きを隠せずにあたふたし始める。

「んじゃー、ボクも鈴花んちに同棲してやるよ!」
「なにいぃぃぃっ!?」

リリィに続いて、ローズも同棲発言したものだから、ジョーカーは頭がパニックになり、固まってしまった。

「ローズ、同棲の意味、わかってる…?」
「ううん、全然。でも、一緒に住むって言うのはわかるぞ!」

どうやらリリィが使ったから、ローズも使ったようだ。
未だに固まっているジョーカーを置いて、昴はリリィを呼び寄せた。

「…リリィ、だっけか。わざとか? 今の場合なら同居が正しいと思うが…。」
「わざと。ジョーカー様の困った顔、見てみたかった。」
「悪魔かお前は。」

表情の読めない顔をしてあざといリリィに、昴は思わず言った。

「あらあら。ならば、私は氷海の家に同居させてもらおうかしら。…愛しの烈さんの話も聞きふむぐうっ!」

セシルが変な事を言おうとした事に気がついた氷海は、素早く彼女の口を塞ぐように掴んだ。

「…? 俺がどうかしたか?」
「な、なんでもないのっ! セシル、これからもよろしくねっ!」
「むーっ、むーっ!」
「ひ、氷海、落ち着こう? ねっ?」

バタバタと暴れるセシルを押さえ込みながら、烈に何でもない風に返す氷海。パステルくんはそんな氷海を押さえ、その横では烈と氷海を見て、鈴花は溜息をついた。誰にって? 勿論、鈍感な烈といまいち一歩が踏み出せない氷海に。

「この流れだと、君が僕の家に住みそうだね。」
「フン、いいだろう。俺がお前の家に住んでやる。寝首をかかれないように気を付け」
「フランシスだっけ? 重犯罪はダメだぞ? 俺からお仕置きが行くから。」

明らか犯罪の臭いがするフランシスの言葉に、昴は笑みを浮かべながらノートを手に持ち、皇帝のカードを砕いて完二のペルソナ、タケミカヅチを召喚した。

「ひいぃぃぃっ!?」
「スミマセンデシタ。」

タケミカヅチと昴の威圧が怖かったのか、風雅は烈の影に隠れ、フランシスは土下座をして謝罪をした。それに昴は「よろしい。」とだけ言ってタケミカヅチを消した。

「…そんな感じになったが、お前はどうするんだ? ジョーカー。」
「む、むぅ…。」

ようやく、リリィとローズのショックから立ち直ったジョーカーは、考え込む。流石に自分一人で帰る訳にもいかないだろう。だが、こちらに住むとなれば、ねぐらの確保をどうするか…。

「…ならさ、ここに住むか?」

困り果てているジョーカーに、昴はそう提案した。

「ここに…?」
「ああ。部屋なら沢山あるしさ。」
『これとかな。』

今まで空気だった黒が、ジョーカーの目の前にある物を置いた。
それは、滑車や水飲み場、餌場がついた、ハムスターの檻だった。
これを見た烈は勿論…。

「お前が入れこの馬鹿黒。」
『ぎゃあぁぁぁぁっ! な、何をする烈! 痛い、痛い! 我はこの隙間に入らぬうぅぅっ!』

黒を引っ掴んで無理矢理狭い入口から押し込めました。

「とまぁ、あの馬鹿黒は置いといて…。」
『置いておくな! この鬼女!』
「…。」

それを聞いた昴は一瞬、表情から笑顔が消え失せる。

『…死んだな。あの馬鹿。』

紅は、憐れみの視線を黒に送った。
昴は寸銅を用意し、鍋一杯の水を入れ、火にかける。

「…なぁ、烈。」
「ん?」
「鴉の水炊きって、美味いかな?」

そう言いながら、烈から黒を受け取り、ノートの力で出した紐を黒に巻き付ける。

『ぎゃあぁぁぁぁっ! わ、悪かった! 許してくれえぇぇっ!』

バサバサと暴れる黒。ようやく自分のしでかした事が分かったか…。
勿論これにはその場にいた烈を除いた全員が怯えてしまった。

「で? どうすんだ? ジョーカー。」
「まずはその手に持っている鴉を解放してくれないか?」

未だに暴れる黒に気が散ってしまい、会話が難しいと判断したジョーカーは、昴に黒を解放するよう頼んだ。
昴はジョーカーの願いを聞き、黒を解放する。

「…貴殿がいいのならば…我は、ここに住みたい。構わないか?」
「始めからいいって言ってるんだがな。まぁ、いいか。それじゃ、そう言う事だから、今日はこれで解散。お前らも昨日から戦い続きで疲れただろ?」

全ての話を終えた昴は、四人にそう促した。

「そう言われれば…。」
「安心したら、疲れてきた…。」
「ほらほら、ここで寝ないで家で寝ろ。親とか、心配させてんだから。」

瞼が閉じそうだった氷海と鈴花だったが、昴の言葉を聞いて一気に目が冴えた。風雅と烈も、一気に眠気が吹き飛んだようだ。

「うわぁ…! 母さんに怒られそうだ…!」
「店番、何日やらされるかな…。」
「自業自得だ。腹括れ。ほれ、帰った帰った。俺も紅も昨日から寝てないからさっさと寝たいんだから…。」
「あ、そ、そうだよね。ずっと、待っててくれたんだっけ…。紅は着いて来てくれたし…。」

パステルくんは申し訳無さそうな表情を浮かべ、烈達に向き直った。

「みんな、早く帰ろ? 昴さん、眠そうだよ?」
「帰りたくないけど…帰るか。リリィ、行くぞ。」
「うん。ジョーカー様、また、ね。」
「またね! ジョーカー様!」
「あ、ああ、また。」

手を振る子供達を見送るジョーカー。少しだけ、その姿が寂しそうに見えた。
そんなジョーカーの頭の上に、昴が手を乗せる。

「あの四人はこの近くに住んでる。会おうと思えば、いつでも会えるさ。」
「う、うむ…。」

くしゃくしゃと頭を撫でる昴に、ジョーカーは胸の奥が暖かくなるのを感じた。


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